王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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アニエス、神殿に行く

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「アイリスさ~ん!」

「アニエス~!」

アルフォンス様とアイリスさんが戻って
来たと知らせが来た。
急いで王宮にマックス義兄とやって来た。
案内された部屋には凛々しい騎士服姿の
アイリスさんが!私の顔を見ると立ち上り
駆け寄って来た。
嬉しくて思わず抱きつく。
アイリスさんはぎゅっと私を抱きしめると
ポンポンと背中を軽く叩く。

「アニエス、ただいま」

「おかえりなさい!良かった~無事で」

マックス義兄様から無事なのは聞いていた
けれど、やっぱり顔をみたら安心した。

「もしもしお嬢様方。そろそろいいかな?」

いつまでも抱き合う私達に遠慮がちに声が
かけられる。
あ、まずい。国王陛下だ。
私達は慌てて離れ、カーテシーをする。

「いや、堅苦しいのはいらん。とりあえず
座ってくれ。しかし仲がいいな。
グレンもアルフォンスも困っているぞ」

言われて見るとグレン様もアルフォンス様
も苦笑している。
グレン様がポンポンと自分の隣の席を叩く
のでそこに座る。
アイリスさんはアルフォンス様の隣の席に
戻った。

あれ?黒竜がいる。ポリポリと焼き菓子を
食べながら私にひらひらと手を振っている。
え?来るの早くない?
青竜はその隣でお茶を飲んでいる。
青竜はアルフォンス様を迎えにいって
戻って来たんだね。
え?ロイシュタール様もいる。
いや、何で私よりも早く王宮にいるの。

王宮に滞在していたバルド様がいるのは
分かるけれど辺境やキルバンに戻っていた
二人は何でこんなに早く戻って来れたの
だろう?
伝令鳥で知らせを受けて『穴』を使っても
こんなに早いかな?

「俺やロイシュタールがいるのが不思議そう
だな。小僧だよ。小僧が伝令用の小さな道を
辺境とキルバンまで作った。
その道に伝令用のフクロウを
飛ばしたんだ。これならあっと言う間に
連絡がとれる。本当に器用な奴だよ。
少し前まで人だったのに。もう自分の道を
作って使いこなしていやがる」

黒竜が呆れたように言う。
え?道って『穴』の事?
グレン様が辺境やキルバンみたいな
遠くまで『穴』を繋げたの?
ええ!グレン様が竜の姿になるより
『穴』を作れる事の方がショック
なんだけど。
何でグレン様は『穴』を作れるの?
私は落ちるだけなのに。

「帝国の方はあらかた片付いた。
今はもモールが反乱軍、キルバン軍、
カナン軍をまとめてくれている。
帝国軍は完全に無力化させてきた。
オズワルドの奴は相当、無茶をやらかして
皇帝の座についたようだな。
帝国はぼろぼろだった。
あれほど脅威だった精鋭部隊が出て来なくて
ずっと警戒していたんだが……。
調べてみたらあいつらはオズワルドに
喰らわれていたよ」

アルフォンス様が帝国での状況報告をする。
精鋭部隊がオズワルドに喰らわれたって
それは一体どういう事なの?

「ああ~成る程。竜化するのに魔力が足り
なかったんだな。帝国の精鋭部隊は魔力の
高い奴らがそろっていたからいい餌だ。
チビすけに金竜を持ち去られて
鱗が食えなくなったからその代替手段だな」

え?帝国の精鋭部隊が食べられちゃったのは
私のせいですか?
黒竜の言葉に皆の視線が私に集まる。
いや私はただ、ご先祖様を丁重に葬りたか
っただけなんですけど。

「まあ、意図して持ち去った訳じゃない
ようだがお手柄だったな」

国王陛下にお褒めのお言葉をいただいた。
いや、本当に何も考えてませんでした。
褒められも困るわ。

「オズワルドはグレンが氷漬けにしたところ
を紫の竜に拐われた。追手をかけたがまだ
捕まえられていない」

「はあ?何だその紫の竜っていうのは」

「北の大陸から来た奴ららしい」

陛下がアルフォンス様の留守中にあった
事を詳しく話している。

「王女宮の結界は白竜の張った結界と
神殿が張った結界の二重構造になって
いたんだが、王女宮が移動した事で神殿の
結界は解けた。白竜が張った結界も
複数の竜の魔力で消えた。
青竜の溝も二つの結界の消失で
自然消滅した。
残るは神殿の封印と白竜が洞窟に
張った結界。あとは竜殺しの剣かぁ。
これが一番問題か」

アルフォンス様が額をポリポリ掻いている。
竜殺しの剣かぁ。
やっぱりそれが問題なのね。

「神殿の封印はアルフォンス、お前が
解けると青竜が言っていたが……。
どうなんだ?本当に解けるのか?」

「あ~あれね。解ける?解けるともさ!」

陛下の問いかけに胸を張って答える
アルフォンス様。お、凄い!解けるんだ!

「あれさぁ、アニエスに嵌められた隷属の
腕輪の魔術式とほとんど一緒だっんだよね。
あの腕輪!術式の解析と解除までこの俺が
二年もかかった。あの術式を生み出した
奴は天才だね!神殿の記録をたどったら
帝国の魔術師が絡んでいたよ」

え~~!!あの腕輪に刻まれた魔術式と
ほぼ同じ?なにそれ。
大体、何で帝国の魔術師が絡んでくるの。

「人より遥かに高い魔力を持つ竜から
意思と魔力を奪い、それを無尽蔵に使える
ようにする。
そのための実験だったみたいだね。
竜殺しの剣を生み出したのもその魔術師だ。
アルトリアは防衛結界の維持に苦労して
いたから、その話に飛びついた。
数年おきに高い魔力を持つ者を生贄に
していたから無理もないな」

数年おきに生贄か。
昔は今よりさらにひどかったんだ。
今は二、三十年から五十年に一人の生贄。
しかも、王族だけだ。

「白竜から生贄の交代を申し出られた時は
王家も神殿も魔術師塔も小躍りするぐらい
喜んだはずだ。何せ労せずに竜を生贄の
魔法陣に繋ぐチャンスが来たのだから」

「最初から白竜を騙すつもりだった訳だな」

陛下が難しい顔で言う。

「そういう事で神殿の封印の術式はもう
解析済みなんだ。先に腕輪の術式で糸口が
分かっていたから簡単だったよ。
ただ、殺された白竜の恋人だった王子が
死ぬ間際に魔術師の刻んだ術式を部分的に
書き換えていてさ……。
黒竜、あんたがいないと封印は解けない」

え?黒竜?何でそこに黒竜が出てくるの。
思わず黒竜を見る。
黒竜も何で?と言う顔をしている。

「たぶんこれ以上白竜が害されないため。
白竜が望まない者を弾くように書き換え
られている。解除の鍵に黒竜の魔力を指定
して書き込んだのは黒竜が必ず助けに来る
と思ったからだろうな。
黒竜、一緒に神殿に来てもらえるか?」

「……成る程。アオが俺に頼みがあると
言っていたのはこれか。分かった。行くよ」

黒竜が青竜に頷きながら言う。

「青竜も一緒にいいか?それとチビすけ……
アニエスとグレンにも同行してもらいたい。
悪いがまだ完全にお前達を信用できない」

黒竜から同行を求められた。
行くよ、行く!
思わず力強く頷く。隣のグレン様を見ると
グレン様は私を見ながら微笑み頷く。
蕩けそうなくらい甘い笑顔。
いや~~やめてその微笑みは!
ときめいちゃう。
こんな時なのに馬鹿なの私。
顔が熱い。

「あ~~うん。こういう緊張感のない奴が
一人いると和みそうだな。
チビすけ、小僧に見とれてんじゃねえよ」

黒竜の言葉にその場にいる人が全員、
大笑いする。
ひど~い!
グレン様がカッコいいのが悪いのに。

大笑いされながら私の神殿行きが決まった。
















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