刺されて始まる恋もある

神山おが屑

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「黒川、口にソース付いてる」

そう言って俺の口を紙ナプキンで拭う城田、
何気なく一連の流れを受け止めて数秒して気づいた。

ここは大学の食堂だった!

病院にいた頃にちょくちょく口を拭かれてだんだんと抵抗しなくなっていってしまい、その癖が付いてスルーしてしまった。

周りを見渡すと何人か目を逸らされた。
まずい城田の過保護に慣れすぎないようにしないと。


さっきも一通り講義が終わると、既に教室の前に城田がスタンバっていた。

城田に全ての時間割と教室を教えてくれと頼まれた時は何に使うのか分からなかったが、こういうことだったのか。

心配させた俺のせいでもあるがやっぱり過保護すぎる。

城田の過保護対策として前々から少し考えていたことがある。
それは城田に恋人を作ること。
大事な人が出来れば俺にかまっている暇が無くなるのではないかという作戦だ。

まずは作戦の第一段階として城田の好みを把握するところからだ。

「城田ってさ、どんな人がタイプとかあるの?」

「、、、なんでそんなこと?」

単刀直入すぎたか、あまり城田に警戒させても良くない、なにか理由を考えようとしたが、

「まぁ別にいいけど、俺のタイプは優しくて、お人好しで、ちょっとドジで、すぐに感情が出て表情がコロコロ変わって、何より俺の中身を見てくれようとしてくれる人かな。」

理由を考えるまでもなく城田の方から答えてくれた。
にしてもやけに具体的だな、もしかして、

「もしかして、好きな人がいたりする?」

城田は一瞬動きを止めたあと俺の顔をじっと見てきて、はぁとため息をついた。

え、何?俺なんか変なこと聞いただろうか?

「、、、居るよ、気になっている人。」

少しの気まずい沈黙のあと帰ってきたのは予想外の返答だった。
やっぱりあの具体的なタイプは誰かを思い浮かべての回答だったようだ。

「その人に、その、告白とかはしないの?城田なら絶対イけると思うぞ。」

「、、、それが自分の気持ちに気づいてから相手にも意識してもらおうと、アプローチしてるんだけど全然気づいて貰えなくてな。」

なんと、城田案外肉食なんだな、やることはしっかりやってるらしい、というかあんなに俺に付きっきりでいつの間にそんなアプローチしてたんだ?


、、、まさか
そこでフル回転した俺の灰色の脳細胞が一つの仮説にたどり着く。

俺が知る限り大学や、今や住むところまで一緒の城田がアプローチをかけているようなところは見たことがない。

となれば答えは一つ。
城田の好きな人はモデルの仕事関係の人だ!

なるほどモデル関係なら綺麗な人がいっぱい居るだろうし、いや、もしかしたらカメラマンやスタッフの人かもしれない。

いずれにしてもこんな男から見ても惚れてしまうような城田がアプローチしているんだから時間の問題だろう。


モデルの仕事関係の人なら俺がどうこうするのも難しいし、俺が何かしなくても勝手に恋人が出来て俺にかまう暇が無くなるのはそう遠くないかもしれない。



何故か胸の奥にチクチクしたものを感じた。
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