王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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断罪 2

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「クソ~!ふざけるなぁ!ここから出せ!」

オズワルドが手当たり次第に壁を蹴りながら
大声で叫んでいる。
両手、両足、首に金属製の輪っかを
嵌められてはいるが特に拘束されている訳
ではない。
なので、まるで檻に閉じ込められた
虎のように薄暗い洞窟を行ったり来たりと
うろついている。
毎日一度はこうして叫んでいるのようだ。
きっとオズワルドなりのストレス発散法
なのだろう。

オズワルドはアルトリアを魔物から護る
防衛結界に白竜の代わりに繋がれた。
嵌められた金属製の輪っかから魔力を
吸い上げられ、封印結界でこの洞窟から
出る事はできない。

この洞窟は白竜が閉じ込められていた
洞窟を再利用。
そして洞窟内は魔法で鏡に映るように
なっていて常に監視されている。

今はその鏡で王宮からオズワルドの様子を
のぞき見している。
二日後にはロイシュタール様とバルド様が
国に帰られる。
その前にオズワルドの様子を見てみたいと
ロイシュタール様が言い出したので
今日は急遽、陛下、ロイシュタール様、
バルド様、アルフォンス様、グレン様、
私の顔ぶれで王宮で鑑賞会となった。

「元気だなぁ。ごっそり魔力を吸いとられて
いるはずなんだけれど。
大声で叫びながらうろうろする余力が
あるとはなんて体力馬鹿な奴だ」

アルフォンス様が呆れる。
本当に元気だなぁ。

まあ白竜みたいに鎖で繋がれてはいないし、
きちんとベッドや風呂、トイレもある環境。
しかも、話し相手つきだ。
話し相手というか世話をする侍女なんだ
けれど、この侍女は実はモニカだ。

モニカは罪を償うため労役刑に処された。
その労役がオズワルドの世話係。
モニカは洞窟と神殿を行き来して
オズワルドの生活物資を運んだり日常の
世話をする。

しかしこの二人も微妙な関係だよね。
モニカはお館様に心を残しているし、
オズワルドは姫様が好きなくせにモニカを
仮の番にしている。

最初こそオズワルドもモニカも大声で
罵り合い、オズワルドがモニカに危害を
加えるのではとハラハラさせられたけれど
世話をしてくれるのがモニカだけなので
オズワルドの方が折れた。

しかもモニカが口をきかないと話す相手が
いないのでそれが堪えるらしく、
今ではモニカに対して下手に出ている。

一方、モニカは神殿に住んではいるが
部屋は監視付き、嵌め殺しの窓に、鉄格子。
オズワルドの世話以外にも神官から
コキ使われるため、適度にサボれるうえに
うるさく叱られる事のないオズワルドのいる
洞窟は一種の避難所なっている。

「もう!あの神官!あんな大量の洗濯物を
一人で今日中になんか無理に決まってるわ!
魔力封じの腕輪のせいで魔法が使えない
か弱いこの私に何させるのよ!
なんのイビりなのよ!馬鹿じゃないの!
見てよこの荒れた手を!」

モニカはこれでも砦では、お館様の婚約者
として非の打ちのない働き者令嬢で
通っていたから、やろうと思えば仕事は
できる子なんだよね。

神殿に問い合わせたところ文句は多いが
器用で要領がよく思った以上の働き手と
して重宝されているようだ。

モニカが大声で怒鳴る。
するとさっきまでここから出せと怒鳴って
いたオズワルドが無言でモニカに近づく。
ぐいっとモニカの手を引っ張る。

「何すんのよ!……って治癒魔法?」

モニカの荒れた手が治っている。

「ふん」

オズワルドがプイっとそっぽを向く。

「はん!そんな事したってお礼なんて
言わないわよ。ふ~んだ!」

モニカが顔を真っ赤にして言う。
これ、照れ隠しだよね。
一方そっぽを向いたオズワルドの顔も赤い。
こっちも照れてる?

なんかオズワルド、丸くなった?
毒が抜けたと言うか……。
あのクズっぷりが和らいだというか。
まあなんだかんだであの二人。
何とかやって行けそうで良かった。

これから人の手だけで魔物に対抗できる
ように人材を育てなければいけない。
その間、オズワルドにはアルトリアを
守ってもらう。

今はまだ魔力に余裕があるが、それも
いつまでも保つか分からない。
それに魔力を随時吸い上げられ
日の差し込まない洞窟での幽閉生活。
竜化しているとはいえ、人の精神を持つ
オズワルドがいつまで正気でいられるか。

罪を償うためとは言え、国のために
働いてもらうのだから
ある程度の環境は整えようとこんな感じに
なった。

「……一体俺達は何を見せられているんだ。
生温くないか?あいつら罪人だろ」

互いに照れ合うオズワルドとモニカを見て
バルド様がうんざりした声をあげる。
まあいいじゃないですか。

私はちらりとロイシュタール様を見る。
女性と見紛うほどきれいなお顔に怪しい
笑みをうっすら浮かべている。
怖!

どのみちオズワルドはここから解放され
たらロイシュタール様に引き渡される。

姫様にとっては優しいロイ兄様かもしれ
ないがこの人はヤバい。
以前殺されかけた私は今でもこの人が怖い。
この人に引き渡されるのか……。
ちょっと……本当にちょっとだけオズワルド
気の毒かな。

「防衛結界さえきちんと機能していれば
それでいい。下手に過酷な環境にして
役目を担えなくなったら困るからな。
あいつらの事はこれでいいだろう。
それより、白竜はまだ目覚めないのか?」

陛下が私に尋ねる。
そう。白竜が目覚めない。
白竜を縛る魔法陣も剣も鎖も手枷も……
もうすべて私の魔力で分解されて消え失せ
白竜から魔力を吸いあげ消費し続けた防衛
結界は今はオズワルドへと移行されている。
移行された事で白竜が解放されたはず
なんだけれど私の空間収納から出しても
眠ったまま目覚めない。

以前一度出した時は元気だったのに。
ずっと吸い上げられていた膨大な魔力が
解放されて一気に自分の体を巡る。
うまく順応できなかったのでは?と
アルフォンス様は言う。

魔力の流れが整えば自然に目覚めるだろう
との事で少しは安心した。

そんな訳で白竜は眠り続けている。

陛下は眠り続ける白竜のために王宮に
部屋を整えた。

黒竜はその部屋でずっと白竜の側に
ついている。
目覚めない白竜だけれど、黒竜の表情は
明るい。

「今は癒しの時だな。見ろよこの平和
そうな寝顔を。
数百年、防衛結界に魔力を吸い上げられ
続けてたった一人で耐えて来たんだ。
やっと解放された。
でも長い間の歪な魔力消費はどうにも
ならない。今は体が癒されるのを
待つしかない。
でも今度は側にはついていられるからな」

そう言って黒竜は笑う。
そうだね。側にいられる。それだけでも
良かったね。黒竜。
私は黒竜の笑顔を思いだしながら白竜が
まだ目覚める気配のない事を
陛下に報告した。

「そうか。目覚めたら話さなければ
ならない事があるのだがな。
それに何よりもまず詫びなければならん」

陛下はそっと目を閉じた。

白竜は恋した王子の身代わりに生贄と
なる事を申し出てくれたのに、
騙し討ちにされ剣で刺し貫かれて防衛結界
に繋がれた。

結果的にそれを止めようとした王子は
殺された。
白竜はこの人の事を助けたかったのに。

さらに白竜と王子との間に生まれた女の子
は王宮で育てられ王族と結婚させられた。
その子孫が今のアルトリアの王族に繋がる。

白竜の子供は幸せだったのかな?
結婚した相手とは仲睦まじい夫婦だった
らしく五人の子を成し、
大勢の孫に囲まれて百歳近くまで生きた。

晩年は穏やかで幸せそうなのは
良かったけれど。父を殺し、母を封印した
一族に育てられ結婚させられる。

この女の子の気持ちは古い記録を読んでも
推し測る事はできない。

いずれにせよ白竜はもう恋した男と愛しい
子供には二度と会えない。
二人ともこの世にはもういない。


でも仲間である黒竜も青竜も赤竜も
白竜の事を待っているよ。
早く起きて来てね。白竜。

黙り込んだ私をグレン様が抱き寄せる。
あれ?なんか心配させちゃった?
グレン様が私の顔を心配そうに見るので
とびきりいい笑顔を向けた。

「うわ~ゲロ甘!どこか余所でイチャつけ」

バルド様が声をあげる。
別にイチャついてませんよ?

でも、私とグレン様以外は大笑いしている。
失礼な。
グレン様をちらりと見るとニヤリと笑う。

「よし。余所でイチャつこう」

「はい?」

そう言いながら私を抱き上げるグレン様に
慌てる。こらこら馬鹿魔王何を言い始める。
私を抱き上げたまま退室しようとするので
困ってしまい、助けを求めて陛下を見る。

とてもいい笑顔で手を振られた。
他の人達を見ると苦笑しながらやはり
手を振られる。

え?

何この状況。


すたすたとグレン様に運ばれて
王宮にあるグレン様の部屋に連れ込まれて
貪られた。

なんで~~?


一人、納得できない私でした。







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