セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

文字の大きさ
189 / 1,471
本編

24話 お嬢様と4本フォーク その12

しおりを挟む
「ソフィアさーん、今日はなにー?」

日暮れが近くなり帰寮したジャネットがのそりと厨房へ顔を出した、

「今日は珍しい料理よー、初めて食べると思うわねー」

ソフィアは機嫌が良いらしい、鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気である、

「そっかー、あー、疲れたー」

ジャネットは丸椅子にドカリと腰掛け作業台に突っ伏した、

「あら、珍しいわね」

「あー、聞いて下さいよー、もー、皆して虐めるんですよー、あれは憶えたか、これは大丈夫かって、もー、パウラもケイスも厳しすぎますよー」

「そっか、それは良かったわ」

ソフィアは鍋から視線を動かさずに適当に返事をする、

「良くないですよー、私だってちゃんと講義には出てるし、憶えてるつもりなんですけどー、いっぱいいっぱいなのにー、あいつらは頭の出来が違うんだからー、もっと優しくしろってのにー、あーもー、嫌だもー」

「そっか、でもあれよ、そうやって気にかけて貰ってるうちが花ってものよ、見捨てられちゃったら相手して貰えなくなるわよー」

「そう、そうなんでしょうけどー」

ハァーと大きな溜息を吐くジャネット、

「うん、こんなもんかな」

ソフィアは鍋の様子を見ながらザルを手にして中身を掬い出す、すぐさまにそれを水で洗って、

「これでいいと思うんだけど・・・」

と真っ白く長い物体を摘まんで口に運んだ、

「うん、良い感じだとおもうかな」

ソフィアは振り返り、

「ジャネットさん、味見してみて」

「あ、いいですよ」

ジャネットは立ち上がりソフィアの隣に立つ、

「え、これ何ですか?紐?」

「ふふん、美味しいわよ、あ、まだ味が付いてない状態だから、そう思って食べてみて」

「はー?」

ジャネットは小首を傾げつつその紐を摘まむと口に運んだ、

「ん、あ、冷たくてシコシコしてますね、でも、柔らかくて、ん?うん、初めての食感です、あ、でも、おいし」

「でしょ、私も初めて作ったんだけど、これは良いわね、定番にしましょう、ちょっと面倒だけど」

ソフィアも上機嫌である、

「へー、凄い、あ、もう少しいいです?」

「いいけど・・・あ、一本だけよ、それ以上はダメー」

「ぶー、ソフィアさんにまで意地悪されたー」

ジャネットはおどけつつももう一本を口に入れる、

「んー、美味しー、あ、でも、あれですね、味が薄い?」

「薄いというか、無いのよね、お塩を掛けるかスープに入れて食べるのよ、だから、夕飯まで待ちなさいね」

「なるほど、分かりました、待ちます」

「うん、宜しい、さ、明日試験なんでしょ、頑張んなさい、愚痴なら聞いてあげるから」

「あー、いいです、ちょっと元気でました」

ジャネットはウーンと大きく伸びをすると、

「うん、やるか」

と踵を返すのであった。



「はい、今日の料理は皆さん初めてだと思います」

配膳を終えたソフィアはテーブルに着き不思議そうな顔をしている面々を見回した、

「えっとね、その4本フォークを使って食べてほしいんだけど、その白い物体は長細いのね、で、こんな感じでフォークに巻き取って口に運ぶの」

ソフィアは木製のフォークを器用にクルクルと回して真っ白い紐状の物体をフォークに絡めた、

「で、これ自体は味が薄いからお塩を軽く振るか、小皿のスープに浸して食べるのね、で、スープはしょっぱいから注意して、直接飲むものではないらしいから、半分くらいかな、浸して食べてみて、それからはお好みで調整すること、それと、煮物は普通に食べて良いわよ、あ、ついでに言うと、その茸はなんと裏山で採れました、それと山菜も、レインに感謝するように」

「おおーー」

っと静かな歓声が起こる、

「では、いただきましょう」

ソフィアは率先してフォークを使って見せる、なるほどとその所作を真似て皆がフォークを手にして白い紐を口に運んだ、

「んー、美味しい、珍しい食感です」

「冷たい、柔らかい、けど、弾力がある」

「うん、これは美味しい、なんだろう、え、初めて食べる感じ」

「そうですね、不思議ー、このスープは何だろう、魚醤と何か?でも、合いますね」

「うん、魚醤、好きじゃなかったけどこれなら美味しいな」

それぞれに感想が口をつく、

「良かった、お気に召した?」

ソフィアの問いに、

「うん、美味しい、ミナ、これ好きー」

「うむ、流石ソフィアじゃな、タロウのよりも美味いと思うぞ」

ミナとレインの太鼓判を頂いてソフィアも御満悦となる、

「オリビア、これは教えてもらったの?」

エレインが皿を睨みつけてオリビアに問う、

「すいません、お嬢様、今日はお手伝いはしてないのです」

しょんぼりと項垂れるオリビア、

「ソフィアさん、あの」

「はいはい、また作るから、その時はお手伝いお願いね、結構な力仕事だから」

ソフィアはオリビアに笑いかけ、オリビアはほっとした様子で食を進める、

「そっか、なるほどね、これはあれね、このフォークが無いと食べにくいわね」

ユーリがしげしげと木製フォークを見る、

「そうなのよ、作りたいなーとは思ってたんだけど、ナイフとスプーンでは難しいかなーって」

「タロウみたいに棒2本で食べれば良いじゃろう」

「あれは普通の人には無理でしょ、あ、でも、あれも便利といえば便利なのよね、今度挑戦してみる?」

「むー、確かになー、まぁ、タロウが来た時でいいじゃろ」

「そうねー」

「棒2本?」

「タロウさんってどういう人なんでしょう」

ジャネットとケイスが首を傾げるが、すぐに忘れて料理に向かった、

「ふー、美味しかったー、お代わりある?」

ユーリが一皿平らげて振り返る、

「あるわよー、あ、じゃ、持ってくるから好きに取りなさい、みんなも急がなくていいわよ、十分あるからねー」

ソフィアは席を立つと厨房から鍋を抱えくる、

「はい、どんだけ食べるか分からなくて作り過ぎちゃったかもだから、食べ過ぎないようにねー」

ドンと空いたテーブルに鍋を置く、

「じゃ、早速」

ユーリが席を立ち、サビナがそれに続いた、ジャネットが席を立つとミナとレインも後に続き、やがて全員が3杯程度は食したようで、

「苦しいー、食べ過ぎたー」

「つるつる入っていくのが良くないんですよー」

「食べやすいのも考えものですー」

「ほら、言わんこっちゃない」

そう言うソフィアも苦しそうにしている、

「でも、美味しかったなー、茸も山菜も美味しかったー、レイン様、ありがとね」

ジャネットがレインに礼を言うと、

「うむ、感謝せよ、余は満足じゃ」

苦しそうにお腹を摩るレイン、

「うん、次からはもうちょっと少な目でいいわね、初めての料理はこれだから」

ソフィアは苦笑いを浮かべ、皆はうんうんと苦しみながらも笑顔を見せた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

処理中です...