セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

文字の大きさ
393 / 1,471
本編

43話 職人達とネイルケア その1

しおりを挟む
翌朝、生徒達の朝食が済み、学園へ送り出そうとしたその時である、

「おはよーございまーす」

耳慣れた声が玄関先に明るく響いた、

「あー、来たかー」

「そりゃ、来るでしょ」

「だよねー」

鏡の前で身だしなみを整えていた生徒達が微笑みあい、近くにいたケイスがサッと玄関へ向かった、

「あ、そうだ、何かあれだねー、香り付きのやつってやっぱりどこか違う感じだったねー」

ジャネットがクリームの感想をエレインに告げる、

「そう思います?」

「はい、あれかな?分量の違いとかかもって思ったんだけどー、昨日よりも滑らかな感じだったー」

ジャネットが左手の甲をさすり乍らエレインを見る、

「あ、それ私も同じですね」

テラが同意を示し、オリビアも静かにうんうんと頷いている、

「あら、そうなの?私は気分的な違いかしらって感じたんだけど・・・」

エレインのみがその差異に無頓着のようである、そこへ、

「おはようございます、エレインさん、何ですか?あれー」

「なんなんですかー?」

案の定である、ブノワトとコッキーが弾けるような笑顔で食堂へ飛び込んできた、

「あー、ねーさん、コッキー、オハヨー」

ミナが珍しい顔を見て一目散に体当たりをかます、

「うほ、ミナちゃん朝から元気ねー」

ブノワトが上手い事ミナを抱き止めた、

「おはようございます、ふふ、早速ですわね」

早朝から溌剌とした二人をエレインは柔らかい微笑みで迎え、他の面々はニヤニヤと不敵な笑いを浮かべている、

「あー、なんですか、皆してー、どういう事なんですかー」

「そうですよー、あれですね、また、ソフィアさんですよね、そうなんですよね」

ブノワトとコッキーももはや原因はそれしかないと道すがら楽しそうにはしゃいで来たのであった、

「あー、わかるー?」

ジャネットがニヤニヤ笑いを崩さない、

「わかりますよー、で、どういう事なんです、あれ?もうすんごいですよ」

「うん、ビックリしました、ガサガサでどうしようもなかったのに、ツルツルとまではいかなくても若返った感じです」

「あー、十分若いでしょうに」

テラが苦笑いとなる、

「えへへー、ソフィーが作ったんだよー、ミナも使ったのー、スベスベなのー」

ミナが両手をブノワトの顔へ押し付けた、

「わ、ミナちゃんも使ったの?って、ミナちゃん元々スベスベじゃないのさー」

「えー、もっと、スベスベになったんだよー、ほらほらー」

これでもかと背伸びをして両手の平をブノワトの顔面に押し付けるミナである、

「あー、でも、気持ちいー、スベスベのちっこい手ー」

「でしょでしょ、スベスベなのよー」

そこへ、

「朝からすいません」

ブラスがのそりと顔を出す、

「あら、おはようございます」

ニヤニヤ笑いがブラスに集まる、

「えっと・・・」

女性達の視線が集中して、どういう状況だと、二の句が継げなくなったブラスであった。



「やっぱりー」

「ですよねー」

「だよなー」

生徒達は学園へ向かい、エレインとテラとソフィア、来訪者3人がテーブルを囲み、ミナとレインは興味が無くなったのか暖炉の前で書を開いた、そして、エレインから詳細を告げられた3人は予想通りと納得の声を上げる、

「まぁね、でも、その様子だと効果は実感できたみたいね」

ソフィアがニコニコと微笑む、

「それはもう、だって、ね」

「うん、朝起きたら手がスベスベなんですもん、何事かーって母ちゃんと二人で悲鳴を上げました」

「あらあら」

想像して微笑むテラである、

「えっと、俺も使わせてもらったんですけど、確かに全然違いますね」

「あら、ブラスさんも?」

「はい、ブノワトに言われて試しにって・・・違いますね、あの・・・男でも使えると思います、特に職人達には、どうしてもほら、手が荒れるので、で、変に荒れると細かい作業が大変で・・・なので、あの、女性専用というのは勘弁して欲しいかなって、それを伝えに・・・あ、裏の工事もあるんですけど、あと、屋敷の下見も・・・」

若干恥ずかしそうに話すブラスである、

「あー、髪留めの事、根に持ってるの?」

ソフィアがニヤリと勘繰る、

「そういうわけでは・・・」

恐らく先日の遣り取りがどうしても頭に残っているのである、俯いて頭をかきつつモゴモゴと呟くブラスであった、

「そりゃ、だって、自宅で何を塗って寝ようが私はどうでもいいわよ、ある意味で薬のようなものだからね」

「そうですよね、薬か・・・そうか、そう思えばいいんですね」

パッと顔を上げるブラスである、

「そうね、で、エレインさんとしてはどうする?ブノワトさんやコッキーさんは当然としても、ブラスさんもサビナさんの実験に付き合わせる?」

「あ、そうですね・・・うん、職人さんか・・・過酷な環境にある人達の話しも必要ですよね、水仕事以外にも効果あるのかな?」

「勿論ですよ、鍛冶はどうしても火の側ですから、手は勿論ですし顔も荒れますよ」

「ガラスもです、ソフィアさんの教えてくれた蜂蜜のあれを毎日やりたいくらいなんですよ」

ブノワトとコッキーは何とも切実な状況であったらしい、いつにもまして真剣な顔である、

「あー、そうよねー、顔用のは貰った?」

「はい、あの水っぽいのですよね、頂きました」

「良かった、あれなら毎晩でもいいと思うわよ、但し、ちゃんと顔を洗ってから塗るようにね」

「えっ、毎晩でもいいんですか?」

「わ、それ、嬉しいかも・・・」

「うん、ただ、薄くでいいはずよ、で、そのまま寝ちゃっても大丈夫だから、でもあれかな?枕とかベタベタになっちゃうかな?」

ソフィアはまるで見当違いの懸念を口にする、

「そんなの洗えばいいですよー」

「あ、あの、唇用っていう、固いのはどう使うんですか?」

「あ、あれはいつでもいいみたいよ、えっと、日中から塗ってもいいみたい、乾燥したなーって感じの時に塗るのよ、勿論、寝る前でもいいけどね」

ソフィアの口からまた新しい情報が出てきたようである、エレインとテラはえっと驚き、

「すいません、それは初耳です」

「はい、あれは日中に使うものなんですか?」

「あー、言ってなかったかしら?言ったような・・・まぁ、いいわ、うん、なんか、そういうふうに使ってたわよ、だから、ほら、持ち運べるように長細く形成されてたのよ、それは言ったでしょ、使いやすく、持ち運びしやすくする為だったんじゃないかな?たぶんだけど」

「なるほど・・・」

「へー、でも、その・・・何か違うんですか?それぞれで?」

ブノワトの問いに、

「現時点では違いは無いわね、材料は同じで、分量が異なるかな?うん」

ソフィアは適当に答えつつ、

「ま、細かい点はエレインさんとサビナさんが今後開発していくと思うわよ」

とエレインへ視線を送る、エレインはそうですねと頷いた、

「サビナさんも関わっているんですか?」

「そうね、元はと言えばサビナさんが例の研究会で使える情報が欲しいって所から始まっているからね、私としてはめんどくさかったからその内かなーって感じだったやつだし」

「えっ、そんな適当な・・・」

「だって・・・話すと長くなるからだけど、まぁ、上手くいったから良かったわよ」

「そうですね、で、商会としても商品化に向けて前向きにはなっているんです、今日もサビナさんとマフダさんで、仕入れの下準備といった感じなので」

「あっ、そうだ、塩とか酢とか入れる壺を安く買える店ってないかしら?陶器の問屋?コッキーさんに聞くのは変だけど、ガラス容器だとどうしても高くなるわよね・・・」

テラが昨日の懸念事項の一つを話題に出した、

「壺ですか?」

「うん、うるおいクリームを入れて売るのにね、丁度良い壺と、それと」

「蜜蝋ですね」

エレインが口を挟む、

「蜜蝋・・・って、蜂蜜のあれ?ですか?」

ブラスが首を傾げて問い返す、

「はい、その内、耳に入ると思いますから先に言いますけど、あのクリームは蜜蝋とオリーブオイルで作ってます」

「えっ、それだけですか?」

「オリーブオイルって・・・オリーブオイル?確かに・・・色が似てたかな?」

ブノワトとコッキーが驚いている、

「はい、作り方も簡単なんですが、それはおいおい、今日は蜜蝋の仕入れ先も調べる予定なんですね、なので、何か情報があればと思いまして」

「あー、どうだろう・・・」

ブノワトとコッキーが首を傾げるが、

「うーん・・・多分だけどありますね、取り扱っているかはわからないんですが・・・うん、オイル関係に強い商会があります」

ブラスがパッと明るい顔になる、

「あら、本当ですか、それは嬉しい」

「はい、是非、教えてください」

エレインとテラがズイッと身を乗り出した、

「はい、勿論です、えっと、あれです、工場用に使う油とか松脂とか材料系の商会ですね、蜜蝋であれば、確か、仕上げ用途にも使ってたはずなので、あると思います、それ関連でなんでもかんでも、画材とか染料とかもあった筈ですね・・・はい」

「良かった、サビナさんが来たら早速伝えましょう」

「そうですね」

嬉しそうに微笑むエレインとテラである、ブノワトとコッキーは面白く無さそうな顔でブラスを睨む、

「おいおい、何もそんな顔で睨むなよー」

二人の視線に気付いたブラスが嫌そうに顔を顰めた、べつにーと何故か不機嫌そうな二人である、テラがそんな3人に微笑みつつ、

「そうだ、コッキーさん、ガラス容器であのくらいの大きさだとお幾らくらいになります?」

思いついた事を口にする、エレインもあーそれいいかもと呟いた、

「えっと、あの壺と同じような大きさですよね・・・単純にそうだな・・・発注数量によりますけど・・・軽く5倍くらいですかね・・・えっと、すいません、適当で・・・」

コッキーが悩みながら言い難そうに答えた、

「その程度であれば・・・」

エレインとテラが顔を見合わせ頷く、

「そうですね・・・少々お待ち下さい」

テラがそう言い置いて腰を上げる、階段へ消えたと思ったらあっという間に戻ってきて、

「これも同じ品なんですけどね、ちょっと見てみて下さい」

ブノワトとコッキーの前に香り付きのクリームを置いた、ブノワトがテラの薦めに従ってその壺の蓋を開ける、途端にフワリと薔薇の香りが漂った、

「わ、良い香りだー」

「薔薇ですね、すごい」

「香水ですか?いや、違うな・・・あっ同じクリームですか・・・」

「うん、見た目は一緒だね」

「柔らかくていい感じの香りですねー」

3人の視線が壺の中へ吸い込まれる、

「そうなんですよ、同じ品なんですが香り付きです、どうでしょう、こちら用のガラス容器は作成可能でしょうか?」

「えっ、勿論です、ガラスならなんでも作れます、でも、えっと、そうだな・・・親父と兄さんに相談しないとですが・・・」

「あー、そういう事、エレインさんもテラさんも分かってるわねー」

ソフィアが二人の意図に気付いた様子である、

「はい、実は、こちらの品は・・・」

エレインが香り付きのクリームの説明を始めた瞬間、

「御機嫌よう」

勝手口に来客のようである、その声を聞いた瞬間にエレインは背筋が伸び、ブノワトとコッキーはビクリと肩を震わせた、ソフィアはあー、予想通りだわと苦笑いを浮かべて厨房へ走るのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...