【完結】可愛く転生したのに、僕は生まれ変わっても好きなものを好きと言えない

cyan

文字の大きさ
16 / 44
騎士学校篇

16.(※)

しおりを挟む
  
「おい、何してる、服を持ってこい。このままではリアンを外に出せん」
 殿下が声をかけると連れてきていた騎士はどこかに行った。
「護衛を殿下から離してよかったんですか?」
「ん? あいつは護衛じゃなくて俺の秘書官だ。俺は護衛なんかつけなくても自分の身は自分で守れるからな」
 そっか、そうだよね。殿下は強いから、護衛なんていらないんだ。秘書、あの人だったんだ、初めて見た。

「しかし、いつも冷静で俺が指示する前に先回りして準備を進めるようなあいつが、ぼーっと突っ立っているなど珍しい。リアン、お前意外と強いんだな」
 殿下の最後の言葉にビクッとした。
 しまった、いつも二割くらいで魔法を放っていたのに、今回は加減ができなかった。僕の実力がバレたかもしれない。
 次からは前線に出されるかもしれない。それに実力を隠していたと咎められるかもしれない。
 怖くてギュッと目を閉じた。
 それでも氷の魔法は解かなかった。僕みたいに弱くないから殿下が襲われることはないかもしれないけど、あの男は危ない目をしていた。

「リアン、心配しなくても大丈夫だ。俺がリアンをいじめた奴を懲らしめておいてやるからな」
 そこを心配してるわけじゃない。僕が心配しているのは違反行為をしたことと、実力がバレたかもしれないことだ。
 でも、これ以上何かを言えば藪蛇になるかもしれないと思って何も言えなかった。

 しばらくすると秘書官が他の騎士を連れて戻ってきた。
 秘書官は服を取りに行ったはずなのに、服ではなくマントを持ってきた。マントつけても意味なくない? 僕の服は前が破れてるんだから背中にマントつけても見えちゃうよ……。

「リアン、俺が抱っこしていってやる。いや、リアンを一人にさせられないから俺の部屋に連れていく」
「え? 僕は大丈夫だから、僕の部屋でお願いします」
「仕方ない、リアンの願いだ。部屋まで送っていこう」
 僕の上にマントをかけると、殿下に姫抱っこで運ばれた。こんなの恥ずかしすぎる。

「リアン、ちゃんと掴まっていないと落ちるぞ。俺の首に腕を回してギュッとしていろ」
 落ちるのは怖いから、殿下の言うとおり首に腕を回してギュッとした。
「俺のリアンは可愛いな」
 部屋までの間は誰とも出会わなかった。

「寮の部屋がこんなに可愛いことになっているのは初めて見たぞ」
 部屋の中まで運んでもらうと、僕の部屋をじっくり眺めて殿下が呟いた。
「もう大丈夫です。下ろしてください」
「分かった」
 殿下に下ろしてもらうと、キャビネットからシャツを出して、殿下に背を向けて着替えた。そしてベッドの上のお気に入りのウサギさんを抱きしめる。
 ふぅ、癒される。柔らかくて最高の触り心地だ。中身は畑に撒く肥料だけど。

「リアン可愛いが、抱きしめるなら俺にしておけ。ほら」
 殿下は僕のベッドに腰を下ろして両手を広げた。殿下は何を言っているのか。僕はこのウサギさんの柔らかさで癒されているのに、殿下など抱きしめても硬いだけだ。

「殿下、送っていただきありがとうございました」
「俺のこと追い返す気か?」
 そんなこと言われても困る。帰ってほしいような帰ってほしくないような……。寮の部屋に殿下をおもてなしできるようなものは何もない。ティーセットも茶葉もない。
 部屋に酒やお菓子を持ち込んでいる人はいるらしいけど、僕はこの部屋が汚れるのが嫌だから食べ物は持ち込んでいないし、飲み物も水しかない。

「殿下をおもてなしできるようなものが部屋には何もありません」
「リアンがいるだろ? それで十分だ」
 そんなことを言われると余計に困る。キスでもすればいいんだろうか?

「殿下、目を瞑っていてください」
「分かった」
 殿下が目を瞑ったのを確認すると、僕は殿下に近付いて緊張しながら触れるだけのキスをした。
「そんなキスじゃ足りない」
 殿下は僕をベッドに押し倒した。
 とうとうこの身を差し出す時がきたのだと思った。

「あいつに何をされた? どこに触れられた?」
「あいつ?」
「さっきリアンを襲った男だ」
 殿下が僕を見下ろす目が、いつもとは違って僕を責めるみたいに怖い目だった。

「腕を掴まれて……」
「それから? どこにキスされた?」
「キスはされていません」
「そうか、じゃあ他は何をされた?」
 言うまで逃さないという気迫がとても怖い。これが威圧ってやつだろうか?

「突き飛ばされて、服を……破られた」
 思い出すと怖くなってギュッと目を閉じて震えそうになる手を握りしめた。服を破られたことよりも、突き飛ばされたことよりも、あの目と、向けられた殺意が怖かった。

「どこを触られた? ここか?」
 殿下の手が僕のシャツの裾から入ってきて、腹をそっと撫でた。
「触られてない」
「じゃあここか?」
 殿下の手は更に上に向かって、僕の胸の先端に触れた。手淫はしたことがあるけど、胸は自分で触ったことがなかった。指が掠っただけなのに、痺れたような快感がピリッと駆け抜けて、ビクッと体が揺れた。

「やっ……触られてない。どこにも、触られてないよ」
「本当か?」
 殿下の指は僕の胸の先端を弾いて、キュッと摘んだ。
「本当です。あっ……だめ……」
 さっきより大きく体が揺れて、鋭い快感に呼吸は乱れるし頭がおかしくなりそうだった。

「何もされてないんだな?」
 念押しするように殿下は聞いてきたけど、その指はずっと僕の胸を弄ってる。
「されて、ません……」
「そうか。下は穿いていたしな。リアン、気持ちいいか?」
「……はい」
「リアン、本当に可愛いな。ここも立ち上がっているぞ」
 殿下は服の上から僕の中心を撫でるように触わった。
「ああっ……」
 こんなに僕は敏感だっただろうか?
 変な声が出て恥ずかしかった。
 このまま殿下のものになるのかと思ったら、殿下は手を止めて僕を起こした。

「すまん、あまりにも可愛い反応をするから、調子に乗った。リアンは襲われたばかりなのに配慮が足りなかった」
 そう言って僕の頭をポンポンと撫でると、殿下は部屋を出ていった。

 髪を解いていると暗器が指に触れた。暗器を突き刺せばよかった。そしたら男は痛みと麻痺で動けなくなったのに。そしたら魔法を使わずに済んだのに。今更遅い。
 咄嗟の時は何も考えられなくなるのだと知った。

 殿下に途中で止められたから、満たされない欲望を持て余してしまう。他のことを考えて収まるのを待っていたけどダメだった。
 結局、下穿きの中に手を入れて、自分で慰めることになった。
「んっ……殿下……」
 はっ! 僕は何を考えているのか。殿下をおかずに淫らなことをするなんて。反省しながら清浄魔法をかけた。


 あの日から僕はおかしくなってしまった。
 ベッドに入ると体が火照って、一度達しても昂りが抑えられず、一日に何度も抜かないと眠れなくなったんだ。
 殿下に呼び出されてキスをした日は特に酷い。もう一度殿下に触れてほしくてたまらなくなる。
 年齢的に盛りのついた猿のようになるのはおかしなことじゃないと思う。だが前世の龍男の時はここまで酷くなかった。
 こんなこと、誰にも相談できない。

「リアン、最近色気がダダ漏れだ。とうとう殿下に恋に落ちたのか?」
「え? 恋?」
 友達に言われて、僕は首を傾げた。僕は恋を知らない。龍男の時は女子に避けられていたし、フロリアンになっても、誰かに恋に落ちたことはない。
 恋ってどんな感じなんだろう?

「恋って、どんな感じ?」
 そんなことも知らないのかと馬鹿にされるのかと思ったけど、友達はみんな真剣に答えてくれた。
「相手のことをいつも考えてしまうとかだな」
「俺はキスしたくなる」
「それはある」
「だよなー」
「俺はキスより抱きしめたくなる」
「特に寝る前は頭に浮かんで離れない」
 みんなは色々と恋について教えてくれたけど、僕の殿下に抱く気持ちが恋なのかは分からなかった。


 *

 >>>殿下と秘書

 ここには団長室で頭を抱える殿下と秘書官がいる。
「俺、ヤバイかもしれん」
「そうですか。今ごろ気付いたんですか?」
「なんだよ、元からヤバい奴みたいなこと言うなよ」
「はいはい、それで何がヤバイんですか?」
 秘書官はいつも冷静で、時に少し冷たい。

「我慢できずリアンを襲いかけた」
「彼は襲われそうになったんですよ? 可哀想に」
「だよな。だがめちゃくちゃ可愛いんだよ。このままでは本当に理性が飛んで襲うかもしれん」
「可愛いのは、理解できます」
 珍しく秘書官が団長の意見に賛同した。

「とうとうお前にもリアンの可愛さが理解できるようになったか」
「それに彼は弱そうに見えて実は強いんですよね?」
「それは……俺にも分からん。ザイフェルト隊長がリアンに暗器を持たせていると噂されていたから、魔道具の類かもしれん」
「なるほど」
 殿下は本当に分からないというように首を傾げた。

 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった

カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。 ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。 俺、いつ死んだの?! 死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。 男なのに悪役令嬢ってどういうこと? 乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。 ゆっくり更新していく予定です。 設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。

処理中です...