セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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56話 三つ色の樹 その7

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正午になる前にサビナはゾーイと共に商会へ赴き、マフダとリーニーを連れ出すと学園へ向かった、美容服飾研究会の為である、延期したとはいえ、開催する事は確約しており、会場も今日であれば自由に使えるであろう、意気揚々と4人は学園へ向かい、事務室に一度確認を取って講堂に入ると既に新入生と思われる集団が幾つか屯していた、どうやら彼女達は研究会の事を先輩達に聞いていたらしい、授業自体は早めに終わっており講堂で待っていた様子である、勿論であるが見知った顔も有り、ルルとグルジアが良かったーとサビナに駆け寄り、見ればその後ろにはレスタの姿も有る、さらにサレバとコミンも駆け寄って来た、

「ありゃ、そっか、あれか、初めて参加する子も居るんだねー」

サビナは状況を察してそういう事なら少し手間が掛かるがやわらかクリームの作り方から始めようかなと進行を頭の中で組み替えつつ、会場設営の指示を飛ばす、皆喜んで椅子を並べていると、

「おう、ちょっといいかな?」

学園長がノソリと顔を出した、サビナがまた何かあったかと慌てて駆け寄ると、

「すまんな、忙しい所、ユーリ先生と打ち合わせがしたくてな、今日は学園で見ていないと事務員達が言っていたがどうかしたのかな?」

と心配そうな顔である、サビナはあーと思いつつ、適当に話しを合わせ、

「では・・・あーっと・・・御免なさい、ゾーイさん」

周囲を見渡してゾーイを呼びつける、ゾーイがすぐに二人の元へ駆け付けると、

「すまんな、ゾーイさん・・・ん?何じゃ、どうした、早速男でもできたのか?」

学園長はゾーイの顔を見て目を剝いた、そのあからさまな変化に気付いたのであろう、サビナは年齢の割に目敏いなーとほくそ笑み、ゾーイは、

「えっと・・・そういうわけでは・・・」

静かに呟きはにかんで俯いた、

「そうか、いや、すまんな、年頃の娘さんに失礼じゃったな」

失敬失敬と学園長は頭を掻く、そしてサビナはゾーイにユーリを呼んで来るように頼み、ゾーイはそそくさとユーリの研究室へ走った、

「いや・・・気を悪くしたかのう」

その背を学園長は見送って呟く、

「そんな事ないですよ、褒められて嬉しくない女性はおりません、問題があるとすれば褒め方ですかね」

ニヤリと笑うサビナに、そうじゃなと学園長は頷き、

「そう言えばサビナさんも雰囲気が変わっておるな、何ぞ良い事でもあったのかな?」

しげしげとサビナを見つめた、

「ですから、素直に褒めればいいんです、変に勘繰るから拗れるんですよ」

サビナの指摘に、なるほどそういう事かと学園長は破顔し、すまんすまんと笑いながら講堂を後にした、

「まったく」

とサビナは苦笑いで振り返る、会場設営は大人数であったこともあって順調に進んでおり、まぁこんなものかなと使える程度には出来上がった様子で、足りないようならまた並べれ良いかとサビナは判断し、他の生徒が来る迄若干時間もありそうだなと考え、

「はいはい、じゃ、初めての人達には基礎知識から始めるからー、前の方に座んなさい」

と研究会の開始を告げた。



学園長がさてどうするかと事務長と相談していると、扉を叩く音が響き、学園長が入室を大声で促す、

「失礼します」

ユーリが顔を覗かせた、

「おう、すまんなユーリ先生、忙しかったじゃろ」

「それほどでも・・・あはは・・・」

ユーリは誤魔化し笑いを浮かべて学園長室へ滑りこむ、ゾーイから状況を聞いているがサビナが今日のユーリの事をどのように学園長に説明したかまではゾーイも把握しておらず、取り敢えず場の雰囲気に合わせようとユーリは冷や汗を掻きながら扉を叩いたのであった、とてもではないが羽を伸ばしていましたとは口が裂けても言えないであろう、

「うむ、さ、座れ、早速で悪いのじゃが」

と学園長は流れる様に話し始めた、同席する事務長は既に聞いた事であり、ユーリは随分性急ねと思いつつも腰を下ろして静かに耳を傾ける、

「というわけでじゃ、ユーリ先生にも意見が欲しくてな」

「意見ですか・・・」

ユーリは心持ちを仕事状態に強引に引き上げるとフムと考え込む、学園長の説明によると、午前中学園長は学部長と共に領主邸へ招かれ、先日も取り沙汰された資金提供について本格的な意見交換をしたらしい、しかしどうやら少しばかり心変わりがあったようで、それによると、カラミッド本人は学園そのものよりも街中の平民への教育の提供を考えているらしく、それはユスティーナの入れ知恵と、リシャルトの表だっての交流は場合によっては問題の種になるであろうとの助言によっての決断らしい、ユーリはユスティーナの名前を聞いた瞬間に、エレインが絡んでいるなと瞬時に見抜き、しかし、それはそれで結構な事かしらと良い事と捉え直す事とした、そして、その構想については学園長自身は大変に乗り気のようであり、事務長をチラリと伺えば悪い顔はしていない、若干渋い顔なのは単に実際に動き出したら手間だろうなと現実的な事を考えている為であろうと勘繰る、

「そうですね、以前エレインさんの所で伺ったそのままに聞こえますが・・・」

ユーリはそっと学園長を伺う、以前商会へ学園長と共に訪問した際にエレインが話していた、子供を預かりつつ学問を提供する場にしたいとの構想に近いものであったからである、

「そうなのじゃ、恐らくだがユスティーナ様の入れ知恵とやらがエレインさんのそれなのではないかと思うのだが・・・」

学園長も同じように捉えた様子で、

「やはりそう思われますか?」

「うむ、全くとは言わないが方向性が同じだからな、違うとすればその対象じゃな、エレインさんは仕事をしながらでもと話していたが、カラミッド様のそれは子供達を中心としたものであった、恐らくじゃがエレインさんの構想をユスティーナ様なりに咀嚼して、さらにカラミッド様が味付けをした、で、リシャルト殿が調整した・・・のかな、どうかのう?」

学園長はニヤリと微笑む、

「そうですね、私もそのように感じます・・・すると・・・どうでしょう、エレインさんを巻き込みます?」

「いや、それも含めての相談なのじゃ、あの女人の実力は十分に理解しておるが、忙しいであろう、学園に席がまだあるとはいえ貴族出身者である事もあってな、あまりこちらから積極的に助力を乞うのも難しいかと思ってな、事務長とも話していたのじゃが・・・うん」

と学園長は盛大に首を捻る、ユーリとしてはエレインが喜びそうな話しだなと思っていたが、どうやら彼女を巻き込む事は本人よりもその立場が問題になるらしい、

「と言いますと?」

「うむ、ほれ、どうしても貴族が絡んでくるとその綱引きというか利権がなどうしてもこう絡んでしまう、儂は貴族の席はあるが傍系じゃからな、まるでそっちの世界は他人事と生きて来たのじゃが、事務長の意見ではな、貴族と貴族とのやり取りにはそれはそれで暗黙の決まりがあるそうでな、今回はほれ、まず何よりも王と公爵の関係だな、それとエレインさんはライダー子爵家であったか、うん、そこら辺のな、恐らく本人達でなければ理解出来ない力関係という奴がな、問題になるかもしれんとな、何とも雲を掴むような言い方しかできんのじゃが、うん」

どうやら学園長自身では判断出来かねる事らしい、そういうものなのかとバリバリの平民であるユーリはフーンと頷くしかなく、

「カラミッド様としては気にはしないと笑っていたが、そこに今度は学園の立場も絡んでしまうのじゃな、学園として生徒を預かっている以上、学問意外に生徒を動員するのはちと難しくてな、彼女が卒業していればまた話しは変わるが・・・」

ユーリはもう卒業しているようなものであろうと鼻白む、あれだけ好き勝手やっていて何のお咎めも無いのだ何を今更と呆れるしかない、

「いや、ユーリ先生のお気持ちも分かります」

事務長が口を開いた、

「エレインさんに関しては貴族の特別扱いの状態であります、色々と思う所もあるでしょうが、これは学園としても先方の貴族としても実に便利な扱いでしてな、しかし、このような状況になったのは初めての事でして、簡単にはいかんのですよ」

何とも煮え切らない言葉であった、

「そうですか・・・そうなると・・・うん、どうでしょう私から直接聞いてみましょうか?それと、クロノスですか、そちらにも聞いておきたいと思いますが如何でしょうか?」

「そうなるか・・・」

「そうですね・・・」

学園の重鎮二人は渋い顔であるが頷くしかないといった様子であった、正直な所、この二人を持ってしても簡単には結論が出せないのであろう、特に貴族が絡んだ問題である、場合によっては火種になりかねない、この場合、領主は良いとしても王国が背後にある学園としては王国の理解は絶対に必要で、さらに事の構想の端緒もまた下級とはいえ貴族である、三方を上手く取りまとめる必要があると二人は考えている様子で、エレインさんも随分偉いのねとユーリは改めて思うが、偉いのはその実家であり、血縁者である、エレイン自身は実力はありつつも腐っていたような人物なのだから気兼ねなど必要無いのではないかとユーリは考えるが、こと政治の絡んだ話しとなると一筋縄ではいかないのであろう、

「全く・・・どうせそのつもりで呼んだのでしょう?」

ユーリはやれやれとこれ見よがしに溜息を吐いた、こちら側の重要人物であるエレインとクロノスを相手にして気兼ねが無いどころか好き放題言えるのはユーリとソフィアくらいのものである、さらに言えばこういった騒動は二人共にお手の物であり、その中心にしれっと居る事が多い、学園長と事務長から見ても扱いには困る事もあるが稀有で唯一無二の、いや唯二無三の人材であったりする、

「すまんな、その通りだ」

学園長は真摯な瞳でユーリを伺う、本来であれば自分が走らねばならない案件なのであるが、ここは先に根回しと意思確認をユーリに願っているのだ、故に先程から大変に歯切れが悪い、このような案件に一教師どころか一研究員を巻き込むのは本来あってはならないことであろう、ユーリ個人はそのどちらでもあってその程度には収まらない人物であるのだが、それを知る二人故にどこまでも頼るのは自分達の無力を再確認するようで歯痒い思いもあった、

「はい、理解致しました、ですが・・・そうですね、時間はどの程度ありますでしょうか?」

「うむ、それなのだがな」

さらに詳細な打合せが始まる、それは構想の内容は一先ず置いておいてどこの誰にどこまでの情報提供が必要かという、正に政と下準備のそれであった。
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