お前が結婚した日、俺も結婚した。

jun

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母が帰った後

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「お待たせ。疲れたでしょ、みんなでご飯を食べよう。」
親父と隼ちゃんが俺達のいる部屋にやってきた。

俺達は一階に降りて、予め注文してくれていたのか、女将さんが料理をどんどん持ってきてくれた。
親父達は冷酒、俺達は生ビールを飲み、やっと一息つけた感じだ。

「ごめんね、なんか不愉快だったでしょ?特に慎吾、ごめんね、俺達のせいで慎吾が狙われた。済まなかった、慎吾。」
と親父が頭を下げた。

「いや、元々俺のしてきた事の罰が当たったんです。俺がもっと蓮に誠実だったら目をつけられる事もなかった。
だから親父さんのせいではないです。」
と慎吾。

「蓮もごめんね、あんな人が母親だけど、一応蓮を大事に思ってるのも本当なんだよ。
ちょっと普通と違うけどね。

あの人はフラれた事がないんだって。
初めてふったのが俺。
だって隼也がいたし、女性には全く興味がなかったから。
何度言っても理解してくれないんだよね、彼女。一度付き合ったら、一度抱いたら、そればっかり言って会話にならなかった。
それでこの結果。
唯一良かった事は蓮が生まれた時から可愛かった事。
蓮はとっても綺麗で、可愛くて、小さくて、温かかった。
蓮は俺の大事な息子で、隼也の大事な息子でもある。
だから俺と隼也は全力で雅と戦うよ。
全力で蓮と慎吾を守るからね。」

俺は泣いた。初めて親父の前で泣いた。
あんな人から生まれた俺をひょっとしたら嫌悪してるのかもと思った。
欲しくもなかった子供。
そんな存在の俺を親父も隼ちゃんも大事だと言ってくれた事が嬉しかった。

「ありがとう…父さん、ありがとう、隼ちゃん…」

慎吾が俺の涙を拭いてくれた。
雄大はつられて泣いていた。
西山は隼ちゃんとこれからの事を話していた。

なんとも身内の恥をさらした夜だったが、親父と隼ちゃんの愛情を知れた貴重な夜になった。

雄大は家に帰り、残った俺と慎吾と西山はあのマンションに帰った。
西山は本当は隼ちゃんと色々話したかったんだろうが、親父と隼ちゃんの邪魔になるからとこっちに来た。

「久しぶりだな、このマンションに来たの。
この隣りに蓮の例の女が住んでた訳だ。
ある意味蓮ってすげえな、関係者全て集めてたんだもんな。あの少年探偵みたいだ。
君を“名探偵本田”と名付けよう!」

「そこは苗字じゃねえだろ!」
西山のネーミングセンスに文句を言ってやった。

「でも、今日はビックリする事ばっかだったな…。
蓮の母ちゃん、佐藤よりも強烈だな…。
俺…あの母ちゃんに目え付けられてたんだな…こぇー。」
ビビってる慎吾に、

「まあ慎吾はホントだったらとっくに蓮に捨てられててもおかしくなかった。
今、蓮がここにいるのは偏に蓮の慎吾への愛情だ。
俺はお前達を応援しているが、正直、慎吾に蓮は勿体無いと思ってる。
慎吾は蓮に甘え過ぎだ。
蓮の初恋の遠藤の方がよっぽどお似合いだ。」

「待て!遠藤は初恋ではない。俺の初恋はゆうき君だ。」

「「ゆうきって誰だよ!」」ハモりながら慎吾と西山が聞いてきた。

「小学校の3年生の時に転校しちゃった男の子。」

「お前って奴は・・・恋多き男だな!」
と慎吾が膨れている。

「とりあえず、これからの流れを整理しよう。」
西山が仕切って、今日の事も含めて整理していく。

「先ず、今の段階で決まってる事は、隼也さんが慎吾んとこの部長に会って、左遷された佐藤美咲の不倫相手に子供を認知させる、これを済ませれば後は離婚だけだから楽になる。

まあ、おそらく拒否させないようにすると思うが、もしも拒否したら嫡出否認調停を申し立てる。これもほぼ問題はないと思う。
この時点でほぼ離婚は決定となるから、後は慰謝料だな。

慎吾は離婚出来たら満足なんだろうが、これだけの事をやらかせばどうなるかを理解させないと、次また同じ事をやる可能性があるからここはきちんと慰謝料は請求する。
俺と隼也さんで話しつけるから問題ない。

で、問題は蓮の母ちゃんだ。
多分親父さんと隼也さんはこのままにはしないと思う。
隼也さんが今まで監視してた報告書を見れば、最低でも慎吾に対しての付き纏い、所謂ストーカー容疑で慰謝料は取れる。
恨みが晴れるかどうかは別として。
恐らく蓮の母ちゃんは離婚されるのは決定だな。手切れ金として旦那が慰謝料は払ってくれるかもしれないが、手綱を握ってる相手がいなくなる、それが怖いかな。

蓮が生まれて28年、離婚して12年、再婚して9年。なのにあの親父さんへの執着だ、今は旦那がいるから下手な事出来ないって分かってるからこれで済んでる。
その存在がいなくなったら何するか分からないのが怖い。
その辺を隼也さんはどうするのか俺には分からん。

こんな感じだけど、なんか質問ある?」

西山が簡単に流れを話してくれたけど、一つ気になった事がある。

「なあ西山、監視って何?」

「隼也さん、離婚してから母ちゃんの事、ずっと監視してたんだそうだ。

喫茶店でみんなで話した時あっただろ、あん時蓮の実家で隼也さんと親父さんの話し聞いたんだけど、あの2人、めちゃめちゃ怒ってたわ、あの母ちゃん事。
いやあ、大人の男の本気の怒りは怖いって思ったよ。マジで絶対敵にはしたくないって思ったもん。
それに蓮は2人に愛されてんだなぁとも思ったけど。
慎吾への報復の話しはちょっと笑った。」

隼ちゃんずっとあの人の事警戒してたんだな…俺はまだあの頃、母親として見てたから、ここまでの狂気には気付かなかったけど、2人はずっと見てきたんだから警戒もするわな。

「待て。俺への報復って何だ?」

そうだ、慎吾への報復って何だ?

そして西山から明かされる慎吾への報復話。

項垂れる慎吾。
爆笑する俺と西山。

「お前、大阪行って何処探したの?」と腹を抱えて笑いながら慎吾に聞くと、

「梅田行って…なんば行って…大阪城見て帰ってきた…」

「「大阪観光やん!」」

2人で大爆笑した。

「ハアーーーーおもろかった!

それは置いといて、俺の元母親、また俺か慎吾んとこ来ると思うか?」

「来るだろうな…。
俺…蓮と同じ顔なのにあの人気持ち悪い…。
なんだろう…なんていうか、狂気じみてて怖いわ、あの人…。
正直もう会いたくないわ。
この前、蓮、会わなくてよかった…何されてたか分からん…。」
本気で怖がっている慎吾に激しく同意した。

「このマンション、知られてるんだろ?だったら此処にいない方がいい。
慎吾は離婚するまでは今のマンションに戻れ。蓮は友利さんとこにいた方がいい。
場所はまだ知られてないだろ?」
西山の提案に俺と慎吾も頷いた。
ここは危険だ。

さすがの慎吾も俺の事を心配したのか駄々を捏ねることもなかった。


そして俺は久しぶりに友利の待つマンションへ帰った。
















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