【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

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49.王太子様と僕

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「レスター、ちょっと相談がある」

 メレディス様が陛下と話が弾んでいる時に、王太子様が小声で話しかけてきた。


「この場では言い難いことですか?」
「できれば、部屋で2人で話せないか?」
「分かりました」

 王太子様は僕より3歳上で、妃が2人いる。でもまだ子供はいないみたい。

「メレディス様、僕は王太子様とお話があるので、お話が終わったら部屋に戻ります」
「いいが、気を付けるんだよ」
「はい」

 僕は王太子様と連れ立って歩いて行った。

 部屋に入ると、人払いされて、王太子様とテーブルを挟んで向き合って座った。


「レスターは、その……宰相殿とはどうなのだ?」
「どうと言われても、仲良くしているとしか言えないのですが」
「その、夜のことなんだが」
「夜? 夕飯はだいたい一緒に食べて、その日にあったことをお話ししたりして、一緒の部屋で寝てます」
「あぁ、閨事という意味で……」
「それは内容やテクニックのことですか? 頻度とか、それ以外ですか?」

 王太子様は一体何を聞きたいのだろうか?
 もしや、前に僕が悩んでいたように性欲が強すぎるとかそういうことだろうか?

「頻度は、どうだ?」
「今は2日置きかそれくらいですかね」
「か、回数は?」
「それは射精の回数ということですよね? うーん、僕のは数えたことないな。普通の日はたぶん3回くらい、お休みの前はもっと多いと思います」
「そ、そうか」

 回数を話すのは少し恥ずかしい。
 お休みの前とか、本当にたくさん出ちゃって途中からイッてるのに出なかったり、ほんのちょっとしか出なかったり、何回出てるのか分からないし。

「僕ももしかしたら同じことで悩んでいたかもしれません。
 性欲が強すぎて魔法か薬で抑えないといけないくらい異常なのかと思って悩んでいて、それでメレディス様に相談したら大丈夫でした」
「……」

 あれ? 違ったのかな?
 急に黙ってしまった王太子様をジッと見てみたけど、俯いたまま固まっている。


「僕の悩みとは違いましたか?」
「あ、あぁ、すまない。逆なんだ」
「逆? 性欲が弱い? もしくは奥方様が強すぎるとかですか?」
「2人の妃は正直分からない。私がその、気分が乗り切らないというか、断念する日もあって、義務だと思うと尚更」

 そっか。そういう悩みもあるのか。
 確かに王族は世継ぎを作らなければならないから、プレッシャーが凄いのかも。


「僕が前に間違えて作ってしまった魔法陣を試してみますか?」
「間違えた?」
「そうなんです。記号の角度が違っていて、体力回復の魔法陣なんですが、性欲を高める効果がついていたんです。
 それで、その魔法陣を強化したものを使った時は、朝までということになってしまって」
「それは凄いな」
「強化していない方をまず試してみますか? 体力回復の効果もあるので、疲れている日でも臨めると思います」
「レスター、頼む」
「分かりました。ベッドに貼るんですが、裏側に貼れば誰にも見つからないと思います。
 明日持ってきますね」
「ありがとう」


 王太子様に真剣な顔で、物凄くギュッと握手をされた。
 そんなに悩んでたんだ。
 そっか、相談しにくいよね。僕はメレディス様も男だから相談して分かってもらえたけど、女の人相手だと相談も難しいのかもしれない。

「このことは、他言無用でお願いしたい」
「分かりました」

 そうだよね。たくさんの人を相手したとか自慢する人はいるみたいだけど、できなかったことを自慢するなんてないもんね。


 翌日、僕は魔法陣を持って王太子様の元を訪ねた。

「もし効果が薄いようなら、少しずつ強化していきましょう」
「あぁ。そうだな。こんな相談に乗ってもらってすまない」
「気にしないで下さい。相談し難いですよね。分かります」
「レスター、君は本当に優しい。……そして美しいな」

「ダメですよ。僕はメレディス様以外の人とはできません」

 僕は王太子様が僕の頬に伸ばした手を阻止した。

「そうだよな。すまない」
「冗談だってことにしておきますね」
「あぁ。そうしてくれ」


 僕はそのまま王太子様の部屋を出て、メレディス様がいる執務室に向かった。

 王太子様は僕を揶揄ったのか、それとも一瞬だったとしても本当にその気になったのかは分からない。
 相談内容のこともあるし、誰にも相談できないから困る。

 その後も何度か魔法陣の調整のために王太子様の部屋を訪れたけど、王太子様に怪しい動きはなかった。

 なんだ。僕が過剰に反応しただけかも。
 頬に髪が掛かってたとか、髪が乱れてたとか、そんな理由だったのかも。
 自意識過剰? 恥ずかしい。


 その後、王太子様の妃は2人とも懐妊して、王太子様からこっそり金貨を渡された。

「王家の未来を繋いだレスターの功績を、本当はもっと堂々と称えたいんだが、今はこれで我慢してほしい」
「気にしなくていいですよ。このことは内緒ですし、僕が色々な効果の魔法陣を作れるということも公にはしていないですから」

 僕が王家に魔法陣を提供していることも、王家が身を守るために魔法陣を使用していることも秘密だ。僕が狙われるかもしれないという理由もあるけど、悪意あるものが盗んで対抗できるものを作り出したり、擦り替えられたりしないため。

 それに、このことは王太子様と僕2人だけの秘密でメレディス様にも言ってないから。

 金貨か。何に使おうかな。

 
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