セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

75話 茶店にて その5

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それから暫くして商会の事務所である、マフダは数人の奥様達と一緒にメイド服作りに励んでおり、リーニーもまた厨房で数人の奥様達と飴玉作りとうるおいクリームの生産に忙しくしていた、メイド服はパトリシアからの注文分で、リーニーのそれは明後日から本格的に販売される事になる為の大増産である、そしてカチャーもまた数人の奥様達と共に大量の木簡を前にして静かに複製作業であった、こちらは様々な料理やうるおいクリームのレシピの複製となっており、当然クレオの一時のレシピも含まれている、こちらもまた新店舗に大量に並ぶ予定となっている、新店舗は今おっさん共で賑わっているが、こちらもまた新店舗に向けて大忙しとなっていた、

「フー・・・少しお茶にするー?」

リーニーが一段落着いたかなと事務所に戻って来た、そうねーと顔を上げる奥様方、マフダは少し早いんじゃないかと目を細めるも、作業そのものは大変に順調である、注文されたメイド服は10着程、その半分は形になり、恐らく明日中には残り半数も完成するであろう、縫製に長けた奥様達は作業が早く丁寧であった、もうすっかり奥様達も互いの得意と苦手を把握しており、今日の作業も当然のようにそれぞれが得意とする作業を受け持っており、その顔ぶれが変わる事は少ない、

「こっちにもちょうだーい」

カチャーが手を上げ、その周りの奥様達も石墨を置き、手拭いを取り出しゴシゴシと手を拭う、石墨はどうしても手が汚れるもので、ガラスペンとインクを使いたい所であるが木簡にはやはり石墨の方が適していた、

「はいはい、そのつもりよー、あっ、アメもあるからねー、一人二つまでよー」

リーニーの気前の良い言葉にオーと歓声を上げる奥様達、マフダも思わず嬉しそうに微笑むが、

「あー、どうせあれでしょ、端っこの方でしょー」

カチャーが腰を上げつつ渋い顔で、

「味は変わらないでしょが」

リーニーが憤然と言い返す、確かにねーと微笑む奥様達、

「美味しいからいいけどさー」

「ならいいじゃない、いらないならあげないわよ」

「いらないとは言ってないでしょー」

「そうかしらねー」

同期二人がギャーギャー始め、奥様達はじゃ場所を移すかと腰を上げた、メイド服も木簡も汚すわけにはいかず、事務所の入口付近のテーブル二つが小休止の為のテーブルとなっており、うーんと大きく伸びをしてそちらに足を向ける、

「あっ、マフダさんどんなもん?こっちはもう少しで今日の分は目途が立つけど、こっちに来てもらう?」

「エッ・・・あぁ、どうしようかな、このままであれば明日中には終わると思うけど・・・」

とマフダは布が広がるテーブルを見渡す、エレインとテラからはできれば30日にお渡しできるようにして欲しいと言われており、寸法の直しは向こうでやるらしく、となればこちらも目途が立った状態ではある、

「明日はだって作業にならないんじゃない?」

カチャーがンーと首を傾げる、厨房から戻った奥様達が茶を配っており、早速と手を伸ばす奥様達、飴玉を口に放り込んでこれだわねーと嬉しそうに微笑む、

「・・・そう思う?」

マフダは不安そうに二人を見上げる、

「思うよー」

「うん、絶対無理」

「そう・・・だよねー・・・」

マフダはフヌーと鼻息を荒くしてしまった、新店舗のお披露目は今日は貴族、明日は関係者となっており、その関係者には従業員の家族も含まれている、となれば恐らく明日は奥様達は勿論、マフダも作業に集中するのは難しそうで、実際フィロメナもヒセラもノール達でさえ明日は絶対に行くと楽しみにしていた、今朝リズモンドがわざわざタロウに会いに来たその用件も気になるが、マフダとしては明日も何気に気が重い、ノール達はまだいいが、姉達の集団はどうしても人目を引いてしまう、化粧が変わった為にパッと見た時の異様さは無くなっているが、今は髪型がとんでもない事になっており、街中にあっては余計目立つようになってしまっていた、変な騒動にならなければいいけどなといらぬ心配をしてしまう苦労人のマフダであった、

「今日はほら、ジャネットさん達も向こうでしょ?」

「あっ、そっか、手が減るのか・・・」

「そうなのよ、奥様達に少し残ってもらう?今日中に形にしないと難しいかもよ」

「うー、そこまで考えてなかったー・・・」

しょんぼりと肩を丸めるマフダである、

「まぁ、取り合えず一服しましょう、なんだったら全員でやってもいいんだし」

「そだね」

とカチャーとリーニーは茶のテーブルに向かい、マフダもここは少し休むかと漸く腰を上げる、ここで一人意地を張っても空気が悪くなるだけである、ここは皆と一緒に一休みするのが正しい選択であった、そこへ、

「失礼します」

とミーンがひょっこり顔を覗かせた、

「あらっ、どうしたの?」

奥様達の視線がミーンに集まり、エヘヘと微笑むミーン、何気に昼日中顔を出すのは珍しく、ほぼこちらの事務所には来ない顔でもある、

「すいません、えっとですね」

とミーンが何事かを言いかけると、

「あらっ、お茶の時間だった?」

ヒョイとタロウが顔を出す、今度はオワッと驚く奥様達とマフダ達、

「そうみたいですね、どうしましょう?」

「あー・・・どうしようか、少し待つか・・・」

ミーンが振り返り、タロウも申し訳なさそうな顔となる、マフダは慌てて、

「大丈夫です、あの、どうしたんですか」

と駆け寄ってしまった、朝の事もある、もしからしたらリズモンドかフィロメナがまた何か言い出したのかもしれず、妹達が何かやったのかもとも思ってしまう、

「ん・・・あー、忙しい?」

タロウは困り顔のままマフダを見下ろす、

「忙しいと言えば忙しいですけど・・・その、何か?えっと、私ですか?」

「そうマフダさん、んー・・・、じゃ、どうしようかな、お茶を飲みながらでいいから、少し手を貸してくれると嬉しいかな?」

ニコリとやっと笑顔を浮かべるタロウに、今度は何だろうとマフダは首を傾げ、カチャーとリーニー、奥様達はこれはと目を細める、一人ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべるミーン、そして、結局マフダは茶に手を伸ばす事も無く、タロウとゴソゴソやったようで、その出来た代物を目にして、

「こりゃまた細かいねー・・・」

「大きくすれば大丈夫でしょ」

「そうかなー・・・縫い代次第じゃない?」

「縫う箇所が多いわよね、こりゃ大変だ・・・」

「そういうもんだって言ってたじゃない」

「そうだけど、難しいわよ」

「それはだってあんたの腕の見せ所でしょ」

「あら、褒めてくれるの?」

「まぁね、私には敵わないでしょうけど」

「言ったわねー」

奥様達がキャッキャッとはしゃぎ、マフダはマフダでこりゃまた大変な事になったと青い顔となっている、カチャーとリーニーは黒板を持ち出してその要点を書きつけていた、しっかりと飴玉を口中で転がしているあたり、この二人もだいぶ商会に慣れたのか、社会人として抜け目がなくなったのか、随分としたたかになったようである、

「やっぱり難しいです?」

タロウがンーと頬をかきながら顔を上げた、そうねーと渋い顔で頷く奥様達、だよなーとタロウも思う、タロウは喫茶店での打合せの後、そういう事ならとイフナースとカラミッドの要請を受け入れ、ついでに丁度良いとばかりにテラにマフダさんの手を借りたいと相談した、テラは少しばかり驚いていたが、タロウが30日の準備の為であり、それをすっかり忘れていた事と、それがあればより分かりやすくなるだろうからと謝罪半分で説明すると、そういう事なら喜んでとテラは快諾し、いきなり行っては向こうも困るだろうからとミーンを事情説明の為につけてくれた、しかしどうやらミーンは必要無かったようである、マフダは勿論奥様達もタロウの実力は重々理解しており、少々変な事をしても疑われない信頼を勝ち得ていたりする、ミーンは結局茶を切り上げてタロウに群がる奥様達を見て、後は任せてもいいかとサッサと店舗に戻ってしまっていた、

「大きくするってどのくらいですか?」

マフダが不安そうに顔を上げる、

「どのくらいって、ちゃんと着れるように?」

「そりゃそうだ」

「うん、まったくだ」

大きく頷く奥様達とそりゃそうかと頷くマフダ、

「ほら、前みたいにね、小さいの作ったじゃない?あんな感じでやろうかなって思ったんだけど、前のあれは単純と言えば単純だったからな・・・今回のは・・・うん、確かに難しいんだよね・・・」

前のあれとはチャイナドレスの事である、今マフダが目の前にしており、奥様達が首を伸ばして覗き込んでいるのは、俗に言う立体縫製を元にした型紙であり、ぱっと見ではとてもこれが服になるとは思えない複雑な形で、タロウとしても実際に書いてみたは良いが、はてこれがどう衣服になるのか不安になる有様で、しかし、ちゃんと組み立てればちゃんとした女性用の衣装になる筈の型紙となっている、恐らくそれ故に難しい曲線となっているのであろう、特に胸周りから腰回りにかけての緩やかな曲線がこの女性用の衣装の肝になっていると思われるが、それを表現する為に上半身を覆う布が6枚程度に別れており、さらには肩と袖になる部分、腕、襟の部分と細かく別けられては流石のマフダでもこれは一体何なのかと戸惑ってしまうのも無理は無い、タロウはタロウでこりゃプラモデルか紙工作だな懐かしい等と思っていたりする、

「でも、これであれですよね、30日には講義をされるんですよね」

リーニーが黒板を手に真剣な瞳をタロウにぶつける、

「そのつもり、型紙というか、理屈を教えて誤魔化そうと思ったんだけどね、それよりも作って見せた方がいいかなって・・・今朝思ってさ、ゴメンね、忙しかったでしょ」

この言い訳は二度目であった、正確には四度目かもしれない、テラにも同様の事を言い、ミーンにも同じことを言っている、そして型紙を書きながらも口にしていた、

「・・・わかりました、やってみます」

マフダはグッと手に力を込めてギンとばかりにタロウを睨む、オオッと驚き、流石マフダさんだわーと囃し立てる奥様達、

「大丈夫?」

「はい、何とかします、えっと、この小さい状態でいいんですよね」

「そだね、出来れば・・・着れる大きさがいいんだけどね、小さいままでもいいよ、無理はさせられないし・・・」

「なら、大きいのでやりなさいよ」

奥様の一人が軽く言い放ち、

「そうよ、だって30日の講義って、マフダさんも楽しみにしてたでしょ」

さらに奥様の一人がソッとマフダの肩に手を置いた、

「エッ、でも、だって・・・ほら、あれも仕上げないとだし・・・」

不安そうな顔で振り返るマフダ、

「仕上げ?」

タロウがテーブルに並んだメイド服を見渡す、

「はい、えっと、王太子妃様の御注文なんです」

「王太子妃様っていうとパトリシア様?」

「はい、なので、明日は無理そうだから今日中に何とかと思ってまして・・・」

「んー・・・そっか、もう注文受けたんだ・・・姫様も気が早いな・・・」

タロウは改めてメイド服を見渡し首を傾げ、

「これ・・・作り直しになるかもよ・・・」

と大変に不穏な事を言い出し、エッとタロウを見つめるしかないマフダと奥様達、

「だって・・・これね、こっちを作って見せたらさ、絶対にこっちで作ってみろって言い出すもん」

タロウがどうする?と視線でマフダに問いかける、

「・・・そんなに、凄いんですか?これ?」

マフダは目を丸くしてタロウを見つめる、

「うん、多分だけど、これがこれからの服装の基準になると思うよ、特に貴族様の正装とか訪問着とか?・・・となるとメイドさんの服はこれでもいいのかな・・・でもな、まぁ・・・そこは好きにしてもらうしかないか、俺が着る訳じゃないしな・・・」

「そんなにですか?」

カチャーも思わず大声を上げた、

「うん、だってあれでしょ、貴族様の服って基本オーダーでしょ?」

「オーダー?」

「あぁ、注文する形?一品ものっていうのかな?」

「はい、えっと、でも・・・あれですよ、それはだって本当にその・・・お金のある貴族様だけで、基本的には既製品っていうのか・・・そういうのが・・・普通です・・・でも、数はそんな作らないかな、あれです、既にあるものを加工する感じで・・・」

「あっ、カスタムってことか、へー、あれって、そうなんだ・・・そういうもんか、まぁ、それならそれで・・・そうなると・・・いや、うん、そっか、そっちも教えた方がいいんだろうな・・・サイズを変えて対応するしかなさそうだし・・・そこまで考える必要は無いかな今は・・・俺の関与する所じゃないしな・・・まぁ・・・いずれ気付くだろうけど、早くても損じゃないし・・・」

何やら納得し、少しばかり悩んだ挙句に無責任な事を言うタロウ、オイオイと目を細める奥様達、しかし、

「タロウさんがそこまで仰るのであれば、ちゃんと作ります、えっと、会長とテラさんには私が謝ります」

マフダがバシリと言い切った、オオーと歓声を上げる奥様達、

「なら俺も謝るよ、パトリシア様にはね、俺が頭を下げてどうなるかまでは分からんけどさ・・・言い訳もあるしね・・・マフダさんが怒られる事ではないからね」

タロウもニヤリと微笑むが、言っている事が大変に頼りない、

「じゃ、どうしようかな、ちゃんと理屈からいこうか・・・さっきのは少しばかり雑だったから・・・そうなると・・・どうしようかな、誰がいいのかな?・・・」

とタロウは女性達を見渡す、そして、

「うん、リーニーさんかな、失礼な言い方になるけど、標準的な体形だよね?」

エッと目を剥くリーニー、失礼な言い方の真意が測りかね、さらには標準的な体形の意味もよく理解出来ない、

「まぁ、作る人をモデルにすると作業的にめんどくさいからね、じゃ、リーニーさんに合わせて作ってみようか」

タロウはさてどうするかと腰を上げ、なんで私が?と首を傾げるリーニー、モデルとは?と首を傾げるマフダとカチャーと奥様達であった。
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