セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

57話 異名土鍋祭り その4

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それから天幕には続々と人が集まって来ていた、ほぼ全ての人物が高齢の男性で、かつそれなりの正装に身を包んでいる、ギルドが中心の祭りという事と、領主がどうやら顔を出すと事前に噂になっていたようで、であればと顔を出さざるを得なかった人達と、領主との知己を得ようと画策している者もいる様子であった、それを見越してかカラミッド本人はリシャルトと共にフラフラと屋台を見物しており、わざわざそれを邪魔に行く者はいないようで、しかしやはりその場に集まったのはそれなりの権力者であり有力者である、当然のようにお互い顔見知りであった、故にカラミッドに代わってギルド長がユスティーナ達に気を利かしてか天幕の外で挨拶対応と雑談に興じており、やはり同じように顔が広いのであろう、事務長も天幕の外で雑談に勤しんでいる、挙句ライニールも見知った顔が多いようで、こちらは若い連中が多かったが天幕の外れに集まってなにやら笑い合っていた、それは勿論ユスティーナの許しを得ての事である、その為広い天幕内はユスティーナとレアン、ユーリと学園長がゆったりと寛いでおり、ユスティーナが連れて来たメイド二人はどういうわけだか天幕内で屋台から差し入れられた料理を並べていたりする、ギルド側に女手が無かった事も一因であるが、所謂職業病と言えるものであろう、主の手前動くのが当たり前であるし、なにより主が臨席するその場にはある程度の秩序が求められる、差し入れ物だからと言って雑に積み重ねる等クレオノートの名が許さない、まるでそういった歓待の心得を持ちえないギルドの担当者を差し置いてちょこまかと動くメイド二人であった、

「こういうのも面白いものね」

ユスティーナはニコニコとその様子を楽しそうに眺めており、しかし、

「そうですね、母上がそういうのであれば」

レアンはどこか納得いっていない様子であった、カラミッドからも指摘されたがやはりこういう場では、女手は必要なものであるし、何よりも今日は本来自分が主客の筈である、挨拶とまではいかなくてもどこかほっとかれている気がして不安になるのであった、しかし、それも回りの大人達からすれば当然の事である、父親を差し置いてレアンに挨拶をする訳にはいかず、その父親が不在となればまた話は違ってくるが当の本人が少なくとも同じ広場の目の届く場所にいるのである、こちらには完全に背を向けて屋台を覗き込んでいる様子で、そちらはそちらで楽しんでいる様子である為邪魔も出来ず、かと言って直接レアンやユスティーナに挨拶をするのも間違っている、従者のライニールもメイド達もいるため取次は可能であるが、その場合は領主の方へと向かうのが当然でその妻と娘に直接目通りなどは問題外である、そうなると、取り敢えず見知った顔同士で集まり状況を計るのが賢明であった、

「こういうものでしょう、ま、かくいう私もこういう場は始めてですがな」

学園長がオッホッホと上品に笑った、

「そうなんですか?」

「はい、対外的な仕事はゲイル・・・、あぁ、事務長に任せっぱなしでして」

「学園長は研究に力を入れ過ぎなのです」

ユーリが補足すると、

「何を言う、学問の主軸を蔑ろにはできんものじゃぞ、いや、ユーリ先生は良く分かっていると思うがな」

「それはそうですが、事務長におんぶにだっこはどうかと思いますよ」

「いや、それで良いのだ、あれの勤勉さと事務処理能力は王国随一ですからな、うん、適材適所と思っておる」

「ふふ、それは素晴らしい」

「はい、なので、私は研究に集中できております、あっ、最近の研究というか施策がありましてな」

学園長が雰囲気に流されてか饒舌になり始めた、こうなると長いんだよなとユーリは目を細くして学園長を睨むが、ユスティーナとレアンは楽しそうに耳を傾けている、学園長の口が上手いのもあるが、その内容に引かれたのであろう、

「まぁ、では、オリビアさんの書簡が公開されておりますの?」

「それは興味深い」

「はい、エレインさんから聞いてませんですかな?」

「あー、学園長、エレインさんの身にもなって下さいよ」

ユスティーナとレアンの反応に気を良くしている学園長にユーリは静かに釘を挿す、

「む、しかしだな」

「しかしもかかしも無いですよ、エレインさんに協力はして頂きましたが、自らすすんで公表したわけではないでしょ、あれはあくまで学園長の構想の良い例として掲示する事を許可頂いたのですよ、エレインさんが喧伝するわけがないです」

「あら、そういう事なのね」

ユスティーナが理解を示してニヤリと微笑む、

「はい、なので、エレインさん本人はあれですね・・・うん、そういう事です、それと、何気にレアンお嬢様も出てくるのですよ」

「なに?」

レアンが驚いて背筋を伸ばした、

「それとは分からないようにぼかして書いておりますが、原文ですと、領主のお嬢様と知己を得たとの記述がありまして、それでは問題があるかとなりましてね、高位貴族のお嬢様と変えております」

「あら・・・そのままでも良かったのに」

ユスティーナは微笑むが、

「・・・ちょっと待て、その・・・良く書かれておるのであろうな」

レアンは急に慌てだす、

「悪くは書いてないですよ、良いお友達になれたようだと、あくまで実家への報告形式なので」

「それであれば・・・うむ、良いか・・・いや、良いのか?」

「ふふ、面白そうね、それはまだ見れますの?」

「勿論ですぞ、玄関ホールに掲示しております、良ければ御覧になりますかな?」

「そうね、レアンどうする?」

「むぅ、見てみたいです」

「そうねー」

二人がニヤリと微笑み合った瞬間、

「あー、いたー」

ミナが何の遠慮も無く天幕に駆け込んで来た、

「あら、他人事言ったら茶を立てろね」

ユスティーナがミナを追って慌てて駆けてくるエレインに気付き、ミナはレアンにぶつかりそうになりながら踏み止まる、

「む、来たのか?」

「来たよー、あっ、ガクエンチョーセンセーだー」

「うむ、ミナちゃん朝から元気だのう」

「えへへー、元気だよー、あっ、忘れてた」

ミナは一歩下がってぎこちなくスカートの端を摘まむと、

「えっと、御機嫌麗しゅう皆様」

ペコリと頭を下げる、ユスティーナはアラッと微笑み、レアンは今さらかと鼻で笑う、そこへ、

「すいません、お邪魔します」

エレインが息を切らして駆け付けた、その後ろにはオリビアも続き、いつぞや編み物を一緒にした生徒達もついてきていた、エレインはミナの両肩を抑えつけると恭しく礼をする、

「ふふ、エレインさんもミナちゃんには勝てないようね」

ユスティーナが優雅に微笑むと、

「はい、もう、今日はお淑やかにする約束なんですが・・・無理ですね」

「無理じゃな」

「無理じゃないー、ちゃんと挨拶出来たー」

「そうなの?」

「したでしょー、お嬢様、見てたでしょー」

「うむ、ミナにしてはしっかりしておったぞ」

「でしょー」

「でしょうじゃないわよ」

そこでやっとユーリが呆れたように口を挟む、すると、ミナは不思議そうにユーリを見上げ、はっと目を丸くして気付いたようで、

「あー、ユーリだー、どうしたの?なんでいるの?変な格好ー」

「おいおい、一気に全部言ったな・・・」

「ほっほっほ、面白いのう」

「今日はお仕事なのよ」

「えー、お仕事だとその格好なの?誰だか分かんなかったー」

「あーそうかい、好きになさい」

「うん、好きにするー、で、まだ?まだやってないよねー」

「うむ、これからじゃ、間に合ったぞ」

「良かったー、で、何するの?どうするの?」

「ええい、落ち着け」

レアンの大声が天幕を揺らし、何事かと大人達の視線が集まる、しかし、ミナの姿を認めて子供の騒ぎかとすぐに興味の対象から外れたようだ、

「むー、落ち着いた・・・」

「ほんとか?」

「大丈夫、今日はお淑やかだから」

「だから、お淑やかな娘は走ったりせんのじゃぞ」

「えー、でもー」

「でもじゃないわよ、お嬢様の言う通りでしょ」

「うー、分かったー」

「ならいいわ、ほら、座んなさい、エレインさんも、みんなで来たのね」

「はい、寮の新入生たちですね、ほら皆さんも」

エレインが背後に視線を向けると、皆一様に硬い顔である、

「どうしたのです?寮では一緒に編み物をしたじゃない」

ユスティーナがニコリと微笑み、生徒達はそう言えばと思い出す、場所が変わり状況が異なる、ユスティーナとレアンの装いも各段に違う為、その見た目に対して気後れしてしまっているのだ、

「そうでした、その節はお世話になりました、それと刺繍枠と毛糸も頂きまして有難うございます、大事に使わせて貰っています」

グルジアが数歩近寄って綺麗な礼を見せた、

「あらそれは嬉しいわ」

ユスティーナの柔らかい笑みに皆ホッとしつつ、明るく挨拶が交わされたのであった。
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