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本編
75話 茶店にて その12
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その日の寮の夕食はマリア一家も加わって大変に明るく楽しいもので、またティルとミーンが店の仕事で遅れたこともあり、店で調理された油料理を中心とした献立になっている、これには誰でも無いソフィアが大変に喜んでいたりする、昨日のうちにそうしようと打ち合わせ済みではあった為、適当に野菜の煮物とパスタを調理しており、それに油料理が加わればこれはもう御馳走と呼んで差し支えない献立で、なるほどソウザイとはこれほど便利かと実感したのであった、しかし少しばかり可哀想であったのはイージスである、喫茶店でこれも美味しいあれも美味しいとヒョイヒョイと調子よく口にしたものばかりとなってしまい、揚げ物は正直飽きが来ていた様子で、マリアが食べ過ぎるからよと今更ながらに叱責し、珍しくも不愉快そうに俯くイージス、しかし煮物と一緒に提供されたパスタにはこれは美味しいと子供らしい笑顔を見せている、そうして夕食も終わり、マリアらも帰宅する、生徒達が折り紙やら枕の製作やらと大騒ぎしつつ入浴を済ませた後で、
「ちょっといい?」
すっかり閑散とした食堂、ユーリは風呂から上がりゴシゴシと頭を拭きながらタロウとソフィアを捕まえた、サビナとカトカ、ゾーイも緩んでいた顔を引き締める、エルマが入浴中となり、生徒達は自室に引き上げている、ミナは寝台で毛布にくるまって夢の中であった、レインの姿は無い、誰もが宿舎に戻って寝ているのであろうと思っているが、その姿は裏山の広場にあったりする、
「ん、いいよー、さっきの話し?」
タロウが折り紙の手を止めて顔を上げる、他にも教えろーとミナにせっつかれ、生徒達も乗り気なものだから適当に色々と折って見せていた、しかしこれもまた調子に乗り過ぎたようで、大量にあった書き損じの上質紙は半分程度に減っている、まぁ、こうなる事は予想の範囲内ではあったが、
「そうね、何かあれね、本気で動かないと駄目かもねー」
ユーリがタロウとソフィアの座るテーブルに腰を下ろす、カトカらも一応と湯呑を手にしてそちらのテーブルに移動した、
「そのようだねー、まぁ、こんだけわやくちゃとやってればね、君らがのんびりやれる筈もないだろねー」
タロウがノホホンと答えると、
「あのねー、大元で元凶で、騒動の中心はあんたでしょうが」
ユーリがギロリとタロウを睨み、それもそうだねーとノホホンと返すタロウ、確かにそうだと頷く研究所組と我関せずと編み物に集中するソフィアである、
「でなんだけど、まずは学園ね、魔力の増大についてなんだけどさ」
ユーリがタオルを頭に巻いて本題とばかりに溜息混じりである、
「それから?」
「それからよ、あんたの教えてくれたあれ、学園で試してみてもいいわよね」
「・・・やっぱりそうなる?」
「そうなったのよ、学園長とも話してね、まだ詳細は伏せてるけどね、やるならほら大人数で試した方がいいでしょ」
「そう・・・なるよなー」
タロウはさてどうしたものかと首を傾げる、魔力の増大と呼称されるようになったその手法をタロウは三つユーリに伝えていた、現在ゾーイが試している常時魔力を半分に維持する手法、寝る前に限界まで魔力を使う手法、活動中は微量の魔力を使い続け自然回復する量と相殺する手法である、
「ゾーイさんはどんな感じ?」
タロウはそう言えばとユーリに問うと、
「見ての通りよ、順調ね」
ユーリの視線がゾーイに向かい、ゾーイはニコリと微笑む、ゾーイ自身にはあまり自覚が無かったが、ユーリは毎朝顔を併せるたびにそれなりになったとか変化が無いとかしっかりと観察している、もはや日課とも呼べる二人の生真面目な習慣となっていた、
「・・・そのようだねー、でも、あれかな二日程何もしないでみてもいいかもね」
「どういう事?」
「んー、なんていうか魔力の許容量は上がっているとは思うけど、今度はほら回復量がそれに追い付いていないって事もあるかもだから・・・うん、今日はしょうがないけど明日は取り敢えず何もしないでみてよ、それで魔力がしっかりと充填されていれば成功だと思うな・・・」
「・・・なるほどね、ゾーイそのようにね」
ユーリがあっさりとタロウの案を受け入れた事にゾーイはん?と違和感を感じるも取り敢えずゆっくりと頷いた、カトカとサビナもこと魔法に関しては素直にタロウの意見を入れるんだよなと不思議そうにしている、
「でもやっぱりそうなるとさ、あれだね、魔力の検知が重要になるって思うけど・・・」
「それも前から話しているでしょ」
「そうだけどさ、それを研究するって言ったのは君だぞ」
「やってるわよ、全然進まないんだけどね」
ユーリが不愉快そうに鼻を鳴らし、確かにと頷く所員の三人、ホルダー研究所での研究課題は多岐に渡っており、ユーリの立場と様々な社会情勢が重なってどれもこれも中途半端になっている、地道に進んでいると言えるのはカトカの取り組む自然界から魔力を取り込む研究と、ゾーイの取り組む転送陣の簡易化と光柱の改良ぐらいなもので、それであっても目標とするところにはまだまだ遠いと感じる程度の進み具合となっていた、
「そっか・・・でもそうなると、君が忙しくなるぞ、いいのか?」
タロウがユーリを気遣ったようで、ユーリは、ハンと鼻で笑い、
「今更何よ、あんたもソフィアもだらしないし、クロノスは馬鹿間抜けだし、ルーツは頼りようも無いしで私一人何とかやって来たのよ、リンドさんやアフラさんの方が遥かに頼りになるわよ、まったく、グズばっかりなんだから」
「グズって・・・なぁ?」
タロウがソフィアを伺うも、ソフィアはまるで無視して編み棒を操っている、話しは聞いているようであるが口出ししない所を見るに単に面倒くさいと思っているかやる気が無いのであろう、
「まぁそれでもね、少なくとも昨日のあれやらこれやらはアンタが発起人みたいなもんなんだから、しっかり関わって貰うわよ」
「それはいいけどさ・・・で、学園長とはどんな感じになったのさ?」
「そうね、簡単よ」
とユーリは今日の打ち合わせの内容を口にする、あくまで実験的な行為でもある為、被験者は自ら志望する者だけに留める事、学園長に詳細は話していないが先の三種の方策を一定期間順繰りに試してみる事、その魔力量の変化はユーリが定時的に観察し記録する事、またこの研究内容は王国に逐次報告する事等となる、
「そりゃまた、しっかりした計画になったねー」
「そりゃそうでしょ、ついでにね学園長は学園長でロキュス大先生からどういう事だって問い合わせが来たらしくてね、おかげで打ち合わせは途中で終わったんだわ」
「ありゃ・・・そりゃ、あの先生も出張って来るわなー」
タロウが腕を組んで天井を見上げる、確かにと頷かざるを得ないゾーイ、
「だから、恐らくだけどね、方法を教えたら向こうでもやるんじゃない?・・・いや、確実にやるわね」
「だろうね、といっても向こうさんでは観測できる者がおらんだろ」
「そこはほら、ならアンタがいるんだし」
「ゲッ、そこで俺?」
「そうなるでしょ、私はあくまでこっちの担当、あんたは王家の相談役よ、お声がかりがあるんじゃないの?知らんけど」
「・・・それはそれで・・・めんどいなー」
「でしょうね、で、私としてはさ、学園のそれはね、このままやるしか無いし、私も興味あるし、学園長も協力するってんで何とかはなるんだけど、あんたも今の内ならほら学園に協力する体で逃げる事もできるわよ、どうする?」
ユーリがジッとタロウを見つめ、そういう事かとタロウは理解し薄く微笑んでしまった、ユーリも情の厚い女である、諸々を見越してタロウを心配しているのであろう、ユーリとしてはただでさえめんどくさがりで権力を嫌う男が、帝国の脅威をいち早く王国に伝えそれに加えて王家やら軍やらに協力しているのである、タロウ本人の思惑がどうあれ、ユーリから見れば少なくともタロウは好き好んでそうしているわけではない事を感じており、恐らくソフィアも何も言わないが良くは思っていない様に感じている、
「・・・そこまで考えていてくれていると嬉しい限りだよ」
タロウはさてどうしたものかと俯き、
「でも、学園に協力するのもね、結局は王国に協力する事と大差ないし・・・」
「それはだって、どこにいて何をやっても同じでしょ、アンタの実力からすれば」
「・・・なに?褒めてるの?」
「うるさいわね、茶化すんじゃないわよ」
ギロリとユーリに睨まれ、タロウはウヘーと呻く、まったくだと頷く研究所の三人、
「まぁ・・・そうなんだけどさ・・・じゃ、どうしようかな・・・本格的に研究仕事でもやろうかな・・・」
ボソリと呟くタロウ、エッと三人が目を見開き、ユーリはフンと鼻を鳴らす、相変わらず我関せずと口出ししないソフィアもピタリと手が止まったようである、
「いやな・・・今日の兵隊さん達を見ててもさ・・・何かほら、なんかなって感じでね・・・」
「何よそれ?」
「ん、折角魔力があるのにね、有効活用できてないみたいだなって」
「そりゃだって、仕方ないじゃない、そういう人結構いるわよ」
「そうなんだよねー・・・だから・・・魔力検知か・・・魔法の島国でも研究しててね、少し見せてもらったんだけど」
「待って、それ初耳よ」
「うん、言ってない」
コノーとユーリは頬を引き攣らせ、三人は三人で素直に目を丸くしている、魔法の島国とはタロウが魔力増大の手法を教わったという帝国から逃げ出した魔法使いが作った国の事で、タロウはその詳細を語る事は無かったが、技術的にはこちらと比べても似たようなものであるとだけユーリは聞いている、しかしよく考えれば似たようなものなのであれば似たような研究課題に取り組んでいるということであり、魔力検知に関してもそうなのであろう、
「ただ、向こうのは少しばかりね・・・うん、妙に肉体的でね、これでわかるのかなって感じなんだけど」
「どういうの?教えなさい」
ユーリがグワッと前のめりになる、
「ん、簡単だよ、水に顔をつけて我慢するんだ、息を長く止めれた者がより魔力がある?」
ニヤリと微笑むタロウ、ハッ?とユーリは真顔になり、三人もまたなんだそりゃと言葉も無い、
「他にも片足立ちで耐えるとか、重い荷物をもって階段を上がり下がりするとか」
タロウは他にもあったかなーと天井を見上げるも、
「待って、それ魔力関係なくない?」
「ないね」
あっさりと認めるタロウ、おいおいと目を細める四人、ソフィアも流石に顔を上げ渋い顔であった、
「だから・・・向こうもある意味で行き詰っている感じだったな・・・そこに至る理屈はあったんだろうけど・・・まわりまわって肉体鍛錬的な観測手法になっちゃったんだろうね・・・まぁ、なんとなく理屈は分るけどさ、ほれ、クロノスみたいな感じだ、肉体にかかる負荷を魔力で埋める感じ・・・で、それで魔力を観測できるんじゃないかって構想?・・・なんだけどねぇ・・・それで魔力量の検知って難しいだろうね、正直難航してたし、俺は無理だろって言ったら、無理だなって笑ってたけど、あれはもうなりふり構わず思い付いた事は全部試すって状況だったのかな・・・お弟子さん達が可哀そうだったな・・・」
「待って・・・それどこまで本当なの?」
「どこまでって、嘘は言ってないぞ」
「・・・って事はさ、魔力の増大もだって、そんな理屈の無い理論だったって事にならない?」
アラッとタロウは嬉しくなってしまう、ユーリも随分と回転が早くなったものだ、冒険者時代はソフィアもユーリもタロウからすればボンヤリとした若者で、それがこうして議論を戦わせる事ができるほどに思考方法を身に着けたらしい、まぁ、二人共その吸収力は当時から恐ろしい程で、それ故にこうして活躍もしているのであるが、
「だから検証が必要だって言ってるじゃないのさ、で、ゾーイさんはそれで結果が出てるんだろ?」
「・・・それはそうね・・・」
ユーリがゾーイを伺い、ゾーイはゆっくりと頷いた、
「だから、あれも間違いではないかもしれないんだけどね、でも、あれで魔力を測るとすればゲインが一番になってしまうんだよな」
アッハッハとタロウは笑い、それは駄目だろと目を眇めるソフィアとユーリ、
「だから・・・まぁ、全く別の手法を考えてはいるんだけどね・・・うん、だから、それを言い訳にしてさ、暫く恍けようかなって・・・」
駄目かな?とタロウはユーリを伺い、
「駄目じゃないけど、だって、報告の義務は生じるし・・・あっ、じゃ、それこそ学園に所属してちゃんと研究者をやりなさいよ」
「それはめんどうだ」
「だからー」
と思わず叫ぶユーリと、どうでもいいかなと編み物に戻るソフィア、そうなれば少しはこっちの研究も楽になりそうだなと思うカトカとサビナとゾーイであった。
「ちょっといい?」
すっかり閑散とした食堂、ユーリは風呂から上がりゴシゴシと頭を拭きながらタロウとソフィアを捕まえた、サビナとカトカ、ゾーイも緩んでいた顔を引き締める、エルマが入浴中となり、生徒達は自室に引き上げている、ミナは寝台で毛布にくるまって夢の中であった、レインの姿は無い、誰もが宿舎に戻って寝ているのであろうと思っているが、その姿は裏山の広場にあったりする、
「ん、いいよー、さっきの話し?」
タロウが折り紙の手を止めて顔を上げる、他にも教えろーとミナにせっつかれ、生徒達も乗り気なものだから適当に色々と折って見せていた、しかしこれもまた調子に乗り過ぎたようで、大量にあった書き損じの上質紙は半分程度に減っている、まぁ、こうなる事は予想の範囲内ではあったが、
「そうね、何かあれね、本気で動かないと駄目かもねー」
ユーリがタロウとソフィアの座るテーブルに腰を下ろす、カトカらも一応と湯呑を手にしてそちらのテーブルに移動した、
「そのようだねー、まぁ、こんだけわやくちゃとやってればね、君らがのんびりやれる筈もないだろねー」
タロウがノホホンと答えると、
「あのねー、大元で元凶で、騒動の中心はあんたでしょうが」
ユーリがギロリとタロウを睨み、それもそうだねーとノホホンと返すタロウ、確かにそうだと頷く研究所組と我関せずと編み物に集中するソフィアである、
「でなんだけど、まずは学園ね、魔力の増大についてなんだけどさ」
ユーリがタオルを頭に巻いて本題とばかりに溜息混じりである、
「それから?」
「それからよ、あんたの教えてくれたあれ、学園で試してみてもいいわよね」
「・・・やっぱりそうなる?」
「そうなったのよ、学園長とも話してね、まだ詳細は伏せてるけどね、やるならほら大人数で試した方がいいでしょ」
「そう・・・なるよなー」
タロウはさてどうしたものかと首を傾げる、魔力の増大と呼称されるようになったその手法をタロウは三つユーリに伝えていた、現在ゾーイが試している常時魔力を半分に維持する手法、寝る前に限界まで魔力を使う手法、活動中は微量の魔力を使い続け自然回復する量と相殺する手法である、
「ゾーイさんはどんな感じ?」
タロウはそう言えばとユーリに問うと、
「見ての通りよ、順調ね」
ユーリの視線がゾーイに向かい、ゾーイはニコリと微笑む、ゾーイ自身にはあまり自覚が無かったが、ユーリは毎朝顔を併せるたびにそれなりになったとか変化が無いとかしっかりと観察している、もはや日課とも呼べる二人の生真面目な習慣となっていた、
「・・・そのようだねー、でも、あれかな二日程何もしないでみてもいいかもね」
「どういう事?」
「んー、なんていうか魔力の許容量は上がっているとは思うけど、今度はほら回復量がそれに追い付いていないって事もあるかもだから・・・うん、今日はしょうがないけど明日は取り敢えず何もしないでみてよ、それで魔力がしっかりと充填されていれば成功だと思うな・・・」
「・・・なるほどね、ゾーイそのようにね」
ユーリがあっさりとタロウの案を受け入れた事にゾーイはん?と違和感を感じるも取り敢えずゆっくりと頷いた、カトカとサビナもこと魔法に関しては素直にタロウの意見を入れるんだよなと不思議そうにしている、
「でもやっぱりそうなるとさ、あれだね、魔力の検知が重要になるって思うけど・・・」
「それも前から話しているでしょ」
「そうだけどさ、それを研究するって言ったのは君だぞ」
「やってるわよ、全然進まないんだけどね」
ユーリが不愉快そうに鼻を鳴らし、確かにと頷く所員の三人、ホルダー研究所での研究課題は多岐に渡っており、ユーリの立場と様々な社会情勢が重なってどれもこれも中途半端になっている、地道に進んでいると言えるのはカトカの取り組む自然界から魔力を取り込む研究と、ゾーイの取り組む転送陣の簡易化と光柱の改良ぐらいなもので、それであっても目標とするところにはまだまだ遠いと感じる程度の進み具合となっていた、
「そっか・・・でもそうなると、君が忙しくなるぞ、いいのか?」
タロウがユーリを気遣ったようで、ユーリは、ハンと鼻で笑い、
「今更何よ、あんたもソフィアもだらしないし、クロノスは馬鹿間抜けだし、ルーツは頼りようも無いしで私一人何とかやって来たのよ、リンドさんやアフラさんの方が遥かに頼りになるわよ、まったく、グズばっかりなんだから」
「グズって・・・なぁ?」
タロウがソフィアを伺うも、ソフィアはまるで無視して編み棒を操っている、話しは聞いているようであるが口出ししない所を見るに単に面倒くさいと思っているかやる気が無いのであろう、
「まぁそれでもね、少なくとも昨日のあれやらこれやらはアンタが発起人みたいなもんなんだから、しっかり関わって貰うわよ」
「それはいいけどさ・・・で、学園長とはどんな感じになったのさ?」
「そうね、簡単よ」
とユーリは今日の打ち合わせの内容を口にする、あくまで実験的な行為でもある為、被験者は自ら志望する者だけに留める事、学園長に詳細は話していないが先の三種の方策を一定期間順繰りに試してみる事、その魔力量の変化はユーリが定時的に観察し記録する事、またこの研究内容は王国に逐次報告する事等となる、
「そりゃまた、しっかりした計画になったねー」
「そりゃそうでしょ、ついでにね学園長は学園長でロキュス大先生からどういう事だって問い合わせが来たらしくてね、おかげで打ち合わせは途中で終わったんだわ」
「ありゃ・・・そりゃ、あの先生も出張って来るわなー」
タロウが腕を組んで天井を見上げる、確かにと頷かざるを得ないゾーイ、
「だから、恐らくだけどね、方法を教えたら向こうでもやるんじゃない?・・・いや、確実にやるわね」
「だろうね、といっても向こうさんでは観測できる者がおらんだろ」
「そこはほら、ならアンタがいるんだし」
「ゲッ、そこで俺?」
「そうなるでしょ、私はあくまでこっちの担当、あんたは王家の相談役よ、お声がかりがあるんじゃないの?知らんけど」
「・・・それはそれで・・・めんどいなー」
「でしょうね、で、私としてはさ、学園のそれはね、このままやるしか無いし、私も興味あるし、学園長も協力するってんで何とかはなるんだけど、あんたも今の内ならほら学園に協力する体で逃げる事もできるわよ、どうする?」
ユーリがジッとタロウを見つめ、そういう事かとタロウは理解し薄く微笑んでしまった、ユーリも情の厚い女である、諸々を見越してタロウを心配しているのであろう、ユーリとしてはただでさえめんどくさがりで権力を嫌う男が、帝国の脅威をいち早く王国に伝えそれに加えて王家やら軍やらに協力しているのである、タロウ本人の思惑がどうあれ、ユーリから見れば少なくともタロウは好き好んでそうしているわけではない事を感じており、恐らくソフィアも何も言わないが良くは思っていない様に感じている、
「・・・そこまで考えていてくれていると嬉しい限りだよ」
タロウはさてどうしたものかと俯き、
「でも、学園に協力するのもね、結局は王国に協力する事と大差ないし・・・」
「それはだって、どこにいて何をやっても同じでしょ、アンタの実力からすれば」
「・・・なに?褒めてるの?」
「うるさいわね、茶化すんじゃないわよ」
ギロリとユーリに睨まれ、タロウはウヘーと呻く、まったくだと頷く研究所の三人、
「まぁ・・・そうなんだけどさ・・・じゃ、どうしようかな・・・本格的に研究仕事でもやろうかな・・・」
ボソリと呟くタロウ、エッと三人が目を見開き、ユーリはフンと鼻を鳴らす、相変わらず我関せずと口出ししないソフィアもピタリと手が止まったようである、
「いやな・・・今日の兵隊さん達を見ててもさ・・・何かほら、なんかなって感じでね・・・」
「何よそれ?」
「ん、折角魔力があるのにね、有効活用できてないみたいだなって」
「そりゃだって、仕方ないじゃない、そういう人結構いるわよ」
「そうなんだよねー・・・だから・・・魔力検知か・・・魔法の島国でも研究しててね、少し見せてもらったんだけど」
「待って、それ初耳よ」
「うん、言ってない」
コノーとユーリは頬を引き攣らせ、三人は三人で素直に目を丸くしている、魔法の島国とはタロウが魔力増大の手法を教わったという帝国から逃げ出した魔法使いが作った国の事で、タロウはその詳細を語る事は無かったが、技術的にはこちらと比べても似たようなものであるとだけユーリは聞いている、しかしよく考えれば似たようなものなのであれば似たような研究課題に取り組んでいるということであり、魔力検知に関してもそうなのであろう、
「ただ、向こうのは少しばかりね・・・うん、妙に肉体的でね、これでわかるのかなって感じなんだけど」
「どういうの?教えなさい」
ユーリがグワッと前のめりになる、
「ん、簡単だよ、水に顔をつけて我慢するんだ、息を長く止めれた者がより魔力がある?」
ニヤリと微笑むタロウ、ハッ?とユーリは真顔になり、三人もまたなんだそりゃと言葉も無い、
「他にも片足立ちで耐えるとか、重い荷物をもって階段を上がり下がりするとか」
タロウは他にもあったかなーと天井を見上げるも、
「待って、それ魔力関係なくない?」
「ないね」
あっさりと認めるタロウ、おいおいと目を細める四人、ソフィアも流石に顔を上げ渋い顔であった、
「だから・・・向こうもある意味で行き詰っている感じだったな・・・そこに至る理屈はあったんだろうけど・・・まわりまわって肉体鍛錬的な観測手法になっちゃったんだろうね・・・まぁ、なんとなく理屈は分るけどさ、ほれ、クロノスみたいな感じだ、肉体にかかる負荷を魔力で埋める感じ・・・で、それで魔力を観測できるんじゃないかって構想?・・・なんだけどねぇ・・・それで魔力量の検知って難しいだろうね、正直難航してたし、俺は無理だろって言ったら、無理だなって笑ってたけど、あれはもうなりふり構わず思い付いた事は全部試すって状況だったのかな・・・お弟子さん達が可哀そうだったな・・・」
「待って・・・それどこまで本当なの?」
「どこまでって、嘘は言ってないぞ」
「・・・って事はさ、魔力の増大もだって、そんな理屈の無い理論だったって事にならない?」
アラッとタロウは嬉しくなってしまう、ユーリも随分と回転が早くなったものだ、冒険者時代はソフィアもユーリもタロウからすればボンヤリとした若者で、それがこうして議論を戦わせる事ができるほどに思考方法を身に着けたらしい、まぁ、二人共その吸収力は当時から恐ろしい程で、それ故にこうして活躍もしているのであるが、
「だから検証が必要だって言ってるじゃないのさ、で、ゾーイさんはそれで結果が出てるんだろ?」
「・・・それはそうね・・・」
ユーリがゾーイを伺い、ゾーイはゆっくりと頷いた、
「だから、あれも間違いではないかもしれないんだけどね、でも、あれで魔力を測るとすればゲインが一番になってしまうんだよな」
アッハッハとタロウは笑い、それは駄目だろと目を眇めるソフィアとユーリ、
「だから・・・まぁ、全く別の手法を考えてはいるんだけどね・・・うん、だから、それを言い訳にしてさ、暫く恍けようかなって・・・」
駄目かな?とタロウはユーリを伺い、
「駄目じゃないけど、だって、報告の義務は生じるし・・・あっ、じゃ、それこそ学園に所属してちゃんと研究者をやりなさいよ」
「それはめんどうだ」
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