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本編
75話 茶店にて その40
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それから暫くして六花ソウザイ店の三階である、午前の中ほどの時間、エレインに先導された王家の女性達、クレオノート伯爵家の母娘、コーレイン公爵家の令嬢が続々と階段を上がり、エレインの姉であるマリアの姿もある、和気藹々と楽しそうに笑いながら教室へと入る、さらには職人風の女性が数名、顔を強張らせて付き従っていた、一見する限りメイドでも従者でも無い様子で、楽しそうに微笑む貴族達とは違って緊張しているのを隠す事も出来ていない、
「ようこそ、いらっしゃいました」
テラが恭しく頭を垂れ、マフダとリーニー、ミーンら三人のメイドとケイランもそれに倣う、そして先に来ていたアフラもまた静かに低頭し、すっと席を用意した、
「お迎え御苦労様、さて、あの男はどこかしら」
ニヤリとパトリシアが微笑む、もうとエレインが振り返り、テラも苦笑し、
「すいません、軍のお仕事が先となっておる様子で・・・」
一応と事情を説明するテラに、
「分ってますわよ、この期に及んで待たせるのだから余程の内容になりますわよね」
機嫌良く微笑むパトリシアにテラは勿論ですと思いますと微笑み、アフラがパトリシアとウルジュラを席へと誘った、黒板に対して手前側の最前列となり、階段に近い場所となる、テラやケイランとも相談したのであるが、どうにもこの教室で上座にあたる席を決定しかねてしまっていた、食事や会合の際のテーブルとも違い、黒板に対して長テーブルが三列に並んでいる教室の形だと王国の礼式を当て嵌める事が難しく、取り合えず最前列の中央が講師にも近く聞き取りやすいであろうと考え、王妃二人はそこへ、その脇を準じる地位にある者が座るべきだろうとして席次を決めている、アフラもテラもまるで想定していなかったと苦笑してしまい、ある意味で面白いわねと笑い合ってしまっていた、
「エフェリーン様、マルルース様はこちらへ」
テラが続けて王妃二人を案内し、ケイランがユスティーナとマルヘリート、レアンを案内する、席次からどうしてもレアンは二列目に座る事になり、その点をケイランが謝罪するも、レアンは構わんぞと大変に御機嫌であった、エレインが自らマリアを案内し、自分もその隣りに座る旨を話しており、あらっと微笑むマリア、さらに御付きの者達をミーンとティルが案内し、あっという間に教室は埋まってしまった感があった、エレインは軽く見渡して昨日はもう少し広く感じたのだがと首を捻るも、そこはやはり子供と大人の体格差とテーブルを二人掛けにしている点の違いであろうか、子供達には三人掛けでも広いと感じられたテーブルも大人が座ればやはり二人掛けが丁度良く、やはりこういった細かい点もやってみなれければ分らないものなのだなと思い知る、そこへフェナがお湯を持って上がって来たようで、ティルが対応に向かった、
「ホントに静かなのねー」
エフェリーンがこれは驚いたとエレインに微笑む、
「はい、実はなのですが」
とエレインが小走りになって教壇の隣りに立った、ソフィアの魔法である事を包み隠さず伝えると、まったくあの人もと呆れる顔が半数、大したもんだと微笑む者半数であり、御付きの者達は何が何やらと不思議そうな顔である、
「アフラは出来ないの?その結界魔法?」
パトリシアが近くに控えていたアフラを見上げる、
「はい、可能かと思います」
アフラが即座に答える、昨晩リンドとの引継ぎでその詳細は耳にしている、さらに様々な魔法知識をタロウから聞き取ったらしく、それは凄いと二人で資料にまとめたほどで、明日にも北ヘルデルの研究所に提供する事となっていた、そして教室の下見と準備の間にその魔法についてもさり気なく確認している、アフラの実力では結界魔法そのものを感知する事は出来なかったが、階下と教室を往復し、なるほどこういう事かと理解を深める事は出来ている、
「あら・・・じゃ、やってもらおうかしら、私の部屋」
「あっ、私も」
王妃二人がパッと顔を明るくするも、
「申し訳ありません、出来かねます」
あっさりと拒否するアフラである、まぁと眉を顰める二人、
「なんでさー」
ウルジュラがいつも従順なアフラにしては珍しいなと軽く問い返す、
「はい、いざという時に対応ができかねます」
アフラが毅然と言い放った、
「どういう事?」
「上役とも相談したのですが、こちらの結界魔法、外の音を遮断するという事は内側の音が外に漏れないという事でもあるらしいのです、となればいざという時に皆様を守る事が難しくなります」
あらっと目を丸くする王家の面々、ヘーと素直に感心するユスティーナ達である、
「あー・・・そっか、じゃ、あれ、お茶ーって言ってもお湯ーって言っても誰も持って来てくれないの?」
「その通りです、ウルジュラ様」
ニコリと微笑むアフラに、ヘーなるほどねーと理解の早いウルジュラである、そういう事かとパトリシアもマルルースも納得する他ないようで、
「なので、もし王城に仕掛けるとしても、応接室か、事務室にはあっても良いかと思いますが、居室には止した方が良かろうと考えます」
静かに続けるアフラに、それもそうねと頷く面々、エレインはそういう事もあるんだなーと素直に感心してしまった、いつの間にやらこの結界魔法も伝わっており、昨日ボニファースとリンドが来た時にタロウから聞き出したであろう事は想像できたが、まさかその日のうちに活用方法までを相談していたとは思わず、仕事が速いとはこういう事を言うのだろうかと舌を巻くしかない、
「ブー、つまんないー、あっ、ミナちゃんはー」
「申し訳ありません、他の子達と一緒です」
「あー、それもそっかー・・・」
落ち着き無く茶に手を伸ばすウルジュラ、まったくとパトリシアが横目で睨み、そうなるだろうなと残念そうなレアンである、
「では、先に資料・・・という程でもないですが、タロウさんが用意した書き付けがありますのでそちらを御覧下さい」
エレインがテラに目配せし、テラが壁に押し付けた作業テーブルから書き付けを持ち出すとメイド達が一斉に動き出す、タロウに依頼されてマフダらが複製したもので、
「あら、随分と周到ね」
パトリシアがニヤリと微笑む、
「はい、タロウさん曰く、色々あるからこの際全部言ってしまえって事でした」
エレインがフフッと微笑む、
「まぁ・・・随分とあれね、太っ腹ね」
「そうですね、後は好きにすればいいよって、夫婦揃ってあの人達はもう・・・」
苦笑するエレインに、まったくだと頷く貴族の面々、そしてメイド達によって書き付けとインク壺、木軸のガラスペンが配られた、早速と書き付けに目を落とす一同、
「・・・これはまた・・・」
「確かに面白そうね・・・」
「だねー、へー、でもこれ一日でやるのー」
「大変そうですね・・・」
「はい、私もその点確認したのですが、まぁ何とかなるよって・・・」
「あれが言うならそうなのね、まぁ、いいわ、で、あれは?」
「はい、すいません、まだ・・・」
とエレインが不安そうに階段を見つめる、
「まぁいいわ、そうだ、エレインさん、学園長のあれ、面白かったわね」
ニヤリと微笑むパトリシアにアフラがそれはと顔を顰めるも、
「はい、なので、今日ユーリ先生に呼び出してもらおうかと思っていたのです」
明るく返すエレインに、アラッと意外そうに目を見開く王家の者達、なんのことだろうと首を傾げるユスティーナ達、
「呼び出すって・・・学園長?」
「はい、今の内ならまだ書き直せるらしいので、あまりにも腹に据えかねる部分は直接文句を言わないとって思いました」
ムフンと鼻息を荒くするエレイン、しかしどこか楽しそうである、アフラはまたこれはと素直に驚き、パトリシアは、
「それは面白そうね、第一私の出番が無いとはどういう事なのかしら」
「それを言ったら私達もよ」
「そうねー、まぁ、あの筋では難しいでしょ」
「ぶー、私も出てないのー」
「それは当然よ」
「えー、だってー、兄様だけズルいー」
「仕方ないわよ、あなた大した事してないでしょ」
「ブー、でもー」
「でもじゃありません」
「ブーブー、ソフィアさんとかミナちゃんは出てたじゃないさー」
「名前までは無かったでしょ」
「そうだけどー」
「そういうもんです」
「だってー」
「だってじゃないの」
「じゃ、だけどー」
「同じです」
ムーと不貞腐れるウルジュラと呆れ顔の王妃二人、ユスティーナとレアン、マルヘリートやマリアもその詳細を聞いてよいものなのだろうかと不安そうに見つめるばかりであった、そこへ、
「すいません、遅れました」
ユーリと研究所の三人がハーハー言いながら階段を駆け上がって来たようで、
「あー、いらっしゃーい」
何故かウルジュラが四人を迎え、ユーリが慌てて御機嫌麗しゅうと頭を垂れる、
「あっ、学園長は来るのー?」
ウルジュラがパッと立ち上がる、
「学園長?」
ユーリが何のことやらと首を傾げるも、エレインが小さく頷いたのを確認し、
「あっ、あれですね、はい、一応声をかけました、自分だけでは心許ないからと司法長官も呼び出すとか何とか、午後には一度顔を出すとの事です」
「やったー、ムフフー、面白そうー」
楽しそうにはしゃぐウルジュラ、しかしパトリシアはムーと顔を顰め、
「司法長官ってローデヴェイク?」
ジロリとユーリを睨みつける、
「えっ、はい、その通りかと思いますが・・・」
「あー・・・めんどくさい・・・」
「そうねー・・・しかし、よくあの堅物があれほどのものを書けたわね」
「確かにねー、褒めていいんだか貶すべきなんだか・・・」
「仕事はちゃんとしてるのかしら」
「それはだって、あの堅物ですわよ」
「陛下も呼ばないとめんどくさそうね、私達だけだと煙に巻かれそうだわ」
「適当に振り回しちゃえば大丈夫だよー」
「アナタはもー・・・」
「・・・そこまでの人なんですか?」
エレインが不安そうにパトリシアを伺う、
「そうねー・・・少しは丸くなったんじゃないのかしら、もう何年も前でしょ、城にいたのは」
「そうねー、まぁ、偶にはあれの顔を見るのも悪くないわね」
「あっ、エルマがいるわよね、相手してもらえばいいのよ」
「それがいいわね」
「そうしましょう、エルマは?」
「はい、タロウさんと一緒にいらっしゃる予定ですが・・・」
エレインが再び不安そうに階段を見つめる、ユーリらはテラが案内したようで、既に席に着いて黒板を出しており、それもその量を見た御付きの者達が軽く目を見張る程の量となっていた、随分と気合が入っているなと感心するエレイン、そこへ、
「すいません、お待たせしましたか」
やっとタロウが顔を出し、その後ろにはベールを着けたエルマも続いている、
「それほどでもないですわよ」
ニヤリと微笑むパトリシア、タロウはウゲッと呻き、アフラがギラリと睨みつける、
「・・・あー・・・まぁ、ほら、今日は長丁場になるでしょうから、ゆっくりじっくりいきましょうよ」
タロウは誤魔化し笑いを浮かべ額の汗を軽く手の甲で拭い落した、天幕での会議にはそれほど時間を取られなかったが、会議が終わってからもイフナースに捕まってしまい、なら今日のこれに同席すればいいだろうと言い放つも、あのめんどくさい連中と一緒にするなと怒鳴られてしまっている、イフナースに関してはそれでなくても忙しい、副官であろう軍人に呼び出されムカムカと肩を怒らせ転送陣を潜っており、折角教えたアンガーコントロールがまるで効いていないなー等とその背を見送って急いでこちらへ足を向けたのである、エルマはエルマで研究所組と一緒に店舗まで来たのであるが、一階で待機していた、件の段取りもありタロウと一緒に動いた方が良さそうだとの判断である、
「そうね、では、どうするのかしら、こちらの内容に沿ってとなるの?」
先程配られた書き付けを手にするパトリシア、それは数枚の上質紙で、単純な項目が並んでおり、妙に隙間が多い、タロウ曰く、空いた部分に覚書を記せばいいよとの事で、なるほどこれは便利かもとカチャーが感心していた、そのカチャーは事務所で留守番である、これだから事務職はーと泣き叫んでマフダとリーニーを見送っている、
「そうですね、では・・・うん、準備はいいかな?」
教室の最後方に座るマフダらを確認するタロウ、マフダとリーニーが緊張した顔で大きく頷いたようで、
「はい、じゃ、早速始めますか、所々休憩しながらやりましょう、まぁ・・・」
とタロウはほくそ笑む、どうせすぐに座っていられない状況になるのであるから、始めてしまうのが一番であろう、
「そうね、頼むわよ」
パトリシアが座り直したようである、ピリッと教室の空気が張り詰めたようで、タロウは教壇に向かうと、さてまずはとそこに用意された書き付けに手を伸ばしサッと内容を目で追った。
「ようこそ、いらっしゃいました」
テラが恭しく頭を垂れ、マフダとリーニー、ミーンら三人のメイドとケイランもそれに倣う、そして先に来ていたアフラもまた静かに低頭し、すっと席を用意した、
「お迎え御苦労様、さて、あの男はどこかしら」
ニヤリとパトリシアが微笑む、もうとエレインが振り返り、テラも苦笑し、
「すいません、軍のお仕事が先となっておる様子で・・・」
一応と事情を説明するテラに、
「分ってますわよ、この期に及んで待たせるのだから余程の内容になりますわよね」
機嫌良く微笑むパトリシアにテラは勿論ですと思いますと微笑み、アフラがパトリシアとウルジュラを席へと誘った、黒板に対して手前側の最前列となり、階段に近い場所となる、テラやケイランとも相談したのであるが、どうにもこの教室で上座にあたる席を決定しかねてしまっていた、食事や会合の際のテーブルとも違い、黒板に対して長テーブルが三列に並んでいる教室の形だと王国の礼式を当て嵌める事が難しく、取り合えず最前列の中央が講師にも近く聞き取りやすいであろうと考え、王妃二人はそこへ、その脇を準じる地位にある者が座るべきだろうとして席次を決めている、アフラもテラもまるで想定していなかったと苦笑してしまい、ある意味で面白いわねと笑い合ってしまっていた、
「エフェリーン様、マルルース様はこちらへ」
テラが続けて王妃二人を案内し、ケイランがユスティーナとマルヘリート、レアンを案内する、席次からどうしてもレアンは二列目に座る事になり、その点をケイランが謝罪するも、レアンは構わんぞと大変に御機嫌であった、エレインが自らマリアを案内し、自分もその隣りに座る旨を話しており、あらっと微笑むマリア、さらに御付きの者達をミーンとティルが案内し、あっという間に教室は埋まってしまった感があった、エレインは軽く見渡して昨日はもう少し広く感じたのだがと首を捻るも、そこはやはり子供と大人の体格差とテーブルを二人掛けにしている点の違いであろうか、子供達には三人掛けでも広いと感じられたテーブルも大人が座ればやはり二人掛けが丁度良く、やはりこういった細かい点もやってみなれければ分らないものなのだなと思い知る、そこへフェナがお湯を持って上がって来たようで、ティルが対応に向かった、
「ホントに静かなのねー」
エフェリーンがこれは驚いたとエレインに微笑む、
「はい、実はなのですが」
とエレインが小走りになって教壇の隣りに立った、ソフィアの魔法である事を包み隠さず伝えると、まったくあの人もと呆れる顔が半数、大したもんだと微笑む者半数であり、御付きの者達は何が何やらと不思議そうな顔である、
「アフラは出来ないの?その結界魔法?」
パトリシアが近くに控えていたアフラを見上げる、
「はい、可能かと思います」
アフラが即座に答える、昨晩リンドとの引継ぎでその詳細は耳にしている、さらに様々な魔法知識をタロウから聞き取ったらしく、それは凄いと二人で資料にまとめたほどで、明日にも北ヘルデルの研究所に提供する事となっていた、そして教室の下見と準備の間にその魔法についてもさり気なく確認している、アフラの実力では結界魔法そのものを感知する事は出来なかったが、階下と教室を往復し、なるほどこういう事かと理解を深める事は出来ている、
「あら・・・じゃ、やってもらおうかしら、私の部屋」
「あっ、私も」
王妃二人がパッと顔を明るくするも、
「申し訳ありません、出来かねます」
あっさりと拒否するアフラである、まぁと眉を顰める二人、
「なんでさー」
ウルジュラがいつも従順なアフラにしては珍しいなと軽く問い返す、
「はい、いざという時に対応ができかねます」
アフラが毅然と言い放った、
「どういう事?」
「上役とも相談したのですが、こちらの結界魔法、外の音を遮断するという事は内側の音が外に漏れないという事でもあるらしいのです、となればいざという時に皆様を守る事が難しくなります」
あらっと目を丸くする王家の面々、ヘーと素直に感心するユスティーナ達である、
「あー・・・そっか、じゃ、あれ、お茶ーって言ってもお湯ーって言っても誰も持って来てくれないの?」
「その通りです、ウルジュラ様」
ニコリと微笑むアフラに、ヘーなるほどねーと理解の早いウルジュラである、そういう事かとパトリシアもマルルースも納得する他ないようで、
「なので、もし王城に仕掛けるとしても、応接室か、事務室にはあっても良いかと思いますが、居室には止した方が良かろうと考えます」
静かに続けるアフラに、それもそうねと頷く面々、エレインはそういう事もあるんだなーと素直に感心してしまった、いつの間にやらこの結界魔法も伝わっており、昨日ボニファースとリンドが来た時にタロウから聞き出したであろう事は想像できたが、まさかその日のうちに活用方法までを相談していたとは思わず、仕事が速いとはこういう事を言うのだろうかと舌を巻くしかない、
「ブー、つまんないー、あっ、ミナちゃんはー」
「申し訳ありません、他の子達と一緒です」
「あー、それもそっかー・・・」
落ち着き無く茶に手を伸ばすウルジュラ、まったくとパトリシアが横目で睨み、そうなるだろうなと残念そうなレアンである、
「では、先に資料・・・という程でもないですが、タロウさんが用意した書き付けがありますのでそちらを御覧下さい」
エレインがテラに目配せし、テラが壁に押し付けた作業テーブルから書き付けを持ち出すとメイド達が一斉に動き出す、タロウに依頼されてマフダらが複製したもので、
「あら、随分と周到ね」
パトリシアがニヤリと微笑む、
「はい、タロウさん曰く、色々あるからこの際全部言ってしまえって事でした」
エレインがフフッと微笑む、
「まぁ・・・随分とあれね、太っ腹ね」
「そうですね、後は好きにすればいいよって、夫婦揃ってあの人達はもう・・・」
苦笑するエレインに、まったくだと頷く貴族の面々、そしてメイド達によって書き付けとインク壺、木軸のガラスペンが配られた、早速と書き付けに目を落とす一同、
「・・・これはまた・・・」
「確かに面白そうね・・・」
「だねー、へー、でもこれ一日でやるのー」
「大変そうですね・・・」
「はい、私もその点確認したのですが、まぁ何とかなるよって・・・」
「あれが言うならそうなのね、まぁ、いいわ、で、あれは?」
「はい、すいません、まだ・・・」
とエレインが不安そうに階段を見つめる、
「まぁいいわ、そうだ、エレインさん、学園長のあれ、面白かったわね」
ニヤリと微笑むパトリシアにアフラがそれはと顔を顰めるも、
「はい、なので、今日ユーリ先生に呼び出してもらおうかと思っていたのです」
明るく返すエレインに、アラッと意外そうに目を見開く王家の者達、なんのことだろうと首を傾げるユスティーナ達、
「呼び出すって・・・学園長?」
「はい、今の内ならまだ書き直せるらしいので、あまりにも腹に据えかねる部分は直接文句を言わないとって思いました」
ムフンと鼻息を荒くするエレイン、しかしどこか楽しそうである、アフラはまたこれはと素直に驚き、パトリシアは、
「それは面白そうね、第一私の出番が無いとはどういう事なのかしら」
「それを言ったら私達もよ」
「そうねー、まぁ、あの筋では難しいでしょ」
「ぶー、私も出てないのー」
「それは当然よ」
「えー、だってー、兄様だけズルいー」
「仕方ないわよ、あなた大した事してないでしょ」
「ブー、でもー」
「でもじゃありません」
「ブーブー、ソフィアさんとかミナちゃんは出てたじゃないさー」
「名前までは無かったでしょ」
「そうだけどー」
「そういうもんです」
「だってー」
「だってじゃないの」
「じゃ、だけどー」
「同じです」
ムーと不貞腐れるウルジュラと呆れ顔の王妃二人、ユスティーナとレアン、マルヘリートやマリアもその詳細を聞いてよいものなのだろうかと不安そうに見つめるばかりであった、そこへ、
「すいません、遅れました」
ユーリと研究所の三人がハーハー言いながら階段を駆け上がって来たようで、
「あー、いらっしゃーい」
何故かウルジュラが四人を迎え、ユーリが慌てて御機嫌麗しゅうと頭を垂れる、
「あっ、学園長は来るのー?」
ウルジュラがパッと立ち上がる、
「学園長?」
ユーリが何のことやらと首を傾げるも、エレインが小さく頷いたのを確認し、
「あっ、あれですね、はい、一応声をかけました、自分だけでは心許ないからと司法長官も呼び出すとか何とか、午後には一度顔を出すとの事です」
「やったー、ムフフー、面白そうー」
楽しそうにはしゃぐウルジュラ、しかしパトリシアはムーと顔を顰め、
「司法長官ってローデヴェイク?」
ジロリとユーリを睨みつける、
「えっ、はい、その通りかと思いますが・・・」
「あー・・・めんどくさい・・・」
「そうねー・・・しかし、よくあの堅物があれほどのものを書けたわね」
「確かにねー、褒めていいんだか貶すべきなんだか・・・」
「仕事はちゃんとしてるのかしら」
「それはだって、あの堅物ですわよ」
「陛下も呼ばないとめんどくさそうね、私達だけだと煙に巻かれそうだわ」
「適当に振り回しちゃえば大丈夫だよー」
「アナタはもー・・・」
「・・・そこまでの人なんですか?」
エレインが不安そうにパトリシアを伺う、
「そうねー・・・少しは丸くなったんじゃないのかしら、もう何年も前でしょ、城にいたのは」
「そうねー、まぁ、偶にはあれの顔を見るのも悪くないわね」
「あっ、エルマがいるわよね、相手してもらえばいいのよ」
「それがいいわね」
「そうしましょう、エルマは?」
「はい、タロウさんと一緒にいらっしゃる予定ですが・・・」
エレインが再び不安そうに階段を見つめる、ユーリらはテラが案内したようで、既に席に着いて黒板を出しており、それもその量を見た御付きの者達が軽く目を見張る程の量となっていた、随分と気合が入っているなと感心するエレイン、そこへ、
「すいません、お待たせしましたか」
やっとタロウが顔を出し、その後ろにはベールを着けたエルマも続いている、
「それほどでもないですわよ」
ニヤリと微笑むパトリシア、タロウはウゲッと呻き、アフラがギラリと睨みつける、
「・・・あー・・・まぁ、ほら、今日は長丁場になるでしょうから、ゆっくりじっくりいきましょうよ」
タロウは誤魔化し笑いを浮かべ額の汗を軽く手の甲で拭い落した、天幕での会議にはそれほど時間を取られなかったが、会議が終わってからもイフナースに捕まってしまい、なら今日のこれに同席すればいいだろうと言い放つも、あのめんどくさい連中と一緒にするなと怒鳴られてしまっている、イフナースに関してはそれでなくても忙しい、副官であろう軍人に呼び出されムカムカと肩を怒らせ転送陣を潜っており、折角教えたアンガーコントロールがまるで効いていないなー等とその背を見送って急いでこちらへ足を向けたのである、エルマはエルマで研究所組と一緒に店舗まで来たのであるが、一階で待機していた、件の段取りもありタロウと一緒に動いた方が良さそうだとの判断である、
「そうね、では、どうするのかしら、こちらの内容に沿ってとなるの?」
先程配られた書き付けを手にするパトリシア、それは数枚の上質紙で、単純な項目が並んでおり、妙に隙間が多い、タロウ曰く、空いた部分に覚書を記せばいいよとの事で、なるほどこれは便利かもとカチャーが感心していた、そのカチャーは事務所で留守番である、これだから事務職はーと泣き叫んでマフダとリーニーを見送っている、
「そうですね、では・・・うん、準備はいいかな?」
教室の最後方に座るマフダらを確認するタロウ、マフダとリーニーが緊張した顔で大きく頷いたようで、
「はい、じゃ、早速始めますか、所々休憩しながらやりましょう、まぁ・・・」
とタロウはほくそ笑む、どうせすぐに座っていられない状況になるのであるから、始めてしまうのが一番であろう、
「そうね、頼むわよ」
パトリシアが座り直したようである、ピリッと教室の空気が張り詰めたようで、タロウは教壇に向かうと、さてまずはとそこに用意された書き付けに手を伸ばしサッと内容を目で追った。
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焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
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旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
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