落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第65話 実力証明、オーク斥候を討つ

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クラウスとマルコから受けた侮辱。
それはアルトの心に、チリチリとした悔しさの火を灯していた。
だが、その火は、彼を焼き尽くすのではなく、むしろ次なる挑戦への強い決意へと昇華されていた。
(見てろよ。言葉じゃなく、実力で、お前らに俺の力を証明してやる…!)
アルトは、Dランク冒険者としての確かな実力を示すため、依頼掲示板の中から、挑戦しがいのある討伐依頼を選び出した。

『オーク斥候部隊討伐:西街道沿いの森に出没するオーク斥候(3~5名)の討伐。周辺の安全確保のため。報酬 銀貨2枚。ランクD推奨』

オーク。
ゴブリンよりも遥かに体格が良く、個々の戦闘能力も高いとされる亜人種だ。
その斥候とはいえ、複数体を相手にするのは、Dランク冒険者にとっても決して簡単な任務ではない。
しかし、今の自分ならやれるはずだ。
アルトは、迷わずこの依頼を受けることを決めた。

ギルドマスターは、アルトがオーク討伐依頼を選んだことに少し驚きつつも、その成長を認め、注意点を伝えた。

「オークは侮れんぞ、アルト君。一体一体の力が強く、非常に打たれ強い。それに、数は少なくとも連携してくる可能性が高い。真正面からの力比べは無謀だ。奴らの弱点…動きが比較的直線的で、やや鈍重な点を上手く突くことだな」

アルトは、以前バルガスからもらったアドバイス――オークの突進を避ければ大きな隙ができること、そして反射ダメージが有効であること――も思い出し、戦術を組み立てる。
カウンター反射を主軸に、剣と盾で相手の攻撃を捌き、隙を見て弱点を突く。
パワーで押してくる相手に対し、技とスピード、そしてギフトで対抗する。

準備は入念に行った。
ショートソードの刃は、これ以上ないほど鋭く研ぎ澄ます。
革鎧とバックラーの状態も、隅々まで点検し、革紐をきつく締め直した。
オークの強力な打撃に耐えられるかが、この戦いの鍵を握るだろう。
回復薬や携帯食料も十分に用意し、アルトは決意を胸に、オーク斥候が出没するという西街道沿いの森へと向かった。

(絶対に、あいつらに文句は言わせない…!)
クラウスたちの嘲笑う顔が、アルトの闘志をさらに掻き立てていた。

森の中を進んでいくと、やがて獣臭と共に、オーク特有の低い唸り声と、がさつな話し声のようなものが風に乗って聞こえてきた。
アルトは息を潜め、木の陰からそっと様子を窺う。
少し開けた場所に、焚き火の跡があり、その周りで3体のオークが、何かの肉にかぶりついている姿があった。

緑色の分厚く硬そうな皮膚、突き出た豚のような鼻と鋭い牙、そして人間を遥かに凌駕する屈強な体格。
それぞれが、人間のものより一回りも大きな、粗末だが明らかに殺傷能力の高そうな棍棒や手斧を無造作に脇に置いている。
アルトの存在に気づくと、オークたちは即座に食事を中断し、それぞれの武器を手に取った。
そして、獲物を見つけた獣のような獰猛な光を目に宿し、野太い雄叫びを上げながら、アルトに向かって一斉に襲いかかってきた!

「グォォォォッ!!」

先頭を走るオークが、大地を揺るがすような勢いで突進し、巨大な棍棒を力任せに振り下ろしてくる。
そのパワーは、ホブゴブリンには及ばないまでも、凄まじいものがある。
まともに受ければ、革鎧ごと叩き潰されかねない。

しかし、アルトは冷静だった。
真正面から受け止めず、訓練で体に叩き込んだフットワークを使い、半身になってその一撃を紙一重でかわす。
同時に、左腕のバックラーで、オークの体当たりに近い衝撃を受け流した。

すれ違いざま、アルトはショートソードでオークの防具のない脇腹を斬りつけた。
だが、手応えは鈍い。
分厚い皮膚と、その下の強靭な筋肉に阻まれ、傷は浅い。
やはり、オークは噂通り打たれ強い。

別のオークが、横から大きな手斧を投げつけてきた。
アルトはそれをバックラーで素早く弾き返す。
さらに、三体目のオークが棍棒を薙ぎ払うように振るってきた。
アルトはその攻撃軌道を見切り、あえてショートソードの腹で、衝撃を吸収するように受け止めた。
強烈な衝撃が腕に響く!

(ここだ!)

受け止めた瞬間に、全神経を集中させ、ギフトを発動!
カウンター反射!

「グゴッ!?」

反射ダメージを受けたオークは、棍棒を持つ腕を押さえて苦痛の声を上げ、大きく後退した。
その表情には、驚きと混乱の色が見える。
自分たちの攻撃が、そのまま自分に返ってくるという現象を、理解できずにいるのだろう。
やはり、反射はオークに対しても極めて有効なダメージソースとなる!

アルトは、この戦術を軸に立ち回ることを決めた。
剣と盾でオークたちの強力な攻撃を捌き、受け流し、あるいは防御しながら、確実にカウンター反射の機会を作り出していく。
オークたちの攻撃はパワフルだが、動きは比較的直線的で単調な部分が多い。
一度そのパターンを読んでしまえば、対処は不可能ではない。

反射でダメージを与え、動きが鈍ったオークに対しては、ショートソードで追撃を加える。
狙うは、バルガスやギルドマスターに教わった弱点。
防御の薄い関節部分や、動きの起点となる足元、そして防具の隙間。
時には、バックラーでのバッシュを叩き込み、相手の体勢を崩してから、剣で的確に急所を突く。

オークたちも、仲間がダメージを受けるのを見て、連携してアルトを追い詰めようとする。
一体が正面から攻撃し、別の二体が側面や背後に回り込もうとする。
しかし、アルトは常に周囲への警戒を怠らず、冷静に立ち回った。
バックラーで死角からの攻撃を防ぎ、フットワークで包囲網を抜け出し、そしてカウンター反射で追撃を許さない。
彼の動きは、もはや単なる力任せの戦闘ではなく、技術とギフトが融合した、洗練されたものへと進化していた。

一体、また一体と、アルトは着実にオークを仕留めていく。
反射で腕や脚の骨を砕き、動きを封じ、最後はショートソードでとどめを刺す。
その戦いぶりは、以前のようなギリギリの死闘ではなく、どこか余裕すら感じさせるものだった。

そして、ついに最後の一体のオークが、アルトの放った強力なカウンター反射を受けて地面に倒れ伏した時、森には静寂が戻った。
アルトは、肩で軽く息をしながらも、その表情には疲労の色よりも、確かな自信と達成感が満ち溢れていた。

(やった……!)

自分の成長と、確立しつつある戦闘スタイルが、Dランクレベルの魔物にも十分に通用することを、彼はこの戦いで証明したのだ。
アルトは、討伐の証拠として、オークの硬い牙をそれぞれの死体から折り取り、布袋に収めた。

「これで、少しはあいつらも黙るかな……」

ギルドで絡んできたクラウスたちの顔を思い浮かべ、アルトはふっと小さく笑みを漏らした。
言葉で言い返すよりも、こうして結果で示す方が、ずっと雄弁だ。

確かな手応えと共に、アルトはギルドへの帰路についた。
この勝利は、彼にとって、王都での冒険者生活における、新たな自信と、次なるステップへの大きな足掛かりとなるだろう。
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