落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

文字の大きさ
18 / 125

第18話 ギフトの応用と新たな発見

しおりを挟む
ブルーキャップの毒胞子による目眩と吐き気から回復したアルトは、自らの油断を深く反省していた。
Fランクになったとはいえ、自分はまだまだ未熟なのだ。
気を引き締め直し、アルトは残りのブルーキャップの採取作業を再開した。

風向き、足元の状態、胞子の飛散具合。
あらゆる要素に最大限の注意を払いながら、アルトは慎重にブルーキャップに近づく。
手袋をはめた手で、傘の根元をナイフで素早く、しかし丁寧に切り取る。
胞子が舞い上がらないよう、そっと採取袋に収める。
その一連の動作は、先ほどまでとは比べ物にならないほど慎重で、確実なものになっていた。

やがて、目標としていた5個目の傘を無事に採取し終えた。

「よし、これで依頼完了だ…!」

アルトは安堵の息をつき、採取袋の口をしっかりと縛った。
Fランク冒険者としての初仕事は、ヒヤリとする場面もあったが、なんとか達成できそうだ。

アルトは、ブルーキャップが生い茂る湿地帯を後にし、村への帰路についた。
来た道を慎重に引き返していく。
森の奥深くは、陽が落ちるのも早い。
早く村に戻らなければ。

そう思って少し足早に進んでいた時、アルトは不意に、足元の地面が奇妙にぬかるんでいることに気づいた。
周囲の地面とは明らかに違う、ねばついた感触。
見ると、そこには緑がかった粘液のようなものが広がり、その中心部で、アメーバを思わせる不定形の魔物が蠢いていた。

「スライム…じゃない。なんだ、あれは?」

大きさはスライムより一回り大きい程度だが、色は濁っており、明らかに異質な気配を放っている。
おそらく、ブルーキャップの毒や、この湿った環境を好む特殊なスライム系の魔物――ポイズンスライムだろう。

アルトが警戒していると、ポイズンスライムはアルトの存在に気づいたようで、ゆっくりとその体の一部を鞭のようにしならせ、緑色の粘液を飛ばしてきた。

シュッ!

「危ない!」

アルトは咄嗟に横へ跳んで、粘液をかわした。
粘液が落ちた地面からは、ジュッと小さな煙が上がり、生えていた草がみるみるうちに溶けていく。
強力な毒性を持っているようだ。
直接触れるのは絶対に避けなければならない。

ナイフでの攻撃は、スライム系の相手には効果が薄いだろう。
ここはやはり、【ダメージ反射】を使うしかない。
しかし、相手の攻撃は、あの毒粘液だ。
物理的な体当たりとは違う。
これをどうやって反射すればいいのだろうか?

アルトは、先ほどブルーキャップの胞子に対して試したことを思い出した。
あの、微弱な衝撃波のようなもの。
あれなら、飛んでくる粘液の軌道を逸らせるかもしれない。

ポイズンスライムが、再び粘液を飛ばしてくる。
アルトは、飛んでくる粘液に向かって右腕を突き出し、反射の感覚で、しかし攻撃を受けるのではなく、前方に力を押し出すようなイメージでギフトを発動させてみた。

「――っ!」

目には見えない何かが、アルトの腕から放たれたような気がした。
すると、飛んできた粘液は、アルトの顔のすぐ横で、ふわりと軌道を変え、後ろの木に当たってジュッと音を立てた。

「効いた!?本当に何か出てるんだ!」

アルトは驚きと共に、興奮を覚えた。
ギフトの新たな応用方法を発見したかもしれない。
これなら、直接攻撃を受けなくても、ある程度は身を守れる。

アルトはこの方法で、ポイズンスライムが飛ばしてくる粘液攻撃を捌き続けた。
衝撃波(仮)を連続で使うのは、通常の反射と同じように体力を消耗するが、毒粘液に直接触れるよりはずっとましだ。
粘液攻撃が効かないと悟ったのか、ポイズンスライムは今度はゆっくりと、しかし確実にアルトに向かって這い寄ってきた。
体当たりを仕掛けてくるつもりのようだ。

「よし、誘いに乗ってやる!」

アルトは、体当たりならば確実に反射ダメージを与えられると考え、あえて少し隙を見せるように後退した。
狙い通り、ポイズンスライムはアルト目掛けて、その巨体をぶつけてきた。
アルトはそれを、革の腕当てを装着した腕でしっかりと受け止める。
そして、渾身の集中力で、反射!

ドンッ!
鈍い衝撃と共に、ポイズンスライムの体が大きく震え、動きが一瞬止まる。
ダメージは確実に通っている。
アルトは、粘液を衝撃波で逸らし、体当たりを誘って反射でダメージを与える、というパターンを繰り返した。
ブルーキャップの毒の影響で、少し体はだるさを感じていたが、集中力でそれをカバーする。

何度目かの反射が、ポイズンスライムの中心部、核らしき部分がある辺りに決まった時、

「……!」

ポイズンスライムは、ぶるぶると激しく震えた後、急速にその形を失い、緑色の粘液のシミを残して活動を停止した。

「はぁ…はぁ…倒した…」

予期せぬ戦闘だったが、なんとか切り抜けることができた。
しかも、ギフトの新たな可能性まで発見できた。
アルトは、疲労困憊ながらも、大きな手応えを感じていた。

アルトは、ポイズンスライムの残骸(何か換金できる素材はないか少し見たが、ただの粘液のようで諦めた)には触れず、急いでその場を離れ、村への道を急いだ。

ギルドに戻ったアルトは、カウンターで採取したブルーキャップの傘5個を提出した。
ギルドマスターは、傘の状態を一つ一つ確認した後、アルトの少し青ざめた顔色に気づいた。

「うむ、傘は問題ないな。だが、君、顔色が少し悪いようだが、大丈夫だったか?」

アルトは正直に、依頼の途中で毒胞子を吸ってしまったこと、そして帰り道でポイズンスライムに遭遇し、それを撃退したことを報告した。
マスターは、アルトの話を聞くと、少し驚いたような顔をしたが、やがて感心したように頷いた。

「ふむ…毒胞子を吸って、さらにポイズンスライムまで相手にしたというのか。それでいて、きちんと依頼品を持ち帰るとは…ルーキーにしては大した根性だ。よくやった」

そう言って、マスターは報酬の銅貨20枚をアルトに手渡した。
労いの言葉が、疲れたアルトの心に染み渡るようだった。

Fランク冒険者としての初仕事は、予想外のトラブル続きだった。
しかし、それを乗り越え、無事に依頼を達成できたことは、アルトにとって大きな自信となった。
毒への対処法、そしてギフトの新たな応用の可能性。
多くの学びと経験を得られた、実りある初仕事だったと言えるだろう。

報酬の銅貨を握りしめ、アルトは安堵と達成感に浸った。
戦闘だけでなく、採取や探索といった仕事にも、冒険ならではの面白さや、やりがいがあることを知った。

「次は、どんな依頼に挑戦しようかな」

ギフトの謎をもっと探求したい。
冒険者として、さらに多くの経験を積みたい。
新たな意欲が、アルトの中で静かに燃え始めていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...