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本編
82話 雪原にて その5
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その頃六花商会、事務所である、
「なるほど・・・良い出来です」
エレインとマフダを中心にして奥様達が輪になっており、リーニーもその輪の一員となっている、そしてエレインが手にしているのはヒガサであった、
「何とかと思いますが・・・あとは・・・やはり装飾ですねー」
うーんと首を捻るマフダ、奥様達もそうなのよねーと頷き合う、
「ですわね・・・でも、フフッ、なんか可愛らしいわね」
ヒガサを手にして微笑むエレイン、ヒガサの中心となる木製部分は昨日の内に納品されており、こんな無骨な物なのかとマフダらは首を傾げてしまうも、ブラスとリノルトはこういうもんですよと自信満々で、エレインが所持しているエルフの里で作られたというヒガサと比べたいなとマフダは思うも、昨日のエレインは朝からどこかボーッとしており、カチャーも心配そうで、さらにはいつの間にやら姿を消していた、カチャーがソウザイ店に行ったらしいとその行先は把握していた為、なら大丈夫かと一安心するもヒガサについては見事に滞ってしまった、しかしだからといって何もしない訳にはいかず、ましてエレインから早急に作り上げたいと期待されてもいる、となれば取り合えずその骨でしかない木の束に布を縫い付けてみるかとマフダと奥様達は動き出し、ついでにマクラの生産等に取り掛かる、何気に事務所で生産される品はどれも好評で、作れば作る程売れている、そうして昨日の昼過ぎには形となり、こうして朝一番で報告できていた、
「もっと可愛らしくしたいです」
ムフンと微笑むマフダである、布部分の縫い付けは手間は係るが単純作業で、試作でもあって安い布を使っている、しかしこの商品を手にするのは貴族や富裕層である事が想定されており、となればやはり生地には拘りたいし、レースやら刺繍やらで装飾を加え、場合によっては北ヘルデル特産のジャッカローブの布を使いたいとも考えていた、
「そうねー・・・これだけでも十分と思うけど・・・」
エレインが腰を上げてヒガサを開く、マフダと奥様達が若干距離を開け、スッと柔らかく広がるそのヒガサ、あら随分滑らかに動くものだと驚くエレイン、そのまま開ききると、
「あっ、そこで、その先で引っ掛ける形になります」
マフダがヒョイと首を伸ばす、こうねと頷き手元を動かすエレイン、するとピタリと細い木が布を支える事が出来たようで、
「なるほど・・・こうなるんだ・・・」
嬉しそうに肩に持たせかけるエレイン、昨日も出来上がったそれを手にしてマフダも奥様達もリーニーもカチャーも実際に手にして振り回してしまっている、その用途も勿論聞いているが、まずもってその形と、安物の布であっても見た目の斬新さが妙に楽しく心地良かった、そして確かにこれなら日差しを遮れるのかなとその本来の目的をも理解する、
「フフッ・・・なんか、あれですね」
「楽しくなるんですよー」
マフダとリーニーが微笑み、ねーと奥様達も同意する、そうねーと軽く振り回してしまうエレイン、
「あっ、鏡見てみて下さい、すごくお綺麗です」
奥様の一人がスッと場所を空ける、あっそっかと鏡に向かうエレイン、全身鏡の前に立てば、なるほど、中々に様になっている、これはと楽しくなるエレイン、マフダ達もウフフと微笑んでしまう、
「・・・確かに・・・良いわね・・・うん、素晴らしい・・・」
そのヒガサはエルフ作のそれと比べて若干小さいかなと思えた、しかしその小ささが愛らしさを増し、あくまで装飾品の一つとしてみれば必要十分に感じられる、さらにはタロウがこうしたら可愛らしくなるよと与えられた助言に従って、布が張られた部分は緩やかに湾曲しており、顔から肩をすっぽりと覆う形になっていた、なるほど、日よけとするには十分で、なにより貴族の訪問着は基本的に顔意外は露出していない、であればこれで機能的にも十分なのである、そしてまたそれを手にした自身の姿が何とも少女らしくも感じられるし上品にも見えた、服以外の布製品を手にしている為か、顔を隠すその形によるものか、これはまたエルフのそれとは大きく異なる魅力だなと実感するエレインである、
「ですねー、なので・・・どうしましょう?一旦それでお見せします?それともしっかり作り込みます?」
マフダが笑顔のまま指示を仰いだ、本来であれば昨日の内に確認しておきたかったのであるがそれが出来ず、昨日は少しばかり時間を無駄にしてしまった、ブラスからは木部分を10本程納品されており、エレインが手にする一本はあくまで布の張り具合を調べる試作となっている、
「そうね・・・王都でも作っているとの事ですけど・・・どうなっているかは聞いてないのよね、昨日の内に聞けばよかったかしら・・・」
鏡の中のヒガサを見ながら答えるエレイン、
「昨日ですか?」
「そうなのよ、王妃様達がいらっしゃってね、マリエッテも来てくれたの・・・マリエッテ可愛かった・・・」
ポツリと呟き遠い目となるエレイン、またかーと微笑む奥様達、
「でも、まぁ、いいわ・・・」
しかしすぐに正気に戻るエレインである、昨日もそうであるが王妃二人もアンネリーンもユスティーナですらここ数日は演劇の件で忙しいらしく、ヒガサの件はまるで話題に上らなかった、王妃達は王都でも作らせると鼻息を荒くしていた筈が、すっかり忘れているのか職人に任せたままで気にしていないのか、単純に演劇関連に夢中になって気が回らないだけかもしれない、他にも仕事があるであろうし、こちらから催促するのも気が引ける、エレインとしてはヒガサにも演劇にもかまけていられる精神状態では無かったが、
「・・・うん、じゃ・・・どうしようかしら・・・パトリシア様の件もあるし」
スッと振り返るエレイン、
「まずは・・・そうね、これもそうだし、パトリシア様へのネマキね、どう?」
「はい、タオル生地は届いております、寸法は大きめとの事ですよね」
「そうね、ミナちゃんが着ているのを見る感じ、やはりあれね、大きく仕立ててゆったりと着るのが良いみたいね、それに寸法であれば向こうでも調整できますし」
「はい、取り掛かれます」
「じゃ、それと、おくるみね、生まれたての子供の大きさってどうなるのかしら?」
「はい、それなんですが」
と続けるマフダ、奥様達もさて仕事だと動き出す、リーニーはどうやらすっかり普段のエレインに戻ったようだとホッと安堵した、カチャーから様子が変だとは聞いており、実際にリーニーもなんか変だなと感じたもので、しかしどうやら調子を戻したらしい、何があったかは聞いていないが、何かと忙しいエレインである、そういう事もあるよなと考えるリーニーであった。
そして学園では、
「うわっ、おっきい前掛けー」
「こんなのあるんだ・・・」
「あれだ、男用じゃない?」
「あっ、そっか」
「料理人さん用のやつ?」
「かもしんないねー」
とメイド達と志願した女生徒達に新品の前掛けが配られた、それを監督するアフラ、ソフィアもなるほどねーとその一着を受け取っている、
「基本的に皆さんは血で汚れるような仕事には就かない段取りにはなっていますが、どのような状況になるかわかりません、なので、毎日取り替える事になっています、朝はここから持ち出して、帰宅する前にこの脱衣籠に放り込んで下さい、しっかり洗浄します、なので、使い回す形になりますから、皆さん大事に取り扱って下さい」
生活科の講師が説明を付け加える、ハーイと素直に応じる生徒達、ソフィアもまぁこれならまだいいかと早速とその前掛けを着けてみた、ソフィアら主婦が主に使用する前掛けは腰に巻き付け両太腿を覆い隠す程度の大きさで、これは単純に布が大きければ大きい程高価になる為と、その前掛けが覆う部分が炊事やら掃除やらで汚れる為でもある、大してメイド達になると両膝を覆う程度に長い前掛けが主流となり、その長さもであるが幅も広い為腰回りまで覆うように前掛けを着付ける者が多く、その前掛けでもってメイドであるか主婦であるかを見分ける方法もあったりする、無論、主婦でもメイド風の前掛けを好む者もおり、一概には言えないのであった、而してその配られた前掛けであるが、これが何とも大きい、男用かと生徒が口にしているが、女性用兼子供も使えるサイズとなっている、生徒達が使い慣れた前掛けと大きく違う点は首元から上半身を覆い、膝先まで覆う事で、これは肉屋であるとか皮革関連の仕事に携わる、主婦やメイド達とは汚れの質が大きく異なる女性達が使用する前掛けなのであった、
「よく集めたわねー」
ソフィアが身に着けた前掛けを見つめて呟いた、
「はい、苦労しました」
アフラがニコリと微笑む、アフラは今日も近衛の軍装である、さらには若干疲れた顔をしているようで、
「大丈夫?」
思わず心配するソフィア、
「平気です、あれですね、私も少しばかり怠けていたかもしれません」
グッと口元を引き締めるアフラ、
「そんな事は無いだろうけど・・・まぁ、そっか、戦場とパトリシア様の従者ではそうも思えるか・・・」
「ですね・・・あっ、パトリシア様の御側仕えはそれはそれで大変なんですよ、肉体的には全然なんですけど」
「それは分かる」
ニヤリと微笑むソフィア、ウフフと微笑むアフラである、その前掛け、タロウが昨日突然言い出し、アフラも確かにと納得した為に急遽用意されたもので、アフラは北ヘルデルと王都を駆けずり回って集めさせたものであった、タロウ曰く、出来れば両腕を覆うほどの前掛けがあれば尚良いとの事であったが、そのような品は王国には無かった、タロウはポツリとカッポウギは難しいかなと呟いており、それはなんだと思ったアフラであったがそれどころではなく、さらにタロウはエレインさんの所に作ってもらおうか等とも言っていたが、今更そんな事を依頼されても難しいであろうとなり、この職人用の前掛けが大量に用意される事となっている、
「さて・・・じゃ、こっちの準備は・・・向こう次第か・・・」
ソフィアが振り返る、その先には転送陣が五つ並んでいた、昨日の段取りではそこから順次負傷兵が運び込まれる事となっていた、しかしまだ時間的には早い、恐らく戦闘そのものも発生してないであろうと思われる、
「ですね、一度見に行きますか?」
アフラもスッと振り返る、
「・・・別にいいわよ、邪魔になるかもだし」
「そんな、ソフィアさんであれば歓迎されますよ・・・あっ、駄目ですね・・・あっちに巻き込まれたら戻ってこれないかも」
ムーと首を傾げるアフラ、
「そうねー、それはだってユーリがいるし・・・だって、クロノスもタロウもルーツもゲインまでいるのよ、私になにしろってのよ」
フンと鼻息を荒くするソフィア、
「フフッ、そうですね」
ニコリと微笑むアフラである、
「・・・しかし、そうなるとあれね、正午くらいまで暇かしら・・・」
「そうなると思いますけど・・・うん、では、確認してきます、誰か」
アフラが部下に声を掛けた、ハッと進み出る女性の近衛兵、
「戦場に向かいます、転送陣の一つを開きますので、その番に就きなさい、開通させた頃合いを忘れないように、それと不用意に入らぬよう注意する事、何かあればソフィアさんか軍医長に報告しなさい」
凛とした近衛らしい口調となるアフラ、ハッと答える近衛兵、カッコいいなーと微笑んでしまうソフィアであった、そこへ、
「あっ、ソフィアさん、学園長が探してましたよー」
と前掛けを取りに来たグルジアが声をかける、ケイスとサレバとコミンの姿もあった、前掛けを手にして楽しそうにはしゃいでいる、
「えっ、私?」
「はい、折角だからどうのこうのって言ってましたけどー」
「折角って・・・何が?」
「なんでしょう?」
キョトンと首を傾げるグルジア、
「まぁいいけど・・・んー、どうしようかな・・・めんどくさい事になるなら隠れてようかな・・・」
「また・・・そんな事言ってー・・・あれです、休憩室にいらっしゃるのでー」
グルジアがアッハッハと笑いつつその場を後にし、いや、笑えないんだけど・・・と肩を落とすソフィアであった。
「なるほど・・・良い出来です」
エレインとマフダを中心にして奥様達が輪になっており、リーニーもその輪の一員となっている、そしてエレインが手にしているのはヒガサであった、
「何とかと思いますが・・・あとは・・・やはり装飾ですねー」
うーんと首を捻るマフダ、奥様達もそうなのよねーと頷き合う、
「ですわね・・・でも、フフッ、なんか可愛らしいわね」
ヒガサを手にして微笑むエレイン、ヒガサの中心となる木製部分は昨日の内に納品されており、こんな無骨な物なのかとマフダらは首を傾げてしまうも、ブラスとリノルトはこういうもんですよと自信満々で、エレインが所持しているエルフの里で作られたというヒガサと比べたいなとマフダは思うも、昨日のエレインは朝からどこかボーッとしており、カチャーも心配そうで、さらにはいつの間にやら姿を消していた、カチャーがソウザイ店に行ったらしいとその行先は把握していた為、なら大丈夫かと一安心するもヒガサについては見事に滞ってしまった、しかしだからといって何もしない訳にはいかず、ましてエレインから早急に作り上げたいと期待されてもいる、となれば取り合えずその骨でしかない木の束に布を縫い付けてみるかとマフダと奥様達は動き出し、ついでにマクラの生産等に取り掛かる、何気に事務所で生産される品はどれも好評で、作れば作る程売れている、そうして昨日の昼過ぎには形となり、こうして朝一番で報告できていた、
「もっと可愛らしくしたいです」
ムフンと微笑むマフダである、布部分の縫い付けは手間は係るが単純作業で、試作でもあって安い布を使っている、しかしこの商品を手にするのは貴族や富裕層である事が想定されており、となればやはり生地には拘りたいし、レースやら刺繍やらで装飾を加え、場合によっては北ヘルデル特産のジャッカローブの布を使いたいとも考えていた、
「そうねー・・・これだけでも十分と思うけど・・・」
エレインが腰を上げてヒガサを開く、マフダと奥様達が若干距離を開け、スッと柔らかく広がるそのヒガサ、あら随分滑らかに動くものだと驚くエレイン、そのまま開ききると、
「あっ、そこで、その先で引っ掛ける形になります」
マフダがヒョイと首を伸ばす、こうねと頷き手元を動かすエレイン、するとピタリと細い木が布を支える事が出来たようで、
「なるほど・・・こうなるんだ・・・」
嬉しそうに肩に持たせかけるエレイン、昨日も出来上がったそれを手にしてマフダも奥様達もリーニーもカチャーも実際に手にして振り回してしまっている、その用途も勿論聞いているが、まずもってその形と、安物の布であっても見た目の斬新さが妙に楽しく心地良かった、そして確かにこれなら日差しを遮れるのかなとその本来の目的をも理解する、
「フフッ・・・なんか、あれですね」
「楽しくなるんですよー」
マフダとリーニーが微笑み、ねーと奥様達も同意する、そうねーと軽く振り回してしまうエレイン、
「あっ、鏡見てみて下さい、すごくお綺麗です」
奥様の一人がスッと場所を空ける、あっそっかと鏡に向かうエレイン、全身鏡の前に立てば、なるほど、中々に様になっている、これはと楽しくなるエレイン、マフダ達もウフフと微笑んでしまう、
「・・・確かに・・・良いわね・・・うん、素晴らしい・・・」
そのヒガサはエルフ作のそれと比べて若干小さいかなと思えた、しかしその小ささが愛らしさを増し、あくまで装飾品の一つとしてみれば必要十分に感じられる、さらにはタロウがこうしたら可愛らしくなるよと与えられた助言に従って、布が張られた部分は緩やかに湾曲しており、顔から肩をすっぽりと覆う形になっていた、なるほど、日よけとするには十分で、なにより貴族の訪問着は基本的に顔意外は露出していない、であればこれで機能的にも十分なのである、そしてまたそれを手にした自身の姿が何とも少女らしくも感じられるし上品にも見えた、服以外の布製品を手にしている為か、顔を隠すその形によるものか、これはまたエルフのそれとは大きく異なる魅力だなと実感するエレインである、
「ですねー、なので・・・どうしましょう?一旦それでお見せします?それともしっかり作り込みます?」
マフダが笑顔のまま指示を仰いだ、本来であれば昨日の内に確認しておきたかったのであるがそれが出来ず、昨日は少しばかり時間を無駄にしてしまった、ブラスからは木部分を10本程納品されており、エレインが手にする一本はあくまで布の張り具合を調べる試作となっている、
「そうね・・・王都でも作っているとの事ですけど・・・どうなっているかは聞いてないのよね、昨日の内に聞けばよかったかしら・・・」
鏡の中のヒガサを見ながら答えるエレイン、
「昨日ですか?」
「そうなのよ、王妃様達がいらっしゃってね、マリエッテも来てくれたの・・・マリエッテ可愛かった・・・」
ポツリと呟き遠い目となるエレイン、またかーと微笑む奥様達、
「でも、まぁ、いいわ・・・」
しかしすぐに正気に戻るエレインである、昨日もそうであるが王妃二人もアンネリーンもユスティーナですらここ数日は演劇の件で忙しいらしく、ヒガサの件はまるで話題に上らなかった、王妃達は王都でも作らせると鼻息を荒くしていた筈が、すっかり忘れているのか職人に任せたままで気にしていないのか、単純に演劇関連に夢中になって気が回らないだけかもしれない、他にも仕事があるであろうし、こちらから催促するのも気が引ける、エレインとしてはヒガサにも演劇にもかまけていられる精神状態では無かったが、
「・・・うん、じゃ・・・どうしようかしら・・・パトリシア様の件もあるし」
スッと振り返るエレイン、
「まずは・・・そうね、これもそうだし、パトリシア様へのネマキね、どう?」
「はい、タオル生地は届いております、寸法は大きめとの事ですよね」
「そうね、ミナちゃんが着ているのを見る感じ、やはりあれね、大きく仕立ててゆったりと着るのが良いみたいね、それに寸法であれば向こうでも調整できますし」
「はい、取り掛かれます」
「じゃ、それと、おくるみね、生まれたての子供の大きさってどうなるのかしら?」
「はい、それなんですが」
と続けるマフダ、奥様達もさて仕事だと動き出す、リーニーはどうやらすっかり普段のエレインに戻ったようだとホッと安堵した、カチャーから様子が変だとは聞いており、実際にリーニーもなんか変だなと感じたもので、しかしどうやら調子を戻したらしい、何があったかは聞いていないが、何かと忙しいエレインである、そういう事もあるよなと考えるリーニーであった。
そして学園では、
「うわっ、おっきい前掛けー」
「こんなのあるんだ・・・」
「あれだ、男用じゃない?」
「あっ、そっか」
「料理人さん用のやつ?」
「かもしんないねー」
とメイド達と志願した女生徒達に新品の前掛けが配られた、それを監督するアフラ、ソフィアもなるほどねーとその一着を受け取っている、
「基本的に皆さんは血で汚れるような仕事には就かない段取りにはなっていますが、どのような状況になるかわかりません、なので、毎日取り替える事になっています、朝はここから持ち出して、帰宅する前にこの脱衣籠に放り込んで下さい、しっかり洗浄します、なので、使い回す形になりますから、皆さん大事に取り扱って下さい」
生活科の講師が説明を付け加える、ハーイと素直に応じる生徒達、ソフィアもまぁこれならまだいいかと早速とその前掛けを着けてみた、ソフィアら主婦が主に使用する前掛けは腰に巻き付け両太腿を覆い隠す程度の大きさで、これは単純に布が大きければ大きい程高価になる為と、その前掛けが覆う部分が炊事やら掃除やらで汚れる為でもある、大してメイド達になると両膝を覆う程度に長い前掛けが主流となり、その長さもであるが幅も広い為腰回りまで覆うように前掛けを着付ける者が多く、その前掛けでもってメイドであるか主婦であるかを見分ける方法もあったりする、無論、主婦でもメイド風の前掛けを好む者もおり、一概には言えないのであった、而してその配られた前掛けであるが、これが何とも大きい、男用かと生徒が口にしているが、女性用兼子供も使えるサイズとなっている、生徒達が使い慣れた前掛けと大きく違う点は首元から上半身を覆い、膝先まで覆う事で、これは肉屋であるとか皮革関連の仕事に携わる、主婦やメイド達とは汚れの質が大きく異なる女性達が使用する前掛けなのであった、
「よく集めたわねー」
ソフィアが身に着けた前掛けを見つめて呟いた、
「はい、苦労しました」
アフラがニコリと微笑む、アフラは今日も近衛の軍装である、さらには若干疲れた顔をしているようで、
「大丈夫?」
思わず心配するソフィア、
「平気です、あれですね、私も少しばかり怠けていたかもしれません」
グッと口元を引き締めるアフラ、
「そんな事は無いだろうけど・・・まぁ、そっか、戦場とパトリシア様の従者ではそうも思えるか・・・」
「ですね・・・あっ、パトリシア様の御側仕えはそれはそれで大変なんですよ、肉体的には全然なんですけど」
「それは分かる」
ニヤリと微笑むソフィア、ウフフと微笑むアフラである、その前掛け、タロウが昨日突然言い出し、アフラも確かにと納得した為に急遽用意されたもので、アフラは北ヘルデルと王都を駆けずり回って集めさせたものであった、タロウ曰く、出来れば両腕を覆うほどの前掛けがあれば尚良いとの事であったが、そのような品は王国には無かった、タロウはポツリとカッポウギは難しいかなと呟いており、それはなんだと思ったアフラであったがそれどころではなく、さらにタロウはエレインさんの所に作ってもらおうか等とも言っていたが、今更そんな事を依頼されても難しいであろうとなり、この職人用の前掛けが大量に用意される事となっている、
「さて・・・じゃ、こっちの準備は・・・向こう次第か・・・」
ソフィアが振り返る、その先には転送陣が五つ並んでいた、昨日の段取りではそこから順次負傷兵が運び込まれる事となっていた、しかしまだ時間的には早い、恐らく戦闘そのものも発生してないであろうと思われる、
「ですね、一度見に行きますか?」
アフラもスッと振り返る、
「・・・別にいいわよ、邪魔になるかもだし」
「そんな、ソフィアさんであれば歓迎されますよ・・・あっ、駄目ですね・・・あっちに巻き込まれたら戻ってこれないかも」
ムーと首を傾げるアフラ、
「そうねー、それはだってユーリがいるし・・・だって、クロノスもタロウもルーツもゲインまでいるのよ、私になにしろってのよ」
フンと鼻息を荒くするソフィア、
「フフッ、そうですね」
ニコリと微笑むアフラである、
「・・・しかし、そうなるとあれね、正午くらいまで暇かしら・・・」
「そうなると思いますけど・・・うん、では、確認してきます、誰か」
アフラが部下に声を掛けた、ハッと進み出る女性の近衛兵、
「戦場に向かいます、転送陣の一つを開きますので、その番に就きなさい、開通させた頃合いを忘れないように、それと不用意に入らぬよう注意する事、何かあればソフィアさんか軍医長に報告しなさい」
凛とした近衛らしい口調となるアフラ、ハッと答える近衛兵、カッコいいなーと微笑んでしまうソフィアであった、そこへ、
「あっ、ソフィアさん、学園長が探してましたよー」
と前掛けを取りに来たグルジアが声をかける、ケイスとサレバとコミンの姿もあった、前掛けを手にして楽しそうにはしゃいでいる、
「えっ、私?」
「はい、折角だからどうのこうのって言ってましたけどー」
「折角って・・・何が?」
「なんでしょう?」
キョトンと首を傾げるグルジア、
「まぁいいけど・・・んー、どうしようかな・・・めんどくさい事になるなら隠れてようかな・・・」
「また・・・そんな事言ってー・・・あれです、休憩室にいらっしゃるのでー」
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