セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

18話 思いがけない贈り物 その3

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その日の夕食は若干華やかなものになった、先日の余り食材が工夫されて新たな料理として提供され、さらに食後のスイーツも用意されている、これはオリビアの発案でブロンパンにホイップクリームを塗り付け中央に黒糖を入れて丸めた品となり、長細い形状のまま噛り付く料理である、その柔らかくも独特の食感と食べやすさに絶賛の声が上がるが、見た目に関しては及第点を得られなかった、

「うん、でも新商品としては十分じゃないかな?」

アニタはやや厳しく吟味しつつも経営陣らしくその品を認め、

「そうですね、うーん、ブロンパンを四角く形成してみても良いと思いますね」

ケイスもその品の断面を見つつ改善案を口にする、

「美味しいよー、イチゴ味のはー?」

ミナが頬をパンパンに膨らませてはしゃいでいる隣りで、

「そうじゃのう、見た目以外は合格じゃな」

レインもうんうんと頷いている、

「大方、好評のようですね」

オリビアはほっとした様子でエレインを見る、

「そのようね、調理段階で難しい点はありますの?」

エレインも料理を楽しみつつも問題点を探る、

「はい、やはりこのホイップクリームの作成が難しいですね、時間がかかりますのと労力が・・・」

「なるほど、そうなりますとどうでしょう?何か対策はありますか?」

「私からは何とも・・・」

とオリビアが困り顔で首を捻る、

「そういう事は我が研究所に相談なさい」

ユーリがスクッと席を立った、

「どうやって作るのか知らないけど、あれよ、道具の製作はお手のものよ」

さらにそう言って踏ん反り返る、カトカとサビナはまたかーと言った顔でユーリを見上げていた、

「そうですね、オリビア、ユーリ先生に相談を、それと料理についてはソフィアさんも交えて」

急に名前を出されたソフィアは、

「えっ、私も?」

と驚いて振り返る、

「はい、勿論です、得物と人はあるもの使えです、今日そのように学びましたので」

とエレインはニコヤカな笑顔をソフィアへ見せる、

「あら・・・薬が効きすぎたかしらね?」

ソフィアはそう言ってオリビアを見ると、

「えっと、何とも、はい・・・すいません・・・」

とオリビアは困った顔で恐縮するのであった。



その後、陽が完全に落ちた後、珍しくも食堂内には活気があった、エレインの召喚した光の精霊が天井付近をユラユラと舞う中で調理器具の打合せに花が咲く、

「んー、タロウが一度作ろうとして失敗したのがあってね、それが良いんじゃないかな?」

ソフィアが壁の黒板になにやら珍妙な形状の品を思い出しながら描いていく、

「うーん、その丸くなっている所は棒状なんですか?」

「うん、針金でこう丸みを帯びた蕾みのような、あぁ、イチジクね、形としてはイチジクそのものでね、こっちが持ち手」

ソフィアは描いた図に丸みを強調するように加筆し、持ち手部分は言葉でその点を記入する、

「針金ですか?ごっつくなりそうですけど」

「あー、うん、タロウもね、この曲線が上手くいかなくて、最終的にはなんか放り出してたわ、まぁ、あの人は鍛冶屋ではないからね、ブノワトさんなら良い感じに仕上げてくれるかもね」

「それはあれですか?結局人力なんですよね」

サビナの問いに、

「そうね、これは人力ね、でも今のように木べらで混ぜ合わせるよりは各段に楽になるって言ってたような・・・気がするわね、うん」

ソフィアは何とも頼りなさげに頷いた、

「なに?ソフィアも実際の品は使った事がないの?」

「だからー、タロウも放り出したって言ったでしょう、これがあると楽になるぞとか言っておいて結局出来上がらなかったんだってば」

「そうですか、すると、ブノワトさんに依頼して取り合えず作って貰えばいいんじゃないですか?」

「それはつまらないわよ、こういう時こそ我が研究所の叡智が必要なのよ」

ユーリは憮然と言い放ち、

「つまり要点は、液体を掻き混ぜる事よね、その針金イチジクでなくても楽に掻き混ぜられれば良いのよ、それはつまり」

とユーリはサビナを見る、

「あ、例の回転機構ですか・・・」

サビナは何やら感付いて腕を組む、

「そうですね、所長の仰る通りです、回転運動についての開発は棚上げしてましたね、うん」

とカトカも理解したらしい、

「そうよ、発案時点では装置そのものの大きさやら回転運動の出力の低さがあって実際には作成しなかったでしょ?それも計算上の事だったし、試しにって事で魔法陣だけは仕上げてあるし、もう少し工夫して何とかなりそうじゃない?」

「そうですね、液体を混ぜる程度には使えると思います、それに装置そのものが大きくなっても・・・まぁ幾らでも小さい方が良いですが・・・」

研究所組があれやこれやと相談に忙しくなる中、

「ありゃー、やっぱり先生たちって凄いんだねー」

ジャネットが溜息交りに感心する、

「そうですねー、何がなにやらですよー」

ケイスも呆気にとられつつ3人の会話を理解しようと頭を働かせている、

「そうですわね、では、こちらとしては、そうですね、先程のオリビアの試作品についてなんですが」

生徒達は生徒達で新商品に関する打合せが始まった、一人取り残された感のあるソフィアは、うーんと悩みつつもこの時とばかリに食堂から離れようと静かに歩を進め、厨房の戸口を潜ろうとした瞬間、

「あ、それとソフィア」

最悪のタイミングでユーリに呼びつけられる、

「あなたとサビナがやってたあれ、どうするの?」

「あれって、どれ?」

「あの冷却装置です、そろそろ形になりそうなので御相談したかったのですが」

サビナが済まなそうにソフィアに向き直った、

「あー、そうね、あれね」

ソフィアはやれやれと溜息を吐きつつ研究所組の輪に加わるのであった。



翌日、ソフィアは日常業務を終わらせると3階へ姿を表した、ミナとレインも付いて来ておりミナはカトカの了解を得て本棚の前に陣取った、

「ありゃ、サビナさんは?」

「研究室ですね、そうだ、昨日話してなかったんですが、こちらの件も報告したいのですが・・・」

カトカはニヤリと笑みする、

「こちらの件?」

とソフィアは小首を傾げて、

「魔法石への魔力の蓄積です、所長と相談しながら良い感じになりつつあるのですよ」

「あー、へー、そっかー」

ソフィアはそんな事もあったかなと曖昧な笑みを浮かべて研究室へ向かう、

「なんじゃ、面白い事をやっておるのか?」

レインはソフィアのすぐ後ろでニヤついた、

「面白いといえばそうだし、うーん」

とソフィアは誤魔化しつつ研究室へ入る、中は雑然と様々な器具が置かれ一部の壁には大量の木簡が山と詰まれている、こちらに越してからそれほどの時間は経っていない筈であるがもう何年も使用されたような空気感が漂っていた、

「ありゃー」

とソフィアは整理したい欲求が鎌首をもたげるが、まぁ、女性3人がこれでいいなら別に等と考えつつも、その行きつく果てが以前の女子寮の惨憺たる姿である事を思い出し、どこかで指導の必要があるかしら等と考え直す、

「あ、おはようございます、昨日はすいません」

器具に埋もれた壁際の机にサビナは丸い身体をさらに丸くしていた、

「いえいえ、大丈夫よ、で、どう?」

ソフィアは床に転がる様々な物を踏まないようにサビナに歩み寄る、

「はい、所長と相談しまして、こんな感じです」

とサビナは席を立ち机の上の2種類の陶器板を見せた、

「なるほど、これが操作板、で、これが作動板ね」

一瞥してソフィアはそれぞれの役割を見抜く、

「あら、流石ですね、で、これが所長の案で導入したグリーンスパイダーの蜘蛛の糸です」

サビナは二つの板を繋ぐ太く白い紐を手に取った、

「なるほど、すると、サビナさんの要望は叶えられたのかしら?」

「はい、十分かと思います、で」

とサビナはソフィアへ向き直る、

「そうね、実際の品についての話ね、では・・・」

とソフィアは周囲を見渡しつつ、

「ゆっくり話せるところに行こうか?黒板か木簡があれば・・・」

「そうですね、ここでは難しいですね」

サビナは机の上をガサガサと探り黒板を2枚取り出すと、

「個人部屋へ行きましょう、あら、レインちゃんも興味あるの?」

レインはソフィアの背後で用途不明のガラス容器を覗きこんでいる、

「ふむ、中々興味深い形をしているの、これは何をするもんなんじゃ?」

「あー、それはねー」

サビナは笑い乍ら用途を説明する、

「なるほどのー、うむ、面白いな、他にはどんなのがある?」

「他にはねー」

とサビナは話しかけて、

「後で、でいい?先にソフィアさんと打合せしたいかなーって」

サビナの申し訳なさそうな声に、

「ふん、しようがないのー、ソフィア、後程遊びに来ても良いか?」

「えっ、うーん、カトカさんとサビナさんの邪魔じゃなければいいけど、レインが来るとミナも来るでしょう?」

「ミナなら本棚の前に座らせて置けばよい、儂はこっちの方に興味あるぞ」

レインは手にしたガラス容器越しにソフィアを覗き見る、

「そうですね、こちらとしては構いませんよ、レインちゃんならもう立派な大人ですしね」

サビナは柔らかく笑みする、

「そう、じゃ、あれね、二人のお許しが出た時だけね」

とソフィアはレインの頭を撫で回す、

「うむ、それで良いぞ」

レインは満足気に踏ん反り返った、

「でも、今は打合せが先ね」

とサビナは先に立って個人部屋へ向かうのであった。
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