【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

cyan

文字の大きさ
55 / 62

55.進まない捜索(メレディス視点)

しおりを挟む
 

 その後も影からは有力な情報は得られていない。影はオルロー王国にも度々足を運んでいるようで、オルロー王家もレスターの捜索に乗り出したようだが、捜索は難航しているとの報告が届いた。

 やはりドラータ国内にいるのか?
 私は陛下に直談判し、仕事をセーブして捜索に時間を費やすようになった。
 陛下や王太子、仕事でレスターに関わった者も協力してくれたが、見つからない。


 あの護衛、ベックとジェフといったか? あの2人なら国内外を色々把握していそうだ。
 私はベックとジェフも探し始めた。あの2人はそれほどかからずに見つかった。
 すぐに2人を呼び寄せると、レスターの捜索を依頼した。


「レスターがいなくなった。実家の領地にも戻っていないし、街の出入りや乗合馬車の履歴からも足取りが掴めない。どうか捜索に協力してほしい。もしかしたらオルロー王国でもドラータ王国でもない国にいるかもしれない」
「探すのはいいけど、貴族が囲っていたら手出しできないぞ?」
「その時は情報だけ持ち帰ってくれればいい」
「分かった。それなら、とりあえず探してみる」
「頼む」

 しかし、その後も有力な情報は得られなかった。


 一度ステファノから、レスターらしき人物が墓に花を手向けた形跡があったと連絡がきたが、「らしき人物」という言い方も気になったし、領地に行ったのならレスターが領主邸に挨拶も無しに立ち去るなど考えられない。
 誰かベリッシモ家に所縁のある者が墓を訪れただけだろう。
 まさか本当はレスターを領主邸に置いているのではないだろうな?

「ゼスト、すぐに影を呼んでくれ」
「畏まりました」

 私にレスターは無事らしいようなことをそれとなく伝えて、あまつさえレスターを囲い込む算段ではないだろうな?

「旦那様、如何いたしましたか?」
「ステファノが、私の大切なレスターを奪おうと企んでいるかもしれん」
「まさか。それで影を呼び寄せたのですか?」
「そうだ」
「しかし彼はレスター様の養子となられた方ですよね? 囲い込んだりしなくても困ったことがあればレスター様に相談されれば、レスター様は喜んで助力されるのではないですか?」
「そうだろう。だが、あの優秀で美しいレスターだぞ? 欲しいと思ってもおかしくはない」
「そうですが……。それは考えすぎなのでは?」

 少し呆れた様子でゼストに言われたが、ステファノは恐らくレスターに特別な感情を持っている。
 それが恋なのかは分からないが、事務的に領地を引き継いだという感じではない。
 オルローの王に紹介された時から、レスターに陶酔するような目線を送っているのを知っている。
 それはレスターの歳で堂々と伯爵家の当主として立っていることや、あの断罪による憧れかもしれないが。


 それから暫くすると、影から報告が届いた。
 内容は、どうやら墓に手向けられた花が、ベリッシモ家の血筋の者が墓に手向ける花だったようで、それでレスターが訪れたのだと考えたらしい。
 領主邸にレスターが捕えられているという事実はなく、またレスターが領主や領地の者に会ったという事実もないとのことだった。
 私の考えすぎだったようだ。

 しかしどこにいるんだ……
 ベリッシモ領に捕えられているのならば、私は何を差し置いてでも兵を連れてでもベリッシモ領に乗り込んだのに。
 所在が分からなければ迎えに行くこともできない。


 大抵のことはできるようになっていた。国の大きな金を動かすこともできるし、欲しいものはなんでも買うことができた。
 私は奢っていたんだな。レスター1人守れないのに、レスター1人探し出せないのに、何が宰相だ。

 私のことが嫌になってしまったのか?
 だから逃げ出したのか?

 見つからない苛立ちと、レスターがいない寂しさで、眠れずに酒を大量に煽る日が続いた。
 もう、そうやって気を紛らわせていなければ、仕事を続けることだってできない。


 庭師が綺麗に咲いたエイミーの花を切って持ってきた。

「レスター様はいつも庭の花が咲くと褒めて下さいました。このエイミー様の花もレスター様に見せてあげたかった。もう少し満開になったらと思っていたのですが、もうすぐ見頃も終わってしまいます」
「あぁ……そうだな。きっとレスターならこの花を綺麗だと言って微笑んでくれただろう」

 レスターは庭に咲く花をよく眺めていた。
 綺麗だと顔を近づけて香りを嗅いだりしていたな。

「もう戻られないのでしょうか。そんなことないですよね?
 レスター様は旦那様のことをとても愛しておられました。街にみんなで行った時なんて、『これはメレディス様に似合うかな』『これはメレディス様好きかな』と、自分のことよりもメレディス様のことばかりでしたよ」
「そうか……」
「カフェに入った時も、ハーブティーが美味しいからメレディス様にも飲ませてあげたいのだと言って買っていましたし」
「あの時のハーブティーか。そうだったのか。あれがもう一度飲みたいな」
「すぐに買ってまいります」
「あぁ、すまんな」


 レスター、どうして?

 あの時レスターが買ってきてくれたハーブティーを飲むと、少しだけ心が落ち着いた。
 そういえば、これはリラックスできるハーブティーだと言っていたか。

 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
 【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!  僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして? ※R対象話には『*』マーク付けます。

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

夫婦喧嘩したのでダンジョンで生活してみたら思いの外快適だった

ミクリ21 (新)
BL
夫婦喧嘩したアデルは脱走した。 そして、連れ戻されたくないからダンジョン暮らしすることに決めた。 旦那ラグナーと義両親はアデルを探すが当然みつからず、実はアデルが神子という神託があってラグナー達はざまぁされることになる。 アデルはダンジョンで、たまに会う黒いローブ姿の男と惹かれ合う。

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

処理中です...