落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

文字の大きさ
23 / 125

第23話 冒険者としての日常と広がる世界

しおりを挟む
アルトが地道にFランクの依頼をこなし始めてから、季節は少しずつ移り変わろうとしていた。

スライム討伐、ジャイアントラット討伐、薬草採取、時には村の人々の頼まれ仕事である荷物運びの手伝いまで。
一つ一つの依頼は小さくとも、アルトはどれも真摯に取り組んだ。

その成果は、確実に形となって現れていた。
アルトの革袋の中には、依頼の報酬として得た銅貨が、少しずつ、しかし着実に貯まってきていた。
目標である革鎧の購入が、いよいよ現実味を帯びてきたのだ。

それだけではない。
様々な依頼をこなす中で、アルトは戦闘以外の冒険者としてのスキルも、自然と身につけていた。
依頼を受ける際のギルドマスターとの(まだぎこちないが)交渉。
依頼場所までの道のりを確認するための、簡単な地図の読み方。
森の中で、魔物の新しい足跡や食べかすを見つける観察眼。
危険を事前に察知するための、周囲の気配への注意。

これらは、派手な戦闘スキルではないかもしれない。
だが、冒険者として生き抜くためには、どれも欠かせない重要な能力だ。
アルトは、日々の活動を通じて、確実に冒険者としての土台を築き上げていた。

ギルドでの人間関係にも、変化が訪れていた。
以前は遠巻きにされていたり、嘲笑の対象でしかなかったアルトだが、今では他の冒険者たちも、彼を「駆け出しの新人」として、ごく普通に接してくれるようになった。

特に、以前フォレストスパイダー討伐の際に声をかけてくれた、バルガスと名乗る年配の戦士とは、時々言葉を交わすようになっていた。
バルガスは、ぶっきらぼうながらも、アルトの真面目な仕事ぶりを評価してくれているようで、時折、訓練方法のアドバイスや、森の危険な場所についての情報を教えてくれた。

「よう、アルト。精が出るな。あんまり根を詰めすぎるなよ」

そんな風に、気さくに声をかけてくれることもあった。
また、アルトと同年代と思われる他のFランク冒険者――魔法使いの卵だという内気そうな少女や、斥候を目指しているらしい身軽な少年――とも、ギルドで顔を合わせるうちに、挨拶を交わすようになった。
まだ深く話す機会はないが、同じように頑張っている仲間がいることは、アルトにとって心強いものだった。

そして、ある日のこと。
ジャイアントラット討伐の依頼を終え、報酬を受け取ったアルトは、ついに革鎧を購入できるだけの資金が貯まったことに気づいた。

「やった……!ついに貯まった!」

革袋の中の銅貨の重みが、これまでの努力の証のように感じられた。
アルトは、はやる気持ちを抑え、まずは兄のヨハンに教わった通り、村の鍛冶屋の親方を訪ねてみることにした。
頑固だが腕は確かだという、その親方なら、中古の鎧の手入れや、簡単な補強をしてくれるかもしれない。
あるいは、バルガスが言っていたように、隣町の市場へ足を延ばしてみるのもいいかもしれない。
どちらにせよ、念願の防具がもうすぐ手に入る。
その期待に、アルトの胸は高鳴った。

地道な努力は、ギフトにも微細な変化をもたらしていた。
継続的な訓練と実戦経験により、【ダメージ反射】の練度は確実に上がっている。
特に、ポイズンスライム戦で発見した「衝撃波(仮)」の応用。
威力こそまだ小さいものの、以前よりも狙った方向へ、より短い時間で放てるようになってきた。
軽い飛び道具を防いだり、相手を牽制したりするには、十分に役立つレベルになってきている。

反射時の「硬くなる感覚」も、より安定して発動させられるようになり、咄嗟の防御力の底上げに繋がっている実感があった。
フォレストスパイダー戦で発現したかもしれない「追加効果(麻痺?)」については、その後も再現できておらず、謎のままだったが、ギフト全体がより自分の意のままに扱えるようになってきていることは確かだった。

そんなある日、アルトがギルドの依頼掲示板を眺めていると、いつもとは少し毛色の違う依頼が目に留まった。

『迷子の黒猫捜索:村長の孫娘の大事な猫「クロ」。臆病な性格。特徴は右耳の先の白い毛。見つけた方には報酬銅貨10枚』
『隣村への手紙配達:至急。道中の安全確保も含む。報酬銅貨25枚』

これまでの討伐や採取とは異なり、戦闘以外の能力…例えば、捜索能力や、交渉力、あるいは単純な脚力などが求められる依頼だ。

「たまには、こういうのもいいかもしれないな…」

自分のスキルアップを試す意味でも、こうした依頼に挑戦してみることに、アルトは興味を持った。
冒険者の仕事は、魔物を倒すことだけではないのだ。

訓練の合間には、リナと会って話す時間もあった。
彼女もまた、治癒師としての道を一歩ずつ歩んでいた。
最近では、村の子供たちが転んで作った擦り傷程度なら、彼女の【治癒(小)】で、あっという間に綺麗に治せるようになっていた。

「リナちゃん、ありがとうねぇ」

村のお母さんから感謝され、はにかむリナの姿を見て、アルトも嬉しくなった。
お互いの成長を喜び、励まし合う。
そんな穏やかな時間は、アルトにとって何よりの心の支えだった。

アルトは、革鎧購入の目処が立ったこと、そして新しいタイプの依頼にも興味があることをリナに話した。
リナはアルトの成長を喜びながらも、「でも、どんな依頼でも、安全第一だよ。絶対に無理はしないでね」と、優しく釘を刺すのを忘れなかった。

革鎧購入という当面の目標達成が目前に迫り、ギルドでの立場も安定し、人間関係も少しずつ広がってきた。
アルトの世界は、もはやアッシュフォード村の中だけにとどまらず、少しずつ、しかし確実に外へと広がり始めていた。
次はどんな一歩を踏み出すのか。
アルトの堅実な成長は、静かに、しかし力強く続いていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...