セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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80話 儚い日常 その15

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「ムフフー、美味しー」

「ねー・・・」

「うん、甘いし柔らかいし・・・」

「種とか無いんですか?これ?」

「あー、種の無い種類だね」

「へー、そうなんだー」

「ハナコー、ハナコも美味しい?」

「うむ、悪くないのう」

「ありゃ、レインは初めて?」

「なんだ?その顔は?」

「べつになんでもないよ」

「これだけでもお腹いっぱいになりそう」

「ですねー・・・凄いな・・・タロウさん」

ウンウンとバナナを頬張りつつ頷く女性達、結局こうなるんだよなー、まぁいいけどとタロウもバナナを楽しむ、結局見てるだけで良い筈も無く、テラ達が朝食を済ませるまではバナナを前にしてキャーキャーとはしゃいでいたミナであったが、徐々に美味しそーだの、どうやって食べるのーだの、どんな味ーだのとタロウにまとわりつき始め、そりゃそうなるかなと苦笑してしまうエルマとテラ、ニコリーネまでもがミナと一緒になって囃し立て始め、ミシェレはいいのかなと不安そうになる、そして一本ずつなとタロウの許しが出てヤッターと叫ぶミナ、ニコリーネも飛び跳ねる始末、ミナがわざわざソフィアを連れてきて、試食の運びとなっていた、

「まぁ・・・大したものでもないでしょ」

やれやれと微笑むタロウ、

「大したものですよ」

ニコリーネが頬をパンパンにしてムゴムゴと叫んだようで、どうやらお気に召したかなとタロウは微笑む、

「うん、美味しかったー・・・」

ミナもビョンと飛び跳ね、ニコーと微笑むも、その顔は卓上のバナナに向かっている、ハナコもキャフンと飛び跳ねた、珍しくも食後だというのに横にならず、その瞳は爛々と輝きミナと同じ意志を滲ませている、もっと食べたいとの意志である、

「この皮は捨てるの?」

ソフィアがヒョイと手にした皮を持ち上げる、確かに食べやすく甘く柔らかい、大変に美味しい果物であった、手が汚れないのはいいわねーとも思う、なんとも食べられるためにあるような果物で、種も無いとなるとどうやって増えるんだかとソフィアは思うも、まぁ、今はどうでもいい、

「ん?あぁ、食べれるぞ」

「えっ、そうなの?」

「うん、ただ・・・俺の故郷ではそんなに好まれないかな、でも、やってみる?そのね、両端の固い所は切り落として、黄色い柔らかい所は食べれる、煮たり焼いたりするんだけど、味は・・・どだろ、美味しいものではないからね、食べれるってだけかな?ただし、栄養価は高いらしい・・・だから、味付けが大事・・・あっ、ふりかけにしてみる?細かく刻んで軽く炒めてかな?」

エイヨウカ?と首を傾げるオリビア、恐らく栄養の事なのであろう、すっかり食に対して敏感になってしまったオリビアである、

「・・・よさそうね」

「それは面白いですね」

「うん、すごいなこの果物・・・」

「まったくですよ」

ソフィアはそれはいいかもと皮を見つめ、テラとエルマ、オリビアもシゲシゲと皮を見つめる、実がこれほどに美味しくて皮も食べれるとは便利な果物である、あっ、でも他の果物も皮まで食べれるか、味を別にすればと納得するオリビア、ウーンと大人達が考え込んでいると、ミナの手がゆっくりとバナナへ伸びる、その隣でハナコが興味深々と顔を覗かせており、レインがムッと気付いたが好きにしろとばかりに黙している、しかし、

「こりゃ」

ペンとその手をタロウが叩く、

「イターイ」

大袈裟に叫んで手をひっこめるミナ、

「みんなの分だ、そう言ったろ」

「ブー、でもー、まだいっぱいあるー」

叫ぶミナ、ハナコもこれでもかと尻尾を振ってタロウを見上げる、

「だから、みんなの分」

「ウー、でもー」

「でもじゃない、余ったらジャンケンな」

「えー」

「駄目、一本だけって言ったろ?」

「ブー、タローのいけずー」

「はいはい、いけずで結構だ」

ほれとタロウはバナナを掴んでソフィアに預ける、そうねと微笑み受け取るソフィア、あっ、一本ずつトレーに置いておけばいいかなーと思いつき、さっと腰を上げると、

「あっ、皮集めといて」

と誰にともなく頼む、

「はい、お任せ下さい」

オリビアも腰を上げた、すいませんと皮を渡すエルマ達、すると、

「ソフィアさん、バナナ、バナナ描かせて下さい」

ニコリーネがそう叫んで玄関へ向かった、画材を取りに行ったのであろう、あらあらと見送る一同、

「好きねー・・・」

「まぁ、気持ちは分かるかな」

「そう?」

「うん、まぁいいや、ほら、いい加減諦めろ」

ソローっとソフィアに近づくミナの背中を睨むタロウ、ウッと固まるミナ、レインがまったくと目を細め、ミシェレがその気持ちよくわかるなーと残った皮をオリビアに渡した、

「もう、あっ、ミナ、ユーリ起こしてきなさい」

ソフィアがポンとミナの頭に手を置いた、

「エッ、なんでー?」

「いいから、ほっとくと一番遅いからね、さっさと起こしてきてちょうだい」

「うー・・・わかったー」

ミナはどうやらバナナもここまでかとやっと諦めたようで、ハナコを抱き上げ、一緒に行くぞーと階段へ駆け出す、すると、

「おはようございまーす」

サレバとコミン、ケイスとレスタがのそりと下りてくる、

「あっ、バナナー、バナナ美味しかったー」

ミナがこれでもかと叫び、ナヌッと足を止める四人であった。



「こりゃまた美味しいですね・・・」

「うん、初めての感覚・・・」

「・・・確かにこれはいいですね」

ジャネットとルル、エレインにグルジアがもくもくとバナナを楽しみ、

「でしょー」

と満面の笑みで四人を見つめるミナ、その隣りの炬燵ではバナナを前にして画板を構えるニコリーネ、興味深げにその絵を覗き込むレインとテラ、ハナコは暖炉の前で丸くなっており、タロウは仕事だと言ってさっさと消えている、

「うん、美味しかった・・・っていうか、なんか元気になった」

ゴクンと飲み込みジャネットがバッと立ち上がる、

「ですね、なんか元気になります」

「うん、不思議ー・・・あっ、トマトの時もそうでしたね」

「あっ、分かるー、それねー」

「ですよねー」

キャーキャー喚きだす四人、そこへオリビアが手を拭いながら厨房から戻って来た、

「それがあれです、タロウさんの言う身体の調子を整える効果だそうです」

静かに告げるオリビア、へーと感心するジャネットとルルとグルジア、

「あっ、そうなのね」

エレインはなるほどと納得する、昨日の講義はエレインもしっかりと聴講している、王妃達と一緒であった為、席に座る事も出来ており、王妃らよりも一段後ろの席であったが、エルマとアフラと共に真面目に聞き入っていた、

「ですね、特にこのバナナは有効な栄養が多いらしいです、一日一本食べるだけで違うとか、トマトやリンゴもいいらしいですよ」

と先程タロウから聞き出した情報を口にする、

「あっ、リンゴはよく聞くなー」

「ですねー、薬いらず?」

「そう言うんですか?病気知らずって言ってました」

「へー、そんな言い方もあるんだねー」

「ですよー、でも、トマトもかー」

ムーとバナナの皮を見つめるルル、グルジアも確かになんか違うなと背筋を伸ばす、

「何それー?」

不思議そうにオリビアを見上げるミナ、

「フフッ、何でも美味しく食べるのが大きくなる秘訣なんです」

優しく微笑むオリビア、

「そうなの?」

「はい、なのでミナちゃんはおっきくなりますね」

「そうなの!!」

ミナはバッと立ち上がり、

「えっとね、えっとね、クロノスよりも大きくなるの、ゲインよりは小さくていいの!!」

ギャーと叫んで踏ん反り返る、あー叔父さんはでかすぎるからなーと微笑むルル、グルジアははて誰だっけと思いつつ、クロノス殿下もでかいよなーと苦笑する、

「そうですね、ミナちゃんならなれます」

ムフンと微笑むオリビア、あらっ珍しいとエレインが目を丸くする、オリビアの冗談など久しぶりのような気がする、いや、恐らく本人は冗談とは思っていないかもしれない、単にミナに合わせただけのようであるが、どう聞いても冗談に聞こえた、

「でしょー」

「はい、ですが、食べればいいというものではないのです、ちゃんと身体も鍛えないとです」

あっ、それも言っていたなと思うエレイン、どうやらオリビアは昨日の講義に随分と感化されたようである、

「ウフフー、大丈夫、ミナとレインはサイキョーなのー」

さらに踏ん反り返るミナ、レインがなんじゃと目を細め、テラがクスクスと微笑む、やはりこうでないとこの寮らしくない、ミナがキャーキャーはしゃいで生徒達の笑い声が響いてこそ、この寮の独特の活気が生まれるものである、

「ムッ、このジャネット様を差し置いてサイキョーと抜かすかー」

トレーを配膳台に置いてジャネットがバッと振り返る、

「エー、ジャネットはヘタレでしょー」

パッと対峙するミナ、

「ヘッ、ヘタレだとー!!」

「ムフフー、ヘタレジャネットー」

「この、ガキンチョがー」

ガッと組み合うジャネットとミナ、朝から元気だなーと微笑む他の面々、その瞬間、二階でキャーと黄色い歓声が上がったようで、エッと階段を見上げるミナ、今だとミナ抱き締め抱え上げるジャネット、ミナがギャーと叫び、ハナコがうるさそうに顔を上げるも眠気に負けてコテンと倒れ伏す、

「ヤメロー、ハナセー」

「やだよー、あー、ミナっち、重くなったなー」

「ギャー、ハナセー、ヤメロー、レイン助けてー」

ジタバタともがくミナ、ニヤニヤとその腹に顔を埋めるジャネット、幼児特有の丸く突き出た腹部の弾力に、ウーンまだまだ子供だなーと満足そうに微笑む、レインはフンと鼻で笑ってニコリーネの絵に視線を戻してしまい、エーっとミナは呻いて、

「気持ち悪いー、ジャネット嫌いー」

先程の勢いはどこへやらである、

「んー、そうなのー?」

「そうなのー、ヤダー、ハナセー」

「どうしようかなー」

「もう、いい加減にしなさい」

朝食を終え腰を上げたエレインがバチリと言い放つ、

「ムー・・・しょうがない」

ゆっくりとミナを下ろすジャネット、ミナがコノーと叫んでその足を叩いてダッと距離を取る、

「ベーだ、ジャネットキライー」

「まだ言うかー」

キーっとジャネットが叫ぶも、

「何を騒いでいるんです」

エルマが階段を下りて来たようで、

「そうねー、朝から元気だわねー」

ユーリもめんどくさそうに下りてくる、すると、

「わっ、エルマさん凄くいいです」

ルルが叫び、

「ですね、すっきりして、美しくなりました、あっ、元からお綺麗ですけど」

ニコリーネも手を止めて叫ぶ、

「そうですね、また若返ってますよ」

テラがニコリと微笑んだ、

「そうみたいですね・・・フフッ、もうそんな目で見ないで下さい」

エルマが顔を真っ赤に染めて照れ笑いを浮かべる、あら可愛らしいと微笑む女性達、ミナも、

「どうしたのー、どうしたのー」

とエルマに駆け寄る、

「フフッ、ユーリ先生に髪を切って頂いたのですよ、どうかしら、似合う?」

ニコリとミナを見下ろすエルマ、

「うん、似合ってるー、えっとえっと、キレーになったー」

素直に叫ぶミナ、でしょーと微笑むユーリ、しかし大した事はしていない、朝一であった為大きく切る事はなく、前髪を整え、髪先を揃えた程度、そこから眉を整えると、髪留めを駆使し治療された側の側頭部の髪を耳にかける形ですっきりと見せている、元々長細い美人顔のエルマである、それだけで大きく印象が変わっていた、

「ありがとう嬉しいわ」

エルマが優しい笑みを浮かべる、そこへ、

「ミシェレさんも可愛くなりましたよー」

とケイスがバタバタと階段を下りてくる、ミシェレが続き、サレバとコミン、レスタも下りて来た、

「わっ、ホントだー」

「ねー、全然違うでしょー」

「違うわねー」

キャーキャーと騒ぎ出す女性達、顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに俯くミシェレ、ユーリはミシェレも髪と眉を軽く整えただけで、あとは髪型を大きく変える事で清潔感と可愛らしさを前面に押し出す事に成功している、エルマ同様髪留めを駆使し、後ろ髪ですっきりとまとめており、手間をかければもうすこし弄りたいけど取り合えずと今回はそこまでとしていた、

「あらっ、終わったの?」

そこへヒョイと顔を出すソフィア、

「まずねー、どう?良い感じでしょ」

ニヤリと微笑みトレーに手を伸ばすユーリ、朝食も食べずに調髪するあたり、私も大したものよねー等と口には出さないが軽くうぬぼれてみる、

「そうね、でも、そんなに切ってない?」

「まずね、まぁ、ほら、大きく切るなら髪を洗いたくなるでしょ」

「それもそうね、じゃ、夕方にでももう一回?」

「それもいいかもねー」

ノホホンとユーリが返すと、

「あっ、私も」

ジャネットがハイっと手を上げる、

「私もいいですか?」

「私もー、少し伸びてきててー」

「ミナも、ミナも切るー」

エッとめんどくさそうに振り返るユーリ、見れば皆の視線がランランと輝いている、

「いいけど・・・」

思わず呟くユーリ、やったーと叫ぶ女性達、楽しそうに微笑むエルマ、なんかすごいなやっぱりと改めて感心してしまうミシェレであった。
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