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騎士学校篇
16.(※)
しおりを挟む「おい、何してる、服を持ってこい。このままではリアンを外に出せん」
殿下が声をかけると連れてきていた騎士はどこかに行った。
「護衛を殿下から離してよかったんですか?」
「ん? あいつは護衛じゃなくて俺の秘書官だ。俺は護衛なんかつけなくても自分の身は自分で守れるからな」
そっか、そうだよね。殿下は強いから、護衛なんていらないんだ。秘書、あの人だったんだ、初めて見た。
「しかし、いつも冷静で俺が指示する前に先回りして準備を進めるようなあいつが、ぼーっと突っ立っているなど珍しい。リアン、お前意外と強いんだな」
殿下の最後の言葉にビクッとした。
しまった、いつも二割くらいで魔法を放っていたのに、今回は加減ができなかった。僕の実力がバレたかもしれない。
次からは前線に出されるかもしれない。それに実力を隠していたと咎められるかもしれない。
怖くてギュッと目を閉じた。
それでも氷の魔法は解かなかった。僕みたいに弱くないから殿下が襲われることはないかもしれないけど、あの男は危ない目をしていた。
「リアン、心配しなくても大丈夫だ。俺がリアンをいじめた奴を懲らしめておいてやるからな」
そこを心配してるわけじゃない。僕が心配しているのは違反行為をしたことと、実力がバレたかもしれないことだ。
でも、これ以上何かを言えば藪蛇になるかもしれないと思って何も言えなかった。
しばらくすると秘書官が他の騎士を連れて戻ってきた。
秘書官は服を取りに行ったはずなのに、服ではなくマントを持ってきた。マントつけても意味なくない? 僕の服は前が破れてるんだから背中にマントつけても見えちゃうよ……。
「リアン、俺が抱っこしていってやる。いや、リアンを一人にさせられないから俺の部屋に連れていく」
「え? 僕は大丈夫だから、僕の部屋でお願いします」
「仕方ない、リアンの願いだ。部屋まで送っていこう」
僕の上にマントをかけると、殿下に姫抱っこで運ばれた。こんなの恥ずかしすぎる。
「リアン、ちゃんと掴まっていないと落ちるぞ。俺の首に腕を回してギュッとしていろ」
落ちるのは怖いから、殿下の言うとおり首に腕を回してギュッとした。
「俺のリアンは可愛いな」
部屋までの間は誰とも出会わなかった。
「寮の部屋がこんなに可愛いことになっているのは初めて見たぞ」
部屋の中まで運んでもらうと、僕の部屋をじっくり眺めて殿下が呟いた。
「もう大丈夫です。下ろしてください」
「分かった」
殿下に下ろしてもらうと、キャビネットからシャツを出して、殿下に背を向けて着替えた。そしてベッドの上のお気に入りのウサギさんを抱きしめる。
ふぅ、癒される。柔らかくて最高の触り心地だ。中身は畑に撒く肥料だけど。
「リアン可愛いが、抱きしめるなら俺にしておけ。ほら」
殿下は僕のベッドに腰を下ろして両手を広げた。殿下は何を言っているのか。僕はこのウサギさんの柔らかさで癒されているのに、殿下など抱きしめても硬いだけだ。
「殿下、送っていただきありがとうございました」
「俺のこと追い返す気か?」
そんなこと言われても困る。帰ってほしいような帰ってほしくないような……。寮の部屋に殿下をおもてなしできるようなものは何もない。ティーセットも茶葉もない。
部屋に酒やお菓子を持ち込んでいる人はいるらしいけど、僕はこの部屋が汚れるのが嫌だから食べ物は持ち込んでいないし、飲み物も水しかない。
「殿下をおもてなしできるようなものが部屋には何もありません」
「リアンがいるだろ? それで十分だ」
そんなことを言われると余計に困る。キスでもすればいいんだろうか?
「殿下、目を瞑っていてください」
「分かった」
殿下が目を瞑ったのを確認すると、僕は殿下に近付いて緊張しながら触れるだけのキスをした。
「そんなキスじゃ足りない」
殿下は僕をベッドに押し倒した。
とうとうこの身を差し出す時がきたのだと思った。
「あいつに何をされた? どこに触れられた?」
「あいつ?」
「さっきリアンを襲った男だ」
殿下が僕を見下ろす目が、いつもとは違って僕を責めるみたいに怖い目だった。
「腕を掴まれて……」
「それから? どこにキスされた?」
「キスはされていません」
「そうか、じゃあ他は何をされた?」
言うまで逃さないという気迫がとても怖い。これが威圧ってやつだろうか?
「突き飛ばされて、服を……破られた」
思い出すと怖くなってギュッと目を閉じて震えそうになる手を握りしめた。服を破られたことよりも、突き飛ばされたことよりも、あの目と、向けられた殺意が怖かった。
「どこを触られた? ここか?」
殿下の手が僕のシャツの裾から入ってきて、腹をそっと撫でた。
「触られてない」
「じゃあここか?」
殿下の手は更に上に向かって、僕の胸の先端に触れた。手淫はしたことがあるけど、胸は自分で触ったことがなかった。指が掠っただけなのに、痺れたような快感がピリッと駆け抜けて、ビクッと体が揺れた。
「やっ……触られてない。どこにも、触られてないよ」
「本当か?」
殿下の指は僕の胸の先端を弾いて、キュッと摘んだ。
「本当です。あっ……だめ……」
さっきより大きく体が揺れて、鋭い快感に呼吸は乱れるし頭がおかしくなりそうだった。
「何もされてないんだな?」
念押しするように殿下は聞いてきたけど、その指はずっと僕の胸を弄ってる。
「されて、ません……」
「そうか。下は穿いていたしな。リアン、気持ちいいか?」
「……はい」
「リアン、本当に可愛いな。ここも立ち上がっているぞ」
殿下は服の上から僕の中心を撫でるように触わった。
「ああっ……」
こんなに僕は敏感だっただろうか?
変な声が出て恥ずかしかった。
このまま殿下のものになるのかと思ったら、殿下は手を止めて僕を起こした。
「すまん、あまりにも可愛い反応をするから、調子に乗った。リアンは襲われたばかりなのに配慮が足りなかった」
そう言って僕の頭をポンポンと撫でると、殿下は部屋を出ていった。
髪を解いていると暗器が指に触れた。暗器を突き刺せばよかった。そしたら男は痛みと麻痺で動けなくなったのに。そしたら魔法を使わずに済んだのに。今更遅い。
咄嗟の時は何も考えられなくなるのだと知った。
殿下に途中で止められたから、満たされない欲望を持て余してしまう。他のことを考えて収まるのを待っていたけどダメだった。
結局、下穿きの中に手を入れて、自分で慰めることになった。
「んっ……殿下……」
はっ! 僕は何を考えているのか。殿下をおかずに淫らなことをするなんて。反省しながら清浄魔法をかけた。
あの日から僕はおかしくなってしまった。
ベッドに入ると体が火照って、一度達しても昂りが抑えられず、一日に何度も抜かないと眠れなくなったんだ。
殿下に呼び出されてキスをした日は特に酷い。もう一度殿下に触れてほしくてたまらなくなる。
年齢的に盛りのついた猿のようになるのはおかしなことじゃないと思う。だが前世の龍男の時はここまで酷くなかった。
こんなこと、誰にも相談できない。
「リアン、最近色気がダダ漏れだ。とうとう殿下に恋に落ちたのか?」
「え? 恋?」
友達に言われて、僕は首を傾げた。僕は恋を知らない。龍男の時は女子に避けられていたし、フロリアンになっても、誰かに恋に落ちたことはない。
恋ってどんな感じなんだろう?
「恋って、どんな感じ?」
そんなことも知らないのかと馬鹿にされるのかと思ったけど、友達はみんな真剣に答えてくれた。
「相手のことをいつも考えてしまうとかだな」
「俺はキスしたくなる」
「それはある」
「だよなー」
「俺はキスより抱きしめたくなる」
「特に寝る前は頭に浮かんで離れない」
みんなは色々と恋について教えてくれたけど、僕の殿下に抱く気持ちが恋なのかは分からなかった。
*
>>>殿下と秘書
ここには団長室で頭を抱える殿下と秘書官がいる。
「俺、ヤバイかもしれん」
「そうですか。今ごろ気付いたんですか?」
「なんだよ、元からヤバい奴みたいなこと言うなよ」
「はいはい、それで何がヤバイんですか?」
秘書官はいつも冷静で、時に少し冷たい。
「我慢できずリアンを襲いかけた」
「彼は襲われそうになったんですよ? 可哀想に」
「だよな。だがめちゃくちゃ可愛いんだよ。このままでは本当に理性が飛んで襲うかもしれん」
「可愛いのは、理解できます」
珍しく秘書官が団長の意見に賛同した。
「とうとうお前にもリアンの可愛さが理解できるようになったか」
「それに彼は弱そうに見えて実は強いんですよね?」
「それは……俺にも分からん。ザイフェルト隊長がリアンに暗器を持たせていると噂されていたから、魔道具の類かもしれん」
「なるほど」
殿下は本当に分からないというように首を傾げた。
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