セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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35話 秋のはじまり その2

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「で、もう一つ、これはブラスさんが作れる・・・のかどうか、かな?」

ソフィアは別の木簡を取り出すと皆の前に静かに置いた、

「わ、カッコイイー」

「そうね、それに、使いやすそう」

「なるほど、これは理にかなってますわね」

「えっと、これは・・・この発想は分かりますが・・・確かに俺よりも・・・」

女性3人は素直に喜び、ブラスは難しそうな顔である、

「そうね、これはもう家具屋さんの仕事ですねー」

ブノワトが絵図を見ながらそう言うと、

「うん、ここまでくると、俺の手には余るかな・・・家具屋、それも貴族向けの家具屋になるんだろうな・・・」

ブラスも悩みながらも同意する、

「そうだよねー、ま、そうなると、作る作らないは好きにしたらいいわ、説明するとね」

ソフィアもうんうんと頷いた、ソフィアが見せた図面は鏡台である、引き出しが幾つかついた小さな机の正面に縦長の鏡が設置されている、机自体も小さくその上で書類仕事等は出来ないと思われる大きさである、しかし、鏡を主体と考えればその利便性は簡単に想像でき、また、女性達には実に魅力的に見えた、

「で、重要な点は幾つかあって」

ソフィアは机の高さや引き出しその他、当然とも言える点を静かに解説すると、最後に鏡を指差した、

「で、一番大事な事、この鏡なんだけど、鏡をこうやって開きたいのよね」

ソフィアは別の木簡を取り出して重ね置く、そこには鏡が3つ並べられていた、中央には大きく縦長の鏡、その脇には中央の鏡の丁度半分程度の幅の鏡が図示され、注釈が書き添えられている、

「まぁ、どういう事ですの?」

エレインが興味津々で身を乗り出す、

「えっとね、正面の鏡の半分の大きさになるんだけど、両脇にこう鏡が開くようにしてあげたいのよ、で、使わない時には畳んでおけるような?」

ソフィアは虚空に浮かんだ壁に対して両手を裏表にして説明した、

「あー、あれですか両開きの扉みたいに?」

「そうそう、その上で、重要なのは、開いた鏡の角度ね、これをこう自由に角度を決められるようにすれば・・・ま、あれね、難しく考えなくていいか、ほら、普通に蝶番か何かで支える形にして、手を話しても勝手に閉じない程度?そうすると、顔の側面が脇の鏡に映るのよ」

ソフィアは自分の顔を中心にして両手で鏡を表現して見せる、

「そうですね、はい映ります、あ、そっか、側面かー」

コッキーがポンと手を叩いた、

「これは良いですわ、絶対に売れます」

エレインが興奮気味に鼻を鳴らす、

「どう?単純な品なんだけど面白いと思わない?」

「はい、確かに単純ですね、でも」

「うん、これは一人一台欲しくなるかも・・・」

「勿論ですわ、想像するだけで楽しくなりますわ」

女性3人への受けは抜群である、

「あー、お前さん方がそういうならいいんだろうなぁ・・・」

対してあまりピンときていない様子のブラス、

「なに言ってるのよ、机と鏡を合わせるのは私も考えていたけど、この鏡の使い方は凄いよ、これこそ発明だよ」

ブノワトが快哉を叫び、

「そうですよー、それに、何かあれですよ、自分だけの空間って感じかも」

コッキーも楽しそうにはしゃいでいる、

「そうですわね、ふふ、男には分からないんですよ」

「そうねー、男には分からないわよねー」

女性4人を前にしてブラスはこれ以上無いほどのしかめっ面を見せ、

「ま、これは開発に時間がかかるんじゃない?さっきの話だと家具屋さん巻き込まないとだし、貴族相手となるとそれなりに全体の見栄えも良くしなきゃだし」

ソフィアはエレイン達の反応に微笑みながら問題点を上げた、

「はい、でもあれかな、この家具の部分を発注して、鏡の部分はこっちで作るって感じで、出来ないかな?」

「うーん、できるかな・・・うん、それならまぁ、うちの大工でも出来るけど・・・」

「試作品はそれで作ればいいんじゃない?最初から豪華にしないで、机の高さとか、鏡の大きさとか調整して」

「そうだね、家具屋に発注するにしても試作品を見せれば楽だしね、うん、でも、これならすぐにかかれるかな?」

「あー、じゃ、適当な机探すか・・・それと鏡と鏡の連結部分だな・・・蝶番で止めるにしても強度が欲しいから、木枠を厚めに作ってか・・・うん、収まりはまぁなんとかなるかな・・・」

「それと鏡も、大鏡に近いけど、もう少し高さが欲しいのかな?」

「でも座った状態で顔が見えれば・・・」

「あ、でも、合わせ鏡を使うときってある程度こう上方も見たいじゃないですかー」

「へー、コッキー使いこなしてるのねー」

「えへへ、母ちゃんと一緒にいろいろ遊んでます」

「あ、そういうの大事よねー」

「はい、で、上の方の余白?っていうか空間っていうのかな、この部分が無いとなんか圧迫感があるんですよね」

コッキーは両手で自分の頭の上をまさぐるように振り仰ぐ、

「あ、それ分かるかも」

「ですよねー」

「あー、お前さんもおふくろと一緒に毎日のように鏡見てるもんなー」

「そうだよー、でね、やっぱりこう大きければ大きいほど何ていうか気持ちは良いのよね」

「ですよねー、大鏡を二つ並べてみたりもしたんですけど、解放感が凄いですよ」

「解放感ねー」

ブラスは眉を顰め、

「で、この品の場合、脇は逆に狭める感じにして、上は高さが欲しいのかなって」

「なるほど、そうかも」

「それと、さっきの床置きの鏡とまではいかなくても全身が見えるように?」

「あー、そうね、うん、そうなると、着替えの時にも使えるし、うん、存在感もあるし、室内装飾としても恰好が付くわね」

「だよね、だよね」

「なるほど、あ、なら、事務所にも、もう一枚置こうかしら?ギルドに持って行ったやつは、返してくれそうにないしなー」

エレインは職人二人の楽しそうな様子に若干嫉妬した、

「うん、なら、これも好きに作ってみなさいな、期待してるわよー」

ソフィアも二人の様子に任せてよいかなと判断する、

「ふふ、そうですね、楽しみですわね」

「えへへ、お任せください」

「はい、しっかり作らせます」

「え、お前さんがやるんじゃないのかよ」

「しっかり、作らせます」

ブノワトがジロリとブラスを睨み、ブラスはヘーヘーと小さく不満を口にした、

「あら、そうなると、一番難しそうかなって思ったけど、これが一番早いかしら?」

ソフィアは茶に手を伸ばしつつ、一息吐いた、

「そうですね、鏡そのものへの変更が少ない点でこれの方が早いかもです」

「でも、あくまで試作品だぜ」

「それでもいいよー、使ってみたいしー」

「そうですわね、大きい鏡は何となく分かりますけど、この3つの鏡はどう見えるか興味がありますわ」

「あー、会長がそう言うなら・・・」

「うん、うふふ、楽しくなってきた」

コッキーがほくそ笑む、

「そうね、それと、どう?あと二つほど思い付いたのがあるんだけど、聞く?」

ソフィアは茶を啜りつつ4人に問う、

「え、まだあるんですか?」

「是非、聞かせて下さい」

エレインはさらに前のめりとなる、

「えっと、これは図面を書くほどじゃないかなって思ってね、まずは・・・あれ」

ソフィアがふいに暖炉へと振り向いた、暖炉の前ではミナとレインが静かに読書に勤しんでおり、急に視線が集まり、何事かと二人の顔が上がる、

「ミナちゃんとレインちゃんですか?」

「うんにゃ、その上」

ソフィアは向き直るが4人の視線は暖炉とマントルピースの上を彷徨っている、そして、

「あー、もしかして・・・」

コッキーが気付き、

「そうね、そういう事ね」

エレインも気付いたようである、

「どう?」

意地悪そうにソフィアは二人を見つめ、

「はい、なるほど、はい、売れますね、でも」

「うん、鏡そのものへ手を入れる必要は無いですよね」

「そ、そういうこと」

「えっと、どういう事?」

「うん、御免、どういう事だ?」

ブノワトとブラスが恥ずかしそうに二人に問う、

「もー、鈍いなー夫婦でー」

「そうですわね、似た者夫婦でしょうか」

コッキーとエレインは嫌らしい笑顔を浮かべるのであった。
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