セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

文字の大きさ
329 / 1,471
本編

37話 やっぱりニャンコな編み物とか その9

しおりを挟む
夕食前、食堂には続々と人が集まってくる、

「あ、ジャネットさん、研究会はどうでした」

エレインが食堂へ入ると、ジャネットとケイスがミナとレインと共に鏡の前で髪留めを手にして楽しそうにはしゃいでいた、

「あ、エレイン様ーこれいいねー」

ミナがサッと振り向いてエレインへ駆け寄る、その髪には2本の異なる髪留めが刺さっており、前回よりも利便性の増したそれらをミナは大変気に入った様子である、ピョンピョンと楽しそうに跳ねた、

「まぁ、可愛い、良く似合ってますよ」

「でしょ、でしょ、ケイスがやってくれたの」

「すごい使い易くなったねー、流石ねーさんだよー」

ジャネットの頭にも髪留めが遠慮無く刺さっている、

「ジャネット、それ使いすぎ」

ケイスが笑いながらレインの髪を梳いている、レインはいつも通りの仏頂面であるが、悪い気はしていないようである、素直にケイスに髪を任せ、髪留めを着けると顔の向きをかえてはほくそ笑んでいる、

「ジャネットさん、使ってみてとは言いましたが、遊んでいいとは言ってないですよ」

エレインはその浮かれようにやや辛辣な視線をジャネットへ向けるが、

「えー、ほらー、どういう角度で止めればいいかの実験だよー」

ジャネットは鏡越しに微笑みつつさらに2本3本と髪留めを増やしている、

「まったく、で、研究会はどうでした?」

「あ、すごかったよー、実習室に入りきらなくて講堂に場所を移してさ、ね?」

「はい、学園の女性がみんな集まった感じでしたねー」

ジャネットとケイスは件の研究会に参加したようである、オリビアは店番の為早々に帰寮しており、他2人の生徒も同様であったが、研究会に参加出来ない不満を口にしていた為、オリビアに叱りつけられていた、

「そうでしたか、それはまた大変でしたわね・・・」

エレインはやれやれといつもの席に着くと、

「あー、お疲れー」

階段から心底疲れた顔をしたユーリ率いる研究所組が入ってきた、

「あら、お疲れ様です・・・って、本当に疲れてますわね」

エレインは研究所組の有様に労りの声をかけようと思うが、良い言葉が出てこなかった様子である、サビナやカトカは疲れた顔をしているのは珍しくないのだが、ユーリまでもが険のある面相である、これは思った以上に大事であったなとエレインは理解した、

「まったくよ、いや・・・想定してないこちらが未熟だったかしら・・・」

ユーリは反省の弁を呟きながら席に着き、

「そうですね、ちょっと、考えが甘かったですね」

サビナとカトカも頽れるように席に着いた、

「でも人が来るのは分かっていましたから・・・でも、あれほどとは誰も想定できませんよ、学園長のお陰でなんとかなりましたけど」

「そうね、そこは感謝するけど・・・」

ユーリとサビナは同時に溜息を吐く、

「はいはい、準備できたわよー、ほら、髪留めで遊んでないで、テラさんとオリビアさんは?」

ソフィアが手を拭いながら食堂へ入ってくる、鏡の前の面々を散らしつつ、エレインへ二人の所在を確認する、

「そろそろ来ると思います、店の締めに行きましたので」

「そっか、じゃ、給仕しちゃっていいわね、ミナ、レイン、手伝ってー」

二つの快活な返答が響き、ソフィアが食堂内をサッと見渡して、

「あら、なに?そっちはお疲れなの?」

研究所組の雰囲気に気付いたようである、

「そりゃね、想定外の事は何ともねー」

ユーリが不機嫌そうに呟くと、ソフィアはあっそーと相手にもせず厨房へ消えた、

「なによ、元凶の一人のくせして・・・」

ユーリはさらに不機嫌そうに呟きつつソフィアの背を睨みつけた。



「あら、今、気付いたけど可愛くなってるわね」

一同はいつも通りに一部を覗いて騒がしく夕食を楽しみ、スイカを平らげる頃にはその一部の機嫌もだいぶ良くなったようである、白湯を手にしたユーリはふとミナの髪の変化に気付いたのであった、

「えへへー、やっと気付いたのー、ユーリはとろくさいなー、もー」

ミナがニヤリと意地悪く微笑む、

「へー、新しいの出来たんだー」

「ふーん、昨日のあれでしょ、ニャンコはどうなったの?」

カトカとサビナもミナの頭を注視する、

「えっとね、エレイン様に貰ったの、ジャネットがいっぱい着けてるよ、ニャンコは宝物なのー」

ミナはそう言ってジャネットを指差す、3つの視線がジャネットへ向かい、

「へへー、どうでしょう?使い易くなったのですよー」

ジャネットは自慢げに振り向いた、

「あ、エレインさんもケイスさんも・・・オリビアさんも、テラさんまで・・・」

「レインちゃんもだ、あ、可愛いー」

「何だー、みんなして、大人は仲間外れかー」

3つの視線はジャネットに行きつく前にその周辺の変化に奪われたようである、ジャネットはあらっと肩を崩し、

「そうなんですよ、ブノワトさんが張り切って作ってくれたのです、それも大量に、それと、新製品もあるのですよ」

エレインがニコニコと3人に返答する、

「へー、ブノワトさんも大したもんよねー」

「そうなんですよ、髪飾りは鏡の前にあるので使ってみて下さい、是非、先生達の御意見も欲しいですしね」

エレインは鏡を指差す、

「あら、そういう事なら」

ユーリは白湯を片手に席を立つ、どうやら腹を満たしたお陰で機嫌も良くなった上に腰も軽くなった様子である、サビナとカトカも続き、鏡の前に乱雑に並べられた髪留めを手にした、

「へー、微妙に曲がっているのね」

「そうですね、形もいろいろ、なるほど、細くてもいいんだな、目立たなくていいかも・・・」

「なるほど、じっくり見ると単純な品なんですね、これは便利そうだなー」

「厚さも違いますね・・・」

3人は髪留めをじっくりと観察しつつ、それぞれに髪を整えて着用する、鏡に映しながら位置を調整し、外しては髪を整えて別の髪留めを試していく、

「わ、便利だ」

「うん、これいいですね、書類仕事の時に便利そう」

「挟むだけなのか、凄いな・・・」

「だしょー、前のと比べても段違いに使い易いんですよー」

ジャネットが先程無視された復讐とばかりにニコニコと話しに割って入ってきた、

「そうねー、でも、それは着けすぎー」

「そうですね、やり過ぎは駄目ですよー」

「人が多すぎるのもねー」

「えー、それここで言う?」

「やっと、忘れかけてたのにー」

「なんだよもー、みんなしてー」

ニコヤカに割って入ったジャネットであるがプリプリと頬を膨らませて、自身の頭から髪留めを次々と外して鏡の前に投げ置いた、

「あー、カトカ、やっぱりあんたは髪上げた方が良いわね、大人っぽくてゾクゾクしちゃうわー」

「そうですか?変わります?」

「あー、何よその余裕ー、ムカつくわー」

「また少し切ってあげようか?この髪留めがあれば、また、違う髪型も面白くなるわよー」

「そうですね、そのうちに」

「あ、そうだ、美容の方も計画だけでも立てますか、服飾だけで暫くは手一杯かなー」

「それもあったわねー」

3人はジャネットそっちのけで仲睦まじく髪留めで戯れる、ジャネットはもーと声にならない呻き声を発して自席に戻った、その様子をその他一同は生温い視線で眺めている、

「・・・お腹が空いてただけなのかしら」

「そういう事もありますよ」

ソフィアとテラがそんな3人を何とは無しに見つめ、

「そうだ、オリビア、例の物を、適当な紙も一緒に、皆さんに披露しませんと」

エレインの指示にオリビアは小さく頷いて階段へ向かった、

「?ガラスペン?」

「はい、新たな目玉商品になると思いますし、木軸のガラスペンを実際に使用して貰おうかとも思いまして」

ソフィアの問いにエレインが答えた、

「なるほど、あ、テラさん、リシア様の方って段取りついた?」

「まだですね、珍しくアフラさんもリンドさんもいらっしゃらなくて、御夫婦も共に御不在でした、何かあったんですかね」

「そうなんだ、まぁ、そういう事もあるわよ、忙しいのが普通の人達だからね、さて、ミナ、レイン、ちゃんと歯を磨くのよー」

ソフィアがやれやれと腰を上げた、あとは片付けと戸締りねーと呟く、ミナとレインもつられて腰を上げ、その途端ミナは大きな欠伸をして目尻をゴシゴシと袖で拭く、

「あ、手伝います」

テラが食器類をまとめだし、ソフィアも礼を言いつつ片付けに取り掛かるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...