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本編
67話 祭りを生み出すという事 その20
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タロウが要塞監視所での打合せという名の馬鹿話を終えて寮へ戻ると、すでに正午を遥かに回っていた、ルーツと久しぶりにゆっくりとあーだこーだと話し込んでしまい、その場に居たのは全員がルーツの部下である、それは二人を止める者がいないという事であった、しかし、その部下達にしてみれば二人の取り留めのない会話は勉強になるものであった、タロウとしては馬鹿話のつもりでルーツはそれをからかっているような口調であったが、それでも感心せざるを得ない内容で、タロウはこういう事も出来るだろう、めんどくさいから二人で攻めるかと終いには笑いだす始末で、ルーツはそれでは金にならんからつまらないと実に現実的に答える、部下達からすればルーツがこれほどに胸襟を開いて話す相手がクロノス以外に存在したのかと口には出さずとも驚いており、タロウに関してはルーツから大雑把には紹介されている、そのふざけた様な言説の全てが冗談どころか、その気になれば実行できる人物である事を想像し驚嘆するしか無かった、
「あっ、タロウさん、ちょっといいですか?」
タロウが転送室から研究所を通りかかると、丁度良かったとカトカとゾーイが顔を上げた、二人は打合せテーブルを囲んでおり、どうやら真面目に仕事中であるらしい、学園祭の準備とやらはいいのかなとタロウは思ったが、俺が口出す事ではないなと思いつつも、
「あら、お疲れさん、学園の方ってもう良いの?」
とついあっさりと口が動く、
「はい、というかこれも準備の一つです」
「そうですねー」
二人がテーブルに並ぶ小さな壺と小皿に視線を落とす、
「あら、もう作ったの?」
「はい、もう慣れちゃいました」
ゾーイがニコリと微笑む、その壺と小皿は件の光柱の魔法陣を仕込んだものであろう、タロウも引き寄せられるようにテーブルに歩み寄った、
「へー・・・そっか、小皿となるとこんなに小さいのか・・・」
「そうなんですよ、一番小さい皿となるとこれですね」
「なるほど・・・何に使うんだこれ?」
「絵皿らしいです」
「あー・・・なるほどねー」
タロウが小皿の一枚を手にしてフンフンと頷く、王国の食卓では勿論なのであるが醤油皿というものは存在しない、似たような調味料として魚醤はあるが、主に調理に使われており、食卓に置かれる調味料としては馴染みが薄い様子である、食卓で主に使用されているのは岩塩を粉にした塩と数種類の酢である、塩に関しては元になる産地によって種類が豊富で、酢に関しても産地と原材料によって多様であったりする、しかしそれらも個々人の皿に料理を取り分けてそれに振りかけるのが当たり前で、調味料を別にしてそれに付けて食べるという習慣は無いらしい、故にタロウの思う小皿が食卓に並ぶ事は無く、そして眼前の小皿は正確には絵皿という事になるのであろう、
「一応これで作ってみたんですが、どうでしょう、小さすぎますか?それとも大きいです?」
「んー、いや、いいと思うよ、ほら、小さければ小さいで、大きければ大きいで使いどころはあるからね、でもこれだとやっぱりあれ?稼働時間は短くなる?」
「はい、短いですね、壺と違って魔力を溜められないので、半分以下かな・・・感覚的にですけど、正確に比べてないです、それと減りも早いように感じました」
「そっか、そうだよね、そうなるよなー」
タロウはなるほどと頷いた、先日ゾーイとしっかりと打合せをしたのであるが、その際に想定された問題点であった、壺であればその形から魔力を保持する事が簡単なのである、そして壺いっぱいに魔力を注ぐ事が出来れば恐らく一晩と言わずほぼ一日は持つと実測はしていないが考えられた、しかし小皿となるとそうはいかない、壺のように魔力を溜める事が難しく、大気との接触面積も多い為注いだ魔力が大気に拡散していく事が考えられた、而してどうやらその通りの結果になったようである、
「それとやっぱり小皿だと別の問題もありますね」
カトカが口を挟む、
「なに?」
「魔法陣が丸見えなので、複製しやすい点と、強度の問題です、壺の方でも気にはしていたのですが専用の釉薬を使ってないし、削りつけてもいないので、塗料を乗っけただけですと・・・うん、使っているうちに剥げちゃいますね確実に、特に小皿の方は、その点ちょっと気になるかなって・・・」
「あー・・・あれだっけユーリが開発した手法だっけか・・・ユーリも凄いね」
「そうですよ、うちの所長は凄いんです」
カトカがフンスと胸を張る、陶器板を使った魔法陣の活用はユーリが学園に来てから確立した技術であった、ユーリは大戦当時から魔法陣の研究をタロウとソフィアと共に行っており、それは大戦が終わりクロノスの元に居た頃も続け、学園に招かれ落ち着いた研究場所を得た事で花開く事になった、その為陶器板の活用に関してはタロウもソフィアも殆ど関与しておらず、ユーリ単独の成果となっている、
「そうだよね、うん、魔法陣に関しては一緒に研究してたんだけど、まさかこんなに便利になるとは思ってなかったよ」
「そう思われます?」
「勿論だ、惜しむらくは、まだ、温めるのと冷やすのと、それくらいしか出来ないことかな、でも、このまま研究し続ければ他にも色々出来そうだよね、それこそ魔力の収集も、頑張ってるんだろ?」
「はい、今はそれが中心です」
「だよな、昔から言ってたからなあいつは、大したもんだよ」
しみじみと友人を褒めるタロウにカトカは誇らしげに微笑み、ゾーイは意外そうな顔になる、以前の研究所にあっては女性を素直に褒める男性なぞ居らず、ロキュスからはその実力は認められていたものの、同僚からは厄介者扱いであり、小さくなっているしかなかったのである、しかし、タロウはどうやら女性だからと言って下に見る事は無いらしい、やっかみが無く、さらにどこか嬉しそうな親しみの籠った褒め言葉からそう感じられた、
「あっ、で、話しを戻すと、もしあれかな本格的に作るとなればその釉薬を使った方が良いって事かな?」
「はい、そう思います、壺の方は中に指を入れなければ傷が付く事も無いと思いますけど、この小皿だとどうしても魔法陣に手が触れてしまうでしょうから、この専用の塗料は乾燥しても柔らかくて、だから陶器板にはわざわざ彫りつけて使っているんですね」
「なるほど、そうなるとすぐに壊れちゃうか・・・」
「それもありますし、陣の形が変ってしまうと、想定外の動作になると考えられます、この規模であれば大した事は無いと思いますし、魔力を注いで動かす程度であればいいですけど、直接魔法を使ったりしたらどのような事になるか・・・」
「あー・・・分かんないよね・・・想定も難しい・・・」
「そうなんです」
「確かにそうですね」
ウンウンとタロウとゾーイは頷いた、カトカの懸念する所は深く理解できた、実のところ魔法陣に関してはまだまだ発展途上の技術であり構造に関しての理解は進んでいるが、その根本原理の解明には至っていない、つまり、なぜ動作しているのかが皆目見当もつかない状態なのであった、タロウでさえである、魔法陣の本場である魔族に教えを乞えば或いは明解なのであろうが、現時点では難しく、また、魔族としてもそう簡単には教えてくれないであろう、彼らの社会でも魔法は重要な武器であり、魔法陣はそれを助ける貴重な技術なのである、遠く離れた大陸の言葉も通じない者がその門戸を叩いても門前払いが良いところで、彼らの気質を考えると叩く前に彼らの餌になっていよう、
「そうなるとさ・・・もしかしたらあれかな皿から作った方が良いって事になるよね」
タロウがフムと小皿を手にした、テーブルには他にも数種類の小皿が並んでおり、大小も形態も様々なそれはゾーイが取り合えずと手あたり次第に買って来たものらしい、
「もしかしなくてもそれが一番と思います・・・製作の手間が増えますが、後の事を考えれば」
「そうですね、私も、はい、そう考えます」
「そっか・・・じゃあ、理想的な小皿?・・・というよりも、器って感じになると思うんだけど、その形を模索して、それで作ってもらう?時間はかかるだろうけどさ」
「はい、それを話していたんです、で、形なんですが、どうでしょう、この小皿の大きさで縁を高くすればそれでいいと思うんですよ、小さなスープ皿って感じで」
「なるほど、だともう少し大きい方がいいかな?広い方が光を拡散できるでしょ」
「それなんですよ、結局、どの大きさがいいのかなって」
「あー・・・これかな、これのもう一回り大きい感じ」
「その皿だと魔法陣を刻むのがめんどいですね、底が平らな方がいいですよ」
「そこはそれ、そういう風に作ってもらって、あっ、じゃ、ちゃんと図面かな?」
「そうですね」
ゾーイが黒板を取り出し、三人は改めて座り直すと真剣に討論を交わし始めるのであった。
タロウが突発的な打合せを終え一度イフナースの屋敷に顔を出してから食堂に下りると、
「むー、ジャネットは駄目ー、ジャネット嫌いー」
「なんでさー、意地悪するなしー」
「やだー、抱きつくからやだー、気持ち悪いー」
「えー、ミナっち喜んでたでしょー」
「喜んでないー、ジャネット嫌いー」
ミナとジャネットの叫び声、他の生徒達の笑い声が響いていた、
「ありゃ、何やってんだ君達は?」
タロウが荷物を床に置いて不思議そうに首を傾げる、食堂の暖炉の前、今朝までは毛皮が敷かれていた空間に、午前中に作られたスプリング入りの寝台が置かれていた、ミナとレインが熱望した為で、タロウは皆で仲良く使う事を条件にブラスと共に運び込んだのである、
「むー、タロー、ジャネットがイジめるー」
「虐めてないでしょー、ほら、ミナっちこっち来なー」
「ええい、動くなうっとしい」
「レインもなんだよー、一緒にゴロゴロしようよー」
「うっとうしいと言っておるのだー」
どうやらレインも巻き込まれたらしい、それも当然で、レインはよほどその寝台が気に入ったのか寝台の背に凭れて書を開けており、ジャネットが寝台の中央に寝そべり、ミナはそのジャネットから逃げるように端の方に身を寄せていた、
「あー、仲良く使えって言ったよな?」
「ブー、仲良く使ってたー、ジャネットが気持ち悪いのー」
「あー、ミナっち、傷つくなー、おねーさんは悲しいぞー」
「知るかー、さわるなー」
「もう、ミナっち、恥ずかしがっちゃってー」
「むかー、恥ずかしくないー」
とうとうミナはジャネットに立ち向かう事にしたようで、スクッと立ち上がるとジャネットに飛び掛かる、しかしジャネットはクロノスのように戯れる事は無くあっさりとその胸にミナを抱き締めた、
「ギャー、レイン、助けてー」
「えーい、うるさいわー」
「ギャー、ジャネットくさいー」
「あー、また、酷い事言ったー」
「おいおい・・・怪我だけはするなよ」
タロウはやれやれと呆れるしかない、この場合止めるのが正しいのか、放っておくのが正しいのか判断が難しい、
「もう、ほら、ジャネット、待ってる人がいるんだから」
ケイスがようやっと微笑みながらもジャネットを窘める、サレバとコミン、ルルにグルジアと羨ましそうに寝台の上の三人を見つめる目は多かった、どうやら生徒達は一斉に帰ってきた所らしい、
「まったく・・・あー、ごめんね、狭くしちゃって」
タロウは少女達に一応と謝罪する、
「それはいいですけど、どうなってるんですかこれ?」
グルジアが興味津々といった顔で、ルルやサレバも目を輝かせてタロウを見上げた、
「簡単だよ、寝台に捩じりバネを仕込んだんだ、皆の感想も欲しくてね、ついでにこうして欲しいとかあったら聞きたいかな?」
「なるほど、良く分かりませんけど、感想ならいつでも歓迎です、先輩、そういう事なんで、交代して下さい」
「えー、まだー、もうちょっとー」
「駄目です、ほら、ミナちゃん泣いちゃいますよ」
「えー、ミナっちは強い子だから、大丈夫だよー」
「うー、ジャネットのバカー、スケベー、アホー」
「なんだとー」
さらに暴れ出すミナとジャネットに、やれやれと呆れた溜息に溢れる食堂であった。
「あっ、タロウさん、ちょっといいですか?」
タロウが転送室から研究所を通りかかると、丁度良かったとカトカとゾーイが顔を上げた、二人は打合せテーブルを囲んでおり、どうやら真面目に仕事中であるらしい、学園祭の準備とやらはいいのかなとタロウは思ったが、俺が口出す事ではないなと思いつつも、
「あら、お疲れさん、学園の方ってもう良いの?」
とついあっさりと口が動く、
「はい、というかこれも準備の一つです」
「そうですねー」
二人がテーブルに並ぶ小さな壺と小皿に視線を落とす、
「あら、もう作ったの?」
「はい、もう慣れちゃいました」
ゾーイがニコリと微笑む、その壺と小皿は件の光柱の魔法陣を仕込んだものであろう、タロウも引き寄せられるようにテーブルに歩み寄った、
「へー・・・そっか、小皿となるとこんなに小さいのか・・・」
「そうなんですよ、一番小さい皿となるとこれですね」
「なるほど・・・何に使うんだこれ?」
「絵皿らしいです」
「あー・・・なるほどねー」
タロウが小皿の一枚を手にしてフンフンと頷く、王国の食卓では勿論なのであるが醤油皿というものは存在しない、似たような調味料として魚醤はあるが、主に調理に使われており、食卓に置かれる調味料としては馴染みが薄い様子である、食卓で主に使用されているのは岩塩を粉にした塩と数種類の酢である、塩に関しては元になる産地によって種類が豊富で、酢に関しても産地と原材料によって多様であったりする、しかしそれらも個々人の皿に料理を取り分けてそれに振りかけるのが当たり前で、調味料を別にしてそれに付けて食べるという習慣は無いらしい、故にタロウの思う小皿が食卓に並ぶ事は無く、そして眼前の小皿は正確には絵皿という事になるのであろう、
「一応これで作ってみたんですが、どうでしょう、小さすぎますか?それとも大きいです?」
「んー、いや、いいと思うよ、ほら、小さければ小さいで、大きければ大きいで使いどころはあるからね、でもこれだとやっぱりあれ?稼働時間は短くなる?」
「はい、短いですね、壺と違って魔力を溜められないので、半分以下かな・・・感覚的にですけど、正確に比べてないです、それと減りも早いように感じました」
「そっか、そうだよね、そうなるよなー」
タロウはなるほどと頷いた、先日ゾーイとしっかりと打合せをしたのであるが、その際に想定された問題点であった、壺であればその形から魔力を保持する事が簡単なのである、そして壺いっぱいに魔力を注ぐ事が出来れば恐らく一晩と言わずほぼ一日は持つと実測はしていないが考えられた、しかし小皿となるとそうはいかない、壺のように魔力を溜める事が難しく、大気との接触面積も多い為注いだ魔力が大気に拡散していく事が考えられた、而してどうやらその通りの結果になったようである、
「それとやっぱり小皿だと別の問題もありますね」
カトカが口を挟む、
「なに?」
「魔法陣が丸見えなので、複製しやすい点と、強度の問題です、壺の方でも気にはしていたのですが専用の釉薬を使ってないし、削りつけてもいないので、塗料を乗っけただけですと・・・うん、使っているうちに剥げちゃいますね確実に、特に小皿の方は、その点ちょっと気になるかなって・・・」
「あー・・・あれだっけユーリが開発した手法だっけか・・・ユーリも凄いね」
「そうですよ、うちの所長は凄いんです」
カトカがフンスと胸を張る、陶器板を使った魔法陣の活用はユーリが学園に来てから確立した技術であった、ユーリは大戦当時から魔法陣の研究をタロウとソフィアと共に行っており、それは大戦が終わりクロノスの元に居た頃も続け、学園に招かれ落ち着いた研究場所を得た事で花開く事になった、その為陶器板の活用に関してはタロウもソフィアも殆ど関与しておらず、ユーリ単独の成果となっている、
「そうだよね、うん、魔法陣に関しては一緒に研究してたんだけど、まさかこんなに便利になるとは思ってなかったよ」
「そう思われます?」
「勿論だ、惜しむらくは、まだ、温めるのと冷やすのと、それくらいしか出来ないことかな、でも、このまま研究し続ければ他にも色々出来そうだよね、それこそ魔力の収集も、頑張ってるんだろ?」
「はい、今はそれが中心です」
「だよな、昔から言ってたからなあいつは、大したもんだよ」
しみじみと友人を褒めるタロウにカトカは誇らしげに微笑み、ゾーイは意外そうな顔になる、以前の研究所にあっては女性を素直に褒める男性なぞ居らず、ロキュスからはその実力は認められていたものの、同僚からは厄介者扱いであり、小さくなっているしかなかったのである、しかし、タロウはどうやら女性だからと言って下に見る事は無いらしい、やっかみが無く、さらにどこか嬉しそうな親しみの籠った褒め言葉からそう感じられた、
「あっ、で、話しを戻すと、もしあれかな本格的に作るとなればその釉薬を使った方が良いって事かな?」
「はい、そう思います、壺の方は中に指を入れなければ傷が付く事も無いと思いますけど、この小皿だとどうしても魔法陣に手が触れてしまうでしょうから、この専用の塗料は乾燥しても柔らかくて、だから陶器板にはわざわざ彫りつけて使っているんですね」
「なるほど、そうなるとすぐに壊れちゃうか・・・」
「それもありますし、陣の形が変ってしまうと、想定外の動作になると考えられます、この規模であれば大した事は無いと思いますし、魔力を注いで動かす程度であればいいですけど、直接魔法を使ったりしたらどのような事になるか・・・」
「あー・・・分かんないよね・・・想定も難しい・・・」
「そうなんです」
「確かにそうですね」
ウンウンとタロウとゾーイは頷いた、カトカの懸念する所は深く理解できた、実のところ魔法陣に関してはまだまだ発展途上の技術であり構造に関しての理解は進んでいるが、その根本原理の解明には至っていない、つまり、なぜ動作しているのかが皆目見当もつかない状態なのであった、タロウでさえである、魔法陣の本場である魔族に教えを乞えば或いは明解なのであろうが、現時点では難しく、また、魔族としてもそう簡単には教えてくれないであろう、彼らの社会でも魔法は重要な武器であり、魔法陣はそれを助ける貴重な技術なのである、遠く離れた大陸の言葉も通じない者がその門戸を叩いても門前払いが良いところで、彼らの気質を考えると叩く前に彼らの餌になっていよう、
「そうなるとさ・・・もしかしたらあれかな皿から作った方が良いって事になるよね」
タロウがフムと小皿を手にした、テーブルには他にも数種類の小皿が並んでおり、大小も形態も様々なそれはゾーイが取り合えずと手あたり次第に買って来たものらしい、
「もしかしなくてもそれが一番と思います・・・製作の手間が増えますが、後の事を考えれば」
「そうですね、私も、はい、そう考えます」
「そっか・・・じゃあ、理想的な小皿?・・・というよりも、器って感じになると思うんだけど、その形を模索して、それで作ってもらう?時間はかかるだろうけどさ」
「はい、それを話していたんです、で、形なんですが、どうでしょう、この小皿の大きさで縁を高くすればそれでいいと思うんですよ、小さなスープ皿って感じで」
「なるほど、だともう少し大きい方がいいかな?広い方が光を拡散できるでしょ」
「それなんですよ、結局、どの大きさがいいのかなって」
「あー・・・これかな、これのもう一回り大きい感じ」
「その皿だと魔法陣を刻むのがめんどいですね、底が平らな方がいいですよ」
「そこはそれ、そういう風に作ってもらって、あっ、じゃ、ちゃんと図面かな?」
「そうですね」
ゾーイが黒板を取り出し、三人は改めて座り直すと真剣に討論を交わし始めるのであった。
タロウが突発的な打合せを終え一度イフナースの屋敷に顔を出してから食堂に下りると、
「むー、ジャネットは駄目ー、ジャネット嫌いー」
「なんでさー、意地悪するなしー」
「やだー、抱きつくからやだー、気持ち悪いー」
「えー、ミナっち喜んでたでしょー」
「喜んでないー、ジャネット嫌いー」
ミナとジャネットの叫び声、他の生徒達の笑い声が響いていた、
「ありゃ、何やってんだ君達は?」
タロウが荷物を床に置いて不思議そうに首を傾げる、食堂の暖炉の前、今朝までは毛皮が敷かれていた空間に、午前中に作られたスプリング入りの寝台が置かれていた、ミナとレインが熱望した為で、タロウは皆で仲良く使う事を条件にブラスと共に運び込んだのである、
「むー、タロー、ジャネットがイジめるー」
「虐めてないでしょー、ほら、ミナっちこっち来なー」
「ええい、動くなうっとしい」
「レインもなんだよー、一緒にゴロゴロしようよー」
「うっとうしいと言っておるのだー」
どうやらレインも巻き込まれたらしい、それも当然で、レインはよほどその寝台が気に入ったのか寝台の背に凭れて書を開けており、ジャネットが寝台の中央に寝そべり、ミナはそのジャネットから逃げるように端の方に身を寄せていた、
「あー、仲良く使えって言ったよな?」
「ブー、仲良く使ってたー、ジャネットが気持ち悪いのー」
「あー、ミナっち、傷つくなー、おねーさんは悲しいぞー」
「知るかー、さわるなー」
「もう、ミナっち、恥ずかしがっちゃってー」
「むかー、恥ずかしくないー」
とうとうミナはジャネットに立ち向かう事にしたようで、スクッと立ち上がるとジャネットに飛び掛かる、しかしジャネットはクロノスのように戯れる事は無くあっさりとその胸にミナを抱き締めた、
「ギャー、レイン、助けてー」
「えーい、うるさいわー」
「ギャー、ジャネットくさいー」
「あー、また、酷い事言ったー」
「おいおい・・・怪我だけはするなよ」
タロウはやれやれと呆れるしかない、この場合止めるのが正しいのか、放っておくのが正しいのか判断が難しい、
「もう、ほら、ジャネット、待ってる人がいるんだから」
ケイスがようやっと微笑みながらもジャネットを窘める、サレバとコミン、ルルにグルジアと羨ましそうに寝台の上の三人を見つめる目は多かった、どうやら生徒達は一斉に帰ってきた所らしい、
「まったく・・・あー、ごめんね、狭くしちゃって」
タロウは少女達に一応と謝罪する、
「それはいいですけど、どうなってるんですかこれ?」
グルジアが興味津々といった顔で、ルルやサレバも目を輝かせてタロウを見上げた、
「簡単だよ、寝台に捩じりバネを仕込んだんだ、皆の感想も欲しくてね、ついでにこうして欲しいとかあったら聞きたいかな?」
「なるほど、良く分かりませんけど、感想ならいつでも歓迎です、先輩、そういう事なんで、交代して下さい」
「えー、まだー、もうちょっとー」
「駄目です、ほら、ミナちゃん泣いちゃいますよ」
「えー、ミナっちは強い子だから、大丈夫だよー」
「うー、ジャネットのバカー、スケベー、アホー」
「なんだとー」
さらに暴れ出すミナとジャネットに、やれやれと呆れた溜息に溢れる食堂であった。
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