【完結】可愛く転生したのに、僕は生まれ変わっても好きなものを好きと言えない

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騎士学校篇

17.

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 僕はずっと恋について考えていた。今まで読んだことはなかったが、図書室にある娯楽コーナーの恋愛の物語も読んでみた。
 この世界には恋愛漫画もドラマもアニメもない。だから物語を読むか体験談を聞くしか恋について知る方法はなかった。

「リアンが恋に目覚めたというのは本当だったんだな」
「そうじゃなくて、僕は恋というものが分からないから、どんなものなのか調べたくなっただけです」
「そうなのか。なるほど?」

 しばらく図書室に通ったり、友達から恋について聞いたりしていると、また殿下から呼び出された。
 最近は呼び出しの回数が減っていた。遠征とかで忙しかったのかもしれない。他にお気に入りを見つけたのかもしれない。理由は僕には分からない。

 学生生活もあと残り三ヶ月ほどだ。
 騎士学校は学校と名がつくけど、普通の学校のように中間や期末などの試験は無い。試験は無いけど、できるまで徹底的に鍛えられる。
 兵糧の計算や、国内外の情勢については、底辺騎士の間に色々学べばいいから、学生の間に全て覚えなければいけないわけじゃない。
 退学する人はたまにいる。理由は色々だ。訓練が辛くて逃げる人、理由は分からないけど突然いなくなる人、酷い違反行為をして退学になる人。学生の間は騎士が守ってくれるから、騎士生命を絶たれるような怪我をすることはない。だけど騎士になれば、自分の命は自分で守らなければならなくなる。学生だから、まだ半人前だから、という理由で許されていたことが許されなくなる。

 僕は卒業したら殿下が団長を務める第二騎士団の救護班に行くことになるけど、他の同級生は卒業直前までどこの隊に配属されるか分からない。
 僕も救護班は決定だけど、どのチームに入るかは分からない。友達と離れてしまうのは寂しい。隊どころか団まで別になると、会える機会も少なくなるかもしれない。学生ほど騎士団本部にいる時間もなくなるんだろう。学生の間は遠征もそれほど遠くには行かなかったけど、卒業すれば国の端まで行くこともある。

「殿下、お呼びですか?」
「リアン、今日も可愛いな。そこに座ってくれ」
「はい」
 今日殿下に呼ばれたのは、先日僕が襲われた件の顛末を伝えるためだった。いつもより殿下との距離が遠い。

 犯人の男は元騎士だった。違法薬物の売人と繋がって、金と薬物を貰う代わりに騎士団の情報を流していたため解雇されたそうだ。伯爵家の子息のため、解雇としばらく外出禁止という罰が与えられたのだとか。
 今回は騎士団への不法侵入と、騎士団の資材の破壊、王子の庇護下にある学生への暴行により、投獄されたそうだ。そして薬物の使用が確認された。
 伯爵家は彼を庇うことをやめたため、彼は犯罪者が集められて働いている炭鉱に送られるそうだ。刑務所みたいなところだろうか?
 死ぬまで出ることはないから安心していいと言われた。終身刑というやつだ。
 僕が魔法攻撃したことは違反行為にはならなかった。この世界にも正当防衛という考えがあってよかった。

「報告は以上だ。戻っていいぞ」
「はい」
 今日はキスしないんだろうか? 殿下がキスすると言い出すと思って、僕は殿下を見つめつつ待っていたんだけど、続く言葉はなく、目を逸らされた。
 とうとう殿下は僕に飽きてしまったんだ。
 僕は立ち上がると、軽く頭を下げて部屋を出た。

 僕が襲われたからだろうか?
 それとも、他にお気に入りができたんだろうか?
 僕は殿下を見ると胸が温かくなって、もっと見ていたいと思うのに、殿下は目が合うと僕から目を逸らした。

「フロリアンさん」
 後ろから声をかけられた。振り向くとそこには殿下の秘書官がいた。
 この人はいいな、いつも殿下のそばにいられて。どうやってその立場まで上り詰めたんだろう? 何ができればその場所に立てるんだろう?
 僕は弱いから、きっとそこには立てないけど、殿下の隣に立てる彼が羨ましいと思った。
「どうかしましたか?」
「いえ、フロリアンさんお一人では危ないかもしれないのでお送りします」
「ありがとう。あなたは殿下の秘書官だと聞きました。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「失礼しました。名前、伝えていませんでしたね。私はナタールと申します」
「ナタールさんですね。卒業したら僕は第二騎士団の救護班に入るので、これからもお世話になると思います。よろしくお願いします」

 ナタールさんには第二騎士団のことを色々教えてもらった。団は第五まであって、第一は近衛で王族の護衛と王城の警備、第二と第三は魔物討伐が中心、第四は野盗や犯罪組織の対応、第五は辺境に布陣して敵国の侵略を防いでいる。足りないところへ別の団が行くこともあるから、第二でも野盗討伐をすることはある。
 学生のうちは第一以外の団でそれぞれ訓練して、その間に卒業後の配属が決まる。
 第二と第三は力押しで無茶をするような騎士が多いらしい。頭を使うより体を使う、脳筋と呼ばれる人が多いということだ。

 なんだか殿下と一緒にいるより落ち着いて色々なことを話すことができた。ナタールさんが話しやすい人だからかもしれない。そんな人だから殿下も信頼してそばに置くのかな。

「ナタールさん、送っていただきありがとうございました。また色々教えてください」
 部屋までは本当にすぐに着いてしまった。もっと話をしたいくらいだけど、彼も忙しい身だから引き止めることはできなかった。

 ナタールさんは書類仕事がメインだから肩こりが酷くてたまに眠れない日があると聞いた。今度ウサギさんをプレゼントしてあげよう。
 僕は最近、ウサギさんのポケットに乾燥させたラベンダーの花を入れて枕元に置いている。石鹸屋のお姉さんが、ラベンダーはリラックス効果があってよく眠れると言っていたから、街でラベンダーを買った。
 これも龍男の頃にはできなかったことだ。
 ゴツい男から癒しの花の香りがするとか、似合わないと思って手を出せなかった。

 妹の花恋は花の香りより、りんごの香りや桃の香りなどフルーツの香りが好きだったから、花の香りに包まれた部屋に憧れていた。でも、どの花の香りにどんな効果があるのかは知らなかったから手を出せずにいたんだけど、香りに詳しいお姉さんに教えてもらった。
 たまにあの男のお姉さんは僕の手を撫でたり、背中や頬を撫でたりするけど、それを我慢すれば色々教えてくれる。

 
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