セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

47話 沈黙の巨漢 その4

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商談が一段落し、茶を囲みつつも今度は改良された爪やすりと蝶の髪飾りで一頻り盛り上がる、やはりユスティーナもレアンも爪の手入れには注力している様子で、王妃達のような派手さは無いが、実に上品にその爪先は整えられていた、その上その影響は側仕えにも波及しているそうで、なんとライニールもその爪は見事に輝いている、

「どうじゃ?男でも美しい方が良いじゃろう」

ニマニマと微笑むレアンと、その両手をエレインとテラに差し出すように見せ、恥ずかしそうなライニールである、

「確かに・・・」

「はい、なるほど、男性の手でも美しくなるのですね」

「じゃろう?」

レアンは意趣返しとばかりに嫌らしい微笑みを崩さない、ライニールは苦虫を噛み潰したような顔そのままに口元を真一文字に結んでいる、

「でも爪が厚くて堅いのですよ、やはり女のそれとは違うようですね」

ユスティーナは真面目に分析しているようである、思い出すように呟いた、

「こうなると・・・女性用として用途を限定するのは損でしょうか・・・」

テラがふむと考え込む、男性の手入れにも価値がある事を認めたようである、

「そうね、鏡に関してはその通りで、男性でも女性でも使える品なのは確実なのですが、爪やすりに関しては女性用と割り切っていましたが・・・爪の手入れに関して・・・いや、やわらかクリームもですわね、男女関係無く販売できるのよね」

「ブラスさんも言ってましたね、髪留めもそうでしたが・・・女性のみに販売するのは顧客を限定する事になります、それは自ら首を絞める行為・・・現状は特に限定しているわけでは無いですが、どうしても購入するのは女性ばかりですよね」

「そうですね、どれもこれも女性には訴求しやすい品ばかりですからねうちの商品は、甘味もそうですけれど・・・そうなると、男性にその良さを実感して貰う為にはどうするか・・・ですわね」

「・・・確かに・・・ブラスさんのように使って貰うにはどうすれば・・・という事ですね」

エレインとテラが眼前のライニールの気恥ずかしさをまるで気にせず議論を交わし、

「であればじゃ、側仕えや屋敷の者から普及させる事もできると思うぞ」

レアンが口を挟む、

「そうですね・・・なるほど、でも・・・うーん、難しいのは男性が手に取ってくれるような品にする事ですね、それと意識の変革ですね、レアン様の仰る通り上から言われれば対応はするでしょうが、自ら進んで手にする事が最も良いかと思います、でも、だいぶ先の話しかしら?」

「少なくともブラスさんは便利だと言って使ってましたよ」

「そうですけど、ブラスさんはほら・・・別に変人ってわけじゃないわよね・・・」

エレインはブラスの事を思い浮かべ、少なくともソフィアさんと比べたら常識人よねと大変失礼な事を考えてしまう、

「そうですよ、常識的な立派な職人さんです」

テラがブラスを庇う、ブラスは商会としてもガラス鏡に関しても重要な人物であり、大事な仲間の一人なのである、この場にブラスがいたら恐らく笑って済ませるであろうが、仲間内で必要以上に傷つけあう必要は無い、

「であれば、今のままでもいいのかしら・・・男性用として商品開発が必要かしらと思ったのですが」

「どうであろうな、父上や屋敷の者達もそうだが小綺麗になる分には悪い事ではないであろう」

「そうね、少しはあれよ身形にも気をつかうようになると思いますしね、特にあの鏡を前にしたら、カラミッド様でさえガラス鏡の前に座るのが習慣になってますもの、最近髪の量を気にし始めましたからね、もう薄くなる歳なのですから気にする必要は無いと申し上げているのですが、やはり気になるのでしょうね、これは良い変化とも思いましたが」

ユスティーナがしみじみと語り、ライニールが意外な事実を耳にして目を剥いた、

「なるほど、そういう変化もあるのですね」

「勿論ですよ、男も女も自身の見た目にもっと頓着するべきなのですわ、銅鏡ではどうしても色彩が不鮮明でしたし細かい部分が見えなかったものですが、ガラス鏡であれば、そのままが見えますからね、これは常識を変える品ですわよ、レアンも先程言っておりましたがモニケンダムの一大事業として盛り立てたいとも考えますが、それはお店が出来てからでもいいかしらね」

「そうなると、やはりガラス鏡の普及から考えた方が良いという事でしょうか」

「ですわね、意識の変革は大事ですわよ、恐らくですが男も女も見た目をより気にするようになりますし、それは世の中を明るくする事になると思いますわ、醜く汚いよりも美しく綺麗である事を誰もが望むでしょうしね、それが自分自身の事であれば尚の事です、後は・・・そうね、商品展開に関して提案があるとすれば、やわらかクリームね、あれも明確に男性用と女性用を別けて販売したらどうかしら?商品化はまだですよね、でも、そうすれば気の利く奥様が手に取って主人に使わせる事もあるのではないかしら?」

「男性用のやわらかクリームですか・・・それいいですね」

エレインの素直な賛辞と、

「素晴らしい案だと思います、そうですね、奥様経由で旦那様に使って貰うのですね、素晴らしいです、一般的な男性であれば奥様に言われれば最初は不承不承でも使ってみるものです、そこで効能を理解すれば継続して手に取ってもらえる筈です」

テラもその手があったかと快哉を上げた、

「でしょう」

ユスティーナが得意気に微笑む、4人の女性が熱心に話し込む横でライニールはスッと手を引くと一歩下がって背筋を伸ばす、内心で大きく安堵の吐息を吐いた、

「では商会としてはどうしましょう、ガラス鏡の販促は勿論ですが男性用のやわらかクリームですか、それと髪留めなんかも工夫していきましょうか?」

「そうね、ブラスさんにも聞いてみましょう、こういうのは女性ばかりで考えていても難しいですわ」

「ふふ、楽しみですね、出来ましたらライニールでもカラミッド様でも試しに使って下さいね」

ユスティーナがニヤリと微笑み、

「そうですね、あまりに派手なのはどうかと思いますが、試しであれば面白そうですね」

レアンもニヤリと笑顔で同意を示した、

「それもこれももう少し先になるかと思いますが、その時には宜しくお願い致します」

エレインも邪悪な笑みを浮かべ、ホッホッホと3人の含みのある笑い声が事務所に響く、ライニールは背中に走る冷たい汗を感じつつも沈黙を守り、従者の職分に集中する事で逃げ出したい衝動を必死に押さえるのであった、

「失礼します」

そこへオリビアが顔を出し、続いて、

「お嬢様いたー」

ミナの甲高い声が3人の笑い声をかき消した、

「ミナ、顔を出すところじゃったぞ」

レアンは笑顔のままに振り向き、

「ミナちゃん、御機嫌よう、レインちゃんも」

ユスティーナも笑みで二人を迎える、オリビアの背後にはミナが果物が満載になった籠を持って満面の笑みで立ち、その後ろにはいつも通りの仏頂面を崩さないレインの姿もある、

「えへへ、お邪魔じゃなかったら行っていいよってソフィーに言われたの、お邪魔じゃない?」

「ほう、礼儀を覚えたのか?こちらの用向きは粗方済んだぞ」

「ならいいの?」

ミナがキョトンと聞き返す、

「大丈夫よ、さ、どうぞ」

テラが許可し、オリビアが一歩進み出て脇に避けると二人を事務室へと誘う、

「えへへ、あのね、あのね、お裾分けなのー、葡萄とリンゴと栗ー、お嬢様はどれが好きー?」

ミナがレアンの元へと駆け寄った、途端果物の甘く涼し気な香りがフワリと香る、

「お裾分け?それは申し訳ないのう」

「えっとね、葡萄はミナとレインが育てたのよ、リンゴと栗は皆で採ったの裏山でー」

「ほう、やっと育ったのか、楽しみにしておったぞ」

「ふふ、どれも絶品ですわよ」

エレインが楽しそうに微笑む、

「そうなの絶品なのー」

「ほう、それは嬉しいのう」

今度はミナを中心にして秋の味覚を話題に盛り上がる一同であった。
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