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第36話 崖上の死闘と空の脅威
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Eランク冒険者。
その新しい響きに、アルトは身が引き締まる思いだった。
ギルドの依頼掲示板には、Fランクの頃には見られなかった、より挑戦的な依頼が並んでいる。
アルトは、その中から、ギルドマスターが昇格の目安の一つとして挙げていた依頼――「崖地に生える希少薬草の採取」――に挑戦することを選んだ。
戦闘だけでなく、登攀という新たなスキルが求められる、未知への挑戦だ。
ギルドマスターから依頼の詳細を聞き、アルトは必要な準備を整えた。
薬草の名は「クリフハング」。
東の山脈にある「風切り崖」と呼ばれる険しい崖の中腹に生えているという。
「足場が悪く、常に強風が吹いている。滑落には十分すぎるほど注意しろ。それに、あの崖には獰猛な鳥の魔物、『ロックホーク』が巣を作っているという話もある。薬草に気を取られて、空からの襲撃に気づかない、なんてことのないようにな」
マスターの忠告は、アルトの気をさらに引き締めた。
アルトは、登攀用に丈夫な麻のロープと、岩の隙間に打ち込むための簡易的なハーケン(岩釘)、そして滑り止めの効果が高い革手袋を用意した。
リナには、改めてクリフハングの特徴――岩に張り付くように生え、青紫色の小さな星のような花をつける――を教わり、万全の体制を整えて出発した。
村から山道を歩くこと数時間。
アルトは、目的の「風切り崖」の麓に到着した。
目の前にそそり立つのは、文字通り、天を突くかのような巨大な岩壁。
吹き付ける風が、ゴウゴウと音を立てて崖肌を削り、アルトの外套を激しくはためかせる。
見上げるだけで、その険しさに圧倒され、足がすくむ思いだった。
「……よし」
アルトは一度深く息を吸い込み、覚悟を決めた。
ロープの一端を、麓にある最も頑丈そうな大岩に、解けないよう何度も確認しながら固く結びつける。
そして、ハーケンと小さなハンマーを腰の道具袋に入れ、滑り止めの手袋をはめ、崖への第一歩を踏み出した。
一歩、また一歩。
アルトは、手掛かりになりそうな岩のわずかな突起や、足をかけられるくぼみを慎重に選びながら、ゆっくりと高度を上げていく。
全身の筋肉を使い、バランスを取りながら、慎重に、確実に。
岩肌は予想以上にもろく、時折、掴んだ岩がポロリと崩れ落ち、ヒヤリとさせられる。
吹き付ける強風は容赦なく体温を奪い、集中力を削ごうとする。
眼下に広がる景色は、息をのむほど壮大だったが、アルトにそれを楽しむ余裕はなかった。
今はただ、足元と手元、そして上へ、上へと意識を集中させるだけだ。
恐怖心と戦いながら、アルトは着実に崖を登っていった。
どれくらいの時間を登っただろうか。
崖の中腹、わずかに風が和らぐ、岩棚のような場所に出た。
そして、アルトはその岩棚の隅に、目的のものを発見した。
岩肌に、まるで張り付くようにして生えている、小さな植物。
風に揺れる、青紫色の星のような花。
「あった……!クリフハングだ!」
アルトは安堵し、思わず声が出た。
苦労して登ってきた甲斐があった。
アルトは、不安定な足場に気をつけながら、薬草を傷つけないよう、根元から慎重にナイフで切り取り、用意していた採取袋にそっと収めた。
依頼の目標数を確保し、これで任務は完了だ。
目的を達成し、あとは慎重に下山するだけ。
アルトが、ロープを伝って降り始めようとした、まさにその時だった。
キィィィーーーーッ!!
空気を切り裂くような、甲高く鋭い鳴き声が、崖全体に響き渡った。
アルトが驚いて顔を上げると、巨大な影が、太陽を背にしてアルトに向かって一直線に急降下してくるところだった!
翼を広げると3メートルはあろうかという、巨大な猛禽。
灰色と茶色の混じった羽毛、鋭く尖った鋼のようなクチバシ、そして獲物を掴むための、太く頑丈な脚と鋭利な爪。
ギルドマスターが警告していた魔物、ロックホークだ!
どうやら、アルトが彼らの縄張りを侵したことに気づき、怒り狂っているらしい。
「まずい!」
狭い岩棚の上では、まともな回避行動は取れない。
アルトは咄嗟に背中を崖の岩肌につけ、ショートソードを抜き放ち、構えた。
ロックホークは、恐ろしいスピードでアルトに襲いかかってくる。
その鋭い爪が、アルトの身に着けた革鎧を掠めた!
ガキンッ!
硬い革鎧が、爪の直撃を防いでくれたが、その衝撃は凄まじく、アルトの体勢が大きくぐらつく。
ロックホークは、一度アルトの上空を通り過ぎると、すぐに旋回し、再び急降下攻撃の体勢に入る。
空中を自在に飛び回る敵。
不安定で狭い足場。
これは、これまでのどの戦闘よりも厳しい状況かもしれない。
アルトは剣で攻撃を受け流し、あるいは鎧と反射で耐えるしかない。
しかし、相手は空中を高速で移動するため、攻撃を当てることすら難しい。
「こうなったら……!」
アルトは一瞬の判断で、ギフトの応用を試みることにした。
ロックホークが、再び鋭い爪を立てて急降下してくる。
アルトは、相手が攻撃範囲に入るギリギリまで引きつけた。
そして、ロックホークが目前に迫った瞬間、アルトは右腕を突き出し、集中力を高め、例の「衝撃波(仮)」を至近距離で放った!
「――ッ!!」
ドンッ!という鈍い衝撃音と共に、不可視の力がロックホークの顔面付近を直撃する。
狙い通り、ロックホークは一瞬、飛行のバランスを崩し、動きが乱れた。
ほんの一瞬の隙。
しかし、アルトにとって、それは千載一遇の好機だった!
「今だっ!」
アルトは、体勢を崩したロックホークの、がら空きになった翼の付け根あたりを目掛け、渾身の力を込めてショートソードを突き出した!
その新しい響きに、アルトは身が引き締まる思いだった。
ギルドの依頼掲示板には、Fランクの頃には見られなかった、より挑戦的な依頼が並んでいる。
アルトは、その中から、ギルドマスターが昇格の目安の一つとして挙げていた依頼――「崖地に生える希少薬草の採取」――に挑戦することを選んだ。
戦闘だけでなく、登攀という新たなスキルが求められる、未知への挑戦だ。
ギルドマスターから依頼の詳細を聞き、アルトは必要な準備を整えた。
薬草の名は「クリフハング」。
東の山脈にある「風切り崖」と呼ばれる険しい崖の中腹に生えているという。
「足場が悪く、常に強風が吹いている。滑落には十分すぎるほど注意しろ。それに、あの崖には獰猛な鳥の魔物、『ロックホーク』が巣を作っているという話もある。薬草に気を取られて、空からの襲撃に気づかない、なんてことのないようにな」
マスターの忠告は、アルトの気をさらに引き締めた。
アルトは、登攀用に丈夫な麻のロープと、岩の隙間に打ち込むための簡易的なハーケン(岩釘)、そして滑り止めの効果が高い革手袋を用意した。
リナには、改めてクリフハングの特徴――岩に張り付くように生え、青紫色の小さな星のような花をつける――を教わり、万全の体制を整えて出発した。
村から山道を歩くこと数時間。
アルトは、目的の「風切り崖」の麓に到着した。
目の前にそそり立つのは、文字通り、天を突くかのような巨大な岩壁。
吹き付ける風が、ゴウゴウと音を立てて崖肌を削り、アルトの外套を激しくはためかせる。
見上げるだけで、その険しさに圧倒され、足がすくむ思いだった。
「……よし」
アルトは一度深く息を吸い込み、覚悟を決めた。
ロープの一端を、麓にある最も頑丈そうな大岩に、解けないよう何度も確認しながら固く結びつける。
そして、ハーケンと小さなハンマーを腰の道具袋に入れ、滑り止めの手袋をはめ、崖への第一歩を踏み出した。
一歩、また一歩。
アルトは、手掛かりになりそうな岩のわずかな突起や、足をかけられるくぼみを慎重に選びながら、ゆっくりと高度を上げていく。
全身の筋肉を使い、バランスを取りながら、慎重に、確実に。
岩肌は予想以上にもろく、時折、掴んだ岩がポロリと崩れ落ち、ヒヤリとさせられる。
吹き付ける強風は容赦なく体温を奪い、集中力を削ごうとする。
眼下に広がる景色は、息をのむほど壮大だったが、アルトにそれを楽しむ余裕はなかった。
今はただ、足元と手元、そして上へ、上へと意識を集中させるだけだ。
恐怖心と戦いながら、アルトは着実に崖を登っていった。
どれくらいの時間を登っただろうか。
崖の中腹、わずかに風が和らぐ、岩棚のような場所に出た。
そして、アルトはその岩棚の隅に、目的のものを発見した。
岩肌に、まるで張り付くようにして生えている、小さな植物。
風に揺れる、青紫色の星のような花。
「あった……!クリフハングだ!」
アルトは安堵し、思わず声が出た。
苦労して登ってきた甲斐があった。
アルトは、不安定な足場に気をつけながら、薬草を傷つけないよう、根元から慎重にナイフで切り取り、用意していた採取袋にそっと収めた。
依頼の目標数を確保し、これで任務は完了だ。
目的を達成し、あとは慎重に下山するだけ。
アルトが、ロープを伝って降り始めようとした、まさにその時だった。
キィィィーーーーッ!!
空気を切り裂くような、甲高く鋭い鳴き声が、崖全体に響き渡った。
アルトが驚いて顔を上げると、巨大な影が、太陽を背にしてアルトに向かって一直線に急降下してくるところだった!
翼を広げると3メートルはあろうかという、巨大な猛禽。
灰色と茶色の混じった羽毛、鋭く尖った鋼のようなクチバシ、そして獲物を掴むための、太く頑丈な脚と鋭利な爪。
ギルドマスターが警告していた魔物、ロックホークだ!
どうやら、アルトが彼らの縄張りを侵したことに気づき、怒り狂っているらしい。
「まずい!」
狭い岩棚の上では、まともな回避行動は取れない。
アルトは咄嗟に背中を崖の岩肌につけ、ショートソードを抜き放ち、構えた。
ロックホークは、恐ろしいスピードでアルトに襲いかかってくる。
その鋭い爪が、アルトの身に着けた革鎧を掠めた!
ガキンッ!
硬い革鎧が、爪の直撃を防いでくれたが、その衝撃は凄まじく、アルトの体勢が大きくぐらつく。
ロックホークは、一度アルトの上空を通り過ぎると、すぐに旋回し、再び急降下攻撃の体勢に入る。
空中を自在に飛び回る敵。
不安定で狭い足場。
これは、これまでのどの戦闘よりも厳しい状況かもしれない。
アルトは剣で攻撃を受け流し、あるいは鎧と反射で耐えるしかない。
しかし、相手は空中を高速で移動するため、攻撃を当てることすら難しい。
「こうなったら……!」
アルトは一瞬の判断で、ギフトの応用を試みることにした。
ロックホークが、再び鋭い爪を立てて急降下してくる。
アルトは、相手が攻撃範囲に入るギリギリまで引きつけた。
そして、ロックホークが目前に迫った瞬間、アルトは右腕を突き出し、集中力を高め、例の「衝撃波(仮)」を至近距離で放った!
「――ッ!!」
ドンッ!という鈍い衝撃音と共に、不可視の力がロックホークの顔面付近を直撃する。
狙い通り、ロックホークは一瞬、飛行のバランスを崩し、動きが乱れた。
ほんの一瞬の隙。
しかし、アルトにとって、それは千載一遇の好機だった!
「今だっ!」
アルトは、体勢を崩したロックホークの、がら空きになった翼の付け根あたりを目掛け、渾身の力を込めてショートソードを突き出した!
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