セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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19話 スリッパとお掃除?魔法 その8

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ソフィアとオリビアが洗い物を終えて食堂へ戻った、ミナとレインは宿舎へ引っ込んだが、他の面々は何やら話し込んでいる様子である、御丁寧にエレイン得意の光の精霊が天井付近に浮かんでいた、

「で、エレインさんどうしたの?」

「はい、ソフィアさん、今日お使いになられた魔法を是非ケイスさんに指導をお願いしたいのです」

「あー、あれー」

とソフィアはうーんと首を右に左に傾ける、

「どういう魔法なんですか?」

と何故かカトカが喰い付き、サビナもいつもとは違う瞳でソフィアを見ている、

「何をしたの?」

とユーリは杯を片手に聞いてきた、

「あなた、また呑んでるの?」

とソフィアは眉を顰めるが、

「いーじゃない、リシア様のお酒よ、呑まない方が失礼だわ」

「部屋でも呑んでるでしょ、控えなさいよ」

はーいはーいとユーリは適当に返事をする、

「あの・・・どういった魔法なんですか?」

話の中心になりかけていたケイスがおずおずとソフィアに問う、

「うーん、どうと言われるとちょっと困るかしら、タロウさんの独自開発したものでね、実は正式な名前も無いのよ」

「タロウさんの使う魔法って大概そうよね、あの人どっか・・・じゃないな、思いっきりズレた人だしね、ま、私も世話になったけどさ」

とユーリ、

「あ、ユーリの方が教えるの上手いでしょ、ユーリも使えるじゃない、ほら、水を汲んだり、傷痕の消毒をしたり、毒を吸い出りしたやつ、あれよ」

「え、あれ?」

とユーリはソフィアを見ると、

「あれで掃除?」

と確認する、

「うん」

「・・・そうか、そういう事か、それでこんなにピカピカなの?」

食堂の床は光の精霊の動きに合わせて鈍くその姿を照り返している、

「そうよ、エレインさんにちょっと教えてみたんだけど、私にはやっぱり人の指導は向かないかなーって」

とソフィアはやや困った顔になる、

「んー、まぁ、まだ、難しいかー、少しはマシになったとは思うわよ、ね、オリビアさん?」

「え、あ、はい、そうですね、調理の指導はとても分かり易いですよ、実践が主ですが」

とオリビアは突然に話を振られつつも、以前ユーリが評したソフィアの件を思い出しつつ答えた、

「それとこれとは別じゃないの」

とソフィアは目を細める、

「違わないわよ、料理だって言語化するのは難しいと思うわよ、魔法だって・・・ねぇ」

とユーリはカトカを見る、

「はい、言語化という点に関して言えば、調理手法も曖昧な点が多いですが、魔法に関しては基本的に思考とその方向性、それから体内の魔力の制御と言い換える事が出来ますので、体外の事象である調理と比較する事は単純には・・・」

「はい、そこまで」

と流麗に話し出したカトカの言葉を遮ると、

「要するに料理を教える事ができれば魔法も教えられるわよ、まぁ、その人の適正はあるけどもね」

「んー、そうかしら?」

「そうよ、じゃ、皆でやってみる?私が補佐するから、やってみなさいな」

「そんな簡単に」

「私がやってもいいけど、ほら、お酒呑んじゃったし、魔法は止めておくべきよね」

と杯を片手にユーリはニヤついた、

「このー」

とソフィアは頬を曳き付かせる、

「ほら、皆待ってるわよ、取り合えず見せてあげなさいよ」

何処までも他人事のようにユーリは言い放つ、しかし、その言葉通りに生徒達は情熱的な視線でソフィアを見ており、カトカとサビナの視線はそれとはやや違った熱を帯びていた、

「はー、もう、じゃ、いい?」

とソフィアは生徒達に向き直ると、

「えっとね、空間魔法の発動に関してなんだけど」

と静かに言葉を選びつつ講義を始めた、カトカの話した通りに思考の方法と方向性、魔力の流れる場所と感覚を悩みながらも言葉にする、そして右手を拳にするとその中に何事かを囁きかけると、

「こうなるの」

ポンと小さな破裂音の後に右手の平に暗黒色で球形の力場を形成して見せた、おおーと歓声が上がる、

「感覚的にはあれね、魔法障壁ってあるでしょ、あれの亜種って感覚なんだけど、あれは弾く方向性で、これは吸い込む方向性、って感じなんだけど・・・ユーリ合ってると思う?」

心配そうにユーリを見る、

「うん、大丈夫よ、合ってる合ってる」

ユーリは酔いも手伝ってかニヤニヤと眺めている、

「もう、でね」

とソフィアは思考しつつ、

「この状態だと実は何も吸い込まないのね」

と席を立ってスリッパ用の端切れの山に力場を翳した、端切れはそよとも動かない、

「そこでもう一つ、吸い込みたいものをできるだけ具体的に思い浮かべつつ」

左手の人差し指に別の魔法が発動された、

「これをこうね」

と右手首に触れる、力場がユラリと動いた、

「で、こうすると」

と再び端切れの山に右手を翳す、すると幾つかの端切れが勢いよく力場に吸い込まれた、

「うん、こんな感じ」

と満足そうに頷くと、

「で、入れたものは出さないと駄目なのね、出す時はこうね」

と再び左手人差し指に魔力を集め右手首に触れる、フォっと空気の流れる音がして力場から端切れが舞い散った、

「すごい、ソフィアさんすごいです」

ケイスは真剣にソフィアの講義を聞いていたが思わず感嘆の声を上げる、

「うん、これって、学園の先生達以上なんじゃないか?」

ジャネットもその驚きを隠さず、

「いや、聞いてはいましたがこれ程とは・・・」

「そうですね、所長の言う通りでした」

カトカとサビナも目をむいている、

「まだよ」

とソフィアは強く言い放つ、

「空間魔法の要点はここ、この力場を納める事にあるの、見ててね」

とソフィアは目を閉じて何事かを唱える、すると左手にも右手のそれと同様の力場が発生する、

「これでこのように」

と二つの力場を静かに合わせた、力場はゆらりゆらりと揺れやがて音も無く姿を消す、ふぅとソフィアは一息ついて、

「ケイスさんにとっては嫌な経験だろうけど」

と前置きし、

「空間魔法と他の魔法の大きな違いは二つ、発動している間は魔力が使われ続ける事と、納め方、どちらも自分の力量を正確に知っておかないと致命傷よ、魔力の枯渇は意識を失うし、納め方を知らないとケイスさんみたくなるわ、この場合はそうね軽くて右腕の消失、重いと・・・」

言葉を切ってケイスを見る、ケイスはその視線に複雑な顔となった、

「以前、ユーリがケイスさんの事を褒めていたけど魔力量についてはまったくその通りよ、納め方を知っていればあんな状況には陥らないわね」

とソフィアは結んだ、

「うんうん、なんだソフィアもやれるようになったじゃない、大した先生ぶりよー」

「な、何よその上から目線、むかつくわー」

ソフィアがユーリを睨むが、ユーリはどこ吹く風と杯を煽って、

「で、補足するわね」

と詳細について付け加えるように話し出した、少々酔っているとはいえ講師の肩書は伊達では無く、ソフィアが語らなかった呪言についてと、空間魔法そのものの認識について、それから適正に関する考察等々をペラペラと話し続け、

「実際に練習するときは三人以上でやること、これは魔法練習の基本でしょ、それとこの場で今現在扱える人は、そうね、カトカとサビナ、それとケイスさんの三人ね、エレインさんとジャネットさん、それとオリビアさんは適正の問題もあるけど、その前に魔力不足かしら・・・魔力不足と言えば」

とカトカとサビナを見ると、

「あんた達もギリギリだと思うわよ、たぶん、指で数えるくらいしか発動できないんじゃないかしら?」

「え、そんなに魔力を使うのですか?」

とカトカが驚くと、

「そうよ、初めて会った時から言ってるでしょう、勉強だけでは潜在魔力は増えないって、あんたら二人とも学園では最優秀だったでしょうけど、そういう点ではケイスさんみたいな天然の才能には勝てないものよ」

はーと二人は頷いた、

「で、実際にやってみる?」

とソフィアが生徒達を見るが、皆神妙な顔である、

「・・・はい、ケイスさん、やりましょう」

静かになった食堂でエレインはスクッと立ち上がった、

「え、エレインさん?」

ケイスは不思議そうに見上げる、

「私とオリビアで補佐するから、ケイスさんはこの魔法を習得するべきです」

何やらその目には熱いものが滾っている、

「うん、なら私も補佐するよ、多い方がいいだろう」

とジャネットが立ち上がる、

「え、ジャネットも」

「そうですね、ケイスさん、ここは諦めて習得して下さい、一朝一夕では無理だとしても、だからこそ身に着けるべきです」

オリビアも立ち上がった、

「えっと」

と当の本人のケイスは何とも困った顔で三人を見上げるが、

「ふふ、いい友達に出会えたわね、そうでしょ」

とソフィアの暖かい視線に、

「はい」

とケイスも元気よく立ち上がるのであった。
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