134 / 140
第七章.哀哭の船
5.羊飼い?
しおりを挟む
「クレル?!」
魔物の拳によって壁にめり込んだ彼の安否が分からない……砕けた壁から大量に噴き出す血がクレルのものなのか、この船のものなのか判別が付かない……ていうか、この魔物──速いッ!!
「『大地を踏み歩くは我らがそ──がぁっ?!」
『ダメだろう? ダメだろう?』
巨体のくせに目に追えないし、狭い通路内では逃げ場もない……ギリギリ猟犬で逸らす事が出来ても、掠っただけでとてつもない衝撃と共に、魔物の魔力が毒の様に全身を蝕む……これを正面からモロに喰らったクレルは大丈夫なのかが分からなくて……焦りが生まれる。
単調に同じ単語を繰り返す、壊れ掛けのラジオから発せられるような魔物の声が酷く不愉快で……いったい何に共感させようとしているのかも分からない。
『あ、あー、痛い? 痛いのか? 痛いのか?』
「ど、どうすれば……」
せっかくクレルと再会する事が出来たのに……彼とまた、また……話す事が出来たのに……なのに……ここでもう終わりだなんて、そんなの受け入れられない!
『ザザッ──ザッーザッ──いいい、いた、痛いのか? いたっ、痛いのか?』
──ゆっくりと魔物が振り返る。
身体中の震えを深呼吸をする事で抑える……時折周囲に炎を飛ばし、ジリジリと近付いて来る粘体に対する牽制とする。
『大丈夫だ俺を信じ、しん……信じろ──ザザッザッーザザッ──大丈夫だザザッ……俺を信じろ?』
──ノイズが走り、不快度が増す声を発する魔物を睨み付ける。
猟犬を握り締めるけれど、掠った左腕がダランとして持ち上がらない……チラリと横目で見てみればぐじゅぐじゅと音を立てながら煙を小さく上げている。……これをクレルは……あの子は……頭部に貰って……今も安否は不明で──
『ザザッザッ──多分大丈夫だろう多分大丈夫だろう』
──絶対に許さない!
『大丈夫だかザザッザッーザッ──らなァ!!』
「アンタなんか大っ嫌いよぉぉぉぉおお!!!!」
大粒の涙を流しながら猟犬を振るう──振り抜かれた奴の拳に触れた瞬間、同極の磁石の様に弾かれる。
上がらない左腕と、弾かれて猟犬を持ったまま間抜けな万歳をしている右腕……完全に無防備になった私目掛けて──クレルの腕が伸ばされる。
『ザザッ──痛てぇじゃねぇか』
「……」
私の顔の横から伸ばされたクレルの拳が魔物の腕ごとその巨体を吹き飛ばす……横目から見える彼の右腕は黒紅の葉脈が走り、絶えず脈打ちながら血を噴き出していて……大丈夫なのかと顔を上げてクレルの顔を覗き見るけれど──
「──クレル、じゃないよね?」
「……」
彼は、クレルは……感情が削ぎ落とされていて、恐ろしい程に無表情のまま黙って佇んでいて……多分だけど、中身が違う。
「……誰?」
「……」
黙ったままの彼はそのまま人差し指を立てて、私の唇の前へと持ってくる。
……何故かその時だけ、こちらを見る目が甘ったるく感じられて……背筋がゾクゾクとしてしまう。
「……Ⅴ号供物が一つ、Ⅳ号供物が一つ、Ⅲ号供物が三つ、Ⅱ号とⅠ号が……無し、か」
そのまま正体不明の彼はクレルの懐をまさぐり、供物を数えて取り出していく……一体何者なのか分からないけれど、味方と見ても良いの……よ、ね?
「『緋色』のお嬢さん、どうか黙って見ていて……それから終わったらこの子をよろしくね?」
「え、あっ……はい?」
そのまま彼は状況が追い付いていない私に頓着すること無く、『うーん、僕が倒すのはまずいか……』なんて独り言をクレルの声で呟きながら魔物へと歩み寄って行く……って、クレルの残り少ない供物を使うつもりなら倒してくれても良くない? あれ、ダメなの?
「『──確かな理性を以て大地に希う 僕は羊飼い 君の代行者である』」
「っ!」
ハッとして顔を上げる。……呑気に混乱している場合じゃないわね……彼は黙って見ていて、それからこの後よろしくって言っていたはず……なら何かが確実に起こるかも知れないんだから、注意して見ていないと。
『ザザッ──おま、おまっ……お前なァザザッザッーザザッ──ダメダロォ? 人を殴っ……ちゃあよぉザザッ』
「『──どうかこの願いを承認して欲しい 君と歩む者の果てなき底を 君が認めなくてどうすると云うのだろう』」
……怖い。ここまで濃密な魔力と大地の気配を感じ取る事なんて……それこそ師匠と一緒に旅をしていた時の、ほんの数回くらいしかない。
……クレルからこれが発せられていると思うと、なんだかとても複雑な想いを抱く。
『ザザッザッーザザーザッ──お説教だ、反省しろ』
「『──お前を殴る』」
彼と魔物の拳が交差し、激しい衝撃音が鳴り響いた──と思ったら両者の右腕がお互いに消失していて……何が起きたのかさっぱり分からない。
「……ん? あぁ君は〝連結した卵〟か、厄介だね」
『ザザッ……ザッーザザッザザッザッー……』
いつ間に殴ったのか、腹のド真ん中と顔の半分までまがが消失している魔物を見ながらそんな事を呟く彼……悠長に喋っている横で消失したはずのクレルの右腕は植物の成長を早送りしているかの様に修復していく。
「君みたいな〝堕落した者たち〟が一番面倒臭いんだよね……手っ取り早く魔人になってくれれば普通に倒せるんだけど、自我もない状態だと所縁のある者の魔力がないと核に届かないし……卵になってるから自我が無い状態では一番強いし、嫌になる」
『ザザッ──お前さ、ダメダロォ?』
「無理やり殺害する事も可能だけど……供物も、この身体の位階も足りないから今は無理だね。……いやぁ困った困った」
彼の言う通り厄介なのでしょう……私たちを襲って来ていた白い粘体たちを取り込んでいっては自身の身体を修復していく魔物の姿が見える。
『お前さ、ダメダロォ? お前ザザッザッーザザッ──ダメダロォ?』
「じゃあ暫くご退場を願おうか──『お前なんか嫌いだ』」
『──ッ!!』
彼が魔法を行使すれば、唐突に現れた鎖に絡め取られた魔物がそのまま消えて行く……恐らく何処かに飛ばされたのだと思う。……鮮やかで、手際が良すぎて見惚れてしまうくらいに美しい魔法だった。
「さて、と……じゃあ『緋色』のお嬢さん? この後頼めるかな?」
「え? あの、貴方は……?」
彼に話し掛けられて我に帰る……そうよ、このクレルの身体を乗っ取っている正体不明の相手が誰なのか、さっぱり分からないじゃない……警戒しつつ誰何をするけれど、まともに答えてくれるのかどうか……微妙ね。
「ごめんね、そんな暇は無いんだ……あっ、もう無理……」
「えぇ?!」
そのまま倒れ込むクレルの身体を慌てて抱き留める……先ほどまで警戒していたのが馬鹿らしくなるくらいに自然と動いてしまったのにも気付かず、急いで何処にも異常が無いかどうか探る。
「クレル! クレル! ……どうしよう、とりあえず移動しなきゃ……」
顔を覗き込んでも、揺さぶってみても何の反応も示さないクレルに不安になる気持ちを抑えながら、彼を支えながら立ち上がる……先ほどのクレルの身体を使っていた人物の正体も、突然に現れた魔物についても……気になる事は沢山ある。けれど──
「──絶対に死なせないんだから」
クレルの左腕を自分の首にかけて、まだ動く右腕で彼の身体を支えながら移動する。……痛み止めや増血剤はまだあったはず……自分の分を使ってでも絶対に彼を救けて、一緒にここから出るんだから!
「あっち行って! 来ないで!」
……だから、邪魔をしないでよ。
「道を……道を開けてよ……!!」
クレルを支え、涙で滲んで霞む視界いっぱいに広がる無数の白い粘体たち……奴らを精一杯に睨み付けながら炎を纏っていく。
▼▼▼▼▼▼▼
魔物の拳によって壁にめり込んだ彼の安否が分からない……砕けた壁から大量に噴き出す血がクレルのものなのか、この船のものなのか判別が付かない……ていうか、この魔物──速いッ!!
「『大地を踏み歩くは我らがそ──がぁっ?!」
『ダメだろう? ダメだろう?』
巨体のくせに目に追えないし、狭い通路内では逃げ場もない……ギリギリ猟犬で逸らす事が出来ても、掠っただけでとてつもない衝撃と共に、魔物の魔力が毒の様に全身を蝕む……これを正面からモロに喰らったクレルは大丈夫なのかが分からなくて……焦りが生まれる。
単調に同じ単語を繰り返す、壊れ掛けのラジオから発せられるような魔物の声が酷く不愉快で……いったい何に共感させようとしているのかも分からない。
『あ、あー、痛い? 痛いのか? 痛いのか?』
「ど、どうすれば……」
せっかくクレルと再会する事が出来たのに……彼とまた、また……話す事が出来たのに……なのに……ここでもう終わりだなんて、そんなの受け入れられない!
『ザザッ──ザッーザッ──いいい、いた、痛いのか? いたっ、痛いのか?』
──ゆっくりと魔物が振り返る。
身体中の震えを深呼吸をする事で抑える……時折周囲に炎を飛ばし、ジリジリと近付いて来る粘体に対する牽制とする。
『大丈夫だ俺を信じ、しん……信じろ──ザザッザッーザザッ──大丈夫だザザッ……俺を信じろ?』
──ノイズが走り、不快度が増す声を発する魔物を睨み付ける。
猟犬を握り締めるけれど、掠った左腕がダランとして持ち上がらない……チラリと横目で見てみればぐじゅぐじゅと音を立てながら煙を小さく上げている。……これをクレルは……あの子は……頭部に貰って……今も安否は不明で──
『ザザッザッ──多分大丈夫だろう多分大丈夫だろう』
──絶対に許さない!
『大丈夫だかザザッザッーザッ──らなァ!!』
「アンタなんか大っ嫌いよぉぉぉぉおお!!!!」
大粒の涙を流しながら猟犬を振るう──振り抜かれた奴の拳に触れた瞬間、同極の磁石の様に弾かれる。
上がらない左腕と、弾かれて猟犬を持ったまま間抜けな万歳をしている右腕……完全に無防備になった私目掛けて──クレルの腕が伸ばされる。
『ザザッ──痛てぇじゃねぇか』
「……」
私の顔の横から伸ばされたクレルの拳が魔物の腕ごとその巨体を吹き飛ばす……横目から見える彼の右腕は黒紅の葉脈が走り、絶えず脈打ちながら血を噴き出していて……大丈夫なのかと顔を上げてクレルの顔を覗き見るけれど──
「──クレル、じゃないよね?」
「……」
彼は、クレルは……感情が削ぎ落とされていて、恐ろしい程に無表情のまま黙って佇んでいて……多分だけど、中身が違う。
「……誰?」
「……」
黙ったままの彼はそのまま人差し指を立てて、私の唇の前へと持ってくる。
……何故かその時だけ、こちらを見る目が甘ったるく感じられて……背筋がゾクゾクとしてしまう。
「……Ⅴ号供物が一つ、Ⅳ号供物が一つ、Ⅲ号供物が三つ、Ⅱ号とⅠ号が……無し、か」
そのまま正体不明の彼はクレルの懐をまさぐり、供物を数えて取り出していく……一体何者なのか分からないけれど、味方と見ても良いの……よ、ね?
「『緋色』のお嬢さん、どうか黙って見ていて……それから終わったらこの子をよろしくね?」
「え、あっ……はい?」
そのまま彼は状況が追い付いていない私に頓着すること無く、『うーん、僕が倒すのはまずいか……』なんて独り言をクレルの声で呟きながら魔物へと歩み寄って行く……って、クレルの残り少ない供物を使うつもりなら倒してくれても良くない? あれ、ダメなの?
「『──確かな理性を以て大地に希う 僕は羊飼い 君の代行者である』」
「っ!」
ハッとして顔を上げる。……呑気に混乱している場合じゃないわね……彼は黙って見ていて、それからこの後よろしくって言っていたはず……なら何かが確実に起こるかも知れないんだから、注意して見ていないと。
『ザザッ──おま、おまっ……お前なァザザッザッーザザッ──ダメダロォ? 人を殴っ……ちゃあよぉザザッ』
「『──どうかこの願いを承認して欲しい 君と歩む者の果てなき底を 君が認めなくてどうすると云うのだろう』」
……怖い。ここまで濃密な魔力と大地の気配を感じ取る事なんて……それこそ師匠と一緒に旅をしていた時の、ほんの数回くらいしかない。
……クレルからこれが発せられていると思うと、なんだかとても複雑な想いを抱く。
『ザザッザッーザザーザッ──お説教だ、反省しろ』
「『──お前を殴る』」
彼と魔物の拳が交差し、激しい衝撃音が鳴り響いた──と思ったら両者の右腕がお互いに消失していて……何が起きたのかさっぱり分からない。
「……ん? あぁ君は〝連結した卵〟か、厄介だね」
『ザザッ……ザッーザザッザザッザッー……』
いつ間に殴ったのか、腹のド真ん中と顔の半分までまがが消失している魔物を見ながらそんな事を呟く彼……悠長に喋っている横で消失したはずのクレルの右腕は植物の成長を早送りしているかの様に修復していく。
「君みたいな〝堕落した者たち〟が一番面倒臭いんだよね……手っ取り早く魔人になってくれれば普通に倒せるんだけど、自我もない状態だと所縁のある者の魔力がないと核に届かないし……卵になってるから自我が無い状態では一番強いし、嫌になる」
『ザザッ──お前さ、ダメダロォ?』
「無理やり殺害する事も可能だけど……供物も、この身体の位階も足りないから今は無理だね。……いやぁ困った困った」
彼の言う通り厄介なのでしょう……私たちを襲って来ていた白い粘体たちを取り込んでいっては自身の身体を修復していく魔物の姿が見える。
『お前さ、ダメダロォ? お前ザザッザッーザザッ──ダメダロォ?』
「じゃあ暫くご退場を願おうか──『お前なんか嫌いだ』」
『──ッ!!』
彼が魔法を行使すれば、唐突に現れた鎖に絡め取られた魔物がそのまま消えて行く……恐らく何処かに飛ばされたのだと思う。……鮮やかで、手際が良すぎて見惚れてしまうくらいに美しい魔法だった。
「さて、と……じゃあ『緋色』のお嬢さん? この後頼めるかな?」
「え? あの、貴方は……?」
彼に話し掛けられて我に帰る……そうよ、このクレルの身体を乗っ取っている正体不明の相手が誰なのか、さっぱり分からないじゃない……警戒しつつ誰何をするけれど、まともに答えてくれるのかどうか……微妙ね。
「ごめんね、そんな暇は無いんだ……あっ、もう無理……」
「えぇ?!」
そのまま倒れ込むクレルの身体を慌てて抱き留める……先ほどまで警戒していたのが馬鹿らしくなるくらいに自然と動いてしまったのにも気付かず、急いで何処にも異常が無いかどうか探る。
「クレル! クレル! ……どうしよう、とりあえず移動しなきゃ……」
顔を覗き込んでも、揺さぶってみても何の反応も示さないクレルに不安になる気持ちを抑えながら、彼を支えながら立ち上がる……先ほどのクレルの身体を使っていた人物の正体も、突然に現れた魔物についても……気になる事は沢山ある。けれど──
「──絶対に死なせないんだから」
クレルの左腕を自分の首にかけて、まだ動く右腕で彼の身体を支えながら移動する。……痛み止めや増血剤はまだあったはず……自分の分を使ってでも絶対に彼を救けて、一緒にここから出るんだから!
「あっち行って! 来ないで!」
……だから、邪魔をしないでよ。
「道を……道を開けてよ……!!」
クレルを支え、涙で滲んで霞む視界いっぱいに広がる無数の白い粘体たち……奴らを精一杯に睨み付けながら炎を纏っていく。
▼▼▼▼▼▼▼
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~
ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。
絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。
彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。
営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。
「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」
転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。
だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。
ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。
周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。
「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」
戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。
現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。
「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」
これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる