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本編
69話 お風呂と戦場と その30
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「うーん・・・膨大ですね・・・」
「確かに・・・でもやってしまわないと・・・」
「明日が大変になっちゃうな・・・」
「あっ、ここどんな感じ?」
「ユーリ先生の説明って時々難しいですよね」
「あの人もねー・・・感覚的に話しちゃうからなー」
「そうだねー」
「そうなんですかー」
「えっと、私の解釈だと・・・」
と食堂ではマフダとリーニー、カトカとゾーイとサビナがテーブルを囲んで大量の黒板をとっかえひっかえしており、ミナはその一枚を借りてお絵描きに夢中になっていた、先程までの打合せは結局取り留めが無い状態で終了してしまっている、正午を過ぎティルとミーンが顔を出し、もうそんな時間であったかとソフィアが腰を上げ、タロウも何やら嬉しそうに席を立った為で、さらに手元を見ればやたらと書き込まれた黒板が山積し、これはこの辺で一旦まとめ、服飾に関しては明日にしてはどうかとカトカが悲鳴の滲んだ提案をした事で、どうやらそれがいいらしいわねと全員が納得して一段落つけた形となる、
「でも、これいいなー、可愛いかもなー」
マフダがタロウの書いた絵図を見つめる、ショートとボブの二種類を描いたそれは確かに王国ではまず見ない髪型で、若干幼児性が高いように見えるが、タロウ曰く手入れも楽だとの事であった、
「そうねー、実際に見てみないとだけど、興味あるわよねー」
「ですよねー」
「でも、カトカさんなら何でも似合うじゃないですかー」
「そうかしら?私は顔が長いから、短いのは似合わないかもよ、所長が輪郭に合わせるのが大事って言ってたでしょ」
「そうですか?でも美形は何でも似合うと言ってました」
「そういう言い方は好きじゃないけど・・・」
「あー、あんたはいいわよ、あんたは、なんでも似合うんだから、私なんか・・・あっ、小顔にすればいいのよね」
「これですよね、タロウさんのこれ」
「そうね・・・そっか、小顔か・・・」
「サビナはそれがいいわよね」
「ちょっと、顔がデカイって言ってるわよね、それ」
「何よ、人の事は好きに言っておいて、自分の事は言うなって事?」
「あんたの悩みに比べたらこっちの方が大きいって事」
「なっ、人の悩みも知らないで、何言ってるのよ」
「あんたの悩みなんて大した事無いわよ」
突然カトカとサビナが喧嘩を始め、他のマフダとリーニーはエッと驚き、ゾーイも珍しいなと手を止めた、こちらに世話になって短いがそれでもカトカとサビナが言い争っているのは始めての事のように思える、
「ヒッドー」
「お互い様よ」
「あのねー」
とカトカが立ち上がりかけた所に、
「どう?まとまったー?」
とソフィアが脱衣室からヒョイと戻って来た、カトカとサビナはムゥと黙り込み、他の三人はホッと安堵する、
「あら?どした?」
「大丈夫です、何でもないです」
「そうです、えっと、何とかなってます」
カトカとサビナが苦笑いを浮かべて誤魔化すと、
「そっ、生徒達が戻るまでに形にしないとうるさいわよー」
「そうですね」
「はい、そうでした」
黒板に向き直る二人とやれやれとそれに倣う三人である、そこへ、
「すいません、失礼します・・・」
とカチャーがおずおずと顔を出した、
「あら、いらっしゃいカチャーさんね、ちゃんと話すのは初めてかしら?」
ソフィアがニコリと微笑む、
「あっ、はい、そのお世話になってます、その・・・呼んで頂いて嬉しいです」
カチャーが慌てて頭を下げた、
「そんな、別にいいわよ、ついでのついでだから・・・そう言ったら失礼かしら、ほら、座ってなさい、フィロメナさん達が上がってからになるからね」
ソフィアはニコニコと愛想が良い、カチャーは素直に良い人だなー、噂とはまた違うなーと思いつつ、
「ありがとうございます、えっと、お手伝いできる事があれば・・・」
と背を丸める五人へ視線を向けた、現在、フィロメナとレネイは入浴中である、ソフィアが折角来たんだから風呂を使ってみなさいと誘った為で、二人は最初遠慮していたが、ユーリがこれも美容の為だと勧め、エレインも是非入って下さいと笑顔であった、風呂に関しては二人共にマフダから概要程度は聞いており、興味があったのは事実で、しかし聞く限りお湯を溜めてそこに身をひたすなど贅沢の極みである、マフダ経由で様々な新しい事物を受け取った上に、そこまでしてもらうのはと腰が引ける二人であったが、変に遠慮するのも気を悪くさせるかなと慎重にその誘いに乗る事としたのであった、そして、そうなるとマフダもどうぞとなり、ならリーニーもとなって、カチャーも呼びたいとなって、カチャーがこうして顔を出した次第となる、エレインは事務所で来客待ち兼事務所番となり、テラも先程顔を出している、二人が揃って迎える客とはとカチャーは事務員がいないのはまずかろうと思うが、エレインは気にしないで楽しんで下さいと上機嫌で笑顔であった、
「あ、じゃ、これを清書して欲しいかな?」
リーニーが隣りの席を引いた、
「はいはい、何です?」
「この辺、雑に書いちゃったもんで読みにくくてね、この項目毎にまとめて貰えればいいかなー」
「まかせてー」
とここは同期の二人である、リーニーが作業に誘い入れ、カチャーはそそくさと席に着いた、
「ふふっ、じゃ、あたしはどうしようかなー」
とソフィアは食堂内を見渡してウーンと首を捻った、普段であればメイド二人と共に食事の準備である、しかし、今日は厨房に入る気にはならなかった、とりあえずと作業中のテーブルから離れ窓際の頼りない光の入る席に腰を落ち着けると編み物籠を手前に引き寄せる、何気にやる事がなくなってしまった、やろうと思えば色々と思いつく事は可能であろうが、今日、今すぐに取り掛かる事でも無い、ここはタロウが言うようにのんびりするかと編みかけの毛糸を手にした、そこへ、
「お疲れー、どんな感じー」
とユーリが階段から下りて来た、
「半分程度ですねー」
とカトカが顔を上げ、カチャーは小さく会釈をする、
「あっ、カチャーさんねー、なに?一緒にやってるの?」
「えっ、あっ、はい、その、お久しぶりです」
「あら、知り合い?」
「うん、私ほら、先生だし・・・だったし?」
「それもそっか」
「ふふん、どう?元気にやってる?」
「はい、その・・・はい、何とかかんとか・・・頑張ってます」
「そっか、なら良いわ、無理できるのは若い内だけだけど、無理し過ぎると若くても身体壊しちゃうからね、程々にしておきなさい」
「えっ・・・所長がそれ言います?」
「あによ?」
「えっと・・・無理してます、労って下さい」
「あん?あんたが?」
「あっ、私も・・・」
「エッ・・・ちょっと三人してなによその目は」
「所長が言う事では無いなと訝しく思う目です」
「労って欲しい目です」
「最近妙に忙しいなーって思う目です」
カトカとサビナとゾーイがユーリに生暖かい視線を送り、ユーリは困惑して立ち竦む、しかし、
「それもそうか・・・うん、それはだって仕方ないわよ、だからほら、風呂に入れば元気になるわよ、ね、ソフィアー」
「知らなーい」
「知らなーい」
何やら面白そうだとミナが顔を上げ、ソフィアの真似をした、そのソフィアも完全に他人事と編み物に集中している、
「なっ、ちょっと、味方がいないのよ」
「知ったこっちゃないかしらー」
「知ったこっちゃないー」
「もう、はいはい、あんたらはカチャーさんとは違うでしょ、もう、いい加減に作業に戻りなさい」
「うわっ、駄目上司だ」
「横暴だー」
「えー・・・」
と三者三様に非難の声を上げるが、こんなもんだろうと三人は同時に視線を落とし、マフダはなんとか笑いを堪えており、リーニーとカチャーは学園で教鞭をとっている時とはまるで異なるユーリの有様に呆気に取られて手が止まっている、
「まったく・・・あっ、でさ、話しは変わるんだけど」
とユーリは六人が囲むテーブルの側に立つと、
「髪型の絵図なんだけど、ニコリーネさんに頼めないかな?」
「あっ、それ私も考えてました」
カトカがニヤリと顔を上げる、
「だよねー、でも、あれか、実際に切った後でないと難しいか・・・」
「それと、一応あっちの許可も欲しいかと」
ゾーイも口を出す、
「あっち・・・あっちかー、だよなー、でも、アフラさんの感じだと頼めばいけそうだよね」
「それは大丈夫そうですけどね、アフラさんも良い報告が出来そうだって喜んでましたし」
「そうよね、結局馬油持って行ったしね」
「ですね、まとめた報告書も待ってますって」
「だよねー・・・じゃ、ちらっと話すか・・・明日でいいかな?」
「ニコがどうしたのー」
「んー、ニコリーネさんに仕事を頼みたいのよねー」
「むー、邪魔しちゃ駄目なのよー、ニコ先生怖いんだからー」
「あら、そうなの?」
「そうなのー、お部屋に居る時は集中してるから邪魔するなーって怒られたー」
「そりゃそうだよ」
「うん、お仕事中はね、仕方ないね、でもまぁ・・・これは肖像画みたいなもんだからな・・・ニコリーネさんは頼めば描いてくれそうよね」
「そっか・・・あれですよ、それで髪型選んでもらうようにしたらどうです?」
「・・・それ、私も思いつきました」
「だよね、いいよね」
「はい、完成形を見れるのは良いと思います」
「うん、分かる、それ分かる」
ユーリを交えてキャッキャッと騒がしくなる一同であった、そこへ、
「気持ち良かったですー」
「ありがとうございます、ソフィアさん」
と頭にタオルを巻き付け、胸元をはだけたフィロメナとレネイがフラフラと食堂に入って来た、二人とも商売柄は置いておいてもなんとも艶めかしい、
「お疲れ様、あっ、ミルクか白湯か・・・ミルクか、そこに座ってゆっくり乾かして、濡れたまま動くと風邪引くわよ」
ソフィアが腰を上げ結局厨房へ向かい、
「わっ、フィロメナさん、化粧無くても美人じゃない」
ユーリがフィロメナの素の美貌を敏感に捉えた、どうにもユーリは美形に目が無い、
「ほんとだ・・・違いますね」
「うん、化粧無い方がいいんじゃないですか?」
「えー・・・そんなー、嬉しい事言わないでよー」
すっかり仲良くなった大人達である、遠慮なく褒め合う様子にマフダはそうなんだよなーとフィロメナを見上げてしまう、姉達は皆手足が長く美形であった、ちんちくりんと呼ばれてからかわれているのは自分だけで、そのお陰か遊女にはならなくて済み、こうして大変に難しい仕事に携わっていたりもする、しかし、なんのかんのがあっても姉達に憧れてしまう自分は否定できない、
「そっか、こう見るとあれね、確かに遊女さんの化粧ってあくまで商売道具なんだね」
「そうですね、それは否めません」
「ですねー、だから逆言うと、化粧落としてしまえば街中でお客様に会っても気付かれないんですよ」
「えっ、そこまで?」
「はい、今日も通りすがりで馴染みのお客様に行き会ったんですけど、義姉さんは気付かれて、私は無視でした、荷物持ちかなんかと思われたみたいで、よく指名してくれる私のお馴染みさんなんですけどねー、ちょっと寂しかったかな・・・」
「あら・・・それって・・・気持ちも分るけど便利だわよね」
「便利なんです、でも、ほら会長の意向もあるし」
「それは仕方ないわよ、ほら、乾かさないと」
二人が仲良く寝台に腰掛けると、
「えっ、これ何?」
「なんか違う」
慌てて腰を浮かせる二人である、
「えへへー、ミナのなのー、ミナの寝台ー」
お絵描きに飽きたのかミナがダダッと二人に駆け寄り、キャーキャーと騒ぎ始める三人であった。
「確かに・・・でもやってしまわないと・・・」
「明日が大変になっちゃうな・・・」
「あっ、ここどんな感じ?」
「ユーリ先生の説明って時々難しいですよね」
「あの人もねー・・・感覚的に話しちゃうからなー」
「そうだねー」
「そうなんですかー」
「えっと、私の解釈だと・・・」
と食堂ではマフダとリーニー、カトカとゾーイとサビナがテーブルを囲んで大量の黒板をとっかえひっかえしており、ミナはその一枚を借りてお絵描きに夢中になっていた、先程までの打合せは結局取り留めが無い状態で終了してしまっている、正午を過ぎティルとミーンが顔を出し、もうそんな時間であったかとソフィアが腰を上げ、タロウも何やら嬉しそうに席を立った為で、さらに手元を見ればやたらと書き込まれた黒板が山積し、これはこの辺で一旦まとめ、服飾に関しては明日にしてはどうかとカトカが悲鳴の滲んだ提案をした事で、どうやらそれがいいらしいわねと全員が納得して一段落つけた形となる、
「でも、これいいなー、可愛いかもなー」
マフダがタロウの書いた絵図を見つめる、ショートとボブの二種類を描いたそれは確かに王国ではまず見ない髪型で、若干幼児性が高いように見えるが、タロウ曰く手入れも楽だとの事であった、
「そうねー、実際に見てみないとだけど、興味あるわよねー」
「ですよねー」
「でも、カトカさんなら何でも似合うじゃないですかー」
「そうかしら?私は顔が長いから、短いのは似合わないかもよ、所長が輪郭に合わせるのが大事って言ってたでしょ」
「そうですか?でも美形は何でも似合うと言ってました」
「そういう言い方は好きじゃないけど・・・」
「あー、あんたはいいわよ、あんたは、なんでも似合うんだから、私なんか・・・あっ、小顔にすればいいのよね」
「これですよね、タロウさんのこれ」
「そうね・・・そっか、小顔か・・・」
「サビナはそれがいいわよね」
「ちょっと、顔がデカイって言ってるわよね、それ」
「何よ、人の事は好きに言っておいて、自分の事は言うなって事?」
「あんたの悩みに比べたらこっちの方が大きいって事」
「なっ、人の悩みも知らないで、何言ってるのよ」
「あんたの悩みなんて大した事無いわよ」
突然カトカとサビナが喧嘩を始め、他のマフダとリーニーはエッと驚き、ゾーイも珍しいなと手を止めた、こちらに世話になって短いがそれでもカトカとサビナが言い争っているのは始めての事のように思える、
「ヒッドー」
「お互い様よ」
「あのねー」
とカトカが立ち上がりかけた所に、
「どう?まとまったー?」
とソフィアが脱衣室からヒョイと戻って来た、カトカとサビナはムゥと黙り込み、他の三人はホッと安堵する、
「あら?どした?」
「大丈夫です、何でもないです」
「そうです、えっと、何とかなってます」
カトカとサビナが苦笑いを浮かべて誤魔化すと、
「そっ、生徒達が戻るまでに形にしないとうるさいわよー」
「そうですね」
「はい、そうでした」
黒板に向き直る二人とやれやれとそれに倣う三人である、そこへ、
「すいません、失礼します・・・」
とカチャーがおずおずと顔を出した、
「あら、いらっしゃいカチャーさんね、ちゃんと話すのは初めてかしら?」
ソフィアがニコリと微笑む、
「あっ、はい、そのお世話になってます、その・・・呼んで頂いて嬉しいです」
カチャーが慌てて頭を下げた、
「そんな、別にいいわよ、ついでのついでだから・・・そう言ったら失礼かしら、ほら、座ってなさい、フィロメナさん達が上がってからになるからね」
ソフィアはニコニコと愛想が良い、カチャーは素直に良い人だなー、噂とはまた違うなーと思いつつ、
「ありがとうございます、えっと、お手伝いできる事があれば・・・」
と背を丸める五人へ視線を向けた、現在、フィロメナとレネイは入浴中である、ソフィアが折角来たんだから風呂を使ってみなさいと誘った為で、二人は最初遠慮していたが、ユーリがこれも美容の為だと勧め、エレインも是非入って下さいと笑顔であった、風呂に関しては二人共にマフダから概要程度は聞いており、興味があったのは事実で、しかし聞く限りお湯を溜めてそこに身をひたすなど贅沢の極みである、マフダ経由で様々な新しい事物を受け取った上に、そこまでしてもらうのはと腰が引ける二人であったが、変に遠慮するのも気を悪くさせるかなと慎重にその誘いに乗る事としたのであった、そして、そうなるとマフダもどうぞとなり、ならリーニーもとなって、カチャーも呼びたいとなって、カチャーがこうして顔を出した次第となる、エレインは事務所で来客待ち兼事務所番となり、テラも先程顔を出している、二人が揃って迎える客とはとカチャーは事務員がいないのはまずかろうと思うが、エレインは気にしないで楽しんで下さいと上機嫌で笑顔であった、
「あ、じゃ、これを清書して欲しいかな?」
リーニーが隣りの席を引いた、
「はいはい、何です?」
「この辺、雑に書いちゃったもんで読みにくくてね、この項目毎にまとめて貰えればいいかなー」
「まかせてー」
とここは同期の二人である、リーニーが作業に誘い入れ、カチャーはそそくさと席に着いた、
「ふふっ、じゃ、あたしはどうしようかなー」
とソフィアは食堂内を見渡してウーンと首を捻った、普段であればメイド二人と共に食事の準備である、しかし、今日は厨房に入る気にはならなかった、とりあえずと作業中のテーブルから離れ窓際の頼りない光の入る席に腰を落ち着けると編み物籠を手前に引き寄せる、何気にやる事がなくなってしまった、やろうと思えば色々と思いつく事は可能であろうが、今日、今すぐに取り掛かる事でも無い、ここはタロウが言うようにのんびりするかと編みかけの毛糸を手にした、そこへ、
「お疲れー、どんな感じー」
とユーリが階段から下りて来た、
「半分程度ですねー」
とカトカが顔を上げ、カチャーは小さく会釈をする、
「あっ、カチャーさんねー、なに?一緒にやってるの?」
「えっ、あっ、はい、その、お久しぶりです」
「あら、知り合い?」
「うん、私ほら、先生だし・・・だったし?」
「それもそっか」
「ふふん、どう?元気にやってる?」
「はい、その・・・はい、何とかかんとか・・・頑張ってます」
「そっか、なら良いわ、無理できるのは若い内だけだけど、無理し過ぎると若くても身体壊しちゃうからね、程々にしておきなさい」
「えっ・・・所長がそれ言います?」
「あによ?」
「えっと・・・無理してます、労って下さい」
「あん?あんたが?」
「あっ、私も・・・」
「エッ・・・ちょっと三人してなによその目は」
「所長が言う事では無いなと訝しく思う目です」
「労って欲しい目です」
「最近妙に忙しいなーって思う目です」
カトカとサビナとゾーイがユーリに生暖かい視線を送り、ユーリは困惑して立ち竦む、しかし、
「それもそうか・・・うん、それはだって仕方ないわよ、だからほら、風呂に入れば元気になるわよ、ね、ソフィアー」
「知らなーい」
「知らなーい」
何やら面白そうだとミナが顔を上げ、ソフィアの真似をした、そのソフィアも完全に他人事と編み物に集中している、
「なっ、ちょっと、味方がいないのよ」
「知ったこっちゃないかしらー」
「知ったこっちゃないー」
「もう、はいはい、あんたらはカチャーさんとは違うでしょ、もう、いい加減に作業に戻りなさい」
「うわっ、駄目上司だ」
「横暴だー」
「えー・・・」
と三者三様に非難の声を上げるが、こんなもんだろうと三人は同時に視線を落とし、マフダはなんとか笑いを堪えており、リーニーとカチャーは学園で教鞭をとっている時とはまるで異なるユーリの有様に呆気に取られて手が止まっている、
「まったく・・・あっ、でさ、話しは変わるんだけど」
とユーリは六人が囲むテーブルの側に立つと、
「髪型の絵図なんだけど、ニコリーネさんに頼めないかな?」
「あっ、それ私も考えてました」
カトカがニヤリと顔を上げる、
「だよねー、でも、あれか、実際に切った後でないと難しいか・・・」
「それと、一応あっちの許可も欲しいかと」
ゾーイも口を出す、
「あっち・・・あっちかー、だよなー、でも、アフラさんの感じだと頼めばいけそうだよね」
「それは大丈夫そうですけどね、アフラさんも良い報告が出来そうだって喜んでましたし」
「そうよね、結局馬油持って行ったしね」
「ですね、まとめた報告書も待ってますって」
「だよねー・・・じゃ、ちらっと話すか・・・明日でいいかな?」
「ニコがどうしたのー」
「んー、ニコリーネさんに仕事を頼みたいのよねー」
「むー、邪魔しちゃ駄目なのよー、ニコ先生怖いんだからー」
「あら、そうなの?」
「そうなのー、お部屋に居る時は集中してるから邪魔するなーって怒られたー」
「そりゃそうだよ」
「うん、お仕事中はね、仕方ないね、でもまぁ・・・これは肖像画みたいなもんだからな・・・ニコリーネさんは頼めば描いてくれそうよね」
「そっか・・・あれですよ、それで髪型選んでもらうようにしたらどうです?」
「・・・それ、私も思いつきました」
「だよね、いいよね」
「はい、完成形を見れるのは良いと思います」
「うん、分かる、それ分かる」
ユーリを交えてキャッキャッと騒がしくなる一同であった、そこへ、
「気持ち良かったですー」
「ありがとうございます、ソフィアさん」
と頭にタオルを巻き付け、胸元をはだけたフィロメナとレネイがフラフラと食堂に入って来た、二人とも商売柄は置いておいてもなんとも艶めかしい、
「お疲れ様、あっ、ミルクか白湯か・・・ミルクか、そこに座ってゆっくり乾かして、濡れたまま動くと風邪引くわよ」
ソフィアが腰を上げ結局厨房へ向かい、
「わっ、フィロメナさん、化粧無くても美人じゃない」
ユーリがフィロメナの素の美貌を敏感に捉えた、どうにもユーリは美形に目が無い、
「ほんとだ・・・違いますね」
「うん、化粧無い方がいいんじゃないですか?」
「えー・・・そんなー、嬉しい事言わないでよー」
すっかり仲良くなった大人達である、遠慮なく褒め合う様子にマフダはそうなんだよなーとフィロメナを見上げてしまう、姉達は皆手足が長く美形であった、ちんちくりんと呼ばれてからかわれているのは自分だけで、そのお陰か遊女にはならなくて済み、こうして大変に難しい仕事に携わっていたりもする、しかし、なんのかんのがあっても姉達に憧れてしまう自分は否定できない、
「そっか、こう見るとあれね、確かに遊女さんの化粧ってあくまで商売道具なんだね」
「そうですね、それは否めません」
「ですねー、だから逆言うと、化粧落としてしまえば街中でお客様に会っても気付かれないんですよ」
「えっ、そこまで?」
「はい、今日も通りすがりで馴染みのお客様に行き会ったんですけど、義姉さんは気付かれて、私は無視でした、荷物持ちかなんかと思われたみたいで、よく指名してくれる私のお馴染みさんなんですけどねー、ちょっと寂しかったかな・・・」
「あら・・・それって・・・気持ちも分るけど便利だわよね」
「便利なんです、でも、ほら会長の意向もあるし」
「それは仕方ないわよ、ほら、乾かさないと」
二人が仲良く寝台に腰掛けると、
「えっ、これ何?」
「なんか違う」
慌てて腰を浮かせる二人である、
「えへへー、ミナのなのー、ミナの寝台ー」
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