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本編
81話 掲げられた旗(フラグ) その15
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モニケンダムの街中に正午過ぎの鐘が鳴り響く頃となる、寮三階の研究室では、
「これはまた良い出来ですねー」
ユーリが小皿の光柱を灯して感心し、ゾーイも確かにと微笑む、
「そうね、ユーリ先生とゾーイのお陰ですね」
フィロメナが上品に微笑み、フロリーナも嬉しそうに光柱を見つめていた、二人はエルマの授業参観を切り上げ折角こちらに来たのだからとアフラにユーリとゾーイとの打合せを頼み込んでいた、王族や軍属と違いあくまでフィロメナとフロリーナは平民である、貴族の傍流ではあるが富裕層とされる立場であり、その夫である学園長やロキュスの権限を用いれば貴族以上の権益を振るう事も可能なのであるが、二人はそうする事を忌避していた、実社会においては二人は平民の立場で活動する事を選択しているという事であり、そうする事で王族や貴族では手が届かない部分での活動が容易となる、特に孤児院への出資や貧困層への対応は貴族には積極的な人物は多いが、富裕層は消極的であり、そういった者達を取り込むのには同じ平民階級の富裕層である方が都合が良かったりする、何よりこの姉妹は根っからの商売人気質であった、となると貴族よりも平民である方が商売人としてより動きやすいという側面もあった、
「私は別に、これはほら、ゾーイの手柄ですから」
ニコリと謙遜するユーリ、ゾーイはムッとユーリを横目で睨む、
「そうね、感謝するわゾーイ」
フロリーナが優しく微笑み茶を手にする、そんなそんなと謙遜するゾーイ、今日二人が顔を出したのは王都の孤児院で作られた小皿の光柱を届ける為とその御礼の為であった、なにもわざわざいいのにとユーリとゾーイは思うも、フィロメナとフロリーナにしてみればとてもではないが礼で済ませられないほどに大きな恩となっており、さらには先日ようやっとこうして形にもなっていた、となればいの一番に報告したくなるのが人情というものであり、またその人情が人の縁をより強固にもしてくれる、人生経験豊富なフィロメナとフロリーナにすれば当然の挨拶であり、訪問なのであった、
「で、どうかしら、先生も納得頂けるかしら」
若干不安そうにユーリを見つめるフィロメナ、フィロメナとフロリーナが見る限り孤児院製の小皿の光柱は良い出来であると思う、そうは言っても比較対象となるものがこの研究所で作られたものしかなく、王都のロキュスの研究所でも似たようなものは研究されているが、それは大規模なものであり、手の内に収まる程に小さいこの小皿の光柱とは目的も性質も大きく異なっている、比べる事ができないのであった、
「あっ・・・えぇ、十分と思いますよ、ただ・・・」
小さく首を傾げるユーリ、暫し考え、
「そう・・・ですね、細かい点を言わせて貰えればもう少し塗料の量は少なくてもいいかと思います、ただ・・・そうすると・・・」
「・・・ですね、インクが多いと起動するのに魔力が増えるのですが、そこが難点と言えば難点ですね、ですが発光時間が伸びると思います、そこは良い点となりますね」
ゾーイが小皿を手にしてユーリの言葉を継いだ、ゾーイが手にしている方は灯していない、故にそこに刻まれた自身が開発した光柱の魔法陣、その丁寧ではあるがやや稚拙に感じる出来栄えに、なるほど子供の手によるものなのだと感じられ、少しばかり和んでしまうゾーイである、
「そうね、そこがなかなか難しくて・・・」
フィロメナが嬉しそうに微笑む、
「そうなのよ、みんなで四苦八苦してなんとか出来上がった時はもう・・・歓声を上げちゃって、あっ、でね、結局ロキュスのところから人を引っ張って来たの」
フロリーナがニコニコと続けた、
「あらま、そうなんですか?」
「そうなのよ、やっぱりね、インクの調合はね子供達にも世話人達にも難しくて、ほら、子供達はまだしも世話人もね、そんな事したことないおばさんばかりだから」
「あー・・・それもそうですかー」
「しょうがないわね、で、一人ね、若くて気の利く女の子がいてね、ゾーイとは面識が無いって言ってたけど、そうなのかしら?」
「・・・気の利く女の子・・・」
ハテと首を傾げるゾーイ、確かにロキュスの研究所にはゾーイ以外にも女性の弟子は数人いた、しかし何気に大規模な研究所である、部署が違うと顔を合わせれば思い出すかもしれないが名前も知らないものである、数の少ない女生同士となれば少しは距離が縮まるものであるが、そうはならなかった、なんとも男社会と言うべきか、研究者気質というべきか、ギスギスしているとは思わなかったが、同僚であるとはいえ他人には興味の無い者が多く、それ故に交流が少なかったのである、
「そうなの、その子もね、あそこでは上手い事使えなかったみたいでね、ホント、駄目な師匠だわ」
フヌーと溜息交じりのフロリーナである、あそことはロキュスの研究所で、駄目な師匠とは夫であるロキュスの事であろう、
「まぁ・・・そうかもですねー・・・」
苦笑する他無いゾーイ、
「でね、そのうち連れて来たいとは思っているの、あと子供達も御礼を言いたいって言ってたし」
「連れて来るのは構いませんけど、御礼は別に・・・」
呟くように答えるゾーイ、
「そこまではいいですよ、上手い事孤児院の運営にお役立て下さい」
ユーリもやんわりと微笑む、あまり遠慮するのも良くないかなとも思うが、孤児院への技術供与は自分達が言い出した事ではない、フィロメナとフロリーナの要望でそうなっている、無論ユーリもゾーイもその志に感銘を受けた故に協力していた、となれば孤児院と子供達から礼を受けるべきは眼前の二人なのである、
「そんな事言わないで欲しいわ、そうだ、子供達もね、こっちで勉強したいって言い出す子もいてね」
「そうそう、やっと勉強の意味がわかったみたいなの、しっかりと勉強すればこんなものも作れるんだって、あれは指導が良かったのね」
「そうよね、世話人達も上手い事言ってくれたもんだわ」
ニコニコと微笑むフィロメナとフロリーナ、それは良かったですと微笑むユーリとゾーイである、
「でね、なんとか生産できるようになってね、取り合えずその二つがやっと成功したものなんだけど」
あっさりと話題を変えるフィロメナ、
「問題としてはあれね、やっぱり子供の手だからかしら、細かい細工が苦手でね」
「あー・・・そのようですねー」
ゾーイが手にした小皿を覗き込むユーリ、ゾーイが気付いて傾けて見せる、ゾーイから見ても稚拙に見えたのだ、その道の権威であるユーリが見れば雑な代物であろう、しかしそれでも光柱としての機能は果たしている、使えるのであれば十分とも思うし、少々歪んでも機能するように魔法陣自体を簡略化しつつ整頓したつもりのゾーイであった、
「だから、その点ね、今後の課題となるかしら・・・」
「でも、もう王家から発注を受けたのよ」
「あらま、流石ですねー」
「フフッ、マルルース様もエフェリーン様も褒めて下さったの、でね、少し考えたのだけど、折角だからこっちのお店ね、エレインさんの所でも売り出せないかと思って」
ヘーと感心するユーリとゾーイ、そこまでは考えていなかった二人である、
「どうかしら?お二人としては認めて下さる?」
一転心配そうに二人をうかがうフィロメナ、フロリーナも少しばかり緊張した面持ちとなる、
「えっ、あっ、まぁ、はい、私としては・・・」
ユーリがゾーイをうかがい、
「えぇ、全然、その、エレインさんが良いとなればなにも問題は無いかと思いますよ」
ゾーイも慌てて答えた、
「それは嬉しいわ、あのね、王都でも売り出そうかと思ったのだけど、マルルース様がそこはまずはエレインさんのお店で売り出すのがユーリ先生達への義理を通せるし、なによりね御恩返しになるかもって事になってね」
「そうなのよ、うちの商会でも取り扱いたかったのだけど、よく考えると客層が少し異なるかなって思ってね」
「先にやはり貴族様からって事になるから」
「そこは譲れないのよねー」
「なにより、ほら、高く売りたいでしょ」
ニコニコと商売人の顔になる二人、そう言う事かと理解するユーリとゾーイ、やはりこの奥様二人も大変に逞しい商人である、王家との繋がりもあり、貴族との繋がりもある、それらを加味し最も受けが良く高く売れる方策がエレインの店であったのだろう、なるほど、あの鏡店なら少々高価でも売れるであろうし、なによりエレインの顔を立て、繋がりを構築できればユーリらとの関係も深まる、となればさらなる商売の種も享受できよう、二人としては自らの商売としては損であるが、未来を見据えた対応策となっている、
「もう、大した商売人ですね」
ニコリと微笑むユーリ、コクコクと頷かざるを得ないゾーイとなる、
「フフッ、お褒めの言葉と思うわね」
「あらっ、それ以外にあるかしら?」
ニコリと微笑み返すフィロメナとフロリーナ、そこから話題はゾーイの研究に移る、下方を照らす形に改良された光柱の試作品を見せられ、これも凄いと絶賛する二人、
「あっ・・・どうだろう?王都でも野菜の栽培とか出来るものかしら?」
ユーリがゾーイに問いかけた、フィロメナとフロリーナは確かにこの形であれば本を読むのも楽だわと試作品の光柱に夢中になっている、現時点では少々大袈裟な形になっており、ゾーイとしてはもっと簡素に出来る筈だと試行錯誤を繰り返していた、タロウの意見も欲しいなと思いつつも、タロウに聞くとあっさりと解決されそうで、それも不愉快なんだよなと妙な意地を張っている、ユーリとしてもゾーイがどこまで出来るのかと期待を込めて見守っていたりした、無論ユーリもゾーイの実力は認める所であり、ここまで出来るのであるから独り立ちさせてしまってもいいかなとも思うが、もう少し実績が欲しいのかなと感じている、このまま光柱と魔法陣の職人として工房か研究所を開くのがゾーイとしてはいいのかもしれないとも考えていた、
「野菜ですか?・・・あっ、タロウさんのあれですね」
すぐに思い出すゾーイ、
「そっ、孤児院を考えるとそっちのがいいのかなって思ってみたりして、無論、ほら、これもいいんだけどね、より・・・なんて言うか、作りやすくて身近なもの?」
「・・・確かにそうですけど・・・まだまだだって・・・それこそ水道の配管とかも欲しいでしょうし・・・」
ムーと首を捻るゾーイである、タロウが建物内でも野菜の栽培が出来るぞと言い出したのはつい先日の事である、それを元に色々と思考しているゾーイ、ユーリやカトカも真剣に考えているらしく、サビナも含めなんとなくその話題になる事が多かった、それも当然ではある、どうしても野菜類もそうであるし麦類もまた天候に大きく左右され不作となると大変な社会問題となるもので、特に都会育ちのゾーイとしては市場に行ってもまるでなにも売っていないという状況を経験したことがある、先の大戦の前のまだ子供の頃で、そうなると王家が拠出する配給所に並ぶことになり、母と一緒に丸一日行列に並び、やっと三日分程度の小麦を手にした記憶があった、それを食べ尽くす度に並びに行く半年程度の期間、母親は申し訳なさそうにゾーイに詫びを入れ、ゾーイはゾーイで状況を良く分かっていなかったが大変な事態である事だけは認識し、大丈夫だと笑顔を見せたものである、その点カトカやサビナ、ユーリは田舎育ちである為か、なんとなれば山に入れば食い物はあるという認識で、そういうものなのかと驚いたゾーイであったりする、
「でも必要なんでしょ」
今朝の打合せでゾーイが熱く語った事を思い出すユーリ、食糧が無いのがなによりもキツイとゾーイは吐露しており、それはそうだと同意する他無かったユーリであったりする、カトカとサビナは今一つピンと来ていなかった、何気にこの二人は食糧に困る経験が少なかったのであろう、二人ともに実家はそこそこ立派な兼業農家であり、学園で勉強させる事が出来る程裕福で、その後も研究所員として十分な報酬を得ている、少なくともユーリのように冒険者としてヒーヒー苦しんだ経験は無い、まぁユーリとしては別に好き好んで苦労する必要は無いと思っているが、
「ですね・・・」
「ん、じゃ、少し相談してみましょうか」
とフィロメナとフロリーナに話しかけるユーリ、ゾーイとしては一旦こっちでそれなりの成果を見てからの方が良いかなと思うも、どうやらユーリは孤児院の労働力に目を着けたらしい、確かにものの数日で小皿の光柱を作り上げてこうして報告に来ている、それだけ熱心に取り組みロキュスの弟子の力もあったであろうが、大した勤勉さと器用さと対応能力であった、しかしこうなると、
「あっ・・・ミシェレさんの意見も欲しいかもですね」
ゾーイがふと呟く、
「ん・・・あっ、そうよね、あの子も使えるわね」
ニヤリと振り返るユーリ、フィロメナとフロリーナが何のことかしらと軽く首を傾げた、
「ですね・・・んー、でも、そっか、今から場所を作っておいて・・・うん、出来る事はありますね」
「でしょう?あっ、それでなんですが」
ニヤリとフィロメナとフロリーナに微笑むユーリ、今度は何かしらと背筋を正す二人であった。
「これはまた良い出来ですねー」
ユーリが小皿の光柱を灯して感心し、ゾーイも確かにと微笑む、
「そうね、ユーリ先生とゾーイのお陰ですね」
フィロメナが上品に微笑み、フロリーナも嬉しそうに光柱を見つめていた、二人はエルマの授業参観を切り上げ折角こちらに来たのだからとアフラにユーリとゾーイとの打合せを頼み込んでいた、王族や軍属と違いあくまでフィロメナとフロリーナは平民である、貴族の傍流ではあるが富裕層とされる立場であり、その夫である学園長やロキュスの権限を用いれば貴族以上の権益を振るう事も可能なのであるが、二人はそうする事を忌避していた、実社会においては二人は平民の立場で活動する事を選択しているという事であり、そうする事で王族や貴族では手が届かない部分での活動が容易となる、特に孤児院への出資や貧困層への対応は貴族には積極的な人物は多いが、富裕層は消極的であり、そういった者達を取り込むのには同じ平民階級の富裕層である方が都合が良かったりする、何よりこの姉妹は根っからの商売人気質であった、となると貴族よりも平民である方が商売人としてより動きやすいという側面もあった、
「私は別に、これはほら、ゾーイの手柄ですから」
ニコリと謙遜するユーリ、ゾーイはムッとユーリを横目で睨む、
「そうね、感謝するわゾーイ」
フロリーナが優しく微笑み茶を手にする、そんなそんなと謙遜するゾーイ、今日二人が顔を出したのは王都の孤児院で作られた小皿の光柱を届ける為とその御礼の為であった、なにもわざわざいいのにとユーリとゾーイは思うも、フィロメナとフロリーナにしてみればとてもではないが礼で済ませられないほどに大きな恩となっており、さらには先日ようやっとこうして形にもなっていた、となればいの一番に報告したくなるのが人情というものであり、またその人情が人の縁をより強固にもしてくれる、人生経験豊富なフィロメナとフロリーナにすれば当然の挨拶であり、訪問なのであった、
「で、どうかしら、先生も納得頂けるかしら」
若干不安そうにユーリを見つめるフィロメナ、フィロメナとフロリーナが見る限り孤児院製の小皿の光柱は良い出来であると思う、そうは言っても比較対象となるものがこの研究所で作られたものしかなく、王都のロキュスの研究所でも似たようなものは研究されているが、それは大規模なものであり、手の内に収まる程に小さいこの小皿の光柱とは目的も性質も大きく異なっている、比べる事ができないのであった、
「あっ・・・えぇ、十分と思いますよ、ただ・・・」
小さく首を傾げるユーリ、暫し考え、
「そう・・・ですね、細かい点を言わせて貰えればもう少し塗料の量は少なくてもいいかと思います、ただ・・・そうすると・・・」
「・・・ですね、インクが多いと起動するのに魔力が増えるのですが、そこが難点と言えば難点ですね、ですが発光時間が伸びると思います、そこは良い点となりますね」
ゾーイが小皿を手にしてユーリの言葉を継いだ、ゾーイが手にしている方は灯していない、故にそこに刻まれた自身が開発した光柱の魔法陣、その丁寧ではあるがやや稚拙に感じる出来栄えに、なるほど子供の手によるものなのだと感じられ、少しばかり和んでしまうゾーイである、
「そうね、そこがなかなか難しくて・・・」
フィロメナが嬉しそうに微笑む、
「そうなのよ、みんなで四苦八苦してなんとか出来上がった時はもう・・・歓声を上げちゃって、あっ、でね、結局ロキュスのところから人を引っ張って来たの」
フロリーナがニコニコと続けた、
「あらま、そうなんですか?」
「そうなのよ、やっぱりね、インクの調合はね子供達にも世話人達にも難しくて、ほら、子供達はまだしも世話人もね、そんな事したことないおばさんばかりだから」
「あー・・・それもそうですかー」
「しょうがないわね、で、一人ね、若くて気の利く女の子がいてね、ゾーイとは面識が無いって言ってたけど、そうなのかしら?」
「・・・気の利く女の子・・・」
ハテと首を傾げるゾーイ、確かにロキュスの研究所にはゾーイ以外にも女性の弟子は数人いた、しかし何気に大規模な研究所である、部署が違うと顔を合わせれば思い出すかもしれないが名前も知らないものである、数の少ない女生同士となれば少しは距離が縮まるものであるが、そうはならなかった、なんとも男社会と言うべきか、研究者気質というべきか、ギスギスしているとは思わなかったが、同僚であるとはいえ他人には興味の無い者が多く、それ故に交流が少なかったのである、
「そうなの、その子もね、あそこでは上手い事使えなかったみたいでね、ホント、駄目な師匠だわ」
フヌーと溜息交じりのフロリーナである、あそことはロキュスの研究所で、駄目な師匠とは夫であるロキュスの事であろう、
「まぁ・・・そうかもですねー・・・」
苦笑する他無いゾーイ、
「でね、そのうち連れて来たいとは思っているの、あと子供達も御礼を言いたいって言ってたし」
「連れて来るのは構いませんけど、御礼は別に・・・」
呟くように答えるゾーイ、
「そこまではいいですよ、上手い事孤児院の運営にお役立て下さい」
ユーリもやんわりと微笑む、あまり遠慮するのも良くないかなとも思うが、孤児院への技術供与は自分達が言い出した事ではない、フィロメナとフロリーナの要望でそうなっている、無論ユーリもゾーイもその志に感銘を受けた故に協力していた、となれば孤児院と子供達から礼を受けるべきは眼前の二人なのである、
「そんな事言わないで欲しいわ、そうだ、子供達もね、こっちで勉強したいって言い出す子もいてね」
「そうそう、やっと勉強の意味がわかったみたいなの、しっかりと勉強すればこんなものも作れるんだって、あれは指導が良かったのね」
「そうよね、世話人達も上手い事言ってくれたもんだわ」
ニコニコと微笑むフィロメナとフロリーナ、それは良かったですと微笑むユーリとゾーイである、
「でね、なんとか生産できるようになってね、取り合えずその二つがやっと成功したものなんだけど」
あっさりと話題を変えるフィロメナ、
「問題としてはあれね、やっぱり子供の手だからかしら、細かい細工が苦手でね」
「あー・・・そのようですねー」
ゾーイが手にした小皿を覗き込むユーリ、ゾーイが気付いて傾けて見せる、ゾーイから見ても稚拙に見えたのだ、その道の権威であるユーリが見れば雑な代物であろう、しかしそれでも光柱としての機能は果たしている、使えるのであれば十分とも思うし、少々歪んでも機能するように魔法陣自体を簡略化しつつ整頓したつもりのゾーイであった、
「だから、その点ね、今後の課題となるかしら・・・」
「でも、もう王家から発注を受けたのよ」
「あらま、流石ですねー」
「フフッ、マルルース様もエフェリーン様も褒めて下さったの、でね、少し考えたのだけど、折角だからこっちのお店ね、エレインさんの所でも売り出せないかと思って」
ヘーと感心するユーリとゾーイ、そこまでは考えていなかった二人である、
「どうかしら?お二人としては認めて下さる?」
一転心配そうに二人をうかがうフィロメナ、フロリーナも少しばかり緊張した面持ちとなる、
「えっ、あっ、まぁ、はい、私としては・・・」
ユーリがゾーイをうかがい、
「えぇ、全然、その、エレインさんが良いとなればなにも問題は無いかと思いますよ」
ゾーイも慌てて答えた、
「それは嬉しいわ、あのね、王都でも売り出そうかと思ったのだけど、マルルース様がそこはまずはエレインさんのお店で売り出すのがユーリ先生達への義理を通せるし、なによりね御恩返しになるかもって事になってね」
「そうなのよ、うちの商会でも取り扱いたかったのだけど、よく考えると客層が少し異なるかなって思ってね」
「先にやはり貴族様からって事になるから」
「そこは譲れないのよねー」
「なにより、ほら、高く売りたいでしょ」
ニコニコと商売人の顔になる二人、そう言う事かと理解するユーリとゾーイ、やはりこの奥様二人も大変に逞しい商人である、王家との繋がりもあり、貴族との繋がりもある、それらを加味し最も受けが良く高く売れる方策がエレインの店であったのだろう、なるほど、あの鏡店なら少々高価でも売れるであろうし、なによりエレインの顔を立て、繋がりを構築できればユーリらとの関係も深まる、となればさらなる商売の種も享受できよう、二人としては自らの商売としては損であるが、未来を見据えた対応策となっている、
「もう、大した商売人ですね」
ニコリと微笑むユーリ、コクコクと頷かざるを得ないゾーイとなる、
「フフッ、お褒めの言葉と思うわね」
「あらっ、それ以外にあるかしら?」
ニコリと微笑み返すフィロメナとフロリーナ、そこから話題はゾーイの研究に移る、下方を照らす形に改良された光柱の試作品を見せられ、これも凄いと絶賛する二人、
「あっ・・・どうだろう?王都でも野菜の栽培とか出来るものかしら?」
ユーリがゾーイに問いかけた、フィロメナとフロリーナは確かにこの形であれば本を読むのも楽だわと試作品の光柱に夢中になっている、現時点では少々大袈裟な形になっており、ゾーイとしてはもっと簡素に出来る筈だと試行錯誤を繰り返していた、タロウの意見も欲しいなと思いつつも、タロウに聞くとあっさりと解決されそうで、それも不愉快なんだよなと妙な意地を張っている、ユーリとしてもゾーイがどこまで出来るのかと期待を込めて見守っていたりした、無論ユーリもゾーイの実力は認める所であり、ここまで出来るのであるから独り立ちさせてしまってもいいかなとも思うが、もう少し実績が欲しいのかなと感じている、このまま光柱と魔法陣の職人として工房か研究所を開くのがゾーイとしてはいいのかもしれないとも考えていた、
「野菜ですか?・・・あっ、タロウさんのあれですね」
すぐに思い出すゾーイ、
「そっ、孤児院を考えるとそっちのがいいのかなって思ってみたりして、無論、ほら、これもいいんだけどね、より・・・なんて言うか、作りやすくて身近なもの?」
「・・・確かにそうですけど・・・まだまだだって・・・それこそ水道の配管とかも欲しいでしょうし・・・」
ムーと首を捻るゾーイである、タロウが建物内でも野菜の栽培が出来るぞと言い出したのはつい先日の事である、それを元に色々と思考しているゾーイ、ユーリやカトカも真剣に考えているらしく、サビナも含めなんとなくその話題になる事が多かった、それも当然ではある、どうしても野菜類もそうであるし麦類もまた天候に大きく左右され不作となると大変な社会問題となるもので、特に都会育ちのゾーイとしては市場に行ってもまるでなにも売っていないという状況を経験したことがある、先の大戦の前のまだ子供の頃で、そうなると王家が拠出する配給所に並ぶことになり、母と一緒に丸一日行列に並び、やっと三日分程度の小麦を手にした記憶があった、それを食べ尽くす度に並びに行く半年程度の期間、母親は申し訳なさそうにゾーイに詫びを入れ、ゾーイはゾーイで状況を良く分かっていなかったが大変な事態である事だけは認識し、大丈夫だと笑顔を見せたものである、その点カトカやサビナ、ユーリは田舎育ちである為か、なんとなれば山に入れば食い物はあるという認識で、そういうものなのかと驚いたゾーイであったりする、
「でも必要なんでしょ」
今朝の打合せでゾーイが熱く語った事を思い出すユーリ、食糧が無いのがなによりもキツイとゾーイは吐露しており、それはそうだと同意する他無かったユーリであったりする、カトカとサビナは今一つピンと来ていなかった、何気にこの二人は食糧に困る経験が少なかったのであろう、二人ともに実家はそこそこ立派な兼業農家であり、学園で勉強させる事が出来る程裕福で、その後も研究所員として十分な報酬を得ている、少なくともユーリのように冒険者としてヒーヒー苦しんだ経験は無い、まぁユーリとしては別に好き好んで苦労する必要は無いと思っているが、
「ですね・・・」
「ん、じゃ、少し相談してみましょうか」
とフィロメナとフロリーナに話しかけるユーリ、ゾーイとしては一旦こっちでそれなりの成果を見てからの方が良いかなと思うも、どうやらユーリは孤児院の労働力に目を着けたらしい、確かにものの数日で小皿の光柱を作り上げてこうして報告に来ている、それだけ熱心に取り組みロキュスの弟子の力もあったであろうが、大した勤勉さと器用さと対応能力であった、しかしこうなると、
「あっ・・・ミシェレさんの意見も欲しいかもですね」
ゾーイがふと呟く、
「ん・・・あっ、そうよね、あの子も使えるわね」
ニヤリと振り返るユーリ、フィロメナとフロリーナが何のことかしらと軽く首を傾げた、
「ですね・・・んー、でも、そっか、今から場所を作っておいて・・・うん、出来る事はありますね」
「でしょう?あっ、それでなんですが」
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「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
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