【完結】氷の王太子に政略結婚で嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています

22時完結

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王太子の独占欲

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    夜の帳が降りる頃、王宮の重厚な石造りの廊下に、ひときわ鋭い影が現れる。王太子アレクシス――その冷徹な顔に隠された瞳の奥には、ひそかに燃え盛る独占欲の炎が、時折こぼれ落ちる瞬間があった。今日もまた、形式に縛られた昼の彼とは対照的に、夜の静謐な空間で、彼の内面に秘めたる情熱が静かに、しかし確実に顔を出していた。

夕刻、使用人たちの見守る中、公式の夕食が終わり、各々の役割に戻る前のひととき。アレクシスは、他の客人たちが退いた後、一人ひとりの顔色を伺うかのように、周囲を見渡していた。だが、私の存在に気づいた瞬間、彼の視線は一変する。普段の厳格な表情の裏に、私だけに向けられた温かく、しかしどこか鋭い光が宿るのを、私はすぐに感じた。

「お前は、俺のものだ――」
その言葉は、正式な場であっても決して漏らされることはなかったが、夜のひとときにおいては、彼の態度と言動から確かな主張として伝わってくるのだ。ふとした瞬間に、側近の囁きが廊下を駆け抜ける。私がほかの貴族と軽く談笑していると、アレクシスの足音が重々しく近づいてくるのが聞こえた。その足取りは、まるで自分以外のすべてを拒絶するかのような、冷たい決意そのものだった。

夜の静かな一室、キャンドルの灯りが淡く揺れる中、私とアレクシスは形式を脱ぎ捨て、心と心が直接触れ合う時間を迎える。彼は、いつものように厳格な言葉を発することなく、ただ私の隣に寄り添い、その眼差しを静かに私に向けた。その視線の奥に潜む独占欲は、やがて言葉となって現れる。

「お前の笑顔は、俺以外の誰にも向けるものではない」
その一言は、まるで夜の闇に溶け込む低く鋭いささやきのように、私の心に突き刺さった。私の心は戸惑いとともに温かさで満たされるが、同時に、彼の独占的な所有欲に対する不意の恐れも感じずにはいられなかった。彼のその言葉は、単なる甘やかしではなく、私に対する深い情熱と、守り抜こうとする強い意志の現れであった。

日々の新婚生活の中で、私自身はアレクシスの二面性に気づき始めていた。昼間は、政略結婚の義務として、形式を守るための冷徹な顔を装っている。しかし、夜になると、彼の心は私にだけ完全に向けられ、独占欲と愛情が混在する複雑な表情を浮かべる。その姿に、私は次第に心を奪われると同時に、自分自身が彼の所有物であるという感覚に、微妙な不安を感じるようになっていった。

ある日の昼下がり、宮廷の回廊で偶然、貴族たちと談笑していると、遠くから聞こえてくる冷静な足音があった。ふと振り返ると、アレクシスが険しい表情でこちらを見ている。彼の眼差しは、普段の公務の中では決して感情を露わすことのない、確固たる所有欲の光を帯びていた。その瞬間、私は、自分がただの政略上の妻ではなく、彼の心の中で特別な存在であることを改めて実感した。だが、その一方で、彼の独占欲がどこまで私の自由を奪ってしまうのかという恐れも、胸の奥に潜んでいた。

夜が深まるにつれ、アレクシスの態度はますます明確になっていく。密室の中で、他の誰にも見せることのなかったその本心が、私に対して次第に攻撃的とも言えるほどの独占的な言動として表れるようになる。

ある夜、私が一人で書斎にいると、ふいに扉が開かれ、アレクシスが無言で入ってきた。彼は、書物に目を通していた私の肩に、力強い手を置くと、低い声で静かに言った。
「お前は、俺にだけ微笑むべきだ。あの者どもに笑顔を奪われるのは、俺には耐えがたい」
その言葉は、冷静な口調ながらも、どこか痛烈な独占欲と嫉妬心がにじんでいた。私の心は驚きとともに、複雑な感情に乱された。アレクシスは普段、必要最小限の言葉しか交わさない人物であったが、その瞬間だけは、彼の内に秘めたる情熱が溢れ出すように感じられた。

彼はさらに続けた。
「お前は、俺の妻として生まれてきたのだ。だから、他の者に、俺の愛情を分け与えるなんて、決して許されはしない」
その言葉に、私は胸の奥で何かが弾けるような感覚を覚えた。同時に、彼の言葉の裏にある真剣な愛情と、独占欲の激しさに、戸惑いとともに一抹の恐れを感じずにはいられなかった。

こうした出来事が続く中で、私たちの日常は、徐々に独占欲という影が濃くなっていくのを感じた。昼間の公式な顔とは裏腹に、夜ごとに交わされる一言一言、触れ合うたびに、アレクシスの中にある激しい独占欲が浮かび上がってくる。その独占欲は、単なる嫉妬に留まらず、私への深い愛情と、守り抜きたいという強い願いが複雑に絡み合ったものだった。

ある夜、私たちは王宮の奥にある静かな中庭で、星空の下に佇んでいた。空は澄み切った深い青に染まり、星々が瞬くその中で、アレクシスはふと私に近づき、真剣な眼差しで問いかけた。
「お前は、本当に俺のものか? その心は、他の者に奪われる隙はないと、俺は信じているか?」
その問いは、私にとってはあまりにも重く、そして深い意味を持っていた。私自身、これまでの生活の中で感じていた戸惑いと、次第に芽生える愛情の狭間で、まだ答えを見いだせずにいた。しかし、アレクシスの瞳に映る真剣な光が、私に答えを迫るように感じられた。
「私は……あなたと共に歩む中で、あなたのすべてを知り、そして受け入れていきたいと思っています。でも、その愛情が、時に重く、私を束縛してしまうのではないかと、不安も感じるのです」
その言葉に、アレクシスはしばらく沈黙した後、静かに答えた。
「束縛など、愛する者を守るために必要なものだ。お前が、俺以外の誰かに心を寄せるのなら、俺はそれを許すことはできない。お前は、俺の妻であり、俺の唯一の存在だ」
その宣言は、夜空に溶け込みながら、私の心に深い印象を刻んだ。

アレクシスの独占欲は、次第に日常生活のあらゆる瞬間に現れるようになった。公式な行事の最中であっても、私が誰かと会話を交わすと、彼は微妙な表情の変化を見せ、近くにいるだけで、私に対する所有感を漂わせる。その姿は、一見すると厳格な王太子としての規律を保っているようであったが、その裏には、私に対する深い執着と、他者に渡すことのできない愛情が静かに息づいていた。

私自身も、その変化に戸惑いながらも、次第にその独占的な態度に心を奪われる自分がいることに気づいていった。アレクシスの言葉や行動は、決して単調な冷たさだけではなく、私への真剣な想いが込められていると、ふとした瞬間に理解できるようになっていた。しかし、その愛情が、時に私の自由を奪い、私自身をも束縛するような恐れを伴っているのもまた事実であった。

王宮の中で、私たちの関係は噂となり、側近や貴族たちの間で密かに話題に上るようになった。私が他の貴族と談笑するたびに、アレクシスはその場に顔を覗かせ、冷たい眼差しで私を見つめる。時には、彼の独占欲があまりにも露骨に現れ、周囲の者たちが気まずさを感じる場面もあった。
ある日の晩餐会では、私が軽く笑顔を交わした相手に対し、アレクシスはわずかに眉をひそめ、静かに立ち上がって私の元へ駆け寄った。その仕草は、ただの保護ではなく、私を自分のものとして固く抱きしめたいという、激しい独占の証であった。
「お前は、俺の妻だ。どんな瞬間も、俺のものでなければならない」
その短い言葉は、晩餐会の喧騒の中でも、私の心に深い余韻を残すとともに、周囲の者たちにも、彼の真剣な愛情が伝わった。

そんな日々の中で、私自身は次第に、アレクシスの独占欲に対する複雑な思いと向き合わざるを得なくなっていった。彼の一途な愛情が、時に私の心を温かく包み込む一方で、その激しさが私の自由を奪い、息苦しさを感じさせる瞬間もあった。
ある夜、私はひとり静かに書斎に籠もり、窓の外に広がる星空を眺めながら、自らの心情を整理しようとしていた。独占される喜びと、守られるがゆえの重圧――その両方が、交錯する感情として私の内面で渦巻いていた。
「あなたは、私を愛しているのね。でも、その愛情があまりにも深すぎて、私自身が窒息しそうになる……」
そう呟くと、ふと扉が静かに開かれ、アレクシスがそっと私の隣に腰を下ろした。彼は、激しい独占欲の中にも、どこか儚げな表情を浮かべ、優しく問いかけた。
「お前は、俺にとってかけがえのない存在だ。だからこそ、俺はお前を守り抜きたい。もし、俺の愛情が重すぎると感じるのなら、どうか正直に告げてほしい」
その言葉に、私は胸の中で何かが解きほぐされるのを感じた。彼の独占欲は、決して単なる束縛ではなく、私を守るための深い愛情そのものなのだと、静かに理解し始めた瞬間でもあった。

それからの日々、私たちは互いの心情を率直に語り合う時間を増やしていった。アレクシスは、昼間の冷徹な態度とは裏腹に、夜ごとに私の手を取り、独占的な愛情を語る中で、私に対してこれまで以上に誠実な面を見せるようになった。
「俺は、お前が誰にも奪われることを、決して望んでいない。お前は、俺だけのものだ」
その言葉は、今までの激しい独占欲と共に、深い信頼と守りたいという確固たる意志を示していた。私もまた、自分の中に芽生えた複雑な感情を、素直に彼に伝え始めた。
「あなたの愛情は、時に私を包み込みすぎて、自由が感じられなくなる。でも、同時にその愛情が、私にとっての光でもある。だから、私もあなたを、全力で愛したい」
そう告げた瞬間、アレクシスは深い瞳で私を見つめ、そして、優しく頷いた。その眼差しは、独占という激しい感情だけではなく、互いに支え合い、未来を共に歩むという強い決意を映し出していた。

独占欲という、決して単なる嫉妬ではない深い愛情の形を、お互いが受け入れ、理解し合えるようになった今、私たちは新たな一歩を踏み出す準備ができていると感じた。王宮という厳格な環境の中で、政略結婚という形式を超えて、二人だけの真実の愛情が育まれていく。その愛は、独占という言葉に象徴される激しさと、優しさが同居する複雑なものであったが、私たちはそのすべてを、未来への礎として受け止めることに決めた。

夜空の星々が、二人のこれからの未来を祝福するかのように瞬く中で、アレクシスは再び静かに告げた。
「お前は、俺にとって唯一無二の存在だ。これからも、どんな困難があろうとも、俺はお前のそばでお前を守り、そしてお前を愛し続ける」
その言葉は、私の心に深い温もりと安心感を与え、同時に、独占という激しい愛情が、二人の未来を確実に固める大切な絆であると、静かに告げるものでもあった。

こうして、王太子アレクシスの独占欲は、ただの嫉妬や束縛ではなく、互いに深く愛し合うための、避けがたい運命の一部として、私たちの生活に刻まれていった。昼間の厳格な仮面の裏側に隠された、その独占的な愛情は、次第に私たちの関係をより強固なものへと変えていく。たとえ、その情熱が時に私の心を揺さぶるとしても、私たちは互いにとって欠かせない存在であり、未来へと続く愛の軌跡を、共に歩み始めたのだ。

夜明け前の静寂の中、王宮の中庭に佇む私たちは、星の瞬きを背に、新たな一日への期待と、独占という激しい愛情の中に生まれる温かさを噛みしめながら、未来への小さな約束を心に刻んだ。互いに交わす言葉と、静かに触れ合う手の温もりは、決して儚いものではなく、二人だけの永遠の誓いとして、今後もずっと続いていくに違いないと、強く信じる夜であった。
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