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50.金貨の使い道
しおりを挟むある日のレスター
今日は何をしよう。メレディス様は早く帰ってくるだろうか。
街に行ってみようかな。
「ゼストさん、街に行ってみたいんですがいいですか?」
「私もお供いたします。馬車をご用意いたしましょうか?」
「歩いて行こうと思うんだけどいい?」
「ええ、構いませんよ。どこに行きますか?」
「僕はドラータ王国の街にはあまり行ったことがなくて、だから行ってみたい。特に目的はないんだけど、面白いものがあったら買ってみたいな」
「畏まりました。人気店や観光地などをご案内いたしましょう」
外套を着て出かける準備を済ませて玄関に向かうと、途中で使用人に会った。
「レスター様、お出かけですか?」
「うん。街に行ってみようと思って」
「ワシも行っていいですか? ちょうど街に行こうと思っていたんだ。先日メンテナンスに出した剪定鋏が仕上がったと連絡があったんです」
「うんいいよ」
庭師のおじいちゃんも一緒に行くことになった。
「あれ? レスター様、お出かけですか?」
「うん。これから街に行くの」
「私たちもご一緒してもよろしいですか? 美味しいと評判のお菓子を買いに行きたいのです」
「うんいいよ」
メイドのお姉さん2人も一緒に行くことになった。
「みんなどこかに出かけるのか?」
「うん。みんなで街に行くの」
「では私共も護衛として付いていきます」
「うん。ありがとう」
こうして護衛のお兄さんたちも一緒に行くことになった。
「……レスター様、この者たちは?」
「みんな街に用事がある人たちと、あと護衛してくれるんだって」
「そうですか」
あれよあれよという間に一緒に行く人数が増えてしまって、ゼストさんが驚いてる。
「多すぎる? やめておいた方がいいかな?」
「いえいえ、一緒に行きましょう」
「うん」
こうしてみんなで歩いて街に向かうと、みんなの用事があるお店に寄って、珍しいものが売っているお店や、時計台や噴水などを見学して、赤い屋根の可愛いカフェに入ってみんなでお茶をした。
「このお茶はお花が入ってるんだね。いい香り」
「レスター様、これはラベンダーですね。ローズとレモングラスも入っているようです。リラックス効果が高いハーブのブレンドですね」
庭師のおじいちゃんが教えてくれた。
「そうなんだ。これ、メレディス様も好きかな?」
「旦那様はあまり好き嫌いはないので、お飲みになられると思いますよ」
「そっか。このハーブティー買えるかな? 買えるなら買って帰りたい」
「店主に聞いてみましょう。もし買えなくてもお茶屋でブレンドして貰えばよろしいかと」
「うん。ありがとう」
「レスター様、それほど旦那様中心の生活をされなくても、ご自分の好きなことを好きなようにされていいんですよ」
「うん。僕は好きなことばかりしてると思うんだけどな。メレディス様のことを大好きなだけ」
「そうですか」
あれ? なんかみんなが生暖かい目で見てくる……
もしかして僕、恥ずかしいこと言っちゃったのかな?
確かに、色んなお店を見て回る時に毎回、「これはメレディス様好きかな?」と使用人のみんなに聞いていた気がする……
買ったものも、メレディス様のハンカチと、書類を押さえておくのにいいかなって思ったメレディス様用のペーパーウェイトだし、今もメレディス様が好きかなってリラックスできるハーブティーを……
馬鹿の一つ覚えみたいにメレディス様メレディス様って、恥ずかしすぎる。
「あ、あの、このクッキーは売ってるかな?」
「ええ、可愛い袋に詰めて売られていましたよ。ハーブティーも買えるそうです」
「そっか。じゃあこのクッキーを使用人のみんなにお土産にしたいから人数分買ってくれる? あと、このハーブティーは使用人のみんなの休憩室に置く用のも多めに買って欲しい。
会計はこれで」
「畏まりました」
ゼストさんが、僕が渡した硬貨で支払いを済ませると、僕たちはお屋敷に戻った。
色んな景色とお店を見ることができて楽しかったな。
今度はお休みの日にメレディス様と一緒に街に来たい。
「メレディス様、おかえりなさい」
「レスター、ただいま」
優しく微笑んでくれるメレディス様のこの顔が好き。
「レスター、今日は何をしていたんだい?」
「今日は使用人のみんなと街に行ったんです。時計台や公園の噴水を見て、色んなお店を回って、カフェでいい香りのハーブティーを飲んだんです」
「そうなのか。楽しかったか?」
「はい。とても楽しかったです」
「私もレスターと一緒に出かけたかったな」
「次はメレディス様と一緒に行きたいです。今日はメレディス様にお土産買ってきたんですが貰ってくれますか?」
「もちろんだよ。何かな?」
「これです。ハンカチと、ペーパーウェイトと、リラックスできるハーブティーです」
一旦部屋に戻ってメレディス様のために買ったものを持っていった。
「レスターありがとう。私の分まで選んでくれたんだな。嬉しいよ。レスターのものは何を買ったんだ?」
「あ……僕のは何も買ってませんでした。どこのお店に行っても、メレディス様はこれ好きかな? って思って見ていて、そうしたら自分のことは忘れていました」
メレディス様に指摘されるまで全然気付かなかった。もしかしてゼストさんはそれに気付いて、自分の好きなようにしていいって言ったのかな?
「レスター……そんなに私のことが好きなのか?」
「はい。メレディス様のことが大好きです」
「私もレスターのことが大好きだよ。今度一緒に街に行く時には私がレスターにプレゼントしよう」
「はい。楽しみです」
メレディス様は僕のことをギュッと抱きしめてくれた。
王太子様から貰った金貨はまだたくさんあるけど、メレディス様や屋敷のみんなが喜んでくれることに使えてよかった。
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