セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

71話 晩餐会、そして その16

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司法長官が学園長と事務長と共にイフナースとカラミッドの座るテーブルに戻った瞬間、オオーッと大きな歓声がカジノテーブルに巻き起こった、何だと振り返る五人である、そこでは、

「見事です、4・5・6の連番、大当たり」

フィロメナが称賛の声を上げ、

「さすがお姉様です」

レアンも興奮して大声となった、さらに同じテーブルに着いた他の者からも素晴らしいと絶賛の声が巻き起こる、

「フフッ、偶々ですよ」

マルヘリートは嬉しそうに払い戻された集計箱を受け取る、それにはこれでもかと銅貨が詰め込まれており、手にしてみたがズシリと重い、マルヘリートは思わずニヤリとほくそ笑む、

「これでマルヘリート様が一位です、ダントツですわ」

背後の夫人が嬉しそうに歓声を上げた、

「あっ、そうですわね」

マルヘリートが順位表として掲げられている黒板を見上げる、そこには参加者の名前とその脇に数字が記載されていた、数字はそのまま硬貨の数である、従者の手によってサッと書き換えられ、それは他者と比べ圧倒的と言ってよい数字である、

「ほう・・・なんだ、こんな才能があったのか・・・」

その歓声に引き寄せられるようにクンラートがマルヘリートに近寄った、

「あっ・・・はい、そのようですね」

マルヘリートはスッと背筋を伸ばしてクンラートを見上げる、

「そうなのです、お姉様は大変に強いのです」

レアンも嬉しそうにクンラートを見上げる、

「そうなのか?」

「はい、従者の練習で何度か試したのですが、お姉様は見事に的中させるのです、それも大きい額ばかり、素晴らしいです」

遠慮なくムフーと鼻息を荒くするレアンである、マルヘリートはもうとレアンを睨みつけた、

「そうか・・・フン、何にしろ優れる事は良い事だ、特にこういう賭け事はな、運は大事だが、その使いどころが重要よ・・・フフッ、では最後の勝負楽しみにしているぞ」

ニヤリと不敵に笑うクンラートである、マルヘリートはサッとクンラートに向き直りハイッと明るく答えた、天にも昇る気持ちとはこの事であろう、記憶にある限り初めてクンラートから微笑みかけられ、褒められたらしい、さらには楽しみにしているとまで明言されてしまった、湧き上がる高揚感が自然と笑みを形作る、

「そうなるとだ・・・儂としてはもう少し鍛えないとならんな・・・」

クンラートはさてどうしたものかと首を捻る、クンラートも二つの競技、フォーカップとシックスナンバーを一通り遊んだのであるが惨敗であった、何とか100枚の銅貨を200枚に増やしているが、それはクンラートの考える理想的な勝ち方ではなく、負けない賭け方をしたが故の結果である、我が娘に負ける訳にはいかないと父親らしい事を考えるが、かと言って明確な戦法は未だ見出していない、また、賭け事として見た場合、小さな勝ちを積み上げるのが正しい戦法であると言えるが、クンラートが思うにそれは手持ちを減らさない賭け方に過ぎず、競技として考えた場合なんともむず痒く、精彩に欠ける戦法である、折角の催事なのである、もう少し豪快に動いて楽しみたいとも思うし、また楽しませたいとも考えていた、何しろ自分は主賓なのである、もてなす側である事を考えると少しばかり馬鹿をやるのも悪くないな等と考えてもいる、負けず嫌いのクンラートとしては何気に珍しい思考であった、それだけこの場を楽しみ、また、良い酒と良い女に囲まれてはやはり気分が良い、つまり見事な上機嫌であった、

「では・・・そうですね、公爵様は特例として参加回数は数えない事と致しましょうか」

フィロメナがニコリと微笑む、

「ムッ、どういう意味だ?」

「はい、主賓となる公爵様と一緒に楽しむのがこの余興の醍醐味、公爵様が参加してこその余興であります、ですので、共に卓を囲む名誉を皆さんに別けて頂くと考えるのも一興かと・・・但し」

「但し?」

「賞品はお預けです」

フィロメナが意地悪そうに微笑む、クンラートはフハッと笑い、

「良い、良いぞ、そういう事であればだ、うむ、儂は賞品はいらん、その代わり鍛えさせろ、負けるわけにはいかんからな、それで良いか?」

クンラートが見渡すと皆笑顔でそれが良いと微笑んでいる、参加者としてもクンラートと楽しむ事が何よりも重要事であった、晩餐会はあくまで主賓との縁を作る場所である、さらに侯爵と一勝負して勝っても負けてもそれはそれで自慢にもなる、不満なぞ出ようもないのであった、

「そうか、ではありがたく参戦するぞ」

クンラートはフスーと鼻息を荒くしグラスを呷る、この涼やかで香り高い酒も大変に気に入っている、カラミッドとレイナウトの言う趣向は見事に成功したと言えよう、

「では、私が替わります」

レアンが大人ぶって気を利かせたのかその席を立った、マルヘリートはそこまでしなくてもとレアンを伺うが、

「私はあっちの方が好きなのです、まだまだ負ける気はありませんぞ」

レアンはレアンで相当な負けず嫌いであったりする、フォーカップではマルヘリートに敵わないと練習の時から気付いており、であればとシックスナンバーを鍛えていたりもした、

「まぁ・・・フフッ、そういう事であれば容赦しません」

マルヘリートがニコリと微笑む、

「はい、では、閣下こちらへ」

「おう、すまんな、レアン嬢、さて、銅貨を頂けるか?」

従者が銅貨をクンラートの前に押し出し、クンラートはさてと席に着いた、

「では、マルヘリート・・・そうだな、ここはお前の手並み拝見させて貰うぞ」

「あら・・・フフッ、真似るだけでは勝てないですよ」

「ぬかせ、いいか、勝負事とはどういう事か、この俺が直々に教えてやる」

「まぁ・・・嬉しいです」

マルヘリートは嬉しそうに微笑むもその瞳には感激の涙が溢れてくる、クンラートとこれほどに距離を縮めて肩を並べた事は恐らく初めてで、その上自分を正面から相手してくれている、まさに夢のような状況であった、

「では、入ります」

フィロメナが賽を選び出し、カップに入れてタンと叩き付けた、流れるような早業で、またその動きもどこか妙に艶めかしい、その技巧を楽しみながらもさてと席に着いた面々はそれぞれに悩みだす、

「どう見る?マルヘリート」

クンラートがジロリと娘を見下ろした、

「そう・・・ですね・・・はい、ここは小さな数字です、こちらかこちら・・・」

「待て、何故そうなる」

「何故も何もないですわ、勘です」

「むっ・・・それも、そうだ、なら儂は・・・堅実にいく、奇数、それと・・・いや、なら、大きい数字を狙うか」

「フフッ、父様らしくないですわ」

「なんだと・・・いや、ここは勝ちに拘るぞ」

「はい、父様はそれでこそです」

満面の笑顔でクンラートを見上げるマルヘリートである、その両目は押さえられない感情で潤んでいる、こんなに幸せな瞬間が訪れるとはレアンの気遣いに心底感謝してしまう、

「フフッ、言いよるわ」

クンラートも満更でない様子で、他の客達も親子らしいその会話に思わず微笑んでしまった、

「揃いましたね?」

フィロメナがゆっくりと確認し、裏返されたカップに手を伸ばした。



「どうですか?」

レアンが隣りのテーブルに移ると、そこではレイナウトが眉間に皺を寄せている、他の客達もまた真剣でニコニコと笑顔を浮かべているのはディーラーのヒセラのみである、

「おう・・・いやな、これは奥が深いんだか浅いんだか・・・いや、深いのだ、それは良いのだが・・・このお嬢さんはまた性格が悪いのう」

レイナウトがムーと皺を深くする、

「そんな・・・極上の褒め言葉ですわ」

ヒセラが上品に微笑む、

「ムッ、その通りじゃ、その通りなのじゃが・・・レアン、お前はどう見る?」

「どう・・・ですか?」

レアンがヒセラの傍らに置かれた黒板を確認する、そのテーブルはシックスナンバーのテーブルであった、ディーラーが6迄の数字の内、一つを選び出し、その数字を当てる遊びである、ただそれだけなのだがレイナウトが言うように実に奥が深い、レアンが確認した黒板には、ヒセラが選んだ数字が記載されており、それは過去6回迄記載されているのであるが、1と2、その二つの数字が互い違いに綺麗に並んでいた、

「これは・・・確かにこれは性格が悪いです」

レアンもすぐに理解した、

「だろう?この場合次は1が来る・・・と思うのだが・・・」

「私だったら1と2以外を選びたくなります・・・」

「そうなのだ、いっその事なんの繋がりも無ければ気楽に賭けるのだが・・・」

「ですね、では、1と2は保険として・・・他の数字を頭にするのは如何でしょう」

「それなのだ・・・」

ムムッとレイナウトは頭をかいた、シックスナンバーは本手引きを元にして開発されている、こちらもかなり単純な賭け事なのであるが、ディーラーの腕次第で大変に白熱する遊びとなっており、ヒセラは見事に客を手玉に取っていた、次は1が来るのが妥当と思わせつつ、そんな単純な事はないであろうとの深読みを誘う、一度その深読みに嵌った瞬間から既にヒセラの手のひらの上なのであった、

「宜しいですか?」

数字が出揃ったのを確認しヒセラがじっくりと眺め回す、その瞳は妖艶で、その衣装もあってか大変に魅力的であった、男共はゾクリと背中の毛を逆立てる、賭け事そのものも無論楽しめるのであるが、ヒセラのこの男を惑わす視線と仕草にすっかりと骨抜きになってしまう、白く輝くような腕と細い指、ちらちらと覗く胸元に真っ赤な唇、レイナウトはなるほどタロウが言っていたなと思い出す、女の魅力と酒で持って男の思考力を奪い、有り金を巻き上げるのが賭け事の胆であるらしい、そのものズバリをヒセラは遠慮無く実践していた、特にシックスナンバーはディーラーの人を惑わす技術とその個人の性格が大きく反映される、1と2を繰り返し選択するなど、余程の胆力が無ければ逆に出来ない所業であった、その点に於いてフィロメナのフォーカップはだいぶ楽である、単純にサイコロを転がすだけであり、ディーラーが介入する余地が少ない、本手引き、この場で言うシックスナンバーはディーラーとの駆け引きを楽しむ賭け事なのである、

「開きます」

テーブルの中央に置かれた小さな布をヒセラはゆっくりと開く、そこにあった数字は1であった、

「うわっ・・・」

「あちゃー」

「おいおい」

「いいのかよ」

男達は呻き、

「これだ・・・いや、これはキツイ・・・」

レイナウトも思わず両手を上げてしまう、

「ふふっ、大当たりは無し、二番目三番目に賭けた方、払い戻しです」

してやったりとヒセラは微笑む、しかし、1と2の構成もここまでかなと内心で計算している、この引き際が重要であった、

「ふう・・・レアン替わるか?」

レイナウトはこれはいかんなと腰を上げた、

「はい、あっ、待っている方は?」

レアンが周りを伺うと、伯爵令嬢であれば先にどうぞと皆視線で答えていた、

「ムッ・・・うむ、では、替わりますぞ」

「おう、いや・・・負けた・・・うん、気持ち良い程負けてしまった」

レイナウトはやれやれと腰を上げ、

「しかし、面白かったぞ」

ニヤリと微笑む、ヒセラはその笑みにウフフと妖艶な笑みで答えに代えた。
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