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本編
40話 千客万来? その3
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突然始まり唐突に終わった経営談義にマフダは目を回しており、褒められたのか貶されたのか良くわからないわねとエレインは首を傾げる、テラとフィロメナは通じ合ったらしくうっすらとした微笑みを浮かべていた、
「あ、じゃ、あれの事も相談しようかしら・・・」
エレインがふむと唸って口を開いた、
「あれ?ですか?」
「なになに?」
テラとフィロメナが楽しそうに食いついてくる、
「以前に婦人部の方々にはどうかしらって聞いた事があるんだけど・・・」
エレインは前置きしつつ、
「さっきの話にあった、浮いた労働力?それを活用するにはどうするのがいいのかなって思った事があってね」
「へー、そりゃまた・・・」
「興味深いですね」
「そう?ま、簡単なのよ、子供を預けておける施設?そういうのがあれば働きやすいんじゃないかなって思ってね」
「・・・なるほど・・・・」
「確かに・・・」
「うーん、その時はどうだったかしら・・・あ、ガラス鏡の店舗の人材をどうしようか悩んでいてね、で、思ったのが、都会の人達って家族単位で生活してるでしょ、少し離れると家門単位で生活してるんでしょうけど」
ここでいう家族とは一世帯から二世帯家族の事を差しており、家門とは一族で生活を共にする形態の事を差している、
「婦人部の人達は親御さんとも同居しているから仕事が出来るのよね、でも、そうではない家庭の方が多いように聞いてね・・・で、そうなると、奥さんの仕事って大変じゃない?家事から子育てから旦那の世話まで・・・旦那の世話は家事か・・・ま、それは置いておいて、その仕事の中である程度他人任せ・・・といっては耳障りが良くないけど、他人でもなんとかなることって、子供の世話かしら・・・って思って・・・うん、それで婦人部にね仕事をしている間に子供を預けられて、そこで、読み書きと簡単な算学を教える場所があったらどうかしらって聞いてみた事があったのよ」
「どうでした?」
テラが先を促す、フィロメナも興味津々の様子である、
「うん、賛否は半々かな?ほら、やっぱり子供の事だと心配する事が多いじゃない?孤児院みたいになりそうで嫌だってマフレナさんだったかなが言ってたかしら、その気持ちは分かるわね、一応、勉強の事とおやつとか昼寝の時間とか思い付くことは話した上での事だけどね・・・」
「なるほど・・・確かに・・・」
「うーん、孤児院はなー、確かになー」
テラとフィロメナが同時に理解を示す、
「でも、先程の話からいくと、有用なんじゃないかしらと思うのよね、テラさんはどう考えます?」
「そうですね・・・うん、良い案だと思います、えっと、恐らくですが、通勤途中に子供を預けて終わったら迎えに来る・・・といった感じですよね?」
「そうね、そんな感じ」
「そうなると、公務時間で終わる仕事であれば便利ですね、役所もそうだしギルドもか・・・あとはどこだろう、逆に小売店とかは難しいのかな」
「夜の店もね」
フィロメナが補足する、
「あ、そうですね、それと、高級店・・・は、その日によるのか・・・でも、」
「うん、便利だと思うな・・・面白いかも・・・」
テラの言う高級店とは貴族向けの小売店を差している、
「でも、そこはほら、その施設とは別の問題だから、仕事をする時間の問題であって、逆に公務時間であれば働けますよって感じで考え方を変える事も出来るかなって思うのよね」
「なるほど・・・」
「・・・都合が良すぎる感じもするけど、その通りかも・・・」
「ただ・・・運用も考えてみたのだけれど・・・・ほら、お金を取る・・・のが何か違うかなって思ったり・・・してね」
エレインが腕を組んで目を強く閉じる、テラとフィロメナは静かにその先を待ち、マフダも押し黙って成り行きを見守っている、
「だから、例えばうちで働く人を対象にするのであれば、無料でもいいのよね、現状では難しいけど、ガラス鏡が軌道に乗れば利益は十分確保できるし、世話役って呼んだらいいのかな?子供の相手をする人・・・単純に先生でいいいか・・・ま、そういう人にもちゃんと給与を払えるし、場所も確保出来るし、でも、それを一般に開放するとなると・・・やっぱり運営費用が問題になるのよね・・・」
「そうなると、それはギルドの仕事かもしれませんね」
テラが冷静に発言する、
「そうだよね、あたしもそう思うわ」
フィロメナがテラに同意の声を上げ、
「だって、そういう仕組みこそあの連中が考える事だろうし、ギルドに加入している商会を対象にすればより便利に使える筈だしね」
「そうですわよね・・・」
「そうだよ、あ、でもあれよね、モニケンダムのギルドって安いんだよね、税金もそうだけどさ、ほら、あたしも生粋のモニケンダム人だから他の土地の話しを聞くとね、随分高いんだよね、倍とか3倍とか・・・うん・・・でも、それはそっちの問題か・・・」
「そうなると、ギルドマスターに話してみます?ただ、理念だけを話しても理解はされますが、実行となると難しいかと思いますね、明確に利益が出る事でもないですし、要望として上げたとしても賛同者が少ないと見向きもされないでしょうね、そうなると役所の仕事・・・でも、あそこはほぼほぼ男性職員だからな・・・理解もされない可能性がありますね・・・」
「・・・うん、ま、参考迄にって、まさにお茶を濁す話しになってしまいましたね」
エレインは頭をかいて切り上げようとする、
「いや、面白いと思うよ、あたしは賛同するな、労働人口が増える事も大事だけど、給与取得者が増える事も良い事だと思うよ、今度お客さんにも聞いてみようかな・・・そういえばあの人最近来ないな・・・忙しいのか・・・」
フィロメナが斜め上に視線を上げた、
「ふふ、ありがとうございます、さて、では、どうしましょう、マフダさんは今日は帰られます?このままお仕事をして頂いて構いませんし、ちゃんと給与も支払いますよ」
不意にエレインはマフダへと視線を向ける、マフダはボケッと3人の会話を眺めているだけであった為、慌てて顔に血流を流し込むと、
「えっと、はい、そのつもりでした、やらせて下さい」
甲高い声を上げるマフダである、
「あ、ならさ、さっきの薪も炭も使わないっての、その秘訣を教えてもらえない?勿論他言は絶対にしないから」
フィロメナが猫撫で声でエレインに上目づかいを送る、とても色っぽく可愛らしい仕草であった、テラはなるほど、こうやって男を魅了するのねと感心し、的にされたエレインとしても悪い気分ではない、それどころか、いや、先日からフィロメナの毒牙は見事にエレインを絡め捕っている様子である、エレインは勿体ぶったように微笑み、
「しょうがないですね、ま、あれですわ、マフダさんにはもう見せてしまったんでしょう?」
フィロメナの視線から逃げるようにテラを見る、その顔はフィロメナの表情を真似たのか妙に艶っぽい、テラは内心で小さくモーと不満の声を上げつつ、
「そうですね、マフダさんから聞けばいいとは思いますが、折角ですから、お見せしましょうか」
「そうね、では、こちらに、あっ」
エレインは腰を上げかけて押し留まり、
「マフダさん、これから宜しくお願いしますね、当商会はまだまだこれからの小さい商会ですが、あなたのお力を是非活かして欲しいと思います、お店の事もですが、遊女向けの商品開発もあります、じっくり確実にやっていきましょう」
エレインは真摯な瞳をマフダに向ける、
「はい、その、押しかけたみたいで、申し訳ないとも思ってました・・・けど、嬉しいです、頑張ります」
マフダは熱意の籠った瞳でエレインの言葉を受け取った、
「ふふ、じゃ、フィロメナさん、当商会の秘密・・・というか、実験中の品を御覧下さい、勿論ですが全ては他言はお控え下さい、それと販売の予定はまるで無いのでその点も御理解頂ければと思います」
「やけに大仰だね、うん、口は堅いから、商売柄ね、それに大事な妹の大事な仕事場だからね、不利益を与える事はしないよ」
「はい、では行きますか、マフダさんは今日はテラさんの指示に従って下さい、明日以降もそうなると思いますが、今日から祭りの準備が始まりますのでそちらを頼むと思います」
「はい、わかりました」
マフダは勢いよく席を立つ、テラは微笑みつつ、
「さて、では、そうね、お茶を片付けてから店舗の準備にかかりましょうか」
「はい、宜しくお願いします」
気持ちの良い声である、エレインとテラも席を立ち、フィロメナも腰を上げながら、
「頑張り過ぎて変な事するなよ、いい感じに力を抜いてな、空回りして迷惑かけるんじゃないよ」
楽しそうに妹の頭を撫でつけて助言を与える、
「うー、わかった」
マフダは昂った気持ちを強引に押さえ込みつつ小さく頷いた。
その後、フィロメナはエレインの案内の下、地下室の冷凍箱から厨房に置かれた各種調理器具一式を見学し、先日のマフダ同様に一つ一つに驚愕の声を響かせた、
「なるほど、店舗で調理するのを見せてたけど、詳しく見るとこういう事だったのか・・・すごいね・・・うん、これもあれその研究所で開発されたの?」
溶岩板を実際に稼働させそれに手を翳して温度を測りつつフィロメナが問う、
「そうですね、詳しく言えば先に紫大理石を冷やして菓子を作る方法を教えてくれた方がおりまして、その後、こちらの溶岩板、それから地下の冷凍箱といった感じで開発されました」
「へー、その最初に教えてくれた人って随分発想が柔軟というかぶっ飛んでいるというか・・・」
「そうなんですよ、ついでに言えば例の下着を考案した人も同じ人です」
「えっ、マジで?何?その人天才?」
「どうなんでしょう、本人にそれを言うと嫌がるだろうな・・・その見た目とか雰囲気とかからはまるでそうとは思えない人なんですよね・・・そして・・・大事な恩人なのです」
「そっか、なるほど、新進気鋭の商会の裏には大人物が控えていたか・・・」
「そんな、大袈裟な」
「いやいや、だって、これなんかあらゆる商店が欲しがるでしょ、その上家庭でも使えるよ」
「そうですね、でも、どうしても・・・魔力が必要なのです、ですので魔力切れで倒れる人が出るでしょうし、そもそも使えない人も多いですね」
「あ、そこが問題なのか・・・」
「そうなんですよ、ですので研究所では魔力が無い人でも使えるような、そんな研究を行っているそうです」
「へー、それはすごいね・・・」
「恐らくですが、そちらが完成したら販売する事も考えていると思いますが、ま、先の話しですね」
「そっか・・・」
フィロメナは溶岩板の停止方法を聞きつつ、
「うん、大変勉強になりました、テラさんもだけど、会長の回りはどうやらとんでもない人がいるみたいだね」
「そうですね、私なんかではまるで釣り合わない人ばかりです、本当に感謝しかないですよ」
どこか遠い目で答えるエレインである、フィロメナはそっかーと一言呟くと、
「取り合えずあれだ、妹を宜しくね、さっき本人にも言ったけどさ時々空回りするから、そこら辺は見た目通りなんだよ、まだまだ子供なんだよなー」
フィロメナは母性溢れる笑顔を見せた、
「ふふ、はい、でも裁縫の技術は確かなものでしたよ、しっかりと修業されたみたいですね」
「あー、そこはね・・・生真面目な娘だからね・・・ま、そういう事で」
フィロメナはニヤリと微笑みを浮かべる、そこへ店舗へ行っていたテラとマフダが戻ってきた、
「ん、じゃ、私はお暇させてもらいますね」
「はい、今後とも何かと御協力頂くこととなるかと思いますが宜しくお願い致します」
エレインは小さく会釈をし、
「こちらこそです、何かと不躾であったこと改めてお詫びします、良き縁が結ばれた事を心より感謝致します」
フィロメナは古風な挨拶を口にして優雅に一礼すると、
「それでは」
テラにも一礼し、フィロメナは軽い足取りで帰宅の途に着いた、
「良いお姉さんね」
テラがフィロメナを見送りながらマフダに話しかける、
「はい、憧れのねーさんなんです」
マフダもフィロメナを見送りながらムフーっと鼻息を荒くした。
「あ、じゃ、あれの事も相談しようかしら・・・」
エレインがふむと唸って口を開いた、
「あれ?ですか?」
「なになに?」
テラとフィロメナが楽しそうに食いついてくる、
「以前に婦人部の方々にはどうかしらって聞いた事があるんだけど・・・」
エレインは前置きしつつ、
「さっきの話にあった、浮いた労働力?それを活用するにはどうするのがいいのかなって思った事があってね」
「へー、そりゃまた・・・」
「興味深いですね」
「そう?ま、簡単なのよ、子供を預けておける施設?そういうのがあれば働きやすいんじゃないかなって思ってね」
「・・・なるほど・・・・」
「確かに・・・」
「うーん、その時はどうだったかしら・・・あ、ガラス鏡の店舗の人材をどうしようか悩んでいてね、で、思ったのが、都会の人達って家族単位で生活してるでしょ、少し離れると家門単位で生活してるんでしょうけど」
ここでいう家族とは一世帯から二世帯家族の事を差しており、家門とは一族で生活を共にする形態の事を差している、
「婦人部の人達は親御さんとも同居しているから仕事が出来るのよね、でも、そうではない家庭の方が多いように聞いてね・・・で、そうなると、奥さんの仕事って大変じゃない?家事から子育てから旦那の世話まで・・・旦那の世話は家事か・・・ま、それは置いておいて、その仕事の中である程度他人任せ・・・といっては耳障りが良くないけど、他人でもなんとかなることって、子供の世話かしら・・・って思って・・・うん、それで婦人部にね仕事をしている間に子供を預けられて、そこで、読み書きと簡単な算学を教える場所があったらどうかしらって聞いてみた事があったのよ」
「どうでした?」
テラが先を促す、フィロメナも興味津々の様子である、
「うん、賛否は半々かな?ほら、やっぱり子供の事だと心配する事が多いじゃない?孤児院みたいになりそうで嫌だってマフレナさんだったかなが言ってたかしら、その気持ちは分かるわね、一応、勉強の事とおやつとか昼寝の時間とか思い付くことは話した上での事だけどね・・・」
「なるほど・・・確かに・・・」
「うーん、孤児院はなー、確かになー」
テラとフィロメナが同時に理解を示す、
「でも、先程の話からいくと、有用なんじゃないかしらと思うのよね、テラさんはどう考えます?」
「そうですね・・・うん、良い案だと思います、えっと、恐らくですが、通勤途中に子供を預けて終わったら迎えに来る・・・といった感じですよね?」
「そうね、そんな感じ」
「そうなると、公務時間で終わる仕事であれば便利ですね、役所もそうだしギルドもか・・・あとはどこだろう、逆に小売店とかは難しいのかな」
「夜の店もね」
フィロメナが補足する、
「あ、そうですね、それと、高級店・・・は、その日によるのか・・・でも、」
「うん、便利だと思うな・・・面白いかも・・・」
テラの言う高級店とは貴族向けの小売店を差している、
「でも、そこはほら、その施設とは別の問題だから、仕事をする時間の問題であって、逆に公務時間であれば働けますよって感じで考え方を変える事も出来るかなって思うのよね」
「なるほど・・・」
「・・・都合が良すぎる感じもするけど、その通りかも・・・」
「ただ・・・運用も考えてみたのだけれど・・・・ほら、お金を取る・・・のが何か違うかなって思ったり・・・してね」
エレインが腕を組んで目を強く閉じる、テラとフィロメナは静かにその先を待ち、マフダも押し黙って成り行きを見守っている、
「だから、例えばうちで働く人を対象にするのであれば、無料でもいいのよね、現状では難しいけど、ガラス鏡が軌道に乗れば利益は十分確保できるし、世話役って呼んだらいいのかな?子供の相手をする人・・・単純に先生でいいいか・・・ま、そういう人にもちゃんと給与を払えるし、場所も確保出来るし、でも、それを一般に開放するとなると・・・やっぱり運営費用が問題になるのよね・・・」
「そうなると、それはギルドの仕事かもしれませんね」
テラが冷静に発言する、
「そうだよね、あたしもそう思うわ」
フィロメナがテラに同意の声を上げ、
「だって、そういう仕組みこそあの連中が考える事だろうし、ギルドに加入している商会を対象にすればより便利に使える筈だしね」
「そうですわよね・・・」
「そうだよ、あ、でもあれよね、モニケンダムのギルドって安いんだよね、税金もそうだけどさ、ほら、あたしも生粋のモニケンダム人だから他の土地の話しを聞くとね、随分高いんだよね、倍とか3倍とか・・・うん・・・でも、それはそっちの問題か・・・」
「そうなると、ギルドマスターに話してみます?ただ、理念だけを話しても理解はされますが、実行となると難しいかと思いますね、明確に利益が出る事でもないですし、要望として上げたとしても賛同者が少ないと見向きもされないでしょうね、そうなると役所の仕事・・・でも、あそこはほぼほぼ男性職員だからな・・・理解もされない可能性がありますね・・・」
「・・・うん、ま、参考迄にって、まさにお茶を濁す話しになってしまいましたね」
エレインは頭をかいて切り上げようとする、
「いや、面白いと思うよ、あたしは賛同するな、労働人口が増える事も大事だけど、給与取得者が増える事も良い事だと思うよ、今度お客さんにも聞いてみようかな・・・そういえばあの人最近来ないな・・・忙しいのか・・・」
フィロメナが斜め上に視線を上げた、
「ふふ、ありがとうございます、さて、では、どうしましょう、マフダさんは今日は帰られます?このままお仕事をして頂いて構いませんし、ちゃんと給与も支払いますよ」
不意にエレインはマフダへと視線を向ける、マフダはボケッと3人の会話を眺めているだけであった為、慌てて顔に血流を流し込むと、
「えっと、はい、そのつもりでした、やらせて下さい」
甲高い声を上げるマフダである、
「あ、ならさ、さっきの薪も炭も使わないっての、その秘訣を教えてもらえない?勿論他言は絶対にしないから」
フィロメナが猫撫で声でエレインに上目づかいを送る、とても色っぽく可愛らしい仕草であった、テラはなるほど、こうやって男を魅了するのねと感心し、的にされたエレインとしても悪い気分ではない、それどころか、いや、先日からフィロメナの毒牙は見事にエレインを絡め捕っている様子である、エレインは勿体ぶったように微笑み、
「しょうがないですね、ま、あれですわ、マフダさんにはもう見せてしまったんでしょう?」
フィロメナの視線から逃げるようにテラを見る、その顔はフィロメナの表情を真似たのか妙に艶っぽい、テラは内心で小さくモーと不満の声を上げつつ、
「そうですね、マフダさんから聞けばいいとは思いますが、折角ですから、お見せしましょうか」
「そうね、では、こちらに、あっ」
エレインは腰を上げかけて押し留まり、
「マフダさん、これから宜しくお願いしますね、当商会はまだまだこれからの小さい商会ですが、あなたのお力を是非活かして欲しいと思います、お店の事もですが、遊女向けの商品開発もあります、じっくり確実にやっていきましょう」
エレインは真摯な瞳をマフダに向ける、
「はい、その、押しかけたみたいで、申し訳ないとも思ってました・・・けど、嬉しいです、頑張ります」
マフダは熱意の籠った瞳でエレインの言葉を受け取った、
「ふふ、じゃ、フィロメナさん、当商会の秘密・・・というか、実験中の品を御覧下さい、勿論ですが全ては他言はお控え下さい、それと販売の予定はまるで無いのでその点も御理解頂ければと思います」
「やけに大仰だね、うん、口は堅いから、商売柄ね、それに大事な妹の大事な仕事場だからね、不利益を与える事はしないよ」
「はい、では行きますか、マフダさんは今日はテラさんの指示に従って下さい、明日以降もそうなると思いますが、今日から祭りの準備が始まりますのでそちらを頼むと思います」
「はい、わかりました」
マフダは勢いよく席を立つ、テラは微笑みつつ、
「さて、では、そうね、お茶を片付けてから店舗の準備にかかりましょうか」
「はい、宜しくお願いします」
気持ちの良い声である、エレインとテラも席を立ち、フィロメナも腰を上げながら、
「頑張り過ぎて変な事するなよ、いい感じに力を抜いてな、空回りして迷惑かけるんじゃないよ」
楽しそうに妹の頭を撫でつけて助言を与える、
「うー、わかった」
マフダは昂った気持ちを強引に押さえ込みつつ小さく頷いた。
その後、フィロメナはエレインの案内の下、地下室の冷凍箱から厨房に置かれた各種調理器具一式を見学し、先日のマフダ同様に一つ一つに驚愕の声を響かせた、
「なるほど、店舗で調理するのを見せてたけど、詳しく見るとこういう事だったのか・・・すごいね・・・うん、これもあれその研究所で開発されたの?」
溶岩板を実際に稼働させそれに手を翳して温度を測りつつフィロメナが問う、
「そうですね、詳しく言えば先に紫大理石を冷やして菓子を作る方法を教えてくれた方がおりまして、その後、こちらの溶岩板、それから地下の冷凍箱といった感じで開発されました」
「へー、その最初に教えてくれた人って随分発想が柔軟というかぶっ飛んでいるというか・・・」
「そうなんですよ、ついでに言えば例の下着を考案した人も同じ人です」
「えっ、マジで?何?その人天才?」
「どうなんでしょう、本人にそれを言うと嫌がるだろうな・・・その見た目とか雰囲気とかからはまるでそうとは思えない人なんですよね・・・そして・・・大事な恩人なのです」
「そっか、なるほど、新進気鋭の商会の裏には大人物が控えていたか・・・」
「そんな、大袈裟な」
「いやいや、だって、これなんかあらゆる商店が欲しがるでしょ、その上家庭でも使えるよ」
「そうですね、でも、どうしても・・・魔力が必要なのです、ですので魔力切れで倒れる人が出るでしょうし、そもそも使えない人も多いですね」
「あ、そこが問題なのか・・・」
「そうなんですよ、ですので研究所では魔力が無い人でも使えるような、そんな研究を行っているそうです」
「へー、それはすごいね・・・」
「恐らくですが、そちらが完成したら販売する事も考えていると思いますが、ま、先の話しですね」
「そっか・・・」
フィロメナは溶岩板の停止方法を聞きつつ、
「うん、大変勉強になりました、テラさんもだけど、会長の回りはどうやらとんでもない人がいるみたいだね」
「そうですね、私なんかではまるで釣り合わない人ばかりです、本当に感謝しかないですよ」
どこか遠い目で答えるエレインである、フィロメナはそっかーと一言呟くと、
「取り合えずあれだ、妹を宜しくね、さっき本人にも言ったけどさ時々空回りするから、そこら辺は見た目通りなんだよ、まだまだ子供なんだよなー」
フィロメナは母性溢れる笑顔を見せた、
「ふふ、はい、でも裁縫の技術は確かなものでしたよ、しっかりと修業されたみたいですね」
「あー、そこはね・・・生真面目な娘だからね・・・ま、そういう事で」
フィロメナはニヤリと微笑みを浮かべる、そこへ店舗へ行っていたテラとマフダが戻ってきた、
「ん、じゃ、私はお暇させてもらいますね」
「はい、今後とも何かと御協力頂くこととなるかと思いますが宜しくお願い致します」
エレインは小さく会釈をし、
「こちらこそです、何かと不躾であったこと改めてお詫びします、良き縁が結ばれた事を心より感謝致します」
フィロメナは古風な挨拶を口にして優雅に一礼すると、
「それでは」
テラにも一礼し、フィロメナは軽い足取りで帰宅の途に着いた、
「良いお姉さんね」
テラがフィロメナを見送りながらマフダに話しかける、
「はい、憧れのねーさんなんです」
マフダもフィロメナを見送りながらムフーっと鼻息を荒くした。
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