セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

82話 雪原にて その26

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「うん、違うー、美味しいー」

ミナが満面の笑みをソフィアに向け、

「でしょー、ミナは良い子ねー」

ニコニコと満足そうなソフィア、

「確かにねー」

とユーリもスプーンを咥えて麦粥をシゲシゲと覗き込み、オリビアもこれはと目を丸くし、レインは訳知り顔でうんうんと納得している様子で、

「良い感じだね」

タロウもニコリと微笑んだ、

「でしょー」

ムフフーと微笑み麦粥を口にするソフィア、ミナも嬉しそうにパクパクと麦粥を頬張り、その隣りでガツガツと忙しいのはハナコである、どうやらハナコにも好評のようで、さらにムフフと微笑んでしまうソフィアであった、

「何がどう違うのさ」

ムグムグゴクンと麦粥を飲み込んでタロウとソフィアに問うユーリ、オリビアもうんうんと興味深げに顔を上げる、

「何がどうって言われてもなー」

タロウはゆっくりと首を傾げ、

「そうよねー、さっきも言った通りかしらねー、手間が少し省けて、美味しくなる?」

「だから、その手間はなんとなく分かったけど、美味しくなる方の理屈よ」

「そんなの・・・食べた通りでしょ、ちゃんと芯まで柔らかくなってて、皮もね柔らかい?」

「それだけ?」

「それだけではないような・・・」

オリビアがウーンと首を傾げる、確かにこの圧力鍋で調理された麦粥は一味違っているように感じる、ソフィアらしい味付けの薄さは変わらず、少し失敗したと本人が認める通り若干水分が足りなかったようで、故に普段のそれよりも小麦の粒そのものが感じられる仕上がりとなっている、本来であれば水分が足りないとどうしても煮足りずに固い部分や焦げが発生するものであるがそれも無かった、つまりは全てが何とも絶妙な塩梅となっており、その絶妙な塩梅の上に美味しい麦粥となっているのである、

「タマゴー、タマゴのふりかけー」

ミナがお気に入りの壺に手を伸ばした、あっそれもあったなと大人達も思い出す、麦粥そのものの味に感心しすっかり忘れていたのだ、いや、無くても十分に美味しいと感じられ、味を付け足す必要を感じなかったのもある、

「あれだねー、上手く仕上げるとこうなるんだねー」

タロウもすっかり感心してしまった、食感が実に白米のそれに近いのである、強いて言えば麦飯の米と麦の量を逆転したような食感で、若干の甘さすら感じられた、こうなるとやっぱり白米が懐かしいなーと思うタロウ、しかし白米そのものをまだ発見しておらず、またタロウが食していたような美味しい白米となるには何百年もの研究と品種改良が必要だと思われる、望むべくもないかとすぐに諦めてしまったタロウであった、

「まぁ・・・私としては美味しいからいいけどさ・・・」

ムーと結論を諦めバナナのふりかけに手を伸ばすユーリ、どうにもこのバナナのふりかけは減りが少ない、聞けばミナも生徒達もその独特の渋さが好みではないらしく、逆にテラやエルマには好評のようで、ようは大人の味なのである、

「それでいいのよ、美味しけりゃ」

ソフィアがニヤーと微笑む、

「ですね、あっ、あの鍋、他に注意点とかありますか?お店でも使ってみたいと思うのですが」

オリビアがおずおずと確認する、

「んー、注意点って言ってもねー、さっきも話した通りね、調理時間は短くてよくて・・・」

「あれだ、砂時計を使ってキッチリ計るようにした方がいいぞ」

タロウが自然と口を挟む、

「そこまでやるの?」

ユーリも顔を上げた、

「うん、ほれ、中を見れないからさ、見た目で判断できないだろ?だから、ソフィアはほら、そこらへん勘でやってるからだけど」

「勘ってなによ」

「勘は勘だろ、君の場合は」

「失礼ねー、ちゃんと考えてるわよ」

「そりゃそうだろうけど、お店で出す料理となると失敗できないだろ」

「そうでしょうけど、私だってそれなりにやってるのよ」

「それはいいんだよ、というか・・・あー・・・昔聞いたなー・・・」

スプーンを咥え首を傾げるタロウ、

「なにをさ」

「いや・・・ほら、家庭料理と店の料理の決定的な違い?」

「そんなのあるの?」

「うん、店の料理はね、基本男が作るだろ?仕事として、だから、味が一定なんだってさ、で、それが求められる?」

「そう・・・なの?」

ハテと首を傾げる女性三人、三人が思うに実は店の味にはあまり拘りも執着も無い、それも当然で、調味料が塩と酢と魚醤と黒糖しかない王国にあっては素材の味以外で味の個性を出すのは難しく、つまりはどこで何を食べても似たような味であり、利便性やら新規性やらのみが論じられ、味付けが話題の中心になる事は少ない、それ故に六花商会のソウザイ店が受けているのだ、利便性と油料理やら柔らかいパンやらの新規性が突出しているのである、

「そうなんだと、で、それがね、家庭料理となると女性がね、その担い手になる事が多くて、となるとほら、別にね、お金を取る為じゃないから、きっちりとした料理にはならなくて、さらには気分でさ、味付けが大きく変わる、無論、基本的な部分は同じでもね、機嫌が良い時と悪い時でね、大きく味が変わって、その変化がね、飽きが来ない原因なんだとか、逆に考えれば店の味は飽きるって事なんだよね・・・まぁ、店の味ってさ基本濃いから、より飽きが早いって事もあるかと思うんだけど・・・まぁ、そんな感じ?」

「そう?」

ハテとソフィアがユーリとオリビアに問いかけるも、ウーンと首を傾げるユーリとオリビア、

「・・・まぁ、そういうもんだって事でさ、だから、話しを戻すと、取り合えずほら、圧力鍋を使う時にはね、しっかり時間を計らないと失敗するだろうなって事、で、同じ分量、同じ時間でしっかり調理しないとお店で出せる料理にはならないかもよって事」

理解が得られなかったようだと苦笑するタロウである、フーンと鼻を鳴らす三人、

「で、そっか、後はあれだ、あのまま熱を加えると爆発するのは言ったよね、それと、煮物全般には使えるけど、油料理とかは駄目、それと、鍋の半分程度までしか具材をいられらないって事かな、鍋いっぱいに入れたいだろうけど、それをやると多分爆発するから・・・他にはあるかな?」

「あれね、固いカボチャを柔らかくするのには便利よ、だから、何気にね、使う具材を選ぶのかなーって感じかなー、だから、必要も感じなかったのよねー、私としては」

「そのわりには得意そうじゃないのよ」

「そりゃだって、上手く行ったら嬉しいもの」

ニコーと微笑むソフィア、ミナもニコーと顔を上げ、

「おかわりー」

と叫んだ、エッとミナを見つめる大人達、見ればすっかり麦粥を平らげニマニマと微笑むミナである、

「いいけど・・・えっ、そんなに美味しかった?」

「うん、美味しかった、もっとー」

「あー・・・しょうがないな、待ってなさい」

やれやれと腰を上げるソフィア、人数分の配膳は済んでおり、少量が鍋に残っていた筈で、それはハナコの昼食にしてくれとティルとミーンに頼むつもりであったのである、

「そんなに美味しかった?」

若干心配そうに問うタロウ、

「うん、美味しかった、もっと食べるー」

「そっか、無理してなきゃいいけどさ」

「まったくじゃ」

レインもフンと鼻で笑う、そうしてソフィアが残りの半分程度をミナの皿に盛り付け戻ると、テラ達商会組も起き出してきたようで、早速とオリビアとユーリがなんじゃかんじゃと言い出し、そんなに違うのかと恐る恐ると口にするテラ達、すぐにこれは美味いと好評のようで、さらには生徒達も起き出してきた、普段以上に騒がしくなる食堂と厨房である、それからタロウとユーリはそそくさと荒野に向かい、ミナとハナコが笑顔で送り出す、

「ありゃ、クロノスは?」

昨晩の内に補修された階段を上がり物見櫓の最上階に入るタロウとユーリ、見ればルーツとゲイン、ルーツの部下達はいるがクロノスにリンド、イフナースの姿も無い、下の階にも人はまばらで何か雰囲気が違うなと察するタロウとユーリである、

「おう、姫様が産気付いたらしいぞ」

ルーツがニヤリと振り返り、ゲインも無言で振り返る、

「エッ、マジで?」

「ありゃ、やっと?」

タロウは目を丸くし、ユーリは素直に笑顔となる、

「らしい、なもんで、アフラのねーちゃんがあっちこっちと駆けまわってた、大騒ぎだよ、忙しいもんだわな」

ニヤーと微笑むルーツ、

「そりゃアンタと比べればね」

「なんだよその言い草はよ」

「別にいいでしょ、で、パトリシア様の方はどうなのよ」

「どうもなにもそれしか聞いてねぇよ、なもんで、クロノスも殿下も戻ったよ、さっきまでグダグダしてたんだけどな」

「そっか・・・こっちがそれでいいならいいけどさ、向こうさんの様子はどうよ」

若干呆れつつ帝国の陣地へ目を凝らすタロウ、しかし大した動きは無いようで、昨日同様陣地の前に数千の兵士を並べて警戒しており、大きな動きは見えない、

「ん、朝飯を終えて動き出したかなーって感じだ、今のところはそれだけかな?」

「そっか、じゃ、こっちも転送陣は起動させるか・・・」

「だな、第八軍団だけで相手しろってのはキツイだろ」

「全くだ・・・」

「あっ、例のあれの試用の時間も欲しいんだろ?」

「それもあるんだよ、だから早めに来たつもりだったんだけどさ・・・」

「だろうな、ほれ、軍団長とイザーク殿だったか?と打合せしたぞ」

「そっか・・・えっ、お前が?」

「いや、ヒデオン」

「そりゃそうか、で?」

「うん、まだ下で何かやってる」

「ありゃま」

と振り返るタロウ、見れば確かにヒデオンの姿が無い、

「お前さんが顔出したら呼べってさ、ほれ、あそこ」

ルーツが腰を上げて指差した、見れば確かに数人の近衛や兵士が動き回っている、

「あー・・・じゃ、俺はそっち行くか・・・ユーリはどうする?」

「クロノスがいないと動けないわ、せめてリンドさんがいないとね、勝手に何かやって怒られるのは嫌よ」

フンと鼻を鳴らすユーリ、確かにそれが正しいだろうと理解するタロウにルーツ、

「じゃ、クロノスかリンドさんが来たら向こうに行ったと伝えてくれ、それと、今日の段取りは?」

「大丈夫、何とかするさ、打合せ済み」

ニヤリとタロウを見上げるルーツ、その部下達も大きく頷く、

「じゃ、それで、まぁ、なんとでもなるっちゃなるんだけどさ、あっ、それよりもお前、誰かに指導してるのか?」

「なにをだよ」

「監視魔法」

「一応な」

「マジで?」

「そりゃお前、俺はな、楽して稼ぐのが信条よ」

ルーツがニヤーと嫌らしく微笑み、ムッと睨み返すタロウとユーリ、

「・・・お前ね、どこまで本気なんだよ」

「どこまでもだよ、で、ほれ、似たような事ならさ時間は短いが数人は使えるようになってる」

「マジで?」

「おう、マジだ」

そりゃスゲーと素直に感心するタロウとユーリ、

「だって、あれ、お前、結構難しいぞ」

「そりゃそうだ、しかしよ、出来るやつは出来るもんだ、お前もそう言ってたろ?」

「そうだが・・・いや、大したもんだ、お前、学園の講師も勤まるんじゃないか?」

「ちょっと、それは聞き捨てならないわね」

ムスッとタロウを睨むユーリ、

「いや、しかしさ、ルーツのあれが難しいのはお前も知ってるだろ?」

「そりゃそうだけど、であってもよ」

「ヘヘン、俺をな、そこらへんの頭でっかちの学者様と一緒にするなっての、人見の才は口だけじゃないんだよ」

自慢気にニヤつくルーツ、アッと目を見開いてルーツを見つめるタロウとユーリ、まったくもってその通りであった、ルーツのその独特の才、何気に奇妙な魔法に関してはソフィアやユーリを凌ぐものでありまたタロウでさえそこまで出来るのかと感心するものばかりで、何とも使い難いんだか便利なんだかよく分からない特殊なものばかりなのである、しかしそれらはやはり使いようなのであろう、特に人見の才とやらでその人物の適性を見抜き、その才に合わせた魔法を教え込めば確実に習得されるであろう事は確実であり、なにより本人にも無理がない、

「だから俺が見るによ、お前はまぁ別としてもだ、ユーリには使えないだろうがな、多分だがトーラーか、あれも使えるぞ監視魔法」

「・・・マジで?」

「マジだ、まぁ、誰にも言ってないがさ、そこそこ使えるぞあの御仁、クロノスもあれだな、あれが気に入る奴ってのは変な奴が多いな」

アッハッハと笑うルーツ、それはいいかもなと腕を組んで考え込むタロウであった。
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