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「わぁ……あれが公爵令嬢のティアラ・カーライル様か。やっぱり高貴な雰囲気ね」
そう小声で囁く生徒たちの視線を受けながら、私は学園の門をくぐった。
「まったく、初日からこんなに目立つなんて……」
登校初日。王侯貴族の子女が集うこの学園に、私ことティアラ・カーライルは本日から通うことになっている。
けれど、普通に登校するだけでひそひそ話に包まれるなんて心穏やかではいられない。
「……もう少し控えめにしてくれればいいのに」
そう呟いた瞬間、取り巻きの貴族令嬢たちが私の後ろから声をかけてきた。
「ティアラ様、学園の雰囲気はいかがですか?」
「さすが王族が通われる場所ですわね」
「クラスメイトたちも、ティアラ様の噂で持ちきりですわ。なんでも“王子の婚約候補”ですもの」
私は静かにため息をつく。
確かに、王子エドワード殿下と婚約する話は以前から取り沙汰されていたし、私自身もその可能性を否定してはいない。
けれど私は、殿下に選ばれたわけではない。
むしろ、殿下は平民出身の才女・マリアに興味を抱いていると聞くが……そんなことは表立って言えるわけもない。
「皆さん、あまり騒がないで。ここは学びの場ですし、私のことよりご自身の授業の準備をした方がよろしいかと」
取り巻きたちは一瞬だけしゅんとした顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
「まあ、そう仰らずに。ティアラ様が来られたからには、私たちも誇らしい気持ちになれるのですもの」
少し過剰なほどの賛辞に、私は苦笑するしかない。
そんなやり取りをしていると、ちょうど廊下の先を歩く少女が目に入った。
「……あれが、マリア・レイン?」
薄茶の髪と穏やかな瞳を持つ少女。平民出身ながら高い魔力を持ち、奨学生として学園に通っていると聞く。
その姿を眺めるだけで、なぜか胸が締めつけられるような感覚を覚えた。
「ああ、あの方がマリア・レイン。噂の“殿下に気に入られている”という平民の娘ですわね」
取り巻きの一人が、嫌味っぽい口調でそう言った。
だが、その言葉にはどこか嫉妬にも似たトゲが感じられる。
「彼女は悪い人ではないわ。聞くところによれば、努力家で周りにも優しいそうよ」
そう返すと、取り巻きの別の娘が目を丸くした。
「まあ、ティアラ様はお優しいのね。でも“平民”にしては目立ちすぎるのではなくて?」
私はほんの少し眉をひそめる。
こうした言葉が積み重なって、マリアと私の間に変な噂が立たなければいいが……。
「授業が始まりますわ。行きましょう」
話を切り上げ、私は教室へと向かった。
しかし、すでに“悪役令嬢”という得体の知れない言葉が私の存在に付きまとっていることを、私はまだ知らない。
授業の最中も、ひそひそとした視線を感じた。
隣の席の貴族子息がちらりとこちらを見ては、また何事かを呟いている。
私に聞こえない程度の声だったけれど、その視線は決して好意的なものではなかった。
「……どうして私がこんな目で見られなくては?」
小さく息をつき、ノートに視線を落とす。
新しい環境で、新しい出会いがあるはずなのに――
このままでは、まともに学園生活を送れるのか、不安がよぎって仕方なかった。
そう小声で囁く生徒たちの視線を受けながら、私は学園の門をくぐった。
「まったく、初日からこんなに目立つなんて……」
登校初日。王侯貴族の子女が集うこの学園に、私ことティアラ・カーライルは本日から通うことになっている。
けれど、普通に登校するだけでひそひそ話に包まれるなんて心穏やかではいられない。
「……もう少し控えめにしてくれればいいのに」
そう呟いた瞬間、取り巻きの貴族令嬢たちが私の後ろから声をかけてきた。
「ティアラ様、学園の雰囲気はいかがですか?」
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私は静かにため息をつく。
確かに、王子エドワード殿下と婚約する話は以前から取り沙汰されていたし、私自身もその可能性を否定してはいない。
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むしろ、殿下は平民出身の才女・マリアに興味を抱いていると聞くが……そんなことは表立って言えるわけもない。
「皆さん、あまり騒がないで。ここは学びの場ですし、私のことよりご自身の授業の準備をした方がよろしいかと」
取り巻きたちは一瞬だけしゅんとした顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
「まあ、そう仰らずに。ティアラ様が来られたからには、私たちも誇らしい気持ちになれるのですもの」
少し過剰なほどの賛辞に、私は苦笑するしかない。
そんなやり取りをしていると、ちょうど廊下の先を歩く少女が目に入った。
「……あれが、マリア・レイン?」
薄茶の髪と穏やかな瞳を持つ少女。平民出身ながら高い魔力を持ち、奨学生として学園に通っていると聞く。
その姿を眺めるだけで、なぜか胸が締めつけられるような感覚を覚えた。
「ああ、あの方がマリア・レイン。噂の“殿下に気に入られている”という平民の娘ですわね」
取り巻きの一人が、嫌味っぽい口調でそう言った。
だが、その言葉にはどこか嫉妬にも似たトゲが感じられる。
「彼女は悪い人ではないわ。聞くところによれば、努力家で周りにも優しいそうよ」
そう返すと、取り巻きの別の娘が目を丸くした。
「まあ、ティアラ様はお優しいのね。でも“平民”にしては目立ちすぎるのではなくて?」
私はほんの少し眉をひそめる。
こうした言葉が積み重なって、マリアと私の間に変な噂が立たなければいいが……。
「授業が始まりますわ。行きましょう」
話を切り上げ、私は教室へと向かった。
しかし、すでに“悪役令嬢”という得体の知れない言葉が私の存在に付きまとっていることを、私はまだ知らない。
授業の最中も、ひそひそとした視線を感じた。
隣の席の貴族子息がちらりとこちらを見ては、また何事かを呟いている。
私に聞こえない程度の声だったけれど、その視線は決して好意的なものではなかった。
「……どうして私がこんな目で見られなくては?」
小さく息をつき、ノートに視線を落とす。
新しい環境で、新しい出会いがあるはずなのに――
このままでは、まともに学園生活を送れるのか、不安がよぎって仕方なかった。
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