【完結】可愛く転生したのに、僕は生まれ変わっても好きなものを好きと言えない

cyan

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「リアン、出動だ」
 しばらく休んで部屋に引き篭もっていたけど、とうとう召集がかかった。呼びに来たのはディート兄さんだ。

 クラウス様のことはどうなったのか聞いたら、やはり僕を利用しようとしていたのだと判明した。でも国家を転覆させようとか危険な思想ではなかった。
 彼と初めて会った森に生えていたあの綺麗な花は、彼が幼い頃に亡くした妹のお墓だった。妹と言っても、庶子で彼の父が村の女の人に手を出して産ませた子。彼の妹は流行病で亡くなったそうだ。遺体から感染しないよう、病死した人たちはまとめて森の奥に埋葬された。
 父親が引き取っていれば、ちゃんとした治療を受けていれば、妹は助かったはずだと彼は信じている。
 どうも、僕が瀕死の殿下を助けたことが捻じ曲がって伝わり、死者を蘇生したなんて噂が出回ったらしい。アンデッドだと誤解されたから、そのせいかもしれない。それで僕に妹を蘇生してもらおうと近づいた。
 残念ですが、僕は死者を蘇生するなんてことはできません。

「一目惚れは本当だと、騙すつもりはなかったと言い張っていたが、本当かは分からん」
「そうですか」
 人を利用する理由には色々あるのだと知った。お金や権力、力や体を求めて利用する人もいれば、誰かを助けるためということもある。
 僕はクラウス様には、利用されそうになったとは思わないことにした。僕の力では彼の願いを叶えてあげることはできなかったけど、頼ってもらえたのだと思うことにした。利用されるだけの人生だと悲観したけど、そうじゃなかったと知れてよかった。

「リアン、今回無理はするなよ。あいつもいる」
「あいつ……」
 今回の出動は結構規模が大きい。団長も出るそうだ。
 会いたくはないけど、そんなことは言っていられない。
 ワイバーン四体が山に巣を作ったそうだ。そんなところで繁殖されたら大変なことになるから、群れが大きくなる前に倒しておこうということだ。
 僕はワイバーンは竜に似ていると思っているけど、羽が生えた爬虫類に分類される。竜に乗って飛ぶとか憧れるけど、現実にはそんなことは無理だ。無防備に近づけば餌になるだけ。

 僕も実物は見たことがなくて、絵でしか知らない。風魔法を操ってかなり遠くまで飛べるらしい。家畜の牛を攫ったという報告もあるくらい巨大だ。攻撃に魔法は使わず、足や腕での攻撃と噛みつき、尻尾を振り回して叩きつけてきたりと物理攻撃のみだと資料で読んだ。

 どこから飛んできたのは分からない。巣が確認された場所は王都から五日ほど馬車で進んだところにある岩山だ。
 馬車で進んでいくと、岩の部分に裂け目みたいなのが見えた。そこが巣なんだろう。岩山といっても、上の方は岩だけど裾野の辺りは普通の森と同じで木も草も生えている。野営地と救護班の天幕は森の部分に設営した。
 遠くから見たときにはワイバーンの巣っぽいものが確認できたけど、森に入ってしまうと何も見えない。
 ワイバーンは飛ぶから、目立つところに天幕を張ったら攻撃されるから森の中に張る。

 行軍中に殿下を見かけることはなかった。僕は救護班のみんなと馬車での移動だし、殿下は馬で先頭の辺りにいるからかもしれない。
 討伐の計画としては、岩が剥き出しになっている辺りまで進み、ワイバーンが気づいて攻撃を仕掛けてきたら魔法か弓で一体ずつ撃ち落として戦う。飛ぶ魔物は落とすまでが大変だ。風を使って移動するということはスピードも速い。
 どれくらいのスピードが出るのかは分からないけど、上から攻撃を仕掛けられたら怪我人が多く出そうなことは分かる。
 野営地でそんな話をしている殿下のことを、戦わない僕は一番後ろで友達の陰に隠れて聞いていた。

 あの後、殿下は僕に対して不敬罪だと言ってくるのかと思ったけど、呼び出されるどころか、全く音沙汰はなかった。
 もう本当に僕のことは要らなくなってしまったんだろう。どうせ失恋するなら、好きだと伝えて潔く振られればよかった。そうしたら、もっと前を向けたかもしれないのに。殿下は僕が殿下のことを好きだってことにも気づいていないんだろう。それが悔しい。僕がたくさん傷ついたことも知らないなんて悔しい。僕は傷ついたんだから少しくらい殿下も反省してよ。

 そのまま殿下と話すことなく夜が来て、そして朝になっていよいよ討伐だ。
 森の木々が邪魔で戦っているところは見えない。音も聞こえるかは分からない。
 今日だけで四体全て倒して巣も壊すのは無理だから、初日だし一体でも倒せたらいい方だ。

 もそろそろ怪我人が運ばれてくる頃かと思いながら救護班の天幕の中で待機していると、血だらけの騎士が駆け込んできた。
「大変です……伝令を……」

 
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