【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

cyan

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8.仕事とキス

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「そういえば仕事をしたいと言っていたね。暇な時でいいんだが、書斎にある書類の整理を手伝ってもらえないか?」
「はい。やります」
「今から少しだけ教えておこう」

 僕はメレディス様の書斎に初めて入った。
 壁際には本棚がずらっと並んでいて、机の上だけでなく、テーブルの上や床にも紙の束が所狭しとたくさん積んであった。


「まぁ、こんな感じでかなりの量だから、ゆっくり進めていこうと思っている。
 年代別に分けるのと、あとは内容で分けていこうと思っていて、自然災害系の要請と、国への意見や融資、ただの報告と、それくらいに分ければいい。
 この部屋にあるものは全て対応が終わっているものだから、急ぐ必要はないからね」
「はい」

 初めて仕事をもらったことに感激して、僕でもちゃんと役に立てることがあるんだと嬉しくなった。
 部屋の鍵も僕に預けてくれた。
 僕はメレディス様に信頼されているということがとても誇らしくて、頑張ろうと気合を入れた。



「レスターは本当に可愛いな」

 微笑みながら僕の髪を撫でてくれた。
 抱きしめて寝る時に、たまに僕の髪を撫でることはあったけど、起きている時に撫でられるのは初めてだった。
 メレディス様の温かい手の感触が気持ちいい。
 僕はメレディス様を愛しているわけじゃないけど、大好きで信用してる人に触れられるのは気持ちいいことなんだと知った。


 もう一度、キスしてくれないかな?
 僕はボーッとメレディス様の唇を見つめた。


「そんな物欲しそうな顔をしてどうした?」
「キス、してほしいなって……」
「…………」
「あ、ごめんなさい。その、あの、何でもないです。ごめんなさい」

 僕は何てことを口走ってしまったんだろう…………
 メレディス様が黙ってしまったことで我に返って撤回したけど、メレディス様は厳しい顔をしていた。



「レスター、気をつけろと言ったのに、分かっていなかったんだな。そんなことを言ったらどれほど危険か分からせてあげよう」
「え?」

 メレディス様は僕の腕を掴むと僕はソファーに押し倒されてメレディス様の顔が近づいてくる。
 ちょっと怖いと思ってギュッと目を閉じると、メレディス様の唇が僕に重なった。

 メレディス様は僕に危険を分からせてあげると言った。僕は何をされるんだろう?
 唇をはむっとされて、どうしていいのか分からず固まっていたら、唇の隙間からメレディス様の舌が入ってきた。
 何? 何をしようとしているの?
 僕は息もできなくて苦しくて、メレディス様の袖をギュッと掴んだ。


 入ってきた舌は僕の口の中の色んなところを舐めて、僕の舌に触れた。
 少し怖くて、温かくて、熱い吐息が僕にかかると、背中がゾクゾクして震えた。

「ん、は……ぁ……んん……」

 気持ちいい……
 でも苦しい。どうやって息をすればいいか分からない。


 ぷはっ、はぁ、はぁ、はぁ……

 メレディス様の唇が離れると、僕とメレディス様の間にツーっと糸が伝って、それがとてもいやらしく見えた。

 そのまま僕はボーッとメレディス様を見てた。



「どう?危険だって分かった?
 って……レスター、そんな顔をして。可愛いな本当に。このまま私のものにしてしまいたくなる」

 メレディス様は僕を抱き起こすと、ギュッと抱き締めてくれた。


「他の者の前では、そんな顔をしてはダメだよ。簡単に襲われてしまう。心配だな。本当に」
「ごめんなさい」

 
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