88 / 135
ロイシュタール、出陣
しおりを挟む
「せっかくまた会えたのに、もう会え
なくなるような事になったら許さない
からね?ロイシュタール」
エリザベートの不安そうな顔。
抱き寄せて口付ける。
そんな事にならないように努力はするよ。
「ロイ、ご武運を。無事でのお戻りを
心からお待ちしています」
もう一度口付け、エリザベートの隣にいる
アーサー、アルマに視線を向ける。
アーサーにアルマも頷く。
この二人がいればエリザベートは大丈夫だ。
「では行って来る。これより王女宮は青竜の
結界で閉ざされる。
また不便をかけてごめんな。エリザ」
「もう、閉じ込められるのは慣れっこよ。
今度もちゃんと迎えに来てね。いつまでも
待っているから。ロイ、愛しているわ」
「うん。俺も愛してる」
またしっかりと抱きしめて口付けた。
ああ、またしばらくエリザベートを抱き
しめられなくなるのか。
離したくないなぁ。
「あ~~長い!いつまでやってるんだ!
イチャイチャ、うざいんだよ!」
せっかくエリザベートとの別れを
惜しんでいたのに青竜がしびれを切らして
声を上げる。ちっ、無粋な奴だ。
「うるさいわね?青蜥蜴。油をかけて
焼くわよ!私達、また離れ離れなのよ?
別れぐらい惜しませなさいよ」
エリザベートが青竜に怒る。
怒った顔も可愛い。
「はっ!気の強いお姫様だな!まったく
ロイシュタール、このお姫様のどこが
いいんだ?」
青竜とエリザベートは犬猿の仲だ。
嫌そうに言う青竜に笑う。
「全部!何もかもだ。こんなに可愛い
お姫様はどこにもいないさ」
「ロイ!大好き」
満面の笑顔のエリザベートをもう一度
抱きしめた。笑顔が一番可愛いよ。
後ろで青竜がため息をついた。
青竜に促され、王女宮をあとにした。
青竜は王女宮の周りに青い結界を張る。
「よし、これで赤竜にも手出しはできない
はずだ。さっさと帝国へ行くぞ」
「助かる。エリザベートの事だけが
心配だったから……感謝するよ」
帝国でアルフォンスが反乱を起こした。
手筈通り、キルバンは帝国の背後から
奇襲をかける。
俺も出陣だ。今度こそ帝国の息の根を
止めてやる。
青竜は俺と同行するが、王女宮に結界を
張って守ってくれるというので、
任せる事にした。これで帝国やオズワルド、
赤竜でもエリザベートに手を出せない。
留守中の不安がないのは、ありがたい事だ。
今回の奇襲攻撃にあたり長く封鎖してきた
帝国へと繋がる街道を使う。
俺が国王となってから帝国との国交は断絶。
人や物の往来を禁じ、街道を封鎖してきた。
キルバンも帝国も互いに結界を張り
守りの兵を常に駐在させて睨み合ってきた。
アルフォンスは帝国内の魔法師団を次々と
洗脳し手中に収めた。魔法師団を使い、
街道の結界をこのタイミングで解除した。
俺は軍勢を率い、国境に駐留する帝国の
一師団を蹴散らし、一気に国境を突破。
帝国へと進行した。
アルフォンスが率いる反乱軍と帝国軍の
戦闘は激しい市街戦に突入していた。
そこにキルバンが新たに奇襲をかける。
帝国軍は大混乱、敗走に次ぐ敗走を重ねた。
さらに海からは海洋国家カナンの軍勢が
港に船を接舷し上陸。
キルバン、カナンの連合軍が雪崩れ込み
帝国の首都を制圧した。
……手応えがなさ過ぎる。
赤竜も、オズワルドも帝国の精鋭部隊すら
まだ姿を現さない。
白亜宮での籠城か?
あの単細胞のオズワルドがか?
嫌な予感がする。罠か?
罠ならまだいい。問題は……。
「キルバン王!おい、簡単過ぎないか。
これは罠かもしれん」
馬に騎乗した金髪碧眼のガタイのいい男
から声をかけられる。
カナン国の王弟、バルドだ。
カナン国軍の指揮官。
アルトリア王妃マチルダの次兄。
立派な体格、筋肉隆々。甲冑を身につけた
いかにも戦士という風貌。
おまけに精悍な顔には大きな傷。
いつ見ても格好いい。
男らしいなぁ。羨ましい。
俺は三十路になると言うのに下手すると
女に間違われる事が未だにある。
ちょっとしたコンプレックスだ。
「バルド、とりあえず白亜宮に行こう。
罠にしろ何にしろ、手がかりがあるはずだ。
それにアルフォンスとも合流したい」
「そうだな。早くオズワルドの所在を
確認しないとな。奴は赤竜の道でいつでも
帝都を脱出できるんだよな?」
バルドが俺の隣に控える青竜に尋ねる。
「ああ。肝心赤竜の気配がない。
もう帝都にはいない可能性が高いな。
問題はどっちに行ったかだな」
青竜が渋い顔で言う。
オズワルドは赤竜を使い
アルトリア、もしくはキルバンに攻撃に
出る可能性がある。
キルバンならエリザベートが危ない。
アルトリアならマチルダが危ない。
俺もバルドも右手に嵌めた指輪を見る。
白い石の嵌め込まれた指輪。
アルトリア王都が襲われたら赤。
北辺境なら黒。
キルバンなら青。
カナンなら緑。
襲われた場所からの連絡で石の色が変わる。
今のところ何の変化もない。
俺達は皇帝の居城である白亜宮を目指した。
すでに白亜宮は反乱軍が制圧した後だ。
反乱軍の兵士にアルフォンスへ取り次いで
もらう。
アルフォンスは白亜宮の敷地にある
神殿にいた。
アイリスが俺達に気付き頭を下げる。
無事にアルフォンスと合流できて何よりだ。
マックスも……あれ?殺気があるのは
気のせいか?
はは!アニエス嬢を殺しかけた件で怒こら
せてしまったようだ。
絶対に隙をみて俺と青竜を殺そうと
思っているだろう。顔に出ている。
まだまだだねぇ。若い若い。
──なるほどね。
グレンの相手に恋かぁ。
不毛な奴だなぁ。不憫だ。
カーマインはバルドを見て、戦いたくて
ウズウズしている。
バルドとは初対面だからか。
はは!バルドは強そうだもんな?
ま、戦闘馬鹿は放っておこう。
「ロイシュタール、バルド!
オズワルドがいない。赤竜もだ。
大きな『穴』がある。これを使ったのかも」
アルフォンスが無念そうな顔でいう。
帝都を制圧しても肝心のオズワルドと
赤竜がいないなんて。
「アルフォンスはこのまま帝国を完全に
掌握しろ。オズワルドの奴、本当に国の事
はどうでもいいんだな。
簡単に帝都を捨てやがって。
皇帝が国を捨てたと布令を出せ」
「すでに出したよ。この国はぼろぼろだ。
魔物を使っていたのは、単純に戦力が
足りないからだった。
オズワルドが皇帝位を簒奪した時に
先皇帝を守ろうとした臣下は皆殺し。
あのクーデターの時にまともな奴ほど
死んだんだ。ここ数年のアルトリア、
キルバン、カナンからの経済制裁で経済も
ぼろぼろ。
東の小国を侵略して搾取した富で帝都だけが
栄えるハリボテ国家。
もう、この国は死んでいる。
情けなさ過ぎて涙もでないよ」
自分の祖国がこの惨状。
アルフォンスは優しいから
大分堪えたらしい。
俺なら自分を奴隷に落とした国が滅びたら
大笑いするけどね?
アルフォンスは出会った時から優しい子
だった。変わらずにいてくれてうれしいよ。
落ち込むアルフォンスに寄り添うアイリス。
アイリスがいてくれて良かったな。
寄り添う二人をほのぼのと眺めていると
指輪が光った。
──赤!アルトリア王都。
オズワルドは王女宮が、エリザベートが
キルバンに移った事に気がついていないと
いう事だな。
「アルトリアの王都!マチルダと甥っ子が
危ない」
バルドが叫ぶ。想定していたとはいえ
肝が冷える。アルトリアは……守りたい。
俺の心の故郷だ。
「青竜、頼む」
「手筈通りだな。送るのは何人だ?」
「アルフォンスとアイリスは残れ。俺と
バルド、カーマイン、マックスの四人だ」
アルフォンスには帝国で事態の収集に努めて
もらわなければならない。
「よし、四人とも手を出せ」
青竜に促され四人とも手を出す。
手のひらに青い髪と黒い髪を乗せられる。
青竜が指で触れると手のひらが光り
黒い文字のようなものが刻まれた。
「何本か道を乗り継ぐ。とりあえず一本目は
帝都の路地裏だ。そんなに遠くない急ぐぞ」
青竜の言葉にカーマインが反応する。
「ぱあっと、いっぺんに送れないのか?
竜も意外と無能だな!残念だな」
残念なのはお前の頭だ。
なんでこいつはこんなに協調性がないんだ。
こいつを副官にしているグレンの忍耐力を
褒め称えたい。
「悪かったな!無能で!つべこべ言わず
さっさと動け!」
青竜に促され、アルフォンスに後を頼み、
俺達は青竜の道までやって来た。
「おっ!『穴』だ。これに落ちるのか?
親分が落ちると気絶すると言ってたな。
わくわくするぜ!俺は絶対に気絶しない
からな」
カーマインが言う。
親分?誰の事だ。
「ああ確かにアニエス、何度落ちても気絶
すると嘆いていたね。どんな感じなのかな」
マックスだ。アニエス嬢の事を語る時は
柔らかい表情だ。
へえ。親分ってアニエス嬢の事か。
……グレンに溺愛され、マックスに片恋され
カーマインに親分と呼ばれる女。
すごい子だよね。アニエス嬢。
本人は何も考えてない系の天然女子なのに。
青竜と黒竜の道を乗り継ぎ、アルトリアの
王宮に出た。懐かしい。女神像の庭だ!
「ははは!なんだ大した事ないじゃん。
誰も気絶なんかしないぞ。よし、親分に
自慢してやろう」
カーマイン……アニエス嬢は女の子だから。
結構な圧力がかかってたでしょうに。
俺は道に慣れているから平気だけれど
こいつらは規格外だからなぁ。
カーマインに呆れているとバルドが息を
飲んだのが分かる。
「赤竜だ!」
バルドの声に彼の視線の先を見た。
王宮から少し離れた上空に
ブレスを吐く赤竜の姿が見える。
おそらく王都の中心部だ。
あんな人の多い場所でブレスを!
「アカ……」
青竜が切ない顔で呟く。
いつも飄々としている青竜の
見た事のない顔。寂しげで痛々しい。
俺はしばらく青竜から目が離せなかった。
なくなるような事になったら許さない
からね?ロイシュタール」
エリザベートの不安そうな顔。
抱き寄せて口付ける。
そんな事にならないように努力はするよ。
「ロイ、ご武運を。無事でのお戻りを
心からお待ちしています」
もう一度口付け、エリザベートの隣にいる
アーサー、アルマに視線を向ける。
アーサーにアルマも頷く。
この二人がいればエリザベートは大丈夫だ。
「では行って来る。これより王女宮は青竜の
結界で閉ざされる。
また不便をかけてごめんな。エリザ」
「もう、閉じ込められるのは慣れっこよ。
今度もちゃんと迎えに来てね。いつまでも
待っているから。ロイ、愛しているわ」
「うん。俺も愛してる」
またしっかりと抱きしめて口付けた。
ああ、またしばらくエリザベートを抱き
しめられなくなるのか。
離したくないなぁ。
「あ~~長い!いつまでやってるんだ!
イチャイチャ、うざいんだよ!」
せっかくエリザベートとの別れを
惜しんでいたのに青竜がしびれを切らして
声を上げる。ちっ、無粋な奴だ。
「うるさいわね?青蜥蜴。油をかけて
焼くわよ!私達、また離れ離れなのよ?
別れぐらい惜しませなさいよ」
エリザベートが青竜に怒る。
怒った顔も可愛い。
「はっ!気の強いお姫様だな!まったく
ロイシュタール、このお姫様のどこが
いいんだ?」
青竜とエリザベートは犬猿の仲だ。
嫌そうに言う青竜に笑う。
「全部!何もかもだ。こんなに可愛い
お姫様はどこにもいないさ」
「ロイ!大好き」
満面の笑顔のエリザベートをもう一度
抱きしめた。笑顔が一番可愛いよ。
後ろで青竜がため息をついた。
青竜に促され、王女宮をあとにした。
青竜は王女宮の周りに青い結界を張る。
「よし、これで赤竜にも手出しはできない
はずだ。さっさと帝国へ行くぞ」
「助かる。エリザベートの事だけが
心配だったから……感謝するよ」
帝国でアルフォンスが反乱を起こした。
手筈通り、キルバンは帝国の背後から
奇襲をかける。
俺も出陣だ。今度こそ帝国の息の根を
止めてやる。
青竜は俺と同行するが、王女宮に結界を
張って守ってくれるというので、
任せる事にした。これで帝国やオズワルド、
赤竜でもエリザベートに手を出せない。
留守中の不安がないのは、ありがたい事だ。
今回の奇襲攻撃にあたり長く封鎖してきた
帝国へと繋がる街道を使う。
俺が国王となってから帝国との国交は断絶。
人や物の往来を禁じ、街道を封鎖してきた。
キルバンも帝国も互いに結界を張り
守りの兵を常に駐在させて睨み合ってきた。
アルフォンスは帝国内の魔法師団を次々と
洗脳し手中に収めた。魔法師団を使い、
街道の結界をこのタイミングで解除した。
俺は軍勢を率い、国境に駐留する帝国の
一師団を蹴散らし、一気に国境を突破。
帝国へと進行した。
アルフォンスが率いる反乱軍と帝国軍の
戦闘は激しい市街戦に突入していた。
そこにキルバンが新たに奇襲をかける。
帝国軍は大混乱、敗走に次ぐ敗走を重ねた。
さらに海からは海洋国家カナンの軍勢が
港に船を接舷し上陸。
キルバン、カナンの連合軍が雪崩れ込み
帝国の首都を制圧した。
……手応えがなさ過ぎる。
赤竜も、オズワルドも帝国の精鋭部隊すら
まだ姿を現さない。
白亜宮での籠城か?
あの単細胞のオズワルドがか?
嫌な予感がする。罠か?
罠ならまだいい。問題は……。
「キルバン王!おい、簡単過ぎないか。
これは罠かもしれん」
馬に騎乗した金髪碧眼のガタイのいい男
から声をかけられる。
カナン国の王弟、バルドだ。
カナン国軍の指揮官。
アルトリア王妃マチルダの次兄。
立派な体格、筋肉隆々。甲冑を身につけた
いかにも戦士という風貌。
おまけに精悍な顔には大きな傷。
いつ見ても格好いい。
男らしいなぁ。羨ましい。
俺は三十路になると言うのに下手すると
女に間違われる事が未だにある。
ちょっとしたコンプレックスだ。
「バルド、とりあえず白亜宮に行こう。
罠にしろ何にしろ、手がかりがあるはずだ。
それにアルフォンスとも合流したい」
「そうだな。早くオズワルドの所在を
確認しないとな。奴は赤竜の道でいつでも
帝都を脱出できるんだよな?」
バルドが俺の隣に控える青竜に尋ねる。
「ああ。肝心赤竜の気配がない。
もう帝都にはいない可能性が高いな。
問題はどっちに行ったかだな」
青竜が渋い顔で言う。
オズワルドは赤竜を使い
アルトリア、もしくはキルバンに攻撃に
出る可能性がある。
キルバンならエリザベートが危ない。
アルトリアならマチルダが危ない。
俺もバルドも右手に嵌めた指輪を見る。
白い石の嵌め込まれた指輪。
アルトリア王都が襲われたら赤。
北辺境なら黒。
キルバンなら青。
カナンなら緑。
襲われた場所からの連絡で石の色が変わる。
今のところ何の変化もない。
俺達は皇帝の居城である白亜宮を目指した。
すでに白亜宮は反乱軍が制圧した後だ。
反乱軍の兵士にアルフォンスへ取り次いで
もらう。
アルフォンスは白亜宮の敷地にある
神殿にいた。
アイリスが俺達に気付き頭を下げる。
無事にアルフォンスと合流できて何よりだ。
マックスも……あれ?殺気があるのは
気のせいか?
はは!アニエス嬢を殺しかけた件で怒こら
せてしまったようだ。
絶対に隙をみて俺と青竜を殺そうと
思っているだろう。顔に出ている。
まだまだだねぇ。若い若い。
──なるほどね。
グレンの相手に恋かぁ。
不毛な奴だなぁ。不憫だ。
カーマインはバルドを見て、戦いたくて
ウズウズしている。
バルドとは初対面だからか。
はは!バルドは強そうだもんな?
ま、戦闘馬鹿は放っておこう。
「ロイシュタール、バルド!
オズワルドがいない。赤竜もだ。
大きな『穴』がある。これを使ったのかも」
アルフォンスが無念そうな顔でいう。
帝都を制圧しても肝心のオズワルドと
赤竜がいないなんて。
「アルフォンスはこのまま帝国を完全に
掌握しろ。オズワルドの奴、本当に国の事
はどうでもいいんだな。
簡単に帝都を捨てやがって。
皇帝が国を捨てたと布令を出せ」
「すでに出したよ。この国はぼろぼろだ。
魔物を使っていたのは、単純に戦力が
足りないからだった。
オズワルドが皇帝位を簒奪した時に
先皇帝を守ろうとした臣下は皆殺し。
あのクーデターの時にまともな奴ほど
死んだんだ。ここ数年のアルトリア、
キルバン、カナンからの経済制裁で経済も
ぼろぼろ。
東の小国を侵略して搾取した富で帝都だけが
栄えるハリボテ国家。
もう、この国は死んでいる。
情けなさ過ぎて涙もでないよ」
自分の祖国がこの惨状。
アルフォンスは優しいから
大分堪えたらしい。
俺なら自分を奴隷に落とした国が滅びたら
大笑いするけどね?
アルフォンスは出会った時から優しい子
だった。変わらずにいてくれてうれしいよ。
落ち込むアルフォンスに寄り添うアイリス。
アイリスがいてくれて良かったな。
寄り添う二人をほのぼのと眺めていると
指輪が光った。
──赤!アルトリア王都。
オズワルドは王女宮が、エリザベートが
キルバンに移った事に気がついていないと
いう事だな。
「アルトリアの王都!マチルダと甥っ子が
危ない」
バルドが叫ぶ。想定していたとはいえ
肝が冷える。アルトリアは……守りたい。
俺の心の故郷だ。
「青竜、頼む」
「手筈通りだな。送るのは何人だ?」
「アルフォンスとアイリスは残れ。俺と
バルド、カーマイン、マックスの四人だ」
アルフォンスには帝国で事態の収集に努めて
もらわなければならない。
「よし、四人とも手を出せ」
青竜に促され四人とも手を出す。
手のひらに青い髪と黒い髪を乗せられる。
青竜が指で触れると手のひらが光り
黒い文字のようなものが刻まれた。
「何本か道を乗り継ぐ。とりあえず一本目は
帝都の路地裏だ。そんなに遠くない急ぐぞ」
青竜の言葉にカーマインが反応する。
「ぱあっと、いっぺんに送れないのか?
竜も意外と無能だな!残念だな」
残念なのはお前の頭だ。
なんでこいつはこんなに協調性がないんだ。
こいつを副官にしているグレンの忍耐力を
褒め称えたい。
「悪かったな!無能で!つべこべ言わず
さっさと動け!」
青竜に促され、アルフォンスに後を頼み、
俺達は青竜の道までやって来た。
「おっ!『穴』だ。これに落ちるのか?
親分が落ちると気絶すると言ってたな。
わくわくするぜ!俺は絶対に気絶しない
からな」
カーマインが言う。
親分?誰の事だ。
「ああ確かにアニエス、何度落ちても気絶
すると嘆いていたね。どんな感じなのかな」
マックスだ。アニエス嬢の事を語る時は
柔らかい表情だ。
へえ。親分ってアニエス嬢の事か。
……グレンに溺愛され、マックスに片恋され
カーマインに親分と呼ばれる女。
すごい子だよね。アニエス嬢。
本人は何も考えてない系の天然女子なのに。
青竜と黒竜の道を乗り継ぎ、アルトリアの
王宮に出た。懐かしい。女神像の庭だ!
「ははは!なんだ大した事ないじゃん。
誰も気絶なんかしないぞ。よし、親分に
自慢してやろう」
カーマイン……アニエス嬢は女の子だから。
結構な圧力がかかってたでしょうに。
俺は道に慣れているから平気だけれど
こいつらは規格外だからなぁ。
カーマインに呆れているとバルドが息を
飲んだのが分かる。
「赤竜だ!」
バルドの声に彼の視線の先を見た。
王宮から少し離れた上空に
ブレスを吐く赤竜の姿が見える。
おそらく王都の中心部だ。
あんな人の多い場所でブレスを!
「アカ……」
青竜が切ない顔で呟く。
いつも飄々としている青竜の
見た事のない顔。寂しげで痛々しい。
俺はしばらく青竜から目が離せなかった。
1
あなたにおすすめの小説
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
Mimi
恋愛
若様がお戻りになる……
イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。
王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。
リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。
次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。
婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。
再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……
* 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました
そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです
私、異世界で獣人になりました!
星宮歌
恋愛
昔から、人とは違うことを自覚していた。
人としておかしいと思えるほどの身体能力。
視力も聴力も嗅覚も、人間とは思えないほどのもの。
早く、早くといつだって体を動かしたくて仕方のない日々。
ただ、だからこそ、私は異端として、家族からも、他の人達からも嫌われていた。
『化け物』という言葉だけが、私を指す呼び名。本当の名前なんて、一度だって呼ばれた記憶はない。
妹が居て、弟が居て……しかし、彼らと私が、まともに話したことは一度もない。
父親や母親という存在は、衣食住さえ与えておけば、後は何もしないで無視すれば良いとでも思ったのか、昔、罵られた記憶以外で話した記憶はない。
どこに行っても、異端を見る目、目、目。孤独で、安らぎなどどこにもないその世界で、私は、ある日、原因不明の病に陥った。
『動きたい、走りたい』
それなのに、皆、安静にするようにとしか言わない。それが、私を拘束する口実でもあったから。
『外に、出たい……』
病院という名の牢獄。どんなにもがいても、そこから抜け出すことは許されない。
私が苦しんでいても、誰も手を差し伸べてはくれない。
『助、けて……』
救いを求めながら、病に侵された体は衰弱して、そのまま……………。
「ほぎゃあ、おぎゃあっ」
目が覚めると、私は、赤子になっていた。しかも……。
「まぁ、可愛らしい豹の獣人ですわねぇ」
聞いたことのないはずの言葉で告げられた内容。
どうやら私は、異世界に転生したらしかった。
以前、片翼シリーズとして書いていたその設定を、ある程度取り入れながら、ちょっと違う世界を書いております。
言うなれば、『新片翼シリーズ』です。
それでは、どうぞ!
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる