セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

71話 晩餐会、そして その27

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それから暫くして、

「戻りましたー」

とグルジアが食堂に入って来た、普段よりも遅い帰寮である、商会の打合せ兼給料日に顔を出した為で、正式に雇われていないのであるが、時折作業の手伝いをしている事もあり幾ばくかの給料が支払われている、それはそれで大変に有難い事であると新入生達は喜んで受け取っており、またサレバとコミンはすっかり奥様達と仲良くもなっている、モヤシの先生としてチヤホヤされており、二人としても満更でなく、奥様達も丁度良いからかい相手として可愛がっていたりした、

「お帰りー」

とタロウが顔を上げ、

「オカエリー」

ミナの御機嫌な声が続いた、

「あら、タロウさんがいるー」

ルルがグルジアの背中からヒョイと顔を覗かせ、グルジアの腰あたりからはレスタが顔を覗かせた、帰って来たのは三人だけのようである、サレバとコミンは給料を受け取った後地下室に向かい、ジャネット達古参組は双六に興じていた、生徒部の大半は昨日も双六制作に参加していたが奥様達と同じく実際に遊んではおらず、奥様達に代わる形で双六を囲んで嬌声を上げた、またエレインの新事業の発表もあった為、オリビアを中心とするメイド組は早速とお茶に関する打ち合わせに入っている、そこにメイド三人衆とケイランとマフレナも加わり、楽しそうであるが熱の籠った意見交換が行われた、何せ喫茶店なるものの主役となるのが茶であるらしい、メイドというその職業上茶にはそれぞれにそれなりの拘りがある、そして特にケイランとマフレナの経験はやはり抜きんでており、お金を取れる茶、さらには地元の味を活かしたいと積極的に意見が出され、若者達はなるほどと大きく頷く事が多かった、

「あら、みんなで帰ってきたの?」

のんびりとタロウが微笑む、

「はい、商会の給料日なのです」

「あっ、そっか・・・君らも御給金貰ってるんだっけ?」

「そうなんです、有難い事です」

グルジアがニコリと微笑んだ、その隣をスッと抜け出すルルとレスタである、二人は実に感が良い、タロウとミナとレインが何やらやっている事に気付き、背を向けるレインの頭越しに三人が囲むテーブルを覗き込む、なんじゃとレインが二人を睨みつけた、

「何ですか?」

「何ですか?」

二人は同時に問いかけ、思わずウフフと顔を見合わせてしまう、

「エヘヘー、新しいノシー」

ミナが嬉しそうに微笑んだ、その満面の笑顔に二人はヤッパリーと嬉しそうに唱和する、

「新しいの?」

とグルジアも顔を突っ込む、

「うん、新しいのー、えっとね、えっとね、ミナがね、ニャンコが出るノシがいいー、っていったらタローがね、作ってくれたー」

「ニャンコが出る・・・」

「ノシ?」

「うん、えっとね、えっとね、ニャンコがいっぱいいるから捕まえるの、4匹捕まえたら勝ちなの」

「捕まえる?」

「猫を?」

「うん、捕まえるのー」

ミナが微笑むその前にはどうやらまだ作りかけに見える上質紙やら木簡やらが並んでおり、何とも珍しい切り刻まれた上質紙の破片もある、そしてタロウは上質紙にすっかり見慣れたマス目と共に何やら書き込んでいる、

「どうやって遊ぶんですか?」

レスタがタロウに直接問い質す、ミナの説明では今一つ要領を得ない、タロウはせっかちだなーと微笑みつつ、

「んー・・・じゃ、実際に遊びながら調整しようか・・・」

と木軸のガラスペンをテーブルに置いた、そのペンはコロコロと頼りなく転がりインク壺にぶつかって静止する、

「調整ですか?」

「うん、調整、こういうのはね遊びながら調整するものなんだよ、ほれ、ミナ、レイン、出来た?」

「出来たー」

「これで良いのか?」

「うん、いい感じ、じゃ、どうしようかな・・・4人で対戦する感じを想定してるんだけど・・・」

とタロウは顔を上げ、

「取り合えず、荷物置いてくれば?」

と三人に提案するタロウであった。



「むー、レスター、強いからダメー」

「ミナちゃんが弱いんだよー」

「えー、だってー、ジャンケンなら勝てるはずー」

「そうだけど、ミナちゃんジャンケンも弱いんだもん」

「タロー、これダメー、チョウセイしてー」

「はいはい、何がよ」

「ジャンケン、ジャンケンとあっちむいてホイはダメー」

「それはミナが弱いからだろ」

「弱くない、レスタが強いのー」

「それを弱いっていうんだ」

「ブーブー、サイコロなら勝てるー」

「あー・・・じゃ、サイコロ対決を一つ増やすか?」

「それでいいー、どんなのー」

「あー・・・じゃ、出目を決めて、それを早く出した人の勝ち」

「どうやるのー?」

「まずな」

とタロウは数字を宣言し、サイコロを手にして転がした、

「これだけ、数字を決めるのは捕まえる方、で、交互に転がして、その数字を先に出した方が勝ち」

「その場合・・・猫側が先に振らないと不公平な感じがあります」

ルルが早速と口を挟む、

「そだねー、じゃ、捕まえる方が数字を決めて、先にサイコロを転がすのは猫側ね」

とタロウは黒板に書き付ける、

「うー、じゃ、それでー」

「いいよー、じゃ、数字は何にする」

「えっと、えっと、3、3が好き」

「じゃ、3ね」

とレスタが賽を転がすと、2であった、アーッと観客の残念そうな声が響く、いつの間にやらジャネット達も帰寮し、そしてあっという間に人だかりができていた、

「ミナちゃんの番」

「うん」

ミナが気合を入れて賽を転がすと、出目は5である、再びアーッと残念そうな声が響いた、そして、二人が二度三度と賽を転がし、ようやっと、

「3出たー」

ミナが勢いよく席を立つ、

「あー、出っちゃったかー」

ルルとレスタが悔しそうに微笑んだ、

「えっと、えっと、これで、4匹?」

「そだね、だから、ミナちゃんの勝ちー」

「やったー」

大きく両手を上げて勝ち誇るミナである、

「もう、ジャンケンでは負けた癖になー」

ルルがブーと口を尖らせ、

「でもしょうがないよー、ミナちゃん最初の勢いが凄かったもん」

「そのようじゃなー」

レスタとレインはこれも勝負事と負けを認めたらしい、

「勝った、勝ったー」

とミナはピョンピョン飛び跳ね、ハイハイとグルジアとケイスがその頭を撫でつける、

「で、どうかな、調整しながらだったけど、こんな感じの双六もあるんだよ」

タロウが黒板を確認して雑に意見を求めた、黒板には細かいルールがメモ書き程度に取り留めも無く書かれている、

「はい、面白いです」

「目的地が無くてもいいんですねー、これも新しいです」

「だねー、最初はどうなるかと思ったけど、見てても面白かったー」

「だね、だね、私もやりたいなー」

「そだねー」

「・・・概ね好評かな・・・」

タロウは黒板と盤面を見比べてさてどうまとめようかなと人差し指で頭をかいた、タロウは厨房で牛と豚の油を抽出しながら新しい双六の案をミナに求めてみた、するとミナは開口一番ニャンコとメダカがいいと明確で、ニャンコかーとソフィアはそうなるだろうなとタロウを手伝いながら微笑んでいる、タロウはニャンコねーと首を傾げる、単純に猫を出せばいいのであれば最初に作った双六でも罰半分、遊び半分の猫の真似事が含まれており、それで充分ではないかと思うが、ミナの求めるそれは大きく違うのであろうなと察する、そしてメダカである、メダカの双六とは・・・とタロウはうんうん唸りながら牛脂とラードを精製し、ソフィアにレモンを調味料として使う方法を教える、そしてこんなもんかなと後はソフィアに任せ、食堂に戻って何とかかんとか形にしたのが、このミナ発案の猫を主題とした、猫を捕まえる双六であった、

「好評じゃな」

レインがムフーと満足そうに鼻息を荒くする、この双六にはレインとミナの猫のイラストが多用されている、盤面は某モノ何とかを参考にし、始まりも終わりも無い様に上質紙の外縁に沿ってやや大きめのマス目が描かれ、そのマス目に15匹の猫のイラストが書かれた紙片をランダムに配した、プレイヤーは盤面の四隅から駒を進める、サイコロの出目に従って駒を進めるのは当然として、止まったマスに猫がいればそれを捕まえる為に隣のプレイヤーと簡単な勝負をし、勝てば猫を捕獲、負ければ猫は近くのプレイヤーも他の猫もいないマスに逃げるというルールであった、捕獲の際の勝負事は当初は三種、ジャンケン、あっち向いてホイ、賽を振って大きい数が勝ち、と単純なもので、ここに四種目目として指定した数を出す遊びが追加されている、あと二つくらいを捻り出し、勝負そのものも賽で決めたほうが良さそうかなとタロウは思う、双六はどこまでも運を楽しむ遊びであった、ちょっとした決め事にも徹底するべきであろうなとタロウは考えている、

「うん、レインのお陰だねー、猫の絵がいい感じになった」

ニヤリと微笑むタロウにレインは当然じゃと胸を張る、

「えー、ミナもー、ミナのニャンコも可愛いでしょー」

「おう、それは当然だ」

「じゃな」

「これ、これがミナのニャンコ、こっちがレインのニャンコなのー」

ミナが嬉々として猫が書かれた紙片を並べ始めた、

「可愛いよねー」

「うん、ミナちゃんらしい絵だよね」

「レインちゃんのは凛々しいよね」

「そっか、こういう楽しみ方もあるんだなー」

「みんなで作ろうよー」

「そだねー・・・」

レスタの提案に皆一様に頷いた、この双六の面白さも勿論あるが、何よりタロウが調整として遊びながらその細部を決めていったその手法に、なるほどこうやるのかと感心してしまった、実際にタロウは駒が進む方向は好きにすればいいが進み始めたら後戻りは出来ないとか、終盤になって猫の数が減り中々猫のマス目に停まれなくなると、救済処置として猫の代わりの紙片を追加投入していたりする、快適で楽しい遊びを構築するにあたっての試行錯誤の方法を目の当たりにし、なるほどこうすれば自分達でも新たな遊びを生み出せるかもとその思考の幅を大きく広げる事となった、

「あっ、そうだ、ミナ、名前なんにする?」

唐突にタロウはミナに問う、

「名前?」

ミナがキョトンと首を傾げた、

「そっ、名前、このノシか、これの名前」

「えー・・・何だろ何だろ・・・」

「ニャンコノシ?」

サレバがあっさりと提案するも、

「簡単すぎない?」

「もっと、捻りが欲しいです」

「うん、そのまま過ぎる」

どうやら生徒達には不評のようで、ミナも、

「えー、チガウー」

と不満顔である、ムーと口を尖らせるサレバである、

「じゃ、猫探し?猫捕まえ?」

ルルがそのものズバリの名称を口にするが、

「可愛くない」

「うん、可愛くない」

「なんか変」

これも不評のようで、なんだよーとルルが頬を膨らませた、どうやらここは下手な事を言うと駄目な雰囲気であるらしい、そして、

「ニャンコ探しノシ・・・・」

ミナが呟き、それはどうかなと一同は首を傾げるも、

「ニャンコ探しノシ、いいでしょ、ね、いいでしょー」

とミナがタロウに縋りついた、どうやらそれなりに空気を読んでいるらしい、否定される前にタロウに泣きつくあたりしっかりと自分の立ち位置を理解している、

「ん、いいぞ、ニャンコ探しノシな」

タロウはまぁなんでも良かろうと黒板に書き付け、ミナはムフーと満足そうに微笑む、それでいいのかと首を傾げる生徒達である、そこへ、

「準備できたわよー」

とソフィアが厨房から顔を出す、バッと一同は顔を上げ、

「やったー、えっとねえっとね、今日はね、レモンのブタ焼きなのー」

ミナがピョンと飛び跳ねた、

「ミナー、ブタのレモン焼きでしょー」

「そうとも言うー」

「適当ねー」

と微笑むソフィアに一同はレモン焼きと首を傾げ、昨日のあれの事だなとマントルピースに飾られたレモンを振り返ってしまう、

「えっとねえっとね、あとね、蜂蜜レモンもあるのー、ミナ、あれ好きー」

また新しい料理名らしい、蜂蜜レモンとはとその甘美な響きに口中に湧き出る涎を思わず飲み込む生徒達である、突然空腹感が押し寄せる、それだけニャンコ探しノシに集中してしまっていた、

「それは明日でしょ、ほら、片付けて、ユーリとエレインさん達呼んできて」

ソフィアがパンパンと手を叩き、ハーイと動き出す生徒達であった。
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