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第七章.哀哭の船
1.泣いた魔法使い
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「──うっ、……ここは?」
何かが軋む様な音で目が覚める……どうやら気を失ってしまっていたらしい……いつの間にか知らない空間で倒れていたところ見るに拉致でもされたか? しかし何者かと交戦した記憶はないし、見たところ部屋というより廊下に放置されているように思う。
思い出せ……直前まで俺は何をしていた? リーシャに一声を掛けてから、彼女のために『火』の魔力を得るべく出立してから……それから……。
「……そうか、俺は飲み込まれたのか」
口の中に海水の味が残っている……再度密航しようとして、大量の水を前に喉の渇きを抑えきれないままフラフラと彷徨いた挙句に『魔境・哀哭の船』に喰われたのだったか……我ながら愚かだな。
リーシャに対して大丈夫だの言っておいてこのザマだ……彼女ほどでないにしろ、俺自身も揺り戻しの影響が大きかったという事だな。……リーシャには悪いが、一週間で戻るというのは無理そうだ。
「それにしてもなぜこんな場所に『哀哭の船』が……」
かの魔境は移動するタイプのものではあるが、こんな陸に近い海域にはあまり出現しなかったはず……それに任務に出る前に有名な魔境の最新の所在地は粗方調べて来たが、『哀哭の船』は遥か遠くの外海を彷徨っていた筈だ……それがなぜ『ドーヴァー海峡』なんて場所に出現している?
ここ『ブリーディア島』だけでなく、大陸にも近過ぎる……もしも何か刺激を与えられれば大きな被害が出る可能性が高い。
「……既に俺の様な被害者が居るようだしな」
俺は運が良かったらしい……飲み込まれる時に場所が悪かったりしたのか、身体の一部が喰い千切られた死体や、一緒に飲み込まれた物の下敷きになり、床の染みとなっている者など様々だ……この分では俺以外の生存者は絶望的だな。
……せめて他に誰か生存者が居れば協力して脱出する事も目指せるんだがな。
「とりあえず移動するか」
一応背後を振り返ってみるが……唇が削ぎ落とされたように歪に剥き出した乱杭歯がギチギチと歯軋りをしながらその口を閉じている。……恐らく先ほどの軋む様な音の正体はこれだろう。他人どころか醜悪な化け物の歯軋りで目覚めるなど最悪だな。
……時折『ウ“ゥ"~、ア"ァ"~』等と呻き声が聞こえる奥──おそらく魔境の喉だろう──に向かうのは酷く躊躇われるが……この際仕方ないだろう。
「……呼吸もしているのか」
定期的に吹き付ける生臭い風に顔を顰めつつ歩を進める……早いところ『管理人』を見つけなければならない。
こうした『魔境』には〝大地〟の眷属が必ず居る……自身の主神を悪戯に刺激されないように、現世に悪影響を及ぼさないように、大地が瘡蓋を剥がされてまた出血しないように侵入者に対して様々なアプローチを取る。
人がいくら犠牲になっても気にしないが、自身の管理する『哀哭の船』がおかしな挙動をしているのは看過出来ないだろう。……それを解決する代わりにここから出してもらうなどの交渉はできないだろうか?
「……まぁ解決できればの話だが──ん?」
俺がこれからどうやってここから脱出するのか頭を悩ませていると……なにやら床や壁、果ては天井からまで白いブヨブヨした物が滲み出て来る……突然に現れた不定形の不審物に対して警戒して構える。
今は供物の数が少なく、この『哀哭の船』の中ではI号レベルの簡素な物でさえ補給できない……脱出した後の事も考えると無駄遣いはしたくないんだが……果たして敵なのか否か。
「……チッ! 敵か!」
ある程度の数が揃ったところで動きを止めたと思ったら一斉に身体を震わせながら殺到してくる奴らに舌打ちする。
身体を槍の様に伸ばしての突撃を前方へ転がる事で回避し、天井から布のように広がって捕らえようとするのを近くに落ちていた木片を突き付け、グルグルと巻き取ってから背後に投げる事で追撃も凌ぐ。
「……やむを得ん! 『我が願いの対価は尊厳の藤 望むは障害を討ち払う槍!』」
さすがに魔法も使わずにこの数を凌ぐ事はできないか……薄らと魔力を纏っているようで、人間の膂力程度の半端な物理では怯みもしない……ならば馬鹿正直に付き合わず、リーチの長い魔法でできた槍で都度振り払うのが今できる最善だろう。
……チッ! 少し前なら気にならなかったが、今となっては自分の産み出す槍とリーシャの産み出す槍の違いが顕著に分かってしまって不満が募る。……過分を知ってしまったか。
「ふん!」
斜め前方の上空から降り注ぐ白い粘体を打ち払い、コチラの腹を目掛けて突っ込んで来るものを横に薙ぎ払う……背後から身体の一部を槍の様にして突き込んで来るのを半歩横にズレる事で躱し、剥き出しのそれに槍を振り下ろして切断する。
……まったく悲鳴の一つも上げんな。ある程度の損壊を受けたら行動不能にはなるようだが、一向に感情というものを感じられん……魔物ではなく、この魔境の一部という事か? だとしたらもう俺は管理人に敵と見做されてしまっているのか? ……わからんな。
──ズズゥン!
「……ほかに誰か戦っているのか?」
顔を顰めつながら正体不明の粘体を凌ぎつつ走っていると前方からからも戦闘音が聞こえる……どうする? 生き残りが敵か味方か分からないが、一人で魔境を探索するのは限界が近いだろうし合流するか? それとも敵だった場合、ほぼ逃げ場のない場所で交戦して少ない供物を浪費するリスクを避けて回避するか?
俺がグルグルと頭を悩ませている間にもお互いの距離が近くなっていく……それにこの粘体を凌ぎながらではろくに道も選べん──向こうもコチラに気付いたみたいだな。気配が揺らいだ。
「……敵なら敵で、その時は殺す」
もはや相手にも気付かれてしまったのなら堂々と顔を見てやろうじゃないか……無理に迂回してお互いに顔の見えない相手にビクビクするなんて馬鹿らしい……この魔境の中という異常の場所でそんな事にまでリソースは割けない。
今のうちに殺す覚悟を……追加の魔法を行使する準備をしておこう。
──会敵するまであと五秒。
息が乱れる……無論、キリがなく襲って来る敵に対処しながら敵か味方か分からない相手に向かって走るというのは疲れる。……だがなぜだ、なぜ息が乱れる?
──会敵するまであと四秒。
分からない……なぜ俺の鼓動は激しく脈打つ? バクバクと音をがなり立てる心臓が痛くて張り裂けそうなくらいだ。……まさか魔境に滞在している影響か? 凝り固まり汚染された魔力が毒となっているのか?
……いや違うだろう。この身体の不調は相手に向かって行く毎に強くなっている……つまり敵で、既に攻撃を受けている可能性が高い。
──会敵するまであと三秒。
相手が舐めた真似をして来るなら仕方がない……こちらも相応の対応を取るとしようじゃないか。
激しく脈打つ鼓動を誤魔化すように槍を振るって一度に三体の粘体を薙ぎ払う……荒れる呼吸を整えるように短い呼吸一つで突きを放ち、穿つ。
──会敵するまであと二秒。
もう間も無く顔が見えるだろう……目の前に見える曲がり角でその尊顔を拝謁した後にこの槍で首か心臓を貫いてやる。
──会敵するまであと一秒。
息が乱れる……心臓の鼓動は煩いし顔も熱い……正体不明の敵と会うからといって、ここまで緊張するのはおかしいだろう。
この不調の原因が相手にあると決め付け、逸る気持ちそのままに曲がり角へと足を踏み入れ──
「「──」」
──時が止まる。
「……クレ、ル?」
「……」
引き伸ばされた知覚の中で視界に入った女を見詰める──この女は敵だ。
戦闘のせいなのか狼の面は割れているし、軍服もボロボロ、まだ歳若く本当にそうなのかも疑わしい……だがその手に持つ猟犬が奴が狩人、我々魔法使いの敵である何よりの証拠だろう。
「あっ……」
……なのに、敵である筈なのに……その目の前の女の、敵であるはずの女の瑠璃色の瞳から溢れる涙を見て──
「わっ! きゃっ?!」
──俺は反射的にそのまま女を抱えてその場を駆け出した。
なぜこんな行動を取ったのかは分からない……狩人は俺たち魔法使いの敵である筈だし、この女にも見覚えはない……涙を溜めた瑠璃色の瞳にも、視界の横で流れるピンクオパールの綺麗な髪も、耳を打つ心地の良い声色も……全て記憶にない筈なのに!
「……泣い、て……るの? わ、私……も、よ?」
「……っ!」
──涙が止まらない。
▼▼▼▼▼▼▼
何かが軋む様な音で目が覚める……どうやら気を失ってしまっていたらしい……いつの間にか知らない空間で倒れていたところ見るに拉致でもされたか? しかし何者かと交戦した記憶はないし、見たところ部屋というより廊下に放置されているように思う。
思い出せ……直前まで俺は何をしていた? リーシャに一声を掛けてから、彼女のために『火』の魔力を得るべく出立してから……それから……。
「……そうか、俺は飲み込まれたのか」
口の中に海水の味が残っている……再度密航しようとして、大量の水を前に喉の渇きを抑えきれないままフラフラと彷徨いた挙句に『魔境・哀哭の船』に喰われたのだったか……我ながら愚かだな。
リーシャに対して大丈夫だの言っておいてこのザマだ……彼女ほどでないにしろ、俺自身も揺り戻しの影響が大きかったという事だな。……リーシャには悪いが、一週間で戻るというのは無理そうだ。
「それにしてもなぜこんな場所に『哀哭の船』が……」
かの魔境は移動するタイプのものではあるが、こんな陸に近い海域にはあまり出現しなかったはず……それに任務に出る前に有名な魔境の最新の所在地は粗方調べて来たが、『哀哭の船』は遥か遠くの外海を彷徨っていた筈だ……それがなぜ『ドーヴァー海峡』なんて場所に出現している?
ここ『ブリーディア島』だけでなく、大陸にも近過ぎる……もしも何か刺激を与えられれば大きな被害が出る可能性が高い。
「……既に俺の様な被害者が居るようだしな」
俺は運が良かったらしい……飲み込まれる時に場所が悪かったりしたのか、身体の一部が喰い千切られた死体や、一緒に飲み込まれた物の下敷きになり、床の染みとなっている者など様々だ……この分では俺以外の生存者は絶望的だな。
……せめて他に誰か生存者が居れば協力して脱出する事も目指せるんだがな。
「とりあえず移動するか」
一応背後を振り返ってみるが……唇が削ぎ落とされたように歪に剥き出した乱杭歯がギチギチと歯軋りをしながらその口を閉じている。……恐らく先ほどの軋む様な音の正体はこれだろう。他人どころか醜悪な化け物の歯軋りで目覚めるなど最悪だな。
……時折『ウ“ゥ"~、ア"ァ"~』等と呻き声が聞こえる奥──おそらく魔境の喉だろう──に向かうのは酷く躊躇われるが……この際仕方ないだろう。
「……呼吸もしているのか」
定期的に吹き付ける生臭い風に顔を顰めつつ歩を進める……早いところ『管理人』を見つけなければならない。
こうした『魔境』には〝大地〟の眷属が必ず居る……自身の主神を悪戯に刺激されないように、現世に悪影響を及ぼさないように、大地が瘡蓋を剥がされてまた出血しないように侵入者に対して様々なアプローチを取る。
人がいくら犠牲になっても気にしないが、自身の管理する『哀哭の船』がおかしな挙動をしているのは看過出来ないだろう。……それを解決する代わりにここから出してもらうなどの交渉はできないだろうか?
「……まぁ解決できればの話だが──ん?」
俺がこれからどうやってここから脱出するのか頭を悩ませていると……なにやら床や壁、果ては天井からまで白いブヨブヨした物が滲み出て来る……突然に現れた不定形の不審物に対して警戒して構える。
今は供物の数が少なく、この『哀哭の船』の中ではI号レベルの簡素な物でさえ補給できない……脱出した後の事も考えると無駄遣いはしたくないんだが……果たして敵なのか否か。
「……チッ! 敵か!」
ある程度の数が揃ったところで動きを止めたと思ったら一斉に身体を震わせながら殺到してくる奴らに舌打ちする。
身体を槍の様に伸ばしての突撃を前方へ転がる事で回避し、天井から布のように広がって捕らえようとするのを近くに落ちていた木片を突き付け、グルグルと巻き取ってから背後に投げる事で追撃も凌ぐ。
「……やむを得ん! 『我が願いの対価は尊厳の藤 望むは障害を討ち払う槍!』」
さすがに魔法も使わずにこの数を凌ぐ事はできないか……薄らと魔力を纏っているようで、人間の膂力程度の半端な物理では怯みもしない……ならば馬鹿正直に付き合わず、リーチの長い魔法でできた槍で都度振り払うのが今できる最善だろう。
……チッ! 少し前なら気にならなかったが、今となっては自分の産み出す槍とリーシャの産み出す槍の違いが顕著に分かってしまって不満が募る。……過分を知ってしまったか。
「ふん!」
斜め前方の上空から降り注ぐ白い粘体を打ち払い、コチラの腹を目掛けて突っ込んで来るものを横に薙ぎ払う……背後から身体の一部を槍の様にして突き込んで来るのを半歩横にズレる事で躱し、剥き出しのそれに槍を振り下ろして切断する。
……まったく悲鳴の一つも上げんな。ある程度の損壊を受けたら行動不能にはなるようだが、一向に感情というものを感じられん……魔物ではなく、この魔境の一部という事か? だとしたらもう俺は管理人に敵と見做されてしまっているのか? ……わからんな。
──ズズゥン!
「……ほかに誰か戦っているのか?」
顔を顰めつながら正体不明の粘体を凌ぎつつ走っていると前方からからも戦闘音が聞こえる……どうする? 生き残りが敵か味方か分からないが、一人で魔境を探索するのは限界が近いだろうし合流するか? それとも敵だった場合、ほぼ逃げ場のない場所で交戦して少ない供物を浪費するリスクを避けて回避するか?
俺がグルグルと頭を悩ませている間にもお互いの距離が近くなっていく……それにこの粘体を凌ぎながらではろくに道も選べん──向こうもコチラに気付いたみたいだな。気配が揺らいだ。
「……敵なら敵で、その時は殺す」
もはや相手にも気付かれてしまったのなら堂々と顔を見てやろうじゃないか……無理に迂回してお互いに顔の見えない相手にビクビクするなんて馬鹿らしい……この魔境の中という異常の場所でそんな事にまでリソースは割けない。
今のうちに殺す覚悟を……追加の魔法を行使する準備をしておこう。
──会敵するまであと五秒。
息が乱れる……無論、キリがなく襲って来る敵に対処しながら敵か味方か分からない相手に向かって走るというのは疲れる。……だがなぜだ、なぜ息が乱れる?
──会敵するまであと四秒。
分からない……なぜ俺の鼓動は激しく脈打つ? バクバクと音をがなり立てる心臓が痛くて張り裂けそうなくらいだ。……まさか魔境に滞在している影響か? 凝り固まり汚染された魔力が毒となっているのか?
……いや違うだろう。この身体の不調は相手に向かって行く毎に強くなっている……つまり敵で、既に攻撃を受けている可能性が高い。
──会敵するまであと三秒。
相手が舐めた真似をして来るなら仕方がない……こちらも相応の対応を取るとしようじゃないか。
激しく脈打つ鼓動を誤魔化すように槍を振るって一度に三体の粘体を薙ぎ払う……荒れる呼吸を整えるように短い呼吸一つで突きを放ち、穿つ。
──会敵するまであと二秒。
もう間も無く顔が見えるだろう……目の前に見える曲がり角でその尊顔を拝謁した後にこの槍で首か心臓を貫いてやる。
──会敵するまであと一秒。
息が乱れる……心臓の鼓動は煩いし顔も熱い……正体不明の敵と会うからといって、ここまで緊張するのはおかしいだろう。
この不調の原因が相手にあると決め付け、逸る気持ちそのままに曲がり角へと足を踏み入れ──
「「──」」
──時が止まる。
「……クレ、ル?」
「……」
引き伸ばされた知覚の中で視界に入った女を見詰める──この女は敵だ。
戦闘のせいなのか狼の面は割れているし、軍服もボロボロ、まだ歳若く本当にそうなのかも疑わしい……だがその手に持つ猟犬が奴が狩人、我々魔法使いの敵である何よりの証拠だろう。
「あっ……」
……なのに、敵である筈なのに……その目の前の女の、敵であるはずの女の瑠璃色の瞳から溢れる涙を見て──
「わっ! きゃっ?!」
──俺は反射的にそのまま女を抱えてその場を駆け出した。
なぜこんな行動を取ったのかは分からない……狩人は俺たち魔法使いの敵である筈だし、この女にも見覚えはない……涙を溜めた瑠璃色の瞳にも、視界の横で流れるピンクオパールの綺麗な髪も、耳を打つ心地の良い声色も……全て記憶にない筈なのに!
「……泣い、て……るの? わ、私……も、よ?」
「……っ!」
──涙が止まらない。
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