セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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52話 小さな出会いはアケビと共に その10

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それから宴は一段落し、焼肉用の肉と野菜は粗方掃けてミートパイの半分程度と野菜スープば半分程度が残っている、足りないよりはマシよねとソフィアは虫が入らないように片付けはじめ、腰掛けでは、

「しかし、あの光柱は素晴らしいですね」

ユスティーナとユーリとカトカ、そこにサビナが加わって並んで座り、木々の合間に見える光柱を見上げるように視線を走らせた、

「いえいえお恥ずかしい限りです、まったくの計算違いでして・・・」

ユーリはニコヤカに謙遜した、実際には勘違いであり、計算違いとは言えないのであるが、公にはそう発言する事にしている、

「そんな、それでもあれだけの事を為したのですよ、今日、間近で見てさらに驚きました」

ユスティーナとレアンは事務所で下着を見物した後、サビナと共に学園に向かい光柱を一頻り見物して来た、現場では見ていないとの事であった為、サビナが案内した形である、学園は二晩経ったとはいえまだまだ見物客が多く、サビナが二人を関係者扱いという事にして特別扱いでの見学となった、当然であるが学園長と事務長も顔を出し、やや疲れたような様子であったが喜色満面でユスティーナとレアンを歓迎した、

「今度の祭りでも披露されるとか、大変、楽しみです」

「そうですね、ですが、あれと同一のものは難しいですし、大仰過ぎると思います、ですのでより小さく、但し、より煌びやかになればと思います」

「あら、そうなんですか・・・そうね、確かにあれがそのままだと少々怖いし、威圧感がありますわね」

ユスティーナの言葉通り、学園の光柱は見物客を畏怖させる代物であり、見物客の人並の間では常にあちらこちらで甲高い泣き声が響いていたほどである、幼子を連れ家族で見物に来た者が多い為、つまりそれは幼子の本能的な怖さの素直な表明なのであった、遠慮無く泣き叫び帰る帰ると泣きわめく幼児をその両親は宥めすかしながら困り顔で笑っている姿は、どこにでもある微笑ましい光景であり、隣りを歩く同じ見物客達もそりゃ泣くよなとその心情を理解し苦笑いで受け入れていた、

「そうですね、まず明るすぎます、防御の為の結界が無ければ眩しいでしょうね、それと5段目の結界はやり過ぎでしたね、しかし、あれがなければ下手すると・・・そうですね、10日間はあのままだったかもしれませんね」

「まぁ、5段目というと、あの回転していた黒い部分ですね」

「はい、あれは、魔力を回転運動に変える事で無駄に消費させているのです、ですので、最も大事な部分なんですが、ま、見た目は大変怖いですよね、分かります、私も実際に動くのを見たのは初めてでしたが、構想通りに動いた喜びよりも、やり過ぎたかなって感じでしたね」

「なるほど、ユーリ先生でもそう思われますか・・・そうしますと、あの虹色の部分と本体だけで良いのかしら」

ユスティーナはサビナの解説を思い出す、

「そうですね、街中で構築する場合はその2段構えで十分かと、それに虹色の部分はとても華やかですし、祭りの際には一晩で十分ですしね」

ユーリはユスティーナの理解力に大したもんだと感心しつつ構想段階の計画を口にする、実のところ今日も学園で、学園長と共に商工ギルドの関係者と打ち合わせをしたのであった、先方は領主のお墨付きも得たという事で大変に鼻息が荒く、毎日でも設置したいとの意向であったが、それでは珍しさが無くなるだろうと学園長とユーリは抑える側に回らざるを得なかった、

「楽しみですわね・・・ふふ、期待しております」

にこやかに微笑むユスティーナにユーリは礼を言いつつ頭を下げた、その隣りでは、

「イース様はどこの方なのだ?」

レアンが純粋な質問をエレインにぶつけている、

「えっ、イース様ですか、えっ、お会いになったのですか?」

エレインは目を剥いてレアンを見つめる、

「うむ、今日な、アケビを楽しんでいたらいらっしゃってな、挨拶をしたのだが、随分と高位の方と見受けられたが」

レアンの言葉にはこの時点では裏表は無い、ジャネットがエレインの縁戚であるという紹介をした為それをそのまま信じているのである、しかし、エレインはワタワタと慌ててしまい、

「えっと、そうですね、あー、少しばかりその訳ありでございまして」

何とか誤魔化そうと言葉を探すが上手い理由が出てこない、

「むっ、なんじゃそれは?」

レアンが眉間に皺を寄せる、

「えっと・・・そうですね・・・高位・・・と言えば高位です、はい、こちらにいらっしゃったのは・・・その・・・私と同じような感じでして・・・」

エレインは何とも胡乱な表現で回避する事とした、しかし、

「・・・何じゃ怪しいのう・・・」

レアンの瞳が鋭くエレインを穿つ、

「そんな、ほら、どうしても公表できない事はあるものです、私もそうですが・・・」

エレインはここは自分が身代わりになってでも話題を変えるべきと一計を案じるが、

「エレイン会長の事は聞いておる、今はイース様の件じゃ」

レアンには通用しないらしい、

「あー・・・ですから・・・そうですね、私の口からは何とも・・・その、私としてはある意味恩人に当たる方でして・・・申し訳ありません」

エレインは誤魔化すことが難しいと判断し、今度は素直に答えられぬと言い切る事にした、声を潜め深刻そうな顔を意識する、

「そうか・・・それほどに重大な事なのか・・・良い人だと感じたが・・・」

レアンはそこで何とか追及の手を止めた、エレインはドッと背中に汗を感じつつ、

「申し訳ありません、その、もう暫くはこちらに滞在される予定です、御本人から明かされる事もあるかと思いますが・・・申し訳ありません」

そのような機会は来ないであろうなと思いつつ、エレインは謝罪を口にする、

「いや、こちらこそ済まなかったな、確かに訳ありと言われればそれ以上を追及するのは無礼だな・・・うん、そうだ、それと、湯沸し器であったか、あれを販売する事は考えていないのか?」

レアンも自らの不作法を詫びて話題を変えた、エレインはホッとしつつ、

「はい、そちらであればもう暫くお待ち下さい、現在手配中です」

「そうなのか、それは良い」

笑顔を見せるレアンに、

「はい、ブノワトさんのご実家が鍛冶屋でして」

と詳細を語り出すエレインであった、そして、

「お腹いっぱい・・・」

「うん、苦しいかも・・・っていうか苦しい・・・」

「私も、こんなに食べたの初めて・・・だ・・・」

精霊の木の根本ではサレバとコミン、レスタがだらしなく寝そべっている、

「あー、なんだろ、苦しいんだけど、幸せ・・・」

「そだね、幸せー」

「お腹いっぱいになると幸せなんだね・・・」

「いいのかな、学園始まってないのに・・・」

「そうだったね、何か・・・」

「うん、遊びに来たみたい・・・」

「田舎のみんなに申し訳ない感じがする・・・」

「それね」

「分かる」

「でしょ、何かこっちに来てから夢のような感じだ・・・」

「うん、まだフワフワしてるよね」

「私、ついていけるかな?」

「そだね、何か不安・・・」

「大丈夫だよ、ジャネット先輩も気楽にやればって言ってたし」

「気楽って言われても・・・」

「ねー、どうすればいいか分かんないね」

「ですよねー」

「勉強はしっかりやれってケイス先輩は言ってたね」

「うん、ジャネット先輩を見習っちゃ駄目って」

「ケイス先輩頭よさそうだよね」

「うん、それ分かる」

「お医者さんになるんだっけか」

「凄いねー」

「ねー」

「お医者さんって怖い人だと思ってた・・・」

「そうなの?」

「うん、田舎のお医者さん、すんごい怖いお爺さんなの・・・」

「あー、こっちのお医者さんは優しかったよ」

「そだねー、でも、母さん達は藪医者って呼んでたー」

「ヤブ?イシャ?」

「うん、下手なお医者さん?って感じらしいよ」

「そうなんだー、下手なお医者さんもいるんだー」

「そうみたいよー」

「ねー」

取り留めのない上に内容の薄い会話が夕焼けと光柱に彩られた空に溶けていく、そして、

「はいはい、じゃ、締めの甘味よー」

ソフィアの楽しそうな声が響き渡り、3人は同時にガバッと起き上がると、

「なんだろ」

「甘い物よ」

「それもソフィアさんが作った」

満腹感をどこへやったのかその瞳は爛々と輝き始め、

「ミナ落ち着きなさい」

「やだー、これ、これ?」

ミナとジャネットがこれ見よがしに布で隠された皿に取り付く、

「それよ、一人二つまでね」

「分かったー、わっ、何これ可愛いー」

サッと布を取るとそこに現れたのは丸い輪っか状の菓子である、中央に穴が空いた茶色のパンのようなケーキのような物、それ以上でも以下でも無い、見た目は非常に可愛らしく、そして二人の目には大変に目新しい物に映った、

「ホントだ、ソフィアさんこれ何ていう料理ですか?」

「変な形ー、輪っかだー」

「ありゃ、ミナ覚えてない?」

「覚えてない」

「タロウさんが作ってくれたじゃない」

「そうだっけ?」

ソフィアの周りに続々と人が集まって来て、

「わっ、ホントだ、可愛い」

「うん、お洒落ですね」

「パンですか?」

「油で揚げたのですよ」

料理を手伝ったカトカが自慢気に答えた、

「油で揚げたパン?」

「そんな贅沢な・・・」

サレバはガバッと立ち上がり、

「割っか?」

「急がねば」

「うん」

コミンとレスタも立ち上がるとダダッと駆け寄る、

「そのままでも甘くて美味しいと思うけど、イチゴのソースかカスタードをつけても美味しいですよ、そちらにありますから喧嘩しないで頂きましょう」

「ま、ソフィアさんやっぱりまだ隠してたのですね」

エレインが金切り声を上げ、

「はいはい、人を悪者みたいに言わないの」

「むー、どうやって食べるの?」

「そのままかじり付きなさい」

「いいの?」

「いいわよー、美味しいんだからー」

と言うが早いかミナはパクリと齧り付き、

「んー、美味しいー、甘ーい、フワフワー」

「うん、美味しい、カリカリでフワフワだ、何だこれ?」

「初めて食べました、素晴らしい」

「うん、これは凄い」

「スポンジケーキに似てますが、あれとはまた違った感じですわね」

「はい、なんでしょう、外側が固いのでしょうか、生地も少し違うのかな?」

「そだねー、これはカスタードかなー、アンズソースも合うかも」

「うん、あれだ、蜂蜜の甘さだ・・・」

「そうだね、それに食べやすいな、あっという間に無くなっちゃう」

「真ん中の穴がなんか意味有り気でいいですね」

どうやら好評のようである、ソフィアはニヤニヤと満足そうに微笑み、

「いい、一人二つまで、食べ過ぎて苦しくなっても知らないからねー」

その忠告を聞いているのかいないのか、ジャネットは、

「これ、何ていう料理なんですか?」

単刀直入に同じ質問を繰り返す、

「えっとねー、旦那はドーナッツって呼んでたかな?」

「あの、真ん中空いてるのはどうしてなんですか?」

「あー、そういうもんなんだってー、可愛いでしょ」

「作り方、教えて下さいまし」

「はいはい、後でゆっくりね、簡単よ」

その日の歓迎会はドーナッツを中心にして笑顔と満腹感で締められたのであった。
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