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最終話、求婚、受けても良いですか?妹が幸せになれば、の話ですけど
しおりを挟む「……今、何て言った?」
「だから、婚約したんです。ファルマ様と」
目を覚ました次の日、アリシアはこの世で一番大切な家族、妹であるカトリーヌから衝撃の言葉を聞いたのである。同僚であり、上司であり、ただいま王太子になってしまったファルマ・リーフガルトと婚約したと言う話を聞いた。しかも、一年前に、と言う事を聞いたアリシアは頭の中が真っ白になった。
同時にアリシアは急いで立ち上がろうとしたのだが、一年半歩いていなかったせいもあり、思うように動けない。
アリシアの目的はただ一つ。
「お、お姉様!?」
「ち、父上!どうして承諾したんですか!!そんなに私の妹を王妃にしたいんですかこの鬼畜!!」
「……お前にとって、第一王子は人柄も良いだろう。カトリーヌも幸せになると思って進めたのだが……まさか鬼畜と言われるとは思っていなかったな」
「い、今すぐ体力をつけなければいけないですね……まず殿下と連絡をとって、体力をつけて回復したら、そうですね……ぶん殴りましょう。天高く飛ばしてやる……」
「……想像通りになったな、カトリーヌ」
「……そうですわね、レンディス様」
足の力が入らないのか、アリシアは動けず、握りしめている拳も力がないのかうまく握れないである。第二王子、そしてその双子の兄弟すらぶん殴った経歴があると言うのに。
涙目になりながら震えているアリシアに静かに声をかけたのが、レンディスだった。
「アリシア、とりあえず殿下の事は置いといて……これからの事を考えなければならない」
「ううう、れ、レンディスも知っていたのですか!!どうして反対しなかったのですか!!?」
「……すまない、妹には勝てないのだ、アリシア」
「エリー……」
視線をそらして答えているレンディスの言葉を聞いて、アリシアは彼の妹でありエリザベートが笑いながらVサインをしている光景が浮かぶ。
きっと、エリザベートも加担してそのような結果になってしまったのであろう。妹であるカトリーヌもまんざらではない顔をしているので余計に腹立たしい。
最終的には泣き始めてしまったアリシアの背中を優しくさするようにしながら居るレンディスの姿があった。
泣き続けているアリシアの姿を見た後、カトリーヌと二人の父親はそのまま出ていき、残されたのはレンディスのみ。彼はいつものように椅子をベッドの近くまでもっていき、泣いているアリシアにハンカチを渡す。
「ほら、拭いて」
「ううう、妹が幸せにならないと……わたし、わたしはぁぁぁあ……」
「分かっている、因みにカトリーヌの結婚は一年後だ」
「……その一年で何とか亡き者に出来ないだろうか?」
「余計に泣くぞ、カトリーヌがな……それじゃあ幸せになれないだろう?」
「分かっている!分かっているんですけどぉ!!」
どうしても納得が出来ない自分がいるらしく、アリシアは涙目になって答えている。
見る限り、カトリーヌが幸せそうな顔をしているのはわかるのだが、それでもどうしてファルマなのか、どうして王太子なのか、と言う言葉なのであろう。
「……王妃になったら、中々会えなくなるから、って言うのもあるんだろう、アリシア?」
「……会えないのは、辛いです」
妹が幸せになればいい、そのように思っているのだが、それでもアリシアは毎日一緒に居た妹が遠くに行ってしまうと言うのに耐えられないらしい。レンディスはそんなアリシアにどのような声を掛けたら良いのかわからないでいた。
数分ほど泣き続けた後、アリシアは濡らしたハンカチで涙を拭きながら、レンディスに視線を向ける。
「……私が眠っていたのは一年半ぐらい、なんですよね」
「ああ」
「……レンディス、私の事、待っていたのですか?」
「ああ」
「……う、浮気は、していないんですよね?」
「……当たり前だろう」
恥ずかしそうに答えるアリシアに対し、レンディスも少しだけ頬を赤く染めながら答える。そしてその言葉を言った瞬間、お互い頬を赤く染めながら、沈黙している。
顔を合わせるのが恥ずかしくなってしまったアリシアだったが、唇を少しだけ噛みしめた後、レンディスに顔を向ける。
「あ、の……レンディス……その、求婚の件なのですが、引き受けるとお話、しました、よね」
「ああ、した、な……」
「その、えっと……改めまして、なんですけど……」
顔を真っ赤にしたアリシアは、ベッドの上でそのまま体制を治し、ゆっくりと正座をした状態になった後、深々と頭を下げて、レンディスに向けて言葉を放った。
「アリシア・カトレンヌ……不束者ですけど、どうぞよろしくお願いいたします」
アリシアは想像していなかった。
いつも妹の事ばかり優先していたからこそ、このような存在が出来るとは思っていなかった。しかも、数年一緒に、傍に居てくれた戦友であり、友人だと思っていた人こそ、自分に恋愛感情を抱いていたなんて。
あの時、自分に求婚してきたレンディスの姿を思い出す。
必死に言ってきた彼の姿は、何処か初々しくて、そして初めて見た顔だった。
アリシアの言葉を聞いたレンディスは、ゆっくりと彼女に手を伸ばし、両手を握りしめる。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします、アリシア」
「……あ、でも……」
「でも?」
「その、結婚するのは、妹がちゃんと幸せになってから、の話なんですが、だ、大丈夫ですかね?」
慌てるように答えたアリシアの姿に、レンディスは頷いた。
「もちろん……ちゃんとカトリーヌが幸せになったのを見届けてから、結婚いたしましょう」
「……怒られないですかね、レンディスのご家族に……妹のエリーとか……」
「エリザベートなら多分、わかっているから大丈夫だし、両親も、兄も、放任主義なのでわかってくれる」
「……なんか、本当にすみません」
「いいえ」
レンディスはわかっていた。彼女はきっと、そのように発言すると。
アリシアはいつも、自分よりも、他人よりも、妹の事を優先する女性だった。家族を大切にしてくれるのだと、レンディスはそんな彼女の性格も含めて、好きになったのである。
「俺はあなたの大事にする気持ちが好きだから、申し込んだんだ、アリシア」
「っ!!!」
いつもなら無表情のレンディスが正反対の笑顔を見せてきたので、アリシアは思わず目を見開き、驚いてしまった。
そして、これからこのようなレンディスに慣れないといけないのだと理解するのである。
「……とりあえず体力をつけて、ファルマ殿下を殴りに行きますか」
「お手柔らかにお願いします、と言ってたよ、殿下」
「容赦しない」
二人はそのように会話をしながら、ゆっくりと一日、のんびりと過ごすのだった。
当然、アリシアが動けるようになった次の日、彼女は容赦なくファルマ・リーフガルトをぶん殴る光景を、王宮内で見るのだった。
それから一年後、アリシアの妹であるカトリーヌ・カトレンヌは結婚をし、王妃となり、二年後には二人の子供を授かった。
王宮魔術師であるアリシアはカトリーヌの幸せな姿を見守った次の年、遅れながら婚約者であるレンディスと結婚し、女の子を授かった。
アリシアはこれから、自分の幸せを考えるようになるのだった。
END
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