セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

14話 踏み出す前の・・・ その2

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「はいはい、ごめんなさいね、お待たせしちゃった?」

1階へ下りたソフィアは玄関口で佇む二人に声を掛ける、

「いえいえ、ちょっと早かったですかね」

えへへとブノワトは愛想笑いを浮かべ、その背後には小柄な女性が落ち着かない様子で立っていた、

「どうぞ、入って、お茶用意するから」

ソフィアは下りてきた勢いそのままに厨房に駆け込む、

「あら、こんにちわ」

ソフィアが姿を消した瞬間にサビナが現れる、

「あら、サビナさん、こんにちわ」

「どうしたの?打合せ?」

サビナの持前の社交性の良さは至る所で発揮される、ここでも食堂に入ってきた二人をサビナは柔らかく迎え入れ大通り側のテーブルに誘った、

「忙しい所ごめんねー」

再びパタパタとソフィアが食堂に入ってくる、3人の視線が集まる中それぞれに茶を出すと、自身も席に着いた、

「それで、ガラス屋さん?」

「はい、こちら、コッキー・メーデル、メーデルガラス屋の跡取り娘です」

ブノワトは隣りに座る女性をそう紹介した、ほらっとブノワトは女性に先を促す、

「・・・は、はい、すいません、コッキー・メーデルです、メーデルガラス屋です、宜しくお願いします」

コッキーは緊張しているらしい、ボソボソと小さな声と上目遣いでソフィアを見る、

「はい、宜しくね、私はソフィア、でこっちが」

「サビナよ、ソフィアさんがここの寮母で、私は・・・なんだろう、研究所職員?」

そう言ってサビナは笑みを浮かべる、

「学園職員でいいんじゃないですか?」

ブノワトはサビナの疑問形の自己紹介に笑い乍ら訂正を入れる、

「でも、それだと何か硬くない?」

「研究所職員だと何やっているか分かりませんよ」

「そう?じゃ、学園職員にしようかしら・・・」

サビナとブノワトの軽口はそこで途切れ、

「で、なんだっけ?」

サビナはソフィアに水を向ける、ソフィアは口元で笑顔になると、

「ガラス屋さんに特注したいものがあってね、それで、ブノワトさんに紹介頼んだの」

「へー、なんです?また、珍奇なものですか?」

サビナの遠慮の無い言葉に、

「酷いわねー、画期的な商品になると思うわよ、それこそ、あらゆる食料品店が欲しがるような」

「えー、本気ですかー」

ブノワトは楽しそうに笑い、

「またまたー」

サビナも笑顔になる、しかし、一人静かにしているコッキーは胡散臭そうなものを見る目でソフィアとサビナを観察している、

「それで、早速なんだけど」

とソフィアは身を乗り出す、ハイハイとブノワトは自前の黒板をソフィアの前に置いた、

「ガラスで作って欲しいのはこんな感じのガラス板なのね、出来るだけ透明度の高いガラスを使って欲しいのだけどー」

ソフィアはブノワトとコッキーに向けて大雑把であるが理解し易い絵を黒板に描いていく、

「ふんふん、そうなると、このガラスとガラスの繋ぎ目はどうするんです?」

「えっとね、そこは相談したかったんだけど、目の詰まった木でできるだけ軽い物がいいかなと思うんだけど、その理由がね・・・」

ソフィアの構想する製品の用途が明るみになるにつれ、三人の顔は明暗を繰り返した、

「つまり、これは、あれですか、作った料理を飾って置く棚ですか?これは、楽しいですよ」

やっとコッキーが発言した、オリビアは除くとしても見知らぬ大人二人を前にして警戒心と羞恥心が先に走っていたが、ソフィアの商品案を理解してその面白さに意の一番に気付いたようである、

「そう?ありがとね」

ソフィアが楽し気に笑みを見せると、

「でね、サビナさんを呼んだのは、もう一つの大事な仕掛けについてなのよ」

と今度はサビナに向き直る、

「まずは、冷たい商品についてなんだけど」

ソフィアは黒板にさらに書き足すようにして説明を加えた、

「・・・なるほど、上部に置くのは何か意味があるんですか?」

サビナは実に真面目な口調である、ソフィアとの付き合いの中でこれほど真剣で真摯な口調は初めてではなかろうか、

「そこがミソってやつでね、冷気は上から下に降りるのよ、反対に」

「熱気は上に上がる?」

ブノワトは黙っていられずに口を挟んだ、

「そう、であれば、このケースの中に、上下に仕掛けを仕込めるようにすれば、冷たいもの・・・というか冷やしておきたいものと温かくしておきたいものの2種類を任意に使い分ける事ができるってわけよ、どう?」

ソフィアは白墨を置くと3人に問うた、

「なるほど、うん、うん、面白いと思います」

サビナは感心して何度か頷き、

「しかし、かなり高額になりません?」

ブノワトは現実的な部分で懸念を表した、

「あの、こんな大仕事、私でいいんですか?」

コッキーはおろおろと列席者の顔を見比べる、

「うん、確かにね、金額面はかなり難しいわね・・・」

ソフィアは腕組みをして鼻息を荒くする、

「でもね、実はなんだけど、今であればやり放題なのよね、なんでかと言えば」

とサビナを見る、

「この最も大事な冷却と放熱をする仕組みについてはホルダー研究所が何とかしてくれるでしょ、それも研究としてそれを担ってくれるわけで、さらに実際の運用もエレインさん達がやってくれるわ、そうなると、私としてはよ、やってみない手はないのよ」

ソフィアはそう言って胸を張った、

「言い切ったよ、この人は」

サビナは呆れた視線をソフィアに投げかけつつ、

「でも、まぁ、出来なくは無いかしら・・・」

と視線を宙に漂わせる、

「でも、ガラスですし、その、木の加工を考えると、かなり、その、こちらだけでも高額になりますよ」

「あぁ、それは私が、この商品はエレインさん達へのお祝いのつもりだからね、お祝いの品に糸目をつけてはいけないわよ」

ソフィアは尚も胸を張るが、ブノワトとコッキーは懐疑的である、

「では、そうですね、一旦見積を、ガラス部分だけ出してみますね」

コッキーはブノワトを見る、

「・・・そうね、それに材料費と加工費か、それでこちら側の金額は出せるわね」

「はい、では、そうですね、詳細な寸法等伺って良いですか?」

「勿論よ」

にやりとソフィアは笑みし、打合せは煮詰まっていった。



「あー、ブノワトねーさん、まだいたー」

ミナとレインが奥の部屋から駆け出して来た、

「あら、騒がしいのが出て来たわねー」

サビナの満面の笑みに、

「むー、騒がしくないしー、今日は静かに見学してたもーん」

ミナは分かりやすくソッポを向きつつソフィアに纏わりつく、

「ソフィー、大工さん今日のお仕事終わったってー、ソフィに言っておいてって、言ってた」

「はいはい、じゃ、どうする?ブノワトさんも今日は帰る?」

「そうですね、見積もありますし、明日またお邪魔したいですね、コッキーはどう?」

「私も、はい、明日またお邪魔します、その今日はありがとうございました」

「はい、こちらこそよ、今後とも宜しくね」

ソフィアは愛想よく笑みを返す、

「では、明日も同じような時間で良いですか?」

ブノワトが腰を上げると、

「えぇ、いいわよ」

とソフィアの返事とほぼ同時に、

「あ、思い出した、ブノワトねーさん、あの・・・えっと、これ、これもっと欲しいのー」

ミナが悲鳴に似た声を発した、何事かと皆の視線が集まる、

「これこれ、まだある?あのね、お嬢様に贈り物したいなって・・・思って・・・」

急に声が小さくなった、ミナがこれといって手にしているのはブノワト手製の木工細工である、

「勿論、まだあるわよ、お店に来る?」

「ホント、うん、行く、行きたい」

ミナはピョンピョンと跳ねるがピタリとその動きを止めると、

「ソフィー、行ってもいい?」

妙にしおらしくソフィアを見上げた、

「いいけど、お嬢様ってレアンお嬢様の事?」

「うん、あのね、お嬢様のね、薔薇を見せて貰った時にね約束したの・・・」

「約束したのかー、どういう約束?」

「えっとね、同じのでお嬢様に似合うのを選んであげるって・・・」

「なるほど、うん、良いわよ、じゃ、レインと一緒に行って選んできなさい」

「ホント、ソフィ、ありがとう、嬉しいー」

ミナが遠慮がちであったのは、ソフィアにこの件を話していなかった為に怒られると思っていたからであろうか、ソフィアの正式な許可が下りた事でミナは心底安堵したようである、

「うん、そうねぇ、他に贈りたい人はいる?」

「うん、うんとね、お嬢様のお母様とあの男の人ー」

「そうか、そうよね、良くしてくれたしね、じゃ、3人分買ってきなさい」

「いや、お金はいいですよ、もらえないですよー」

ブノワトは困った顔をする、

「それは駄目よ、親しいからこそ対価はしっかり受け取るべきだわ、レイン、お願いね」

ソフィアは懐から銅貨の入った革袋をレインに手渡す、

「うむ、任された、では、行くか、ミナ」

「うん、行く、ブノワトねーさん、行こう、行こう」

困った顔を崩せないブノワトの足にミナは縋り付いて手を引いた、

「気を付けてね、じゃ、また明日ね、ブノワトさん、コッキーさん」

ソフィアはニコヤカに4人を見送ると、

「で、サビナさんにお願いなんだけど」

と腰を上げかけたサビナに向き直るのであった。
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