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第24話、戦闘、そして――。
しおりを挟む森の奥からゆっくりと出てきたのは間違いなくグレートウルフだ。涎をたらしながら獲物を見つめるかのように、アリシア達に視線を向けてくるが、しかし様子がおかしい気がする。
アリシア達は彼らにとって喰われる対象だ。しかし、その背後にいるのは魔獣が最も恐れる存在――『悪魔』が笑顔で宙に浮きながら立っている。
しかし、それでもグレートウルフ数匹は前に出る。恐れを知らないのか?
「あれぇ、珍しいな……僕を見ればきっと逃げると思ったんだけど……」
「……様子がおかしい」
「ええ、レンディス様。私もそう思いました……それに、見てください。グレートウルフたち、ケガをしております。足や腕の方に……まるで、何かの襲撃を受けたかのように」
「……レンディス、アリシア、ちょっと、まずいかもしれないよ、これ」
「え、どういう事ですかベリーフ?」
ふと、何かを考えるかのような顔をしながら、しかめっ面の表情を見せているベリーフに疑問を抱いていた時、一匹がアリシア達に向かって接近してきた。大きな口を開けて、弱いと認識したアリシアに向かっていく。
すぐさま視線を戻し、アリシアは短い詠唱をする。
「氷の矢よ!」
すぐさま魔術を作り、『氷の矢よ』を作り出す。氷の矢がそのままグレートウルフに向かい、突き刺さる。
一気に血が噴き出し、大きな口を開けたグレートウルフはその場に崩れ落ち、痛みを感じながらゆっくりと生命を終わらせる。
咄嗟の出来事だったので驚いたアリシアだったが、すぐさまレンディスがアリシアの前に出し、剣を構える。
「俺の後ろに」
「す、みません……レンディス様。詠唱を行いますのでそのまま前に出てください」
「了解しました」
仲間が絶命した事に一瞬怯んだ他のグレートウルフたちは戸惑いを見せる顔をした後、次にレンディスに目を向けて襲い掛かるが、レンディスにはアリシアがかけた防御魔法がある。
襲い掛かってきたグレートウルフを拳をぶん殴り、地面に押し倒した後持っていた長剣で心臓を突き刺す。
「がぁッ!?」
何が起きたのか理解できないグレートウルフは叫び声をあげてその場で絶命。他のグレートウルフたちも容赦なくレンディス達に襲い掛かってくる。一匹、二匹と襲い掛かる奴らに、レンディスは長剣で何度も斬りつけ、拳でぶん殴り、その二つの繰り返しだ。
「アリシア」
「な、んですかベリーフ!今詠唱中……」
突然名前を呼ばれたので集中させてほしいと思いながら文句を言おうとしたのだが、そのままアリシアの背後に周ったベリーフは彼女の身体を自分元へ引き寄せる。
「レンディスはどうでも良いけど、アリシアには死んでほしくないから手伝うね」
「え?何を……」
「闇よ、増幅せよ」
指先で魔力をためた瞬間、その魔力が散り、アリシアの体内の中に入る。明らかにこれは支援の魔術であり、術をあげるものだ。
何故このような術をかけたのかわからなかったアリシアだったが、ベリーフは笑う事なく、いつも見せる表情ではなかった。
「アリシアとレンディスは気づいていないかもしれないけど、『悪魔』ならわかる。近くに同族が居る」
「ッ!」
「森全体とはいかないけど、それぐらいの魔術をかけて」
「……わかりました。ありがとう」
「どーいたしまして」
真顔から笑顔へ、そのまま再度離れ、ベリーフは距離を取る。アリシアは持っていた杖を上にかがげ、ベリーフからもらった支援魔術と自分の魔術を練り直しながら、再度詠唱を唱えた。
「氷の雨よ!」
そこに出来上がったんは無数の先が尖った矢――矢はまるで雨のように降り注ぎ始め、たのだが、ここからアリシアが予想していなかったことが起きる。
増幅術をもらったのは良いのだが、予想より範囲が大きいに踏まえて、魔力量も彼女にとって半端ないモノだった。
「あ、れ……流石にこれは予想していない……」
「あー……あげすぎちゃった♡」
笑いながら答えるベリーフは絶対に確信犯ではないだろうかと思いながら、アリシアは涙目になりながら、その魔術を放つ事しか出来なかった。ある意味魔力暴走とも言えるだろう。
杖を振り下ろすと同時に、氷の、しかも攻撃性のあるものが降り注がれる。レンディスは攻撃をやめ、アリシアの方に向かう。
「アリシア様ッ!」
レンディスが降り注がれる氷の矢と同時に、その場から崩れ落ちそうになっている彼女に気づいたため、急いで手を伸ばし、彼女を支える。
アリシアも流石にまずいと認識しながら息を吐き、前を見る。
「か、べをつくら、ないと……」
「しかし……」
「ああ、それなら大丈夫だよ、アリシア、レンディス」
地面に膝をついたアリシアと、それを支えるレンディスの前に現れたベリーフは指先を鳴らした瞬間、三人を守るような壁が出来上がる。どうやら氷から守られるように作り出したらしい。
「悪魔の魔力を少し与えた人間が制御できないのはわかっていたし……でも、これならグレートウルフたちも、そして潜んでいた奴も、逃げる事は出来ない」
にやっと笑ったベリーフの姿は間違いなく、悪魔の顔だった。そして絶対に敵にまわしたくない相手だと改めて認識した。
次の瞬間、叫び声が響き渡る。人の声なのか、それとも獣の声なのか、アリシアにはわからない。彼女はそのままゆっくりと瞼を閉じ、崩れ落ちるように意識を失う。
「アリシア様!」
「……まぁ、気絶する程度に収まってよかった。流石、アリスの娘だなぁ」
小さく、そのように呟いているベリーフの言葉をアリシアは聞き取る事なく意識を手放した。
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