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ヴィー
回想2
しおりを挟む客間で寝泊まりをしていたが、しばらく経つと部屋の準備ができたとアルマ様の隣の部屋を案内された。
ここの場所は、妻の部屋ではないのか? 私が使っていいのか? 疑問はあったが、アルマ様が私のために部屋を用意してくれたことが嬉しかった。
アルマ様が私のために用意してくれた部屋は、木目が美しいシックで落ち着いた家具が置かれた部屋だった。
こんな素敵な部屋を用意してくれただけでも十分なのに、アルマ様はもっと希望を言ってもいいと言う。
意を決して手を繋ぎたいと言ってみたが、寝る前のキスのようにすぐにその場を去れるわけではないので、緊張して顔に熱が集まっていくのが分かった。
恥ずかしいのと拒否される怖さで俯いたまま恐る恐る手を出すと、アルマ様は手を握ってくれた。嬉しい。
顔を上げると、アルマ様は一瞬目が合ったけどすぐに逸らされてしまった。
やっぱり大きいな。私の手より一回りほど大きい手は少しカサカサしていて掌は分厚く剣だこが当たって硬かった。この手、憧れる。やっぱりアルマ様は格好いいな。
そんなことを思っていたが、手を繋いでくれと言ったものの、その先のことを考えていなかった。
どうしよう……
アルマ様は無言だし、手だけ繋いで2人して立ち尽くして私たちは一体何をしているんだろうか……
もっと会話のテクニックを学んでおけばよかった。他の人とは普通に話せるのに、アルマ様を前にすると頭が真っ白になって何も言葉が出てこない。
つまらない人間だと思われていそうで不安だ……
「なぁ、座るか?」
「はい」
アルマ様は繋いだままの私の手を引いてソファーに座った。私も隣に座ると、アルマ様との距離が近すぎて顔を上げられなくなった。
手を繋いで隣に座るなど、こんな幸せなことがあってもいいんだろうか?
想いが溢れそうになる。でもまだダメだ。まだアルマ様に受け入れられているわけじゃない。
そう思ったのに、私の口からは欲望が溢れてしまった。
「キス、したいです……ダメ、ですか?」
「いや、ダメじゃない」
まさか了承してもらえると思っていなかった。少しは私のことを受け入れてもいいと思い始めているんだろうか?
私は嬉しい気持ちのまま、アルマ様の頬に手を添えてエメラルド色の目が宝石みたいで綺麗だな、なんて思いながら触れるだけのキスをした。
本当はもっとアルマ様を求めたいが、そんなことをして嫌われたらと思うとその先には進めなかった。
唇が離れると、アルマ様は王都へ行く話をした。私のことも連れていってくれるそうだ。
それは従者として? 護衛として?
分からないけどアルマ様と出掛けることができるということが嬉しかった。
そしたら、アルマ様は私のために正装を仕立ててくれるとか。
嫁と認めてくれているんだろうか?
しかし、やはり夜伽の誘いはない。きっと白い結婚をしばらくしたら、私のことを離縁するんだろうと思っていたから、正装を何着も仕立ててくれる理由が分からなかった。
嫁として受け入れることも満更ではないと思っているんだろうか?
アルマ様の目の色のタイピンが欲しいと言うと、了承してくれて、しかもアルマ様は私の目の色の琥珀のタイピンを買うと言った。
私は期待していいんだろうか?
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