私の愛しいアンジュ

毒島醜女

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私の妹はいい妹

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あら、アンジュじゃない。

柵が乱暴に揺らされている音がしたから猿でも逃げ出したかと思ったわ。

ええ。そうね。

ここはあなたの家で、私はあなたの姉よ。

でもそれは昔のこと。

知ってるでしょ? あなたはここの家の子じゃないの。

もう私には妹がいるのよ。

本当の、血の繋がった妹のアンジュが。

ふふふ。運命のいたずらよね。

お父様の商売敵によって平民と取り違えられた二人が、まさか同じ名前になるなんて。

とってもいい子よ。本当のアンジュは。

早くにお養父様とお養母様を亡くされても、自分を支えてくれた村を助けるために勉学に励み、王立学園に特待生として入学。

やっかみから白い目で見られながらも気丈に立ち向かい、首席の成績を修め、様々な論文も発表した才女。
性格もとてもいい子よ。

強く、逞しく、それでいて人の痛みに寄り添える繊細な優しさを持った子。

お父様とお母様ともすぐに打ち解けたわ。

血の繋がった家族というだけではないわね。

お二人は彼女が実の娘で嬉しいのよ。

私も、そう思うわ。

……そうやってさっきからアンジュを偽物と言うけど、あなたはどうなの?

口を開けば不満と駄々こねばかり。

少しでも気に食わなければ喚き散らして、絶食したり窓辺に立って自殺をチラつかせて言うことを聞かせようとする。

その度に私達がどれほど疲弊したと思っているの?

あなたにとって自分を褒めそやす言葉以外は皆罵声なんでしょう。

私が知らないとでも?

『お姉様は婚約者と一緒に私をいじめてくるひどい人』。そうお友達の皆に言いふらしているのでしょう?

私はただ、将来連れ添う方がどれほど素晴らしい人か、あなたにわかって欲しかっただけなのにね。

そんな細やかな惚気話も、あなたにとっては罵詈雑言だったのね。

お父様やお母様からのお叱りの言葉だってそう。

いつか言ってたわね。

『お姉様は妹の私を踏み台にしてヒロインになりたがる悪女だ』って。

あれ、あなたの事じゃない。ブーメランって知っていて?

なんで私があなたがお友達に話した内緒話を知っているのか疑問なようね。

あなたが家を抜け出してお友達、という名の身体だけの繋がりの殿方と会っているのを私達が知らないとでも?

お父様の失望っぷりったら……お母様は気を失っていたわ。

王立学園に入学出来ずに家庭教師も拒み、夜中遊び歩いて、気に食わなければ自分の死をちらつかせて脅迫。

もう、疲れたの。私達は。

意思疎通が出来る家族が欲しかったの。

そしてその夢は叶ったわ。

本物のアンジュが現れたことによってね。

今まで育てたあなたにだって温情は与えたはずよ。

途中までは家族として育ったんだもの。

修道院の何が気に入らないの?

着飾ることが出来ないから? 殿方がいないのがそんなに嫌?

娯楽がなくたって死なないわよ。

もう、いいかしら。

私、家に戻りたいの。

アンジュがね。お菓子を焼いてくれたのよ。

チョコレートのパウンドケーキ。とっても楽しみだわ。

あなたは……なにか贈ってくれたことなんてなかったわよね。

本当に素晴らしいわ。まともな家族がいるって。

じゃあ、門番の方々。あとの事はよろしくお願いします。

さようなら。アンジュ。

私達家族は本物と幸せになるから、心配しないで
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みんなの感想(1件)

さごはちジュレ

全ての家族って、コレね

2025.07.07 毒島醜女

ありがとうございます。
親しき中にもなんとやらで、ありのままを愛せる人間なんて本当はいないんですよね…

解除

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