セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

79話 兄貴達 その16

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それから夕食前のまったりした時間となった、賓客達は大量のパンと小豆を抱えてまた明日ーと明るく帰り、職人達も長方形のパンを手にして恐縮しながら帰路に就く、そして食堂では、

「・・・むずかしいなー・・・」

「ですねー」

「もっと買えばよかったのかな?」

「ムー、買えばいいのー?」

「多分ねー」

「もっとー?」

「もっとだねー」

「そうなのー?」

「多分ねー」

炬燵のテーブル上には大量のゴミと化した宝くじが並べられ、それを前にして項垂れるジャネットとサレバとミナである、何をやっているんだかと呆れ顔でコミンとレインが斜めに睨みつけていた、宝くじの当選番号、それは午後の中ほどを過ぎたあたりで事務所の前の宣伝掲示板に掲示された、これは役所からの提案だったらしい、今日は比較的穏やかな天候であった為年初の式典にも抽選の催事にも人が集まり好評ではあったが、やはりその場に来れない者が多いであろうし、天候によっては抽選を見物する事も不可能である為、抽選結果に関しては掲示板に掲載する事が予め決められていた、そしてライニールがそう言えばと街路を窺い、丁度掲示を終えたのを発見して幸せな午睡から目を覚ましたミナにニコリと話してみれば、それもあったーとミナは騒ぎ始め、アーレントとアンシェラもそれで目を覚ましてしまい、厨房であーだこーだとやっていた生徒達も巻き込み皆で当選の確認となっている、それから数刻経ってもジャネットとミナとサレバは落ち込んだままで、つまりはその三人は見事に外れてしまったのであった、

「コミンも買ったでしょー」

「買ったけど、そう簡単には当たらないよー」

「ブー、お馬さん・・・」

「なー、私専用のガラス鏡が欲しかった・・・」

「あっ、先輩はそっち狙いだったんですか?」

「うん・・・部屋にあったら幸せだよなーって・・・思わない?」

「思いますけど・・・だって、立派なのがあるじゃないですか」

「そうだけどー」

「あれだけでも贅沢ってもんですよ」

「えー・・・でもさー、ほら、朝起きてー、すぐにー、鏡を覗けるんだよー・・・幸せだよー」

「そんな事言ってー・・・もー」

いよいよ顔をしかめるコミン、

「その気持ち分かりますー」

サレバがムーとテーブルに顎を載せた、

「だしょー」

「ですよー」

ハァーと同時に溜息をつく二人、まったくとコミンは二人を睨みつけ、レインもやれやれと足に乗せたハナコの頭を撫でる、ハナコはお腹が減ったなーとウロウロと歩き回っていたところを捕獲されてしまっていた、今日の夕飯は若干遅くなっている、寂しそうにレインを見上げるハナコ、それでも嬉しそうにパタパタと優しく尻尾が動いていた、その隣りでは、

「これってそういう事だったんですか・・・」

「凄いでしょ」

「ですね、そっかー・・・やっぱりユーリ先生は凄かったんだー」

「本人を前にしてそれはどうかと・・・」

「あっ・・・すいません・・・」

「かまわないわよ、っていうかもっと言え」

「あー、レスタさん、おだてちゃ駄目よ、すぐに調子にのるんだから」

「ナッ、酷い事言うわねー」

「事実です」

「もっと酷いじゃない」

「真実は何事にも優るのです」

「ヤッ・・・なによそれ、可愛くないわねー」

「可愛くないですよー」

「そりゃ結構」

カトカとユーリがギャーギャーと喚き散らしそれを苦笑しつつ眺めるケイスとレスタとルルにサビナ、6人の前には一枚の陶器板が置かれており、それはメダカの一角から持ち込まれたそれで、ホカホカと緩やかな暖気を発生させている、

「あっ、じゃ、あれです、これを発見した時の事教えて下さい」

すっかり積極的になってしまったレスタである、ユーリはヘーと感心しカトカもウフフと嬉しそうで、サビナもこんな娘だったかしらと首を傾げてしまう程で、ケイスとルルもそれは知りたいと目を輝かせていた、

「まぁねー・・・発見ってほどじゃないのよ、まず最初に考えたのが、ほら、このインクね、これって柔らかくて脆いのよね、乾燥してもね、で、魔族はこれをね、すんごい大量に地面に塗るっていうよりも砂みたいに盛り上げて魔法陣を描いてたのよ、まぁ、ほら、罠として使うからね、大きく描かないと駄目だし、魔力の許容量がね、そのまま威力に変換されるからすんごい大量に使っていたの、で、それのね一部でも崩れた瞬間に効果が発揮される、そんな感じなのね、まぁ、まさに罠って感じの罠なんだけど」

陶器板を手にしつつユーリは訥々と続ける、どこか懐かしそうで楽しそうでもあった、

「なもんで、その本来の使い方だとどうしてもね、壊すというか崩れるのが前提なんだけど、それだとほら、安定して使えないじゃない、何回も何回も繰り返して使うものではないのよね、なもんでそれはなんかね、あれだなーって思って、取り合えず何かに描けないかなってなって、木の板に描いてみたんだけど」

ユーリは思い出す、この魔法陣の研究に着手したのはまだ冒険者の頃で、ソフィアとタロウ、野蛮な仲間達と泥だらけになって駆けずり回っていた頃であった、タロウとルーツが魔法陣とインクの秘密を解き明かし、であればとユーリとソフィアがそれを再現し、なるほどこういう仕組みであったのかとその後の予防策に役立てられ、さらにはもっと何か出来ないかとソフィアと共にあーでもないこーでもないと試行錯誤したものである、そしてそれは大変に楽しかった、最初のうちは仲間達にも何をやってるんだかとからかわれてしまったものであるが、タロウはミナの世話をしながらも助けてくれて、徐々に他の仲間達も協力的になっていった気がする、

「それだとほらどうしてもね、脆いし細かく描けなくて、木だからね、で、どうしたもんだかって悩んでると、仲間のね、木工の得意な奴が彫ってしまえばいいんだよって彫刻刀で彫ってくれて、それだってなってね、で、その時はそれで良い感じに使えるようになって、ほら、転送陣は今もそのやり方ね、どうしても大きいからあれは、木の枠を6つぐらいに分けて、それぞれに描き込んだのを繋げてる感じになるのね」

分かるかしら?とユーリが生徒達を見つめ、あっあれはそうなんだと小さく頷く三人、しかし三人としては転送陣そのものを見た事はあるが、それほど頻繁ではなく、そういうもんなんだと理解し、後でちゃんと見ておこうと心に刻む、

「で、陶器板のこれはね、クロノスの研究所に世話になって、そこで思いついたのよ、木だとほら、熱を発生させるとどうしても燃えちゃうでしょ、って言うか黒く焦げちゃうのよね、熱を発生するこの魔法陣だと、所詮木だしね、で、タロウさんがね、いっその事燃えない素材でやってみればってなって、それもそうだって感じで最初はね、クロノスから立派な皿を貰ってさ、それに魔法陣を描いてって感じで・・・なんだけど、どうしてもね、使ってるうちにインクが削れて使えなくなるのよね、そりゃだってインクが乾いて付着してるだけだから、そりゃそうなるなーって感じでね、陶器だとどうしてもほら、インクが付着しなくてね、木だとまだ少しは染み込むんだけど、それこそ油汚れみたいなもんだから、お湯で流せば綺麗に落ちちゃうのよ、そりゃそうなるわよねー」

ホヘーと感心する生徒三人、カトカとサレバは何度か聞いてるなと微笑んでいる、

「で、だったら削ってしまえばいいかって思ったんだけど、これがまたね、釉薬ってほら、見た目もそうだけど陶器を丈夫にして水を弾く為のものじゃない?なもんですんごい硬いのよ、こりゃ駄目だってなって職人の所に行ってね、柔らかくしたいって言ったらそんなものないって言われてね、ムカっと来てね、クロノスに頼んで資料を取り寄せてね、陶器の勉強を一から初めて、で、使えない釉薬ってのがあって、なんで使えないかって言えば水は弾くけど柔くて脆いんだって、で、それで焼いてみろって職人脅して焼いてみたの、それがこれの原型になるわね」

ニヤリと微笑むユーリ、なるほどーと目を丸くする生徒三人である、

「で、それであればなんとかこんな感じで削る事が出来て、職人達の知恵を借りてね、いろいろ試行錯誤して、で、こっちに来てからもね、こっちの陶芸職人に頼み込んで、で、そこで別にほら皿でなくて良いんだなって思いついて、単純な板にしてもらったのよ、その時もギャーギャー言われたけどさ、でもようは大きなタイルだからね、出来るでしょって強引に焼いてもらったら、良い感じでね、この釉薬のおかげだって職人達も驚いてたわ、ほら、柔らかいからね、これで丸っと包むと焼成の時に割れにくくなるのかもって、どんなもんだって笑ったら、申し訳ないって謝られたわね、まぁ、それからはもうすっかり無理を言ってもとりあえずやってくれるようになったから、いいんだけどさ、それなりの金額払ってるってのもあるけど、まぁ、そんな感じかな、で、こんな感じでね、陶器板に魔法陣を刻む方法を発見・・・じゃないな、開発できて、で、こうして形になって良い感じに使えてる?・・・うん、まさに開発って感じになるわね、発見とは違うかしらね・・・うん、そんな感じかしらね・・・」

若干遠い目をして陶器板を見つめるユーリである、ユーリとしてもこの陶器板の活用に関しては自分の功績だと胸を張れた、タロウの発案もあったが、タロウはそのすぐ後ソフィアと共に出奔し、戻って来た時には魔法陣を刻んだ皿が完成しており、これは凄いとタロウもソフィアも快哉を上げたものである、

「歴史ですねー」

ルルが感心混じりに呟く、

「そう?」

「ですよー、あっ、それほら、エレイン会長みたく手記にしましょうよ」

レスタがピョンと背筋を伸ばす、

「いやよ、めんどくさい」

「いや、書くべきですよ、覚えてるうちに」

サビナもズイッと身を乗り出した、

「簡単に言うんじゃないわよ」

「言いますよ、言うだけなら簡単ですから」

カトカもニヤリと微笑む、

「あんたねー・・・まぁいいけど、で、この陶器板はいいとして、こっちの光柱ね、これの問題点がまさにそれでね、これはほら、小皿とか壺の中に描いているからまだね、直接手が触れる事は少ないだろうし、魔力を入れてしまえばあとはもう触る事が無いから、それほど気にする事は無いんだけど、どうしても耐久性は落ちると思うのよね、それに・・・今後ね、平民の家でも使えるようにしたいし、そうなった時にねどうしてもほら、子供達も触れるじゃない?すると簡単に壊れるのかなーって思ってねー」

「ならやっぱりその釉薬で作ります?」

「そう考えたんだけど、もう一手あってもいいかなって思ってて」

「一手ですか?」

「そっ、折角だからね、光柱専用の皿?っていうか、壺っていうか、それ用の形っていうか、容器があってもいいんじゃないかなって、ゾーイとも話してたんだけど、こう、魔力を注入しやすくて、で、魔法陣には手を触れなくていい形?でそのまま魔力が零れないように持ち運びができれば尚良しって感じで、だから・・・うんまぁそんな感じかしら?」

どうかしらとユーリが5人を見つめると、5人は嬉しい事にしっかりと考えているようで、ジッと陶器板を見つめ、それから傍らの光柱の基部を見つめる、

「どう?こういうのも開発の面白さね、研究もそうだけど、やっぱり私は開発者かもしれないかしら」

ニコリと自虐的に微笑むユーリ、なるほど確かに面白いと大きく頷くケイスとレスタとルルであった。
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