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増える『穴』増える不安
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グレン様が出征されて十日。
──寂しい。
出征前日、グレン様のお屋敷にお泊まり。
二人で色々話した。
私の口からブレスの話もした。
グレン様、驚きはしたけれど別に
嫌らわれなかった。
『お前が何者であっても、俺が何者であっ
ても、二人で寄り添って生きていきたい』
そう、言ったはずだと笑われた。
プロポーズの言葉は身分の事じゃなかった。
グレン様は、私達が人外な生き物だという
可能性を分かっていて求婚してくれた。
……よかった。グレン様に嫌われる。
そう、本当に意味なく怖がっていたのが
馬鹿みたい。
ただ、『俺とキスする時は吐くなよ?』と
言って沢山キスされた。
……思い出して赤面する。
あと、『ブレスを吐いたのか。そんな話を
聞いた後なら隠しても仕方ない。オーウェン
の奴、仕様がないな』
そう、言ってあの四阿で私が気を失った後の
意識のない間の出来事を話してくれた。
──お互いの胸の鱗を交換して食べた。
何それ?
しかも、私はまた髪が黒く変化していた
らしい。
私は黒竜の血を飲んでいる。
だから、私に鱗が生えるのはまだ分かる。
でも、グレン様にも鱗が生えたなんて。
……なんで?姫様は王家には竜の血が流れて
いると言っていた。
それも白竜が祖かもしれない。
自分達の祖を封印して、使役する?
相変わらず分からない事だらけだ。
……黒竜、どこにいるんだろう。
グレン様にも黒竜の話をした。
グレン様も黒竜から話が聞きたいと行方の
心当たりがないか尋ねられた。
心当たり……ないなぁ。
私って役立たず。
ふう、と私はため息を一つ付いた。
本宮からの書類や資料。手紙の束。
それらを抱えて歩く。
結構重い。身体強化を地味に使っている。
そういえば、グレン様のお屋敷から戻った
時にグレン様から姫様宛の手紙を預かった。
あれ、何が書いてあったんだろ?
読んだ姫様達が大笑いしてた。
『ぷは!アニエス、あなた新品のまま一旦、
返品ですって!そのうち再納入を望む。
やだ、グレン。意外と真面目だったのね。
あ~面白い!あははは!!』
『もう姫様。グレン様の出陣前に何を
しているんですか。……まあ。面白いです
けどね。……ぷぷぷ。再納入ってふふふっ!
再納入、再納入、再納入。うける!』
『もうアイリスさん。再納入連発しないで!
お腹が痛い。あはははは!』
姫様、アイリスさん、アルマさん。
一体何が面白いのでしょうか?
……未だに分からない。
うん。解せん。
なんて考え事をしながら、女神像の庭まで
戻ってきた。
「え?ウソ……」
女神像の庭に『穴』が三つ。
新しく出現していた。
本宮に行く前にはなかった。
ウソでしょ。
──私はもと来た道を戻り本宮へと駆けた。
「それで今ここに『穴』があるんですね?」
濃紺から黒の騎士服に代わり、真新しい
階級章をつけたチャコールグレーの髪の
マクドネル卿と一緒に女神像の庭にいる。
グレン様の後を継ぎ第一騎士団団長に
就任された。
お供はうちの二番目の熊兄。
マリック兄さん。
マリック兄さん。仕事中だから私を見て
満面の笑顔になるのはやめなさい。
緊急事態だから!
新しい『穴』の周りに規制線を張る。
本宮に繋がる外回廊には、現在、八個の
大きな『穴』があってとても人が通れる
状態ではない。
もし女神像の庭にも『穴』が増え続けたら……。
今、外界との窓口は外回廊か女神像の庭の
二ヶ所しかない。
このままでは、王女宮は外界から完全に
切り離される。
手紙や、書類などはまだいい。
一番まずいのは、生活物資が入って来なく
なる事。
食料が入って来なくなったら?
──餓死。
最悪の想定をして動かなければ。
今すぐ王女宮の備蓄を増やさなければ。
「マクドネル卿、今すぐ籠城に備えての
備蓄を!緊急です。なるべく多くの物資を
揃えて下さい。
王女宮には私が運び入れます」
「分かりました。すぐに手配します」
「私は一度、宮に戻ります。よろしくお願い
します」
──大変な事になった。
姫様に報告しなければ。
「………そう、それは不味いわね。
あなた達。もう、宮から離れなさい。
完全にここが外界から切り離される前に」
姫様がとんでもない事を言い始める。
宮から離れる?
姫様を見捨てろって事?
主は何を言い始めたの!
「怒りますよ姫様。私は絶対にお側を離れ
ませんからね!ふざけないで下さい!!」
ほら、アイリスさんが怒った。
そりゃ怒るよ。
「それには従えません。私もお側を
離れませんよ?姫様……ひどいです」
ほら、アルマさんが悲しそう。
そりゃ悲しいよ。
うん。悲しい。私達が姫様のお側を離れる
わけないでしょう?
「私は一人でも平気よ?十二年前みたいに
一人では何も出来ない王女じゃないわ。
もう、身のまわりの事も料理も自分で
出来るようになったでしょう?」
……いつも、男装の姫様。身のまわりの事は
すべてご自分でされてきた。
ケーキを焼いたり、料理をしたり。
髪結いが上手なのも……。
最初から一人になる事を想定していたんだ。
「そういう事ではないですよ?私達は……
姫様が大好きです。一人になんて出来る訳
ないでしょう?泣きますよ私」
ぼろぼろと言いながら涙が溢れる。
ひどいよ姫様。
ほら、涙が止まらない。
「……ごめんね。アニエス、泣かないで?
またリスからウサギになっちゃう。
ごめんねみんな。巻き添え食わせてしまう」
「もう、まだ完全に外との窓口が断たれた
訳じゃないんです。今からこんなに気弱で
どうします。ほらチャキチャキ働きますよ」
アイリスさんが腰に手を当てキッパリ言う。
そう、今から気弱でどうするの。
「そうですよ。とりあえず備蓄の準備で
大忙しです。姫様も働いて下さいよ!」
アルマさんも気持ちを切り替えた。
そう、大忙しです。
チャキチャキ働かないと。
「私、物資が届いたか見てきますね」
手でゴシゴシ目を擦り走り出す。
「も~!ゴシゴシしたら、また腫れるわよ」
後ろで姫様が叫んでるけど
知らない。もう、擦っちゃったもん。
──マクドネル卿はすぐに物資の手配を
してくれた。
アルフォンス様も来て皆で籠城の準備に
取りかかる。
「生鮮食品は空間魔法で収納すれば結構
保ちますよね?」
「「「「え?」」」」
あれ?姫様、アイリスさん、アルマさん
アルフォンス様の驚き声がハモる。
「え?アニエス、王女宮の中で空間魔法を
使える?まさかね……」
アルフォンス様が恐る恐るといった風情で
聞いてくる。
「え?使えますけど?ほら」
私は自分用に取っておいたプチ・エトワール
の本店オリジナルレシピのチョコレートを
空間収納から取り出す。
だって日持しないんだもん。このチョコ。
「ウソだろ。俺はもうアニエスの魔法に
関して驚く事をやめるわ。あのさ、
何のために毎日、生鮮食品を本宮から差し
入れていると思うの?」
「え?単なる御用聞きのついでじゃないん
ですか?ほら、定時連絡のついでに」
本宮から王女宮への連絡手段はない。
だから私達が毎日定時刻に本宮と連絡を
取り合っているのだ。
え?手ぶらじゃ寂しいから差し入れて
くれてるのだと思っていた。
「王女宮では空間魔法が使えない。生鮮食品
は、アイリスの氷結魔法で保存している。
それでもそんなにもたない。
だから、毎日差し入れているんだよ。
まさか、こんな初歩的な事を教える羽目に
なるなんて……。空間魔法が使えるなら
半永久的に保存が可能だろ……。
どのくらいの規模で展開できるのかな?」
「う~ん。本来使えないなら王女宮でどの
くらいの規模で使えるか分からないです」
「……それもそうか。じゃあ試しに今日の
分の食料を収納してみてくれる?」
うん。そのくらい簡単、簡単。
ぱぱっと収納する。
「生鮮食品、もっと都合つけてもらうか」
「予想外の事、簡単にするわよね。この子。
案外転移魔法も使えたりして……」
アイリスさん、さすがにそれは無理。
だって、転移魔法は王女宮どころか国中で
使えないって……あれ?私、転移魔法、
外では使える。
転移魔法。ん?試した事がないけれど、
王女宮でもひょっとしたらいける?
よし、いい機会だ。
試してみよう!
「お、アニエス!果物を貰ってきて
やったぞ。沢山あるから余ったらジャムに
するといい」
……目の前にマリック兄さんが山盛りの果物
を木箱に入れて抱えて立っている。
熊がニコニコ笑いながら果物を抱えている。
なんか安心するなぁ。
あ、女神像の庭に隣接する本宮の庭だ。
短い距離だけど、
なんだ。転移魔法使えるわ。
「ありがとう。それ、くれるの?」
「ああ、日持しないから駄目って言われた
けど。お前、果物好きだろう。だから貰って
きた。持てるか?結構重いぞ」
「平気!身体強化使うから。ありがとう
マリック兄さん。大好き!」
「ははは!いつでも貰って来るからな。
欲しかったら、言えよ?」
「うん。ありがとう」
私達のやり取りをマクドネル卿が口を
ポカンと開けて見ている。
あ、そうだ。
「マクドネル卿。アルフォンス様が生鮮
食品をもう少し都合つけて欲しいそうです」
「承りました。ところでアニエス嬢……。
一体どこから現れました?私の目には
転移してきたように見えましたが。
マリック?何で驚かないのでしょうか」
「王女宮から転移して来ました。兄さん、
王都じゃ転移魔法は使えないんだって」
「そうなのか?不便だな。辺境じゃ結構、
短い距離だけど転移魔法を使える
奴はいるよな。まあ、俺は使えないけど」
「便利なのにね。じゃ、私戻ります。
バイバイ兄さん。またね。マクドネル卿、
ごきげんよう」
「辺境に常識はないのか……」
転移前にマクドネル卿の呟きが聞こえた。
失礼な。辺境にだって常識はあります。
ただ、王都と少し違うんです。
私は果物を入れた木箱を抱えて王女宮
に戻った。
「……アニエス、目立つから転移魔法は
禁止な?どこで何に目を付けられるか
分からないから」
アルフォンス様に転移魔法は禁止された。
便利なのにね?
でも、目立つのは確かに不味い。
仕方ない。
私は植物魔法に引き続き
転移魔法も封印した。
──寂しい。
出征前日、グレン様のお屋敷にお泊まり。
二人で色々話した。
私の口からブレスの話もした。
グレン様、驚きはしたけれど別に
嫌らわれなかった。
『お前が何者であっても、俺が何者であっ
ても、二人で寄り添って生きていきたい』
そう、言ったはずだと笑われた。
プロポーズの言葉は身分の事じゃなかった。
グレン様は、私達が人外な生き物だという
可能性を分かっていて求婚してくれた。
……よかった。グレン様に嫌われる。
そう、本当に意味なく怖がっていたのが
馬鹿みたい。
ただ、『俺とキスする時は吐くなよ?』と
言って沢山キスされた。
……思い出して赤面する。
あと、『ブレスを吐いたのか。そんな話を
聞いた後なら隠しても仕方ない。オーウェン
の奴、仕様がないな』
そう、言ってあの四阿で私が気を失った後の
意識のない間の出来事を話してくれた。
──お互いの胸の鱗を交換して食べた。
何それ?
しかも、私はまた髪が黒く変化していた
らしい。
私は黒竜の血を飲んでいる。
だから、私に鱗が生えるのはまだ分かる。
でも、グレン様にも鱗が生えたなんて。
……なんで?姫様は王家には竜の血が流れて
いると言っていた。
それも白竜が祖かもしれない。
自分達の祖を封印して、使役する?
相変わらず分からない事だらけだ。
……黒竜、どこにいるんだろう。
グレン様にも黒竜の話をした。
グレン様も黒竜から話が聞きたいと行方の
心当たりがないか尋ねられた。
心当たり……ないなぁ。
私って役立たず。
ふう、と私はため息を一つ付いた。
本宮からの書類や資料。手紙の束。
それらを抱えて歩く。
結構重い。身体強化を地味に使っている。
そういえば、グレン様のお屋敷から戻った
時にグレン様から姫様宛の手紙を預かった。
あれ、何が書いてあったんだろ?
読んだ姫様達が大笑いしてた。
『ぷは!アニエス、あなた新品のまま一旦、
返品ですって!そのうち再納入を望む。
やだ、グレン。意外と真面目だったのね。
あ~面白い!あははは!!』
『もう姫様。グレン様の出陣前に何を
しているんですか。……まあ。面白いです
けどね。……ぷぷぷ。再納入ってふふふっ!
再納入、再納入、再納入。うける!』
『もうアイリスさん。再納入連発しないで!
お腹が痛い。あはははは!』
姫様、アイリスさん、アルマさん。
一体何が面白いのでしょうか?
……未だに分からない。
うん。解せん。
なんて考え事をしながら、女神像の庭まで
戻ってきた。
「え?ウソ……」
女神像の庭に『穴』が三つ。
新しく出現していた。
本宮に行く前にはなかった。
ウソでしょ。
──私はもと来た道を戻り本宮へと駆けた。
「それで今ここに『穴』があるんですね?」
濃紺から黒の騎士服に代わり、真新しい
階級章をつけたチャコールグレーの髪の
マクドネル卿と一緒に女神像の庭にいる。
グレン様の後を継ぎ第一騎士団団長に
就任された。
お供はうちの二番目の熊兄。
マリック兄さん。
マリック兄さん。仕事中だから私を見て
満面の笑顔になるのはやめなさい。
緊急事態だから!
新しい『穴』の周りに規制線を張る。
本宮に繋がる外回廊には、現在、八個の
大きな『穴』があってとても人が通れる
状態ではない。
もし女神像の庭にも『穴』が増え続けたら……。
今、外界との窓口は外回廊か女神像の庭の
二ヶ所しかない。
このままでは、王女宮は外界から完全に
切り離される。
手紙や、書類などはまだいい。
一番まずいのは、生活物資が入って来なく
なる事。
食料が入って来なくなったら?
──餓死。
最悪の想定をして動かなければ。
今すぐ王女宮の備蓄を増やさなければ。
「マクドネル卿、今すぐ籠城に備えての
備蓄を!緊急です。なるべく多くの物資を
揃えて下さい。
王女宮には私が運び入れます」
「分かりました。すぐに手配します」
「私は一度、宮に戻ります。よろしくお願い
します」
──大変な事になった。
姫様に報告しなければ。
「………そう、それは不味いわね。
あなた達。もう、宮から離れなさい。
完全にここが外界から切り離される前に」
姫様がとんでもない事を言い始める。
宮から離れる?
姫様を見捨てろって事?
主は何を言い始めたの!
「怒りますよ姫様。私は絶対にお側を離れ
ませんからね!ふざけないで下さい!!」
ほら、アイリスさんが怒った。
そりゃ怒るよ。
「それには従えません。私もお側を
離れませんよ?姫様……ひどいです」
ほら、アルマさんが悲しそう。
そりゃ悲しいよ。
うん。悲しい。私達が姫様のお側を離れる
わけないでしょう?
「私は一人でも平気よ?十二年前みたいに
一人では何も出来ない王女じゃないわ。
もう、身のまわりの事も料理も自分で
出来るようになったでしょう?」
……いつも、男装の姫様。身のまわりの事は
すべてご自分でされてきた。
ケーキを焼いたり、料理をしたり。
髪結いが上手なのも……。
最初から一人になる事を想定していたんだ。
「そういう事ではないですよ?私達は……
姫様が大好きです。一人になんて出来る訳
ないでしょう?泣きますよ私」
ぼろぼろと言いながら涙が溢れる。
ひどいよ姫様。
ほら、涙が止まらない。
「……ごめんね。アニエス、泣かないで?
またリスからウサギになっちゃう。
ごめんねみんな。巻き添え食わせてしまう」
「もう、まだ完全に外との窓口が断たれた
訳じゃないんです。今からこんなに気弱で
どうします。ほらチャキチャキ働きますよ」
アイリスさんが腰に手を当てキッパリ言う。
そう、今から気弱でどうするの。
「そうですよ。とりあえず備蓄の準備で
大忙しです。姫様も働いて下さいよ!」
アルマさんも気持ちを切り替えた。
そう、大忙しです。
チャキチャキ働かないと。
「私、物資が届いたか見てきますね」
手でゴシゴシ目を擦り走り出す。
「も~!ゴシゴシしたら、また腫れるわよ」
後ろで姫様が叫んでるけど
知らない。もう、擦っちゃったもん。
──マクドネル卿はすぐに物資の手配を
してくれた。
アルフォンス様も来て皆で籠城の準備に
取りかかる。
「生鮮食品は空間魔法で収納すれば結構
保ちますよね?」
「「「「え?」」」」
あれ?姫様、アイリスさん、アルマさん
アルフォンス様の驚き声がハモる。
「え?アニエス、王女宮の中で空間魔法を
使える?まさかね……」
アルフォンス様が恐る恐るといった風情で
聞いてくる。
「え?使えますけど?ほら」
私は自分用に取っておいたプチ・エトワール
の本店オリジナルレシピのチョコレートを
空間収納から取り出す。
だって日持しないんだもん。このチョコ。
「ウソだろ。俺はもうアニエスの魔法に
関して驚く事をやめるわ。あのさ、
何のために毎日、生鮮食品を本宮から差し
入れていると思うの?」
「え?単なる御用聞きのついでじゃないん
ですか?ほら、定時連絡のついでに」
本宮から王女宮への連絡手段はない。
だから私達が毎日定時刻に本宮と連絡を
取り合っているのだ。
え?手ぶらじゃ寂しいから差し入れて
くれてるのだと思っていた。
「王女宮では空間魔法が使えない。生鮮食品
は、アイリスの氷結魔法で保存している。
それでもそんなにもたない。
だから、毎日差し入れているんだよ。
まさか、こんな初歩的な事を教える羽目に
なるなんて……。空間魔法が使えるなら
半永久的に保存が可能だろ……。
どのくらいの規模で展開できるのかな?」
「う~ん。本来使えないなら王女宮でどの
くらいの規模で使えるか分からないです」
「……それもそうか。じゃあ試しに今日の
分の食料を収納してみてくれる?」
うん。そのくらい簡単、簡単。
ぱぱっと収納する。
「生鮮食品、もっと都合つけてもらうか」
「予想外の事、簡単にするわよね。この子。
案外転移魔法も使えたりして……」
アイリスさん、さすがにそれは無理。
だって、転移魔法は王女宮どころか国中で
使えないって……あれ?私、転移魔法、
外では使える。
転移魔法。ん?試した事がないけれど、
王女宮でもひょっとしたらいける?
よし、いい機会だ。
試してみよう!
「お、アニエス!果物を貰ってきて
やったぞ。沢山あるから余ったらジャムに
するといい」
……目の前にマリック兄さんが山盛りの果物
を木箱に入れて抱えて立っている。
熊がニコニコ笑いながら果物を抱えている。
なんか安心するなぁ。
あ、女神像の庭に隣接する本宮の庭だ。
短い距離だけど、
なんだ。転移魔法使えるわ。
「ありがとう。それ、くれるの?」
「ああ、日持しないから駄目って言われた
けど。お前、果物好きだろう。だから貰って
きた。持てるか?結構重いぞ」
「平気!身体強化使うから。ありがとう
マリック兄さん。大好き!」
「ははは!いつでも貰って来るからな。
欲しかったら、言えよ?」
「うん。ありがとう」
私達のやり取りをマクドネル卿が口を
ポカンと開けて見ている。
あ、そうだ。
「マクドネル卿。アルフォンス様が生鮮
食品をもう少し都合つけて欲しいそうです」
「承りました。ところでアニエス嬢……。
一体どこから現れました?私の目には
転移してきたように見えましたが。
マリック?何で驚かないのでしょうか」
「王女宮から転移して来ました。兄さん、
王都じゃ転移魔法は使えないんだって」
「そうなのか?不便だな。辺境じゃ結構、
短い距離だけど転移魔法を使える
奴はいるよな。まあ、俺は使えないけど」
「便利なのにね。じゃ、私戻ります。
バイバイ兄さん。またね。マクドネル卿、
ごきげんよう」
「辺境に常識はないのか……」
転移前にマクドネル卿の呟きが聞こえた。
失礼な。辺境にだって常識はあります。
ただ、王都と少し違うんです。
私は果物を入れた木箱を抱えて王女宮
に戻った。
「……アニエス、目立つから転移魔法は
禁止な?どこで何に目を付けられるか
分からないから」
アルフォンス様に転移魔法は禁止された。
便利なのにね?
でも、目立つのは確かに不味い。
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私は植物魔法に引き続き
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それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
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