サクリファイス・オブ・ファンタズム 〜忘却の羊飼いと緋色の約束〜

たけのこ

文字の大きさ
83 / 140
第四章.救えない

12.殲滅姫

しおりを挟む
「本当に大丈夫なのよね?」

 シーラが鼻歌をしながら進んでいるとピンクの……えっと、アリシア! アリシアちゃんが不安そうな声を出す……シーラは無敵で天才なので安心しても大丈夫なのに、なんでだろう? ちゃんと灰色の……えっと、ヴェロニカ! ヴェロニカちゃんの言い付け通りに二人一組になったのにな~! なんでだろうな~!

「シーラは無敵で天才なので大丈夫ですよー!」

「そ、そう?」

 まだ不安な……不安そうな顔をしているんだよね? むむむむむ……やはりこの天才シーラを以てしても認識できないとは、人の顔とは複雑でありますなぁ! 色と匂いでしか判別できないや! 表情なんて理解できるはずもなく……アッハッハッハッハッ!!

「シーラに任せればゴミの十や二十、チョロいでありますよ!」

「本当かしら? ……まぁ、ヴェロニカ大尉を信じましょう」

 アリシア胸の大きなピンクの人は疑り深いなぁ~、シーラは無敵で天才なのにね! ……むむっ、お腹が空いてきたから早めに片付けないといけないね。あ、あそこの壁の染み面白い形してる! すごい! アリシアちゃんが何か言ってる気がするけど、いいや!

「……二人? あの野郎、しくじったな」

「っ!」

 …………は? せっかく面白い染みを見て楽しんでいたのに、ナニコイツラ? いきなり現れて殺気をぶつけて来てシーラちょっと不機嫌です。

「まぁいい、用があるのは『緋色』……てめぇだ──」

「──死ね」

 なんか鳴き声を発してる躾のなっていない方の頭を、ポチ猟犬を纏わせて巨大になったシーラの腕で握り潰してお掃除です! 本当にどこにでも現れるんだから~。

「貴様っ?!」

「魔法使いは殺すのが決まりであります! シーラ理解しています! 天才なので!」

 供物を取り出した……えーと、もう! 人の顔なんて難しいもの分からないんだから一度にいっぱい出てこないでよね! とりあえず敵意ありありの魔法使いの身体ごと握り潰してあげます!

「プギャッ?!」

「『我が願いの対価は──ブゥッ?!』」

 手刀で立ったままの魔法使いの頭を潰して、魔法を使おうとした魔法使いを天井まで思っ切り振りかぶって殴り飛ばす! 楽しい! もっともっと!

「ぎゃっ?!」

「がぁっ?!」

 拳をハンマーのように打ち付けて新しく染みを作って、頭と足を持って雑巾絞り~! ……うわっ、本当に赤い水が出ました! ばっちぃ。

「おい……おいおいおいおい!!」

「やべぇぞコイツ?!」

 彼らが放ってくる魔法によって出来たコンクリートの槍や音速の炎をシーラの血を吸わせ、『対価』を得たポチ猟犬に纏わせる魔力を増やして両手で叩き潰す! ……ドヤっ!

「か、幹部を呼べ!」

「供物も足らんぞ!」

 突き込まれる槍をジャンプで躱して、空中で一回転して上から押し潰しながら背後に着地……ついでに振り返って後ろに居た魔法使いを横薙ぎにぶっ飛ばす! ……壁が近いからぺっしゃんこになっちゃった!

「『我が願いの対価は紅玉三つ 望むは敵阻む壁』!!」

「おろっ?」

 通路が狭くなって腕が振り回せなくなってしまいした! 武器が大きいとこういう場所では不便だってシーラ知ってます! 天才ですからね!

「これで──」

「──タマ、おすわり」

 声が弾んだ魔法使いを短剣サイズにしたタマ猟犬で喉を貫いて耳障りな鳴き声を止めましょう! あんまり煩いと近所迷惑になって飼い主が叱られてしまうそうです! シーラ知ってますよ! 天才なのでね!

「なぁ?!」

「シーラは天才なので! 合体させているんですよ! だから無敵なのです!」

 シーラは天才なのでねー、複数のワンちゃん猟犬と仲良しになれるんですよ! なので分解して繋げちゃいました! なので今も短剣を降り抜いたと同時に薙刀のココ猟犬に切り替えて、少し離れた魔法使いの首を刎ね飛ばす事もできるのです! だから無敵なのです!

「コイツ複数持ちだ!」

「はァっ?! そんな大物がなんで?!」

「『乱獲』のボーゼスか?! それとも──」

 薙刀で胴体を切断してから飛んでくる魔法を棒高跳びみたいに回避……空中で回転しながら二丁拳銃のロロ猟犬に切り替えて四人の頭を撃ち抜き、着地する時にポチ猟犬を脚に纏わせて踵落としでさらに一人潰しちゃいます!

「やはりシーラは天才なのでは? ──『破砕する──チェルシー』」

「シ、シーラ?! 『殲滅姫』のシーラだと?!」

 一番仲良しのお友達であるチェルシー猟犬を呼び出してその場で構える……ふふん! この子はとっても強いんですよ!

「ばいばーい! ……『存在する事ノット・アロォウ・を許さずトゥ・イグゼーストゥ』」

 数の少なくなった魔法使いの居る前方へと全力で撃ち出す……ふふっ! やっぱり彼女は強いです! 一気に掃除できたし、道も広くなりましたよ!

「アリシア殿終わりましたよ!」

「え、あっ……そうね?」

 むむっ? アリシアちゃんがなんだか上の空ですね? せっかく張り切って頑張ったのに、もしかして──

「──ご褒美はないのですか?」

「っ?!」

 せっかく頑張ったのになー、シーラ物凄く頑張ったのになー! アリシアちゃん褒めてくれないとか悲しいのです……。

「よ、よくやったわね! ビーフジャーキーもあげちゃう!」

「本当でありますか?! やったー!!」

 アリシアちゃんに撫でられたー! 嬉しいー! しかもビーフジャーキーまで貰ったー! 超嬉しいー! 次も頑張るー!

「おいふぃいでありまふ……!」

 やっぱりこの世で一番美味しいのはビーフジャーキーだと、改めて思うのですよシーラは! アリシアちゃんに撫でられたし、今日は良い日だなぁ。

「……リコリス少尉ともはぐれたし、上手く制御しなきゃ……大きな怪我をしないように……」

「……?」

 アリシアちゃんが何か言ってるけど、とりあえず次も褒めて貰うために魔法使いを見つけようと先を進む。

▼▼▼▼▼▼▼

「チッ! いきなり分断されたか!」

 声を荒らげながら周囲の魔法使いと協力者達を一緒くたに大振りの大剣の一撃によって、上下に分断するガイウス中尉の後ろで私は必死になってアリシア准尉の安否を、彼女に忍ばせた自身の『鴉』の分体から探っていく。

「安心しろ! そのための『殲滅姫シーラ』だ!」

「本当に大丈夫なんだろうな?!」

「見ろ! 飛ばされる前にちゃっかりピエロ野郎を殺してる!」

「……今は信じるしかないか」

 …………ふぅ、良かったぁ! ちゃんとアリシア准尉は無事な様ね。監視を言い付けられていたのに、目の前で見失うどころか死んでしまいました……じゃあ私の首が物理的に飛ぶところだった。
 まだイケメン高身長、高収入の私にだけ優しい男性と出逢ってすらいないのに、死ねないわ。

「仕方ない。俺たちは俺たちでこのまま進むぞ!」

「道案内は任せろ!」

「……あっ! け、怪我とかは私が治せますので仰ってください!」

 いけないいけない……表の任務もちゃんと熟さなきゃいけないよね、大変だけれどしっかりと狩人達変態達について行かなきゃ。
 ……大っぴらに『鴉』を使えれば楽なんだけどな、そうはいかないから辛いのよね。

「先ずは『緋色アリシア』達と合流する事を目標としつつも、子どもを見つけ次第、そちらを優先する!」

「あぁ!」

「了解です!」

 とりあえず、ついでに私達の間で話題になっている『殲滅姫』の実力とやらも分体を通して覗き見しておこう。……それで今回の失敗はチャラよね? ね?

▼▼▼▼▼▼▼
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する

青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。 両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。 母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。 リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。 マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。 すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。 修道院で聖女様に覚醒して…… 大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない 完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく 今回も短編です 誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

ワケあり公子は諦めない

豊口楽々亭
ファンタジー
精霊の加護により平和が守られている、エスメラルダ公国。 この国の公爵家の娘、ローゼリンド公女がある日行方不明になった。 大公子であるヘリオスとの婚約式を控えた妹のために、双子で瓜二つの兄である公子ジークヴァルトが身代わりになることに!? 妹になり代わったまま、幼馴染みのフロレンスと過ごすうち、彼女に惹かれていくジークヴァルト。 そんなある日、ローゼリンドが亡骸となって発見されて……───最愛の妹の死から始まる、死に戻りの物語!! ※なろう、カクヨムでも掲載しております。

処理中です...